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メセナ法によるブラジルの多文化奨励
〜民間の積極的参加によって多文化を保護しようとするブラジルの文化政策〜

メセナ法を中心とした近年のブラジルの文化政策

序章

 ブラジルのような国で、文化を仕事にするというのはかなりの挑戦である。ある面では、国民とその芸術の多様性と創造性に特徴づけられるように、芸術文化資産の豊かな国であるが、別の面では、根深い社会の不平等を抱えている。後者は、文化財へのアクセスが必ずしもオープンかつ民主的でないことの、原因となっている。全ての文化活動は、この不平等を意識して規律づけられなければならず、文化活動を、成熟した市民社会を形成するために貢献するようなものに変えなければならない、ということはあたり前のことである。そして、文化の普及が、段々と、メセナ法を通じて可視化されてきていることは、言及する価値がある。
──ヒカルド・ヒベルボイン(Ricardo Ribenboim)

 ヒカルド・ヒベルボインは、彫刻家で、イタウ・クルトゥラル(Itau Cultural)の元代表である。イタウ・クルトゥラルは、イタウ銀行(※2008年にイタウ銀行とウニバンコ銀行が合併したために、イタウ・ウニバンコ・ホールディング)が設立した文化機関で、本論が議論の対象としているブラジルの連邦メセナ法を通じた支援によって、最も多くの文化プロジェクトへを行ってきた団体である。●年に設立し、これまで●年間で(2010年11月現在)、●金額の支援を受け、●個もの文化プロジェクトを行ってきた。
 本論で議論したいのは、近年のブラジルにおいて、イタウ・クルトゥラルの活動にも顕著なように、連邦メセナ法の仕組みによって、数多くの文化プロジェクトがブラジルで行われてきている現状と、連邦メセナ法の仕組みである。特に、連邦メセナ法が、文化芸術団体と、民間企業と、政府を中心とした行政機関の三者それぞれが主体的に行動することができる仕組みを持っていることに注目する。また、連邦メセナ法が成立した背景として、ブラジルの文化政策の歴史も取り上げる。
 本論の議論において、便宜的に連邦メセナ法と呼んでいる法律は、ブラジルの法律第8.313号(ブラジルでは通称ルアネー法(Lei Rouant)と呼ばれている)のことである。

●メセナ法
 ブラジル連邦共和国の構成単位は、連邦、州、連邦区、市(ムニシピオ)であり、各構成単位は、連邦憲法が他の構成単位に帰属させていないすべての権限を有する原則があり、その限りにおいて各構成単位は独自に立法することができる。
しかしながら、憲法がかなり広範な権限を連邦に留保しており、民法・商法・刑法・訴訟法・選挙法・農業法・海法・航空法・宇宙法・労働法は、連邦の立法事項だ。
 本論文が主に取り上げる上記の連邦メセナ法は、連邦レベルの法律であり、国全体に適用される。連邦レベルでの文化支援奨励法である。連邦レベルのメセナ法は、ルアネー法以外にも、視聴覚作品法(法律第8.685号:通称Lei do Audiovisual)がある。こちらは、長編映画への支援を奨励する法律であり、本論では、視聴覚作品法に先行し、かつ適用分野の広い連邦メセナ法であるルアネー法を議論の中心とするが、視聴覚作品法についてもブラジルの文化政策の歴史を取り上げる中で、補足する。
 州レベルのものでは、サンパウロ州のPACやバイーア州のFAZCULTURAが有名で、市レベルのものでは、サンパウロ市のメンドンサ法(Lei Mendonça)が有名だが、メンドンサ法は、現行の文化支援奨励法の中で一番早い1990年12月に成立した。
州レベルでは、他にアクレ州、セアラー州、マトグロッソドスル州、ミナスジェライス州、パライーバ州、リオデジャネイロ州、リオグランデドノルテ州、リオグランデドスル州、サンタカタリーナ州にある。
 市レベルのものは他に、サン・ジョゼ・ド・カンポス市(サンパウロ州)、アメリカーナ市(サンパウロ州)、ベレン市(パラ州)、ベロオリゾンチ市(ミナスジェライス州)、コンタージェン市(ミナスジェライス州)、カベデロ市(パライバ州)、クリチバ市(パラナ州)、ゴイアニア市(ゴイアス州)、ロンドリーナ市(パラナ州)、マセイオ市(アラゴアス州)、リオデジャネイロ市(リオデジャネイロ州)、サンタ・マリア市(リオグランデドスル州)、ヴィトリア市(エスピリトサント州)などにある。
 これらのメセナ法に共通するのは、各法が定めた制度に基づいて承認された文化プロジェクトのために支援した金額を申告すれば、全額ではないが、支払うべき税金が控除される。控除される税金の種類や、支援額に対する控除額のパーセンテージも法によって異なる。パーセンテージが幾段階かに分かれており、文化プロジェクトの承認時にパーセンテージが決まる場合も多い。
 本論でメセナ法と呼ぶルアネー法は、文化プロジェクトへの支援によって、所得税が控除される法であるが、支援額に対する控除額のパーセンテージは改正によって変わってきた。詳しくは第1章以降で取り上げる。




p10
ブラジルにおいて、文化政策という学問分野の歴史は非常に浅く、しかも、コミュニケーション学、社会学、法学、政策学、歴史学などといった多様な研究方法によるばらばらな方法でなされてきた。
しかも、研究の量もとても少ない。



──※法令全文は、"Guia do Incentivo a Cultura"のp257〜p290にある、できれば全文訳したいよね

文化とは何かの議論。

支援と寄付の使い分け。

ブラジルの近年約30年間の文化政策の特徴は、
文化の重要性を尊重しながらも、
国家が手厚く保護するわけではなく、
市場任せにしていたわけでもないところにある。

現代における文化政策は、経済政策や公共政策など、多様な政策に関する教育や研究が進む中で、その戦略的重要性が、とくに注目を集めている。
元来、文化政策は、芸術支援から出発し、次第に都市発展や産業など、より広い領域を包含するようになってきたとはいえ、行政における財政上の優先順位は低く、ややもすれば、財政赤字とともに、真っ先に削減されるのが日本社会の常識であった。しかしながら、近年、芸術や文化は、それだけで閉じた影響の小さな問題ではなく、社会の創造性や持続可能性にとって最も重要な要素であると、位置づけられるようになってきたのである。

1991年に発足した〈文化と発展〉委員会は、95年に『我々の創造的多様性』というレポートの前文で、「発展とは、財やサービスへのアクセスだけではなく、十分で満足な価値ある生き方を選択できることである」と述べている。

このような最新の国際的動向を考慮すれば、文化政策とは、芸術・文化を振興するための文化財保護や実演芸術への公的支援政策であるだけでなく、一方で、個々の人の生き方、
つまり、個人の生活の質やそれらを獲得するための潜在的能力や自由に関わるものである。


D・グロスビーは、文化資本の概念を提起し、持続可能な発展にとって、自然資本の概念が重要であることを指摘している。


現代における文化政策は、経済政策や