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メセナ法によるブラジルの多文化奨励
〜民間の積極的参加によって多文化を保護しようとするブラジルの文化政策〜

●章立て

0 序章

1-1 ブラジルの文化支援優遇政策の歴史

1-2 メセナ法の目的/仕組みの概説とブラジルの多文化主義

2-1 日本の事情

2-2 海外の事情

2-3 比較から見えてくる「ブラジルは文化をどういう目的でどう扱ってきたのか」

3-1 メセナ法の仕組み

3-2 申し込み手順 ペトロブラスに申し込むとして
   ※実際の審査通過プロジェクトの申し込み書類一式

3-3 マーケティング・クルトゥラル
  (プロジェクトが如何に文化的に意味があるかという点が競われ、支援されるプロジェクトが決定される)

4-1 メセナ法に基づく支援の実体

4-2 問題点

まとめ ブラジルのメセナ法の独自性

※インタビュー資料どこかに組み込む

●序章

ブラジルのような国で、文化を仕事にするというのはかなりの挑戦だ。
ある面では、国民とその芸術の多様性と創造性に特徴づけられるように、芸術文化資産の豊かな国であるが、別の面では、根深い社会の不平等を抱え、そのことは、必ずしも文化財へのアクセスが開かれていなく、民主的でないことの、原因となっている。
全ての文化活動は、この不平等をかなり意識して規律づけられなければならず、文化活動を成熟した市民社会を形成するために貢献するようなものに変わらなければならない、ということはあたり前のことである。
そして、文化の普及が、段々と、優遇政策を通じて可視化されてきていることは、言及する価値がある。
──ヒカルド・ヒヒベルボインRicardo Ribenboim 彫刻家で、Itau文化機構の元最高長官

本論において、便宜的にメセナ法と呼ぶものは、
法律第8.313号(ブラジルでは通称Lei Rouant:ルアネー法と呼ばれている)のことである。
──※法令全文は、"Guia do Incentivo a Cultura"のp257〜p290にある、できれば全文訳したいよね

ブラジル連邦共和国の構成単位は、連邦、州、連邦区、市(ムニシピオ)であり、各構成単位は、連邦憲法が他の構成単位に帰属させていないすべての権限を有する原則があり、その限りにおいて各構成単位は独自に立法することができる。
しかしながら、憲法がかなり広範な権限を連邦に留保しており、民法・商法・刑法・訴訟法・選挙法・農業法・海法・航空法・宇宙法・労働法は、連邦の立法事項だ。

本論文が主に取り上げる上記のメセナ法は、連邦レベルの法律であり、国全体に適用される。連邦レベルでの文化支援奨励法である。
連邦レベルの文化支援奨励法には、メセナ法の他に、視聴覚作品法(法律第8.685号:通称Lei do Audiovisual)があり、州レベルのものでは、サンパウロ州のPACやバイーア州のFAZCULTURAが有名で、市レベルのものでは、サンパウ ロ市のメンドンサ法(Lei Mendonça)が有名だが、メンドンサ法がこれらの文化支援奨励法の中で一番早い1990年12月に成立した。
州レベルでは、他にアクレ州、セアラー州、マトグロッソドスル州、ミナスジェライス州、パライーバ州、リオデジャネイロ州、リオグランデドノルテ州、リオグランデドスル州、サンタカタリーナ州にある。
市レベルのものは他に、サン・ジョゼ・ド・カンポス市(サンパウロ州)、アメリカーナ市(サンパウロ州)、ベレン市(パラ州)、ベロオリゾンチ市(ミナス ジェライス州)、コンタージェン市(ミナスジェライス州)、カベデロ市(パライバ州)、クリチバ市(パラナ州)、ゴイアニア市(ゴイアス州)、ロンドリー ナ市(パラナ州)、マセイオ市(アラゴアス州)、リオデジャネイロ市(リオデジャネイロ州)、サンタ・マリア市(リオグランデドスル州)、ヴィトリア市 (エスピリトサント州)などにある。

これらの文化奨励法に共通するのは、各法が定めた制度に基づいて承認された文化プロジェクトのために寄付した金額を申告すれば、全額ではないが、支払うべ き税金が控除される。控除される税金の種類や、寄付額に対する控除額のパーセンテージも法によって異なる。パーセンテージが幾段階かに分かれており、文化 プロジェクトの承認時にパーセンテージが決まる場合も多い。

本論でメセナ法と呼ぶルアネー法は、文化プロジェクトへの寄付によって、所得税が控除される法だが、寄付額に対する控除額のパーセンテージも改正によって 変わってきた。パーセンテージ以外の面でも、改正により変更されてきたが、本論では、特に断りがない限り、筆者がブラジルでの現地調査を行った2010年 1月の時点の同法を対象としたい。

●1-1 ブラジルの文化支援優遇政策の歴史
(論文になるように、書き直すこと)

1810 年に、ジョアン 6 世が国立図書館を設立

20 世紀の中頃に、エリートは支援の必要性を唱えたが、公的な大きな動きにはならなかった。

1990 年代の終わりになって、文化支援の公的政策が生まれた。

以前のアメリカの政策を手本にしている。アメリカでは、1917 年に税の控除による文化支援政策を開始し、70 年間実行した。86 年に

廃止した。このモデルはヨーロッパと大きく違う、ヨーロッパでは今日まで国による巨大な投資がある。

アメリカが、当時分かを支援したのは、ヨーロッパの財産をアメリカに持ち込むためだった。この政策のおかげで、アメリカは、文化を

輸出する国になった。

ブラジル:1940 〜 50 年に、2人の起業家によって、サンパウロに MAM や TBC、CInemateca Brasileira、MAC 等が作られる。

少し遅れて、MASP が作られたが、これは新聞社のオーナーが新聞広告と交換条件に寄付を募った。

同じような課程で、リオに MAC が作られた。Shell や Banco do Brasil もこの時期に文化支援に乗り出した。

が、政策的な支援はなく、この流れは消えていく。エリートが上流階級社会における個人の威信において文化を支援していたこの流れは、

政策によって資源面での仕組みを確立させる必要があった。

1986 年に、税制優遇による文化支援法であるサルネイ法が施行される。90 年まで続いたが、システムに大きな問題があり、汚職の温床

となった。

90 年発足の Collor 政権によって、文化省が廃止され、文化に関する財源が全くなくなった。

同年、サンパウロ市において、文化関係者が中心となり、メンドンサ法ができる。サンパウロにおける税制優遇による文化支援法。

91 年、共和国の文化局の最高長官だったルアネーは、ルアネー法の施行を達成させる。これが、今日までのブラジルにおける文化優遇政

策のベースとなっている。行政と予算審査の透明化、プロジェクトの登録又内容の分析、決算報告における厳格化。

92 〜 94 年までは、あまり有効には機能しなかった。広報不足が原因で、システムが浸透しなかった。

95 年に FHC 政権になり、Francisco Correa Weffort が文化大臣に。文化省に、文化支援局を設置。大統領や、通信大臣通信大臣の後押し。

プロジェクトの申請や資金の調達を専門にする人が増える。

州知事や市町も刺激を受け、文化支援の意識が広がる。当時においては、バイーア州における支援が目立っている。

01 年には、AV の分野で、ANCINE が設立される。

03 年に、 ルーラ政権に代わり、 ジルベルト ジルが文化大臣になってからも、修正の必要性を尊重しながらもルアネー法の基本路線は維持。

●1-2 メセナ法の目的/仕組みの概説とブラジルの多文化主義

 メセナ法の目的。メセナ法の仕組み概説。ブラジルの多文化主義。

●2-1 日本のメセナ
 ※日本語文献を使う

●2-2 海外のメセナ
 ※「ヨーロッパのメセナ」などの日本語文献を使う

●2-3 比較から見えてくる「ブラジルは文化をどういう目的でどう扱ってきたのか」
 ※国(地方公共団体)・文化芸術団体・民間企業三者間の連携(パートナーシップ)により文化芸術を支えていて、三者とも主体的に動くことができる→多文化主義につながる


●3-1 メセナ法の仕組み

 ※こういうことをもっと詳しく分かりやすくする「国家文化奨励委員会 (CNIC) により承認されたプロジェクトは、企業および個
人の援助および贈与を受けることができる。また、これらの企業および個人は、
全額ではないが、与えた恩恵分を納付すべき所得税から減額することができる。
そうした処理は、法律第8.313/91号 (Rouanet法) によって認められている。
同法によれば、その恩恵を求めることができるのは、文化的な性質を持つ営利
もしくは非営利の法人、企業および機関、ならびに財団 (Funda豪o)、独立行政
機関 (Autarquia) および協会 (Instituto) などの行政が間接的に管理する公益法人
である。ただし、適切な法人格と文化的性格を具備していることが条件である。
プロジェクトは、表現形式、創作・製作方法、ブラジルの文化遺産の保存・保
護方法、文化的現実の研究と解釈方法を開発すること、ならびに芸術的・文化
的財産と価値を知る方法の提供に貢献することを目的とするものでなければな
らず、下記の分野を含む。
‐ 演劇、ダンス、サーカス、オペラ、パントマイムその他同種のもの。
‐ 映画制作、ビデオ制作、写真制作、レコード製作その他同種のもの。
‐ 参考図書を含む文学作品。
‐ 音楽。
‐ 造形美術、グラフィックアート、彫刻、ポスター、切手収集その他類似のもの。
‐ 民俗芸能および手工芸品。
‐ 歴史的遺産、建築術上の遺産、考古学上の遺産、図書館、博物館、公文書保存
所その他の遺産を含む文化的遺産。
‐ 人文科学。
‐ 非商業的性格を持つ教育・文化的なラジオ・テレビ番組。
プロジェクトは、一般の人々に恩恵をもたらし、かつ法律で規定する分野・部
門を中心に置いたものでなければならない。文化的財産を人々が等しく利用で
きるようにすることもこの法律の目的のひとつである。従って、一般の人々の
利用を容易にする仕組み (例えば、ショーへの無料入場、大衆的な値段の入場
券、図書館への図書配布、公開の美術展覧会、等々) がこの目的を履行するの
に必要である。
法律第8.313/91号は、贈与者または後援者は、同法が定めた制度に基づいて承
認された文化プロジェクトのために実際に寄付した金額を、所得税の申告時に、
納付すべき所得税から以下のパーセンテージで控除することができるものと規
定している。
‐ 自然人の場合には、贈与額の80パーセントおよび後援額の60パーセント。
‐ 実質利益に基づいて課税される法人の場合には、贈与額の40パーセントおよび
後援額の30パーセント。
さらに、企業は、贈与額と後援額の合計を営業費に含めることができる。これ
によって、当該年度の企業の実質利益が減少し、結果として納付すべき税金の
額が減少する。納付すべき所得税から差し引くことのできる金額の合計は、法
人の場合、総額の4パーセントを超えてはならず、また自然人の場合、6パー
セントを超えてはならない。
税制上の利益に加えて、後援者は、後援するプロジェクトによって、作品 (書
籍、レコード、彫刻、CD-ROM、等々) での返礼を得ることができる。プロ
ジェクトによって生み出された芸術作品の受け取りは、制作されたものすべて
の25 パーセントに制限されており、受け取ったものは無料で配布しなければ
ならない。
詳しい情報を得るには、関係する分野を管轄する局に出向くこと。また、プロ
ジェクトは、所定の用紙を用いて、文化省、その地方事務所または文化省につ
ながる団体の国家文化支援計画
調整部門に提出しなければならない。 (そのためには、文化省と連絡をとれば
十分である。)
文化省のサイトでは、プロジェクト提出用のプログラム (これは文化省の部局
の1 つで求めることもできる) をダウンロードすることができる。プロジェク
トが省令 (Portaria) で承認された後は、プロジェクトに関する顛末報告 (計算・
決算報告) をしなければならない。プロジェクトの顛末報告の作成マニュアル
と書式も、文化省のサイトにある。」

FNAC Fundo Nacional de Cultura
国家文化基金


申し込みでの義務事項と、
協約と連邦政府との共同分野での予算の使用を始めるまで。

Ficart

Mecenato
メセナ部門

プロジェクトの申し込み

  • 文化プロジェクトの組立
  • 申込フォームの記入
  • 文化プロジェクトの提案
  • 行政手順のプロセス
  • 各分野におけるプロジェクトのプレゼンテーションについての考察

資金集め

  • 法律の条項

文化プロジェクトの管理・運営
  • 受領(メセナ)

●3-2 申し込み手順 ペトロブラスに申し込むとして

   ※実際の審査通過プロジェクトの申し込み書類一式

●3-3 マーケティング・クルトゥラル
  (プロジェクトが如何に文化的に意味があるかという点が競われ、支援されるプロジェクトが決定される)

●4-1 メセナ法に基づく支援の実体
  ※発表されているデータ

●4-2 問題点
  ※政府の分析紹介、自分の分析を加える

●まとめ
  ブラジルの文化政策から学べること。


すぐ参照てきる文献

英語文献_書籍
●"TROPOCAL MULTICULTURALISM" ROBERT STAM
●"PRIVATING CULTURE" CHIN-TAO WU
●"ART WORLDS" HOWARD S.BECKER
●"CULTURAL POLITICS IN A GLOBAL AGE" EDITED BY DAVID HELD, HENRIETTA L.MOORE
●"THE EXPEDIENCY OF CULTURE" GEORGE YUDICE
●"CULTURE INCORPORATED" MARK W.RECTANUS
●"Cultural Politics in Latina America" Edited by Anny Brooksbank Jones, Ronaldo Munck
●"World culture report 1998" UNESCO

葡語文献_書籍 ●CADERNOS DO NOSSO TEMPO "A cultura e as revoluções da modernizaçāo" Francisco C.Weffort ●CADERNOS DO NOSSO TEMPO "Fascínio e repilsa ──Estado, cultura e sociedade no Brasil──" Márcio Souza ●CADERNOS DO NOSSO TEMPO "Cultura e desenvolvimento" Elizabeth Jelín, Enrique Iglesias, Hernán Crespo Toral, José Sarney, Lourdes Arizpe, Roberto Da Matta, Sérgio Paulo Rouanet ●CADERNOS DO NOSSO TEMPO "Cinema brasileiro" Fernando Henrique Cardoso, Francisco C.Weffort, José Álvaro Moisés ●CADERNOS DO NOSSO TEMPO "Cultura e democracia Volume.1" José Álvaro Moisés, Saul Sosnowski, Enrique Saravia, Hermano Roberto Thiry-Cherques, Paulo Sergio Pinheiro e Luia Antônio F.Souza ●CADERNOS DO NOSSO TEMPO "Perspectivas para o Brasil" Hélio Jaguaribe, Renato Janine Ribeiro ●CADERNOS DO NOSSO TEMPO "A reforma da política" Leôncio Martins Rodrigues, Bolívar Lamounier ●"LEVANTAMENTO DAS FONTES DE APOIO FINANCEIRO À ÁREA CULTURAL ──NÍVEL FEDERAL──" ●"RESPONSABILIDADE SOCIAL DAS EMPRESAS ──A CONTRIBUIÇĀO DAS UNIVERSIDADES──" ●"Economia e Política Cultural ──Acesso, emprego e financiamento" Frederico A.Barbosa da Silva ●"Polìticas Culturais Vol.1" Leonardo Brant(org.) ●"Desenvolvimento e Cultura ──O problema do estetismo no Brasil──" ●"Cultura e Desenvolvimento" Boaventura de Sousa Santos, Jailson de Souza e Silva, Ecio de Salles, Marta Porto, Maurício Torres, Ferréz, Paulo Roberto Pires, Paulo Lins, Beatriz Resende, Tião Santos, Zuenir Ventura ●"Cultura Organizacional E Cultura Brasileira" Fernando C.Prestes Motta(org.), Miguel P.Caldas(org.) ●"MÚSICA BRASILEIRA E IDENTIDADE NACIONAL NA MUNDIALIZAÇÃO" Michel Nicolau Netto ●"Economia Política, Comunicação e Cultura──Aportes teóriocos e temas emergentes na agenda polìtica brasileira" Doris Fagundes Haussen e Valério Cruz Brittos(Orgs.) ●"Desenvolvimento e Cultura──O problema do estetismo no Brasil" Mario Vieira de Mello ●"CULTURA É PATRIMÔNIO Um Guia" LÚCIA LIPPI OLIVEIRA ●"CULTURA BRASILEIRA & IDENTIDADE NACIONAL" Renato Ortiz ●"Economia da Cultura" Isabela Cribari(org.) ●"Guia do Incentivo a Cultura" Fabio de Sa Cesnik ●"dicionário crítico DE POLÍTICA CULTURAL" Teixeira Coelho

葡語文献_論文
●"MARKETING CULTURAL──um estudo sobre a produção cultural a partir das leis de incentivo em uma sociedade de mercado" Arlete de Loourdes Alonso

■■■以下使える部分があるかもしれないのでメモ用にタイプしたテキスト

文化政策の展開

p140
民間のメセナ活動
● 1980年代の後半頃から、企業等において、企業市民としての自覚(コーポレート•シティズンシップ)のもとに、社会的貢献(フィラントロピー)の一環として、メセナの名による文化芸術への支援が積極的に行われるようになった。このような背景のもとに、1990年、(社)企業メセナ協議会が設立された。
 企業メセナ協議会は、①芸術文化支援等に関する啓発•普及•顕彰、②芸術文化支援に関する情報の収集•配布•仲介、③芸術文化支援活動の調査•研究、④海外の同種の機関との情報交換•交流、などの事業を行っている。特に、②に関し、1994年に同協議会が特定公益増進法人に認定されたことに伴い、同協議会が認定した芸術文化活動に対する企業・個人からの寄付金には税制上の優遇措置が適用されている。
 同協議会を通じて行われた寄附の2000年度以降の推移は、表9-3に見るとおりである。2002年度、2003年度に一時落ち込んだが、近年は増加の傾向にあり、2004年度には6億4,932万円(同256件)、2005年度には7億6,581万円(同234件)となっている(㈳企業メセナ協議会資料)。
 また、同協議会が行ったアンケート調査によると2000年度以降の企業のメセナ活動の推移は、表9-4に見るとおりである(㈳メセナ協議会「メセナレポート2005」)。メセナの実施企業は一貫して増加しており、また資金援助であるメセナ活動費も2001年度に一時落ち込んだものの、2002年度以降は着実に増加している。
 企業にメセナ活動は、資金援助のみならず、人材派遣や場所・機材の提供などの非資金協力の形態をとることも多く、今日、着実に定着しつつあるといってよいであろう。




●民間を含む支援の枠組みの必要性
 国(文化庁、芸文振)による芸術文化活動への支援の構造は以上のとおりであるが、前節で見たように、今日、企業等民間のメセナ活動による支援が活発化し、着実に定着しつつある。また、第1章、第2章でも触れたが、このような民間の動向は、芸術文化活動への支援の新たなあり方を提示した。それは、これまで国(地方公共団体)と文化芸術団体ニ者間の関係のみであった支援体制が、民間企業等を含めた三者間の関係に転換したことである。このため、今後は、公・私の間の連携と相互の役割分担を図ることが必要となっている。すわわち、国(地方公共団体)・文化芸術団体・民間企業三者間の連携(パートナーシップ)により文化芸術を支える新たな仕組みを構築し、定着させることが要請される。
 芸術文化助成財団協議会を構成する助成団体の助成の分野・対象は表9・5に見るように、極めて多様性に富んでいる。頂点を高める方向を志向するものもあれば、裾野を広げることに重点を置くものもある。また、企業メセナ活動も同様に、助成の内容は多岐にわたっているものと考えられる。そして、これら民間の助成活動は、それぞれが独立性を保ちつつ、独自の立場から行われている。その意味で、公・私の間を横断する包括的な支援の枠組みを構築することは容易ではない。
 しかしながら、例えば、民間においては、公の関与が困難な先駆的・評価未定の領域を主たる対象とし、一方、国(地方公共団体)においては、芸術文化活動や文化芸術団体の性格、成熟度の度合いにより支援の内容に強弱を加えるなど、支援の対象と方法の構造化を図ることにより、相互に補完し合う仕組みを構築することなどが考えられる。
 芸術文化活動の支援は、基本的には公的部門が担わなければならないとすれば、文化庁および芸文振による支援行政は、いわば正規軍に位置づけられる。一方、資金源の多元化による自律性の確保や幅広い一般の支持を得るうえで期待される民間部門による支援は、遊撃軍と見なすことができる。正規軍は、全体的・総合的な観点に立って戦術を行使しなければならない以上、そこに空白の部分が生じることは否めない。遊撃軍は、その空白を埋め、間隙を縫う作戦の展開が可能であるとともに、場合によっては初動作戦も積極的に実施することができる。
 いずれにしても、前項で見た国による支援の三層構造に加え、民間のメセナ活動による支援を効果的に組み合わせた包括的な支援の枠組みの構築が望まれるところである。

グローバル化する文化政策

アメリカ初の黒人大統領となったバラク・オバマ氏、選挙公約に地球環境問題を直視したグリーン・ニューディール政策を掲げたのみならず、芸術文化予算を大幅に増額して、人々の創造性を刺激することで、アメリカ社会の草の根からの蘇生を訴えた。特に、創造性を革新性を活性化するために芸術教育への投資を最重要に位置づけており、文化政策は新たな社会を展望する創造力を市民と社会にもたらすものと位置づけられた。
1933年に始まるニューディール政策と呼ばれる社会実験が第2次世界大戦後の福祉国家システムの成立をもたらしたように、眼前の世界経済の破綻にたじろぐことなく、むしろ
危機を千載一遇のチャンスと捉えて、より望ましい社会経済システムへの根本的な転換が求められているといえよう。つまり、金融・経済のヘゲモニーを競い合う弱肉強食のグローバリゼーションを第一段階とするならば、文化的多様性を認め合う第二段階のグローバリゼーションへの移行する機会が訪れているのであり、危機を乗り越える新しい創造的な思想や社会的営為を引き出すような文化政策が今まさに求められているのである。


ユネスコUNESCO(国連教育科学文化機関)は、20世紀末から急速化する市場原理主義的なグローバル化の大波により、途上国の文化財や言語が消失して文化権や人間発達を阻害し、文化的多様性が損なわれ、文化的画一化が進むことに警鐘を鳴らしてきたが、世界遺産や無形文化遺産などの指定を通じて文化財=文化資本の保存をよびかけるとともに、2001年には「文化的多様性に関する世界宣言」を採択した。
この背景には、欧州各国の強い危機感があった。つまり、世界貿易機構WTO体制の下で自動車やハイテク家電など工業製品のみならず、映画やテレビ番組、雑誌までが貿易自由化の対象になれば、ハリウッドの映画産業など経済的に影響力の強い巨大文化産業が市場を席巻し、文化的多様性を損なってしまうという恐れだ。
さらに、2005年には「文化的表現の多様性の保護および促進に関する条約」が採択され、締約国(ならびにEUなど地域統合機関)には文化的活動や財、サービスの創造、生産、普及、配布、享受に関して公的な規制や資金援助を含めた妥当な措置を取ることを認め、公共放送を含めメディアの多様性強化のための措置をも認めている。2006年にはEUが加盟し、中国やインドなど多様な少数民族を抱える国々に受け入れられており、新自由主義的で無秩序なグローバル化による文化の画一化傾向に対して、文化的多様性を認め合う節度あるグローバリゼーションに向けて一定の影響力を持つことが予想される。
 こうした流れの中で、ユネス文化局は2004年に文化産業の創造的社会経済的潜在力を解放し、文化的多様性を実現する目的で創造都市のグローバルアライアンスを呼びかけた。〜

世界30か国、約700人が参加したこのシンポジウム(世界文化フォーラム_2004内「文化権と人間発達 cultural rights and human development」)は、バルセロナに拠点をおく芸術系NPO「インテルアーツ財団」(Ineterarts Foundation)が、ユネスコの協力を得て企画したものである。タイトルから明示的にわかるように、ノーベル賞受賞者で、インド生まれの経済学者であるアマルティア・セン(Amartya Sen)の提唱する「ケイパビリティ」(capability)という概念をベースに、「人間発達」を「文化権」とのかかわりで正面から論じようとする意欲的な企画であった。つまり、21世紀は富や貧困をGDPによって捉えるのではなく、それぞれの国や地域の人々がどれだけ多くの「選択肢」を持っているか、人々の様々な局面において「意義ある選択」が可能な社会となっているかをみていくべきだとして、1人1人にとってのケイパビリティ、つまり発達可能性や潜在能力などに多様な選択肢のある社会ほど豊かだという考え方である。
言い換えれば、人間発達とは「人々の選択の拡張過程」であり、それは政治的経済的社会的自由から個人が健康的、生産的、創造的に、かつ誇りを持って生きる機会と、人権にまで至る潜在可能性の発展によって測ることができる。それは当然、女性の社会参加やマイノリティの発言権などさまざまな権利と結びつくが、そのような人間の基本的人権、人権というものを発達可能性の視点から捉えたとき、そのベースには豊かな文化を創造し、享受する権利、つまり「文化権」が重要であるという認識に基づいている。
すでに述べてきたように21世紀初頭の社会においては、グローバリゼーションが金融・経済にとどまらず文化の分野においても急速に進行すればするほど、文化の中で大切な要素となる宗教と言語にも大きな影響を与え、宗教的価値観の対立が激化する一方で、特に少数民族の言語の消滅が顕著となる。ユネスコはこれに大きな警鐘を鳴らして、「生物的多様性」に対比して「文化的多様性」の概念を提唱してきた。つまり、金融・経済のグローバリゼーションの影響下で引き起こされる「文化帝国主義」の如き現象によって、一方的に少数の人々の「文化権」が損なわれないように、文化的弱者の立場から「文化的多様性」を重視すべきだという考え方を基調としてこのシンポジウムは企画されてきたのである。
さらに、文化的多様性と関連して、重要なポイントとして挙げられたのは「多元的なアイデンティティ」という概念である。文化は、民族や地域や個人のアイデンティティと結び付き、それらを強固なものにするが、それぞれのアイデンティティがグローバリゼーションの中で衝突したときどのように解決したらよいのか。例えば、イラク戦争では「Mr.ブッシュの考えるアイデンティティ」と「イラクの人々のアイデンティティ」とが正面から衝突したが、どうすればこのような悲和解的対立を乗り越えることができるのであろうか。このシンポジウムで討論され合意を得たのは、互いのアイデンティティが対立した場合には「多元的なアイデンティティ」の立場に立たねばならないということである。つまり、「グローバリゼーションの下でのアイデンティティ」とは少なくとも他人のアイデンティティを損なうような立場はとらず、互いのアイデンティティに相違があり対立していたとしても、それらを乗り越えるものがなければならないというのである。つまり、アプリオリにアイデンティティがすばらしい、大事にするべきだというのでは衝突は避けることはできず、「アイデンティティに専先行する理性」こそ求められるとするアマルティア・センの考え方に基調をおくものである。
新自由主義的グローバリゼーションがもたらした極度に緊張感の高い現代社会において、「文化的多様性と相互のアイデンティティを損なわない、より調和の取れたグローバリゼーション」への方向性を探るための世界的な対話の機会を提供したのが世界文化フォーラムの意義であり、まさに世界の創造都市のリーダーとしてのバルセロナの真骨頂を示すイベントであった。




■文化的グローバリゼーション

 グローバリゼーション(Globalization)とは、地球規模で見られる複合的なプロセスである。分析的には、次の4つに分けて考えられる。①経済的グローバリゼーション、②政治的グローバリゼーション、③社会的グローバリゼーション、④文化的グローバリゼーション。これらのグローバリゼーションは、単に、現実を分類する概念だけではない。これらの間には、「ラグの法則」があるように思う。つまり、経済的グローバリゼションを先頭に、この順番で時間的なズレが生じているということである。しかしながら、これらの4つのグローバリゼーションの境界はあいまいになりつつある。
 話を文化的グローバリゼーション(Cultural Globalization)に絞ろう。文化的グローバリゼーションは、単に、マクルーハンがもともと想像したような、地球村(Global Village)にもとづく画一的な世界文化ではない。むしろ、理論的に整理してみると、次の4つのモデルが複合的に交じり合うように混合現象として理解するのがよいように思う(この整理については、アメリカの代表的な文化社会学者のD.クレーンの整理が役に立つようである)。彼女によれば、文化的グローバリゼーションとは、「様々なメディアや芸術(arts)が国境を越えて伝わっていく現象」を指す。ここでいう芸術は、西欧起源のファインアートだけを指すのではなく、国境を越えたマーケットをターゲットにしているものはすべてこの範疇に入る(例えば、日本の芸能等も念頭に入れられる。従来の解釈では、伝統あるいはネイティブな文化ということで、ファインアートと単に対立的に語られてきたが、国境を越える場合は、必ずしもその解釈は十分な解釈ではない)。問題は、この複合的現象をどの分析可能かということである。この点を彼女の解釈をふまえて、次のように4つの理論モデルとして整理してみよう。

①文化的帝国主義モデル(Cultural Imperialism Model)
 このモデルは、欧米諸国の過去の植民地主義のアナロジーであり、西欧化(ファインアート文化の侵略)とアメリカ化(アメリカ発のメディア文化の侵略)とからなる。ポイントは、これらの文化が、非欧米文化の画一化をもたらすという点と、それらの文化の支配的機能である。この分析に妥当性は見られるが、反例を多く挙げることができる。

②多文化主義モデル(Multiculturalism Model)
 このモデル(多元的文化的フロー・ネットワークともいう)は、焦点をエスニック文化、マイノリティ文化におく傾向が見られるが、一般的には、多元的な文化的フローとネットワークが確保され、一定の機能的効率性が確保できている状態を想定している。この理論モデルにも部分的妥当性があるが、実際には、社会的コストが相当にかかり、経済状態と相関していて、理想と現実との距離の大きいケースがしばしばである。

③能動的受け手モデル(Active-audience Model)
 文化的グローバリゼーションは、実際には、インターネットや携帯電話というコミュニケーション・ツールなしには成り立たないし、様々なメディア文化抜きには成り立たない。それらのメディア文化を支える人々が能動的受け手である。このモデルは、規範的側面・政策的側面が強く、実態と乖離している面が大きい(つまり、理想が実態に反映されすぎる傾向がある)。実態としては、流行や同調行動等がメディア利用行動に強く見られる点が見逃されがちである。

④国家・グローバル都市的文化戦略モデル(National, Global Cities, Cultural Strategy Model)
 最後に挙げられるのが、国家や都市(特にグローバル・シティ)による文化戦略モデルである。文化は、その国家や都市を支える経済的・文化的インフラストラクチャーになりつつある(つまり、経済構造の中に文化的要素が強く組み込まれるようになっていることを意味する)。それを推進するのは、民間のエージェントであるが、その度合いは社会によって異なる。最も大きいのはアメリカであるが、それ以外の地域では、国家やグローバル都市という政治的実態が大きく関わる(もちろん、その度合いは様々である)。国際的ツーリズムや伝統文化の活性化を含めて、国家と都市の文化政策が占める割合が増大してきたのである。しかし、その政策の実行主体と方法は、従来のような直接的な管理でない。つまり、新しい国家の役割、都市の役割が出現してきたのである。再びしかし、どの国家もどの都市も同じような結果になるわけでもない。説明できる範囲には部分的ではあるが、現在重要な理論モデルになりつつある。

確かに、文化的グローバリゼーションの進展は、以上のような複雑な現象をもたらしつつあるが、次項では、文化政策にさらに絞って分析してみたい。

■文化的グローバリゼーションと文化政策

 マクロな観点から、文化政策が1980~90年代に果たすようになった重要な社会的機能についてまとめると、以下の3点にまとめられる。第一に、文化そのものが経済や政治・社会に密接に関わるようになったことである。より正確に言うと、経済や政治に巻き込まれるようになったといえよう。第二に、西欧起源の文化政策と類似の政策が、広く非欧米諸国でも見られるようになってきたことである。その意味で、〈グローバル化する文化政策(Globalized Cultural Policies)〉というのが中心テーマになりつつあるといえよう。しかしながら、これらの動向は、単に均一的なグローバル文化が支配的になるということを意味していない。むしろ、極めて複雑で多元的な〈ハイブリッド文化〉があちこちで生まれつつあるということを意味する。それと同時に、ローカルな文化の維持や再組織化という傾向も見逃すことができない。最後の点は、国際文化交流とか国際的ツーリズムなどとも結び付いて発展しつつあるとすらいえる。これら3つの傾向は、おそらく日本社会における〈文化政策〉のイメージとは程遠い、ダイナミックでパワフルな存在である。要するに、一方における、普遍主義的・リベラルなグローバリズムと、もう一方における、ローカリズムと結び付いたグローバリズムとが、車の両輪のように機能しているのである。この両輪が、文化的グローバリゼーションを支えている。文化政策もこの文脈で検討される必要がある。

 さて、文化政策を語る上で、現在どういうことが要請されているのだろうか? 結論から言うと、次の2点を指摘することができるだろう。第一に、従来の欧米中心の研究に加えて、非欧米的視点を導入することの意義である。欧米から学ぶべき点がなくなったということを言いたいのではない。むしろ、彼らに学ぶべき点もまだまだたくさんあることを再確認できたというべきであろう。むしろ言いたいのは、悩みながら頑張っている、アジア諸国を研究することにより、日本社会の位置付けが相対化され、何を学ぶべきかについて新たな観点を導き出せること。また、逆に、日本の芸術文化政策の中にも、他の社会で参考になるような要素があり、例えば、伝統を抱えるアジア・アフリカ社会に対して、何らかの示唆を与えられることである。第ニに、様々な違いや芸術文化政策の発達の違いが存在するにも関わらず、似たような芸術文化政策が、同時進行的にどの社会でも見られるようになったという点とその社会学的含意である。要するに、先に述べたような〈グローバル化する芸術文化政策〉の持つ意味が大きくなってきたことである。ただし、ここでは、2つの留意点を加えたい。1つは、共通点である。芸術文化の多くは、伝統文化と西欧起源のファインアートが中心である。しかも、これらは中産階級以上の文化階層によって維持されてきて、ある種の文化的階級対立が見られたということ。それから、その対立関係が大きく変化しつつある。しかし、この傾向が、どの社会でも似たような現象として見られるようになった点は一考に値する。もう1つは、逆に、何がそれぞれの社会が持つ特殊性かという点である。特に、どういう伝統文化を持っていたのかという点と、西欧起源のファインアートの取り入れ方、の2点を考察することが重要な結果を導く
 現在の研究課題の中心の1つが、そういう多元的分析にあるという点を理解していただきたい。しかし、多元的な比較は実際にどの程度可能なのだろうか? つまり、その必要性を指摘することは簡単でも、実際に意味のある分析をすることはそれほど容易ではない。例えば、我々の研究(アメリカ、イギリス、シンガポール、日本の4カ国比較)では、共通の分析フレームを作成することは困難であったが、以下の4つの点で共通性を見つけ出すことができた。

①芸術文化の経済的機能
 芸術文化が、単に、中・上流階層の趣味の領域にとどまっているのではなく、都市の経済活動に大きく貢献しているという事実である。特に、ニューヨークやロンドンでは、その点がはっきりしている。東京では、体系的な調査はされていないが、佐々木などの研究によれば、その可能性が大きい。シンガポールは、文化の経済的機能に気付き、それを政策に巧みに取り入れてきた。~~