入試時の研究計画書


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研究テーマ:ブラジルにおける行政の文化政策と
企業の文化支援~Lei Rouanetの改正を中心に~

 ブラジルにおける、行政の文化政策、行政や企業の
文化支援を研究することを通して、ブラジルが自国の
文化の役割をどのように位置づけ、これからどのよう
に導こうとしているのかを研究したい。文化政策、文
化支援は、行政と経済と文化が交差する地点でもあ
り、新興国として、政治的、経済的にますます世界
的に大きな影響力をもちはじめた同国の文化政策、文
化支援を研究することは意義のあることだと考える。

1.文化奨励法(Lei Rouanet)
 文化奨励法(Lei Rouanet:Lei n8.313/91)は、
1991年に制定されたメセナ活動を促進するための法令で
ある。同法令により、企業や個人は、国家文化奨励委員
会に承認された文化プロジェクトに対する贈与又は後援
の金額の一部を、所得税から控除することができる。ま
た贈与額と後援額の合計金額を、営業費に含めることが
でき、実質利益が減少することで、納付すべき税金の額
が減少する(金額の上限あり)。多くの国では、企業や
個人の文化支援は慈善事業や広報活動であるが、ブラジ
ルではこの法令によって、企業や個人は、ある限度額ま
では文化支援に資金を投入しても、税制面の優遇措置を
受けることができる。
 Lei Rouanetは文化支援を活性化させてきた。メセ
ナ活動に対する税制面での優遇がない日本に暮らすも
のとしては、このような法律があること自体が、国家
として非常に強く文化活動をバックアップしている
姿勢に映るが、17年の運用期間を経て、現行法の運
用によって生じている問題点も明らかになってきた。

2.文化奨励法の現状と問題点 
 2003年のルーラ政権の発足以来、ブラジル文化省
は、Lei Rouanetを改善することを目的に、世論との
対話の議論を続けてきた。文化省主催の「Dialogos
Culurais」は主要都市で行われ、文化大臣のジュカ・フ
ェレイラ自身が近年6年の文化省の収支報告をしなが
ら、現行のLei Rouanetの運用がもたらしている文化奨
励のアンバランスを示し、文化財政をより透明化し、
支援をより活発にするための方法を提案している。
 現行法の運用によって生じている問題点とは、具体的
に下記のようなものだ。
  • 3%の提案者がおよそ50%の予算を獲得していること
  • 具体的な効果があったり、マーケティングのし
っかりしたプロジェクトばかり優先していること
  • 支援が持続性へ重点をおかず、文化をアクセスフルな
ものにしていないこと
  • 要請された金額の50%以下しか認められていないこ
と、など
 文化省は、より活発な文化奨励活動を引き出すため
に、Lei Rouanetの改正案を、2009年中に国会に提出し
たい意向で、文化人によって構成された委員会や、文化
省のHP内に設置されたブログ内で、積極的に幅広い意
見を聞きながら改正案を立案している。現在、改正案は
以下の3点を柱としている。
  • 資金の増加と財源へのアクセス改善
  • 評価基準と受付プロセスの改善
  • (財源を管理している)ブラジル文化基金への部門の
導入

 これらの柱の下、企業がより積極的な文化支
援を行うのを推進する改正案が期待されている。

3.今後の研究内容 
 改正案を議論する中で浮き彫りになった問題点は、今
後の議論の中でどのように解決していくのか。博士研究
では、文化奨励法Lei Rouanetのこれまでの運営、改正
案を議論する過程、改正後の運営状況を中心に追いなが
ら、同国の文化政策、文化支援を研究したい。その際、
文化奨励法の制定以前も含め、ブラジルが歴史的に文
化をどのように位置づけてきたかついても着目したい。
 研究のベースとなる私のこれまでの研究だが、卒業論
文では、ブラジルのリオデジャネイロへ一年間インタ
ーン留学した経験と文献調査をベースに、ブラジル音
楽の歴史を研究した。研究室は、アートマネージメン
トを専門にする研究室に所属していた。卒業後は、音楽
を中心にラテンアメリカの文化を日本に紹介する会社に
勤務し、出版/興行/輸入業務などを通じて、日本に
ラテンアメリカの文化を紹介する仕事をしてきている。
 文化奨励に関しての先行文献については、国内で出
版されているメセナ活動関連の文献は、多くが国内で
のメセナ活動の報告書であるのが現状だ。日本におけ
るメセナ研究は、社団法人企業メセナ協議会が中心な
って行っているが、研究対象はアメリカやヨーロッパ、
アジアの一部が中心であり、ラテンアメリカやセントロ
アメリカの文化支援について、日本ではあまり注目され
ていない。ヨーロッパのメセナ活動に着目した文献とし
ては、『文化とメセナ—ヨーロッパ/日本』(根本長兵
衛著・人文書院)があるが欧米以外のことは触れられて
いない。国内の文献としては、現代ブラジルの文化を
扱った『熱帯の多人種主義社会』(岸和田仁著・つげ
書房親社)、現代ブラジルの政治・経済を扱った『ブ
ラジル 巨大経済の真実』(鈴木孝憲著・日本経済新聞
出版社)『ブラジル新時代』(堀坂浩太郎編著・勁草
書房)といった文献を参考にしたい。こういった状況
で、日本にいてブラジルの文化奨励法を研究するにあた
り、研究展開の見通しとしては、ブラジル文化省が文化
奨励法の改正について、市民を交え積極的に議論する
ために設置しているサイト(http://blogs.cultura.gov.br/
reformadaleirouanet/)を研究の基本ソースとし、そこ
から研究対象を拡げていきたい。ブラジルで出版されて
いる適当な文献が見つかり次第、文献調査も平行し、同
国へ赴いて調査が可能であれば、文化行政、文化支援に
関係している人へのインタビューなどを通じた調査を行
いたい。
  本研究計画書の文化奨励法の現状についてのデータ
は、文化省主催の「Dialogos Culurais」の発表を参照し
ている。