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 「ORCA旅団」という、ある種の反企業・反クレイドル組織に招かれた私は、ネクストで戦わされるのかとも思ったが、違っていた。

 初めに、≪メルツェル≫という男の元に通され、そこで頼まれたのだ。

「レイル・ナルドだったか? すまないが、ここにはこれ以上ネクストを置けなくてな……できれば、解体して置いておきたいのだが」

「ああ、私は別に、それでもかまわないが」

 当時AMS適正に悩まされていた私は、ネクストへの執着心は無かった。あるのはベルリオーズを越えたい、という、叶うはずもない夢だけだ。

「そこでだな……。シミュレータを使って、≪兵たち≫の相手をしてやって欲しい。彼らは、対ネクスト戦の経験も、対策も無いからな。シミュレーションだ。好きなだけ暴れてほしい」

「それが、私の仕事か?」

「…あぁ、そうなるな。すまない」

「いや、いい。私にも出来そうな事だ」

「今から構わないか?丁度、教官の訓練が終わるころだろう」

「了解した」

 私はすぐに訓練所に入り、教官に事情を話して、およそ20人のノーマル兵とVRシミュレーションで戦闘を行った。





『QB後をよく狙うんだ!』

『りょ、了解!』

 アリシア──私の≪ヘクセン・ナハト≫が、空を駆ける。

 右手のマーヴが、風を裂き、その銃口を一機のノーマルへ向ける。

 一射。

 僅か一射で、右腕部の関節を打ち抜いた。

 アサルトライフルの使用法として間違っているが、オーメルで溜まった鬱憤を、存分にはらしたい気分だった。

 降下。マーヴのブレードを利用して、先刻のノーマルの左腕の武器を叩き落とす。そのまま左足を引き、ドリフト・ターンを用いて、上乗せた旋回角度からクイック・ブーストのコンボで、ノーマルの背後に回り込んだ。武器を失ったノーマルの前面装甲に、無数の鋼鉄の雨が降り注ぐ。

『うわぁっ!』

「良く見ろ」

『くそっ、7番機!』

 憤怒した一機が迫る。ヒットマンを起動し、トリガーを引く。連続発射された弾はノーマルの脚部に突き刺さり、右足関節が爆発を起こした。

『くそっ、くそっ!』

『落ちつけ!敵はたった一機だ!』

 こけそうになったノーマルに、グレネードキャノン───≪彼≫の愛用していた、OGOTOを発射する。炸裂した榴弾は、その後ろにいたノーマルをも巻き込んで撃破した。

「中々の威力だ」

 ネクストの大火力に、攻め損じた近くのノーマルに、両手の銃を叩きこむ。

『う、うわっ!』

「余所見をするな。死ぬぞ」

 クイック・ブースト。マーヴのトリガーは押しっぱなし。片っぱしからロックしたノーマルに撃ち続ける。

 残りノーマルは12となった。一機が突っ込んでくる。同時にマーヴが弾切れを起こし、自動パージされた。

 ノーマルのレーザー・ブレードが振り上げられる前に、完璧なタイミングで装着されたドラゴンスレイヤーの紅い刃が、流れるような動作でコアのみを貫く。レーザーを展開したそのままノーマルを切り捨て、逆関節の長所であるジャンプで、あらゆる包囲からの一斉攻撃を回避。反対側の、フレンドリー・ファイヤを受けたノーマルのバランスが崩れる。回避不可能なタイミング。OGOTOを撃ち込んだ。

「ぐッ」

 想像以上の反動だった。逆関節型の脚部はその性質上安定性能が低い。ロックが外れない程度に強化を施してあったが、空中での使用は厳しいようだ。

 たまらずブレードに切り替え。ヒットマンで牽制しつつ、狼狽えているノーマルを斬り裂いた。

『近接戦闘だ、全員でかかれ!』

 マシンガン装備の3機が突撃して来た。中央と左の機体にヒットマンをばら撒いて足止めし、周りからの攻撃はプライマル・アーマー頼みの防御で、ショート・レンジに入った一機はレーザーブレードで防御した。

『喰らえッ』

 もう片方に装備していたショートバレルのマシンガンを用いて攻撃してきた。既にプレイマル・アーマーの展開範囲内で、乱れた環流の中での攻撃だったため、正面装甲に直撃を喰らった。

「ッッ……」

 胸部への痛み。レーザー・ブレードを斬り払い、右足でノーマルを蹴った。発振器が焼けそうで、冷却が必要だった。ヒットマンの弾の限界も近い。PAが遂に消失した。

「何を焦っている…ッ」

 脳へ響くアラート。たまらずクイック・ブーストを吹かして、ドラゴンスレイヤーの刃を一瞬だけ起動しつつ、蹴り飛ばしたノーマルの腰関節を裂いた。熱量が最大に至らなかったため、完全に切断できなかったが、即座にマシンガンを5発だけ撃ち込み、完全に無力化した。

 接近してきた残り2機。グレネードを撃ち込んで同時に撃破した。

「残り6機か…」

『くそっ、化け物め!』

「仮にもカラードランク8、その程度の戦力では相手にならんよ!」

 クイック・ブースト連射。3機が固まっていた地点に突っ込み、アサルト・アーマーを発動した。

 ボォォォォッ、と緑が閃光し、周りのノーマルが一瞬で吹き飛んだ。

 クイック・ターン。背後から接近していた機に、残りのヒットマンのマガジン全てを叩きこんだ。

『負けるわけには…っ』

 残り2。

 プライマルアーマーの復帰を待っている暇は無い。クイックブーストを連射し、即効で一機を落とす。

 瞬間速度800km/hに達したヘクセン・ナハトが、脚部の先鋭的な爪先で砂を裂きながら、右腕のブレードを突き刺した。

『ごッ』

 速度も相まって、発振器と拳ごとコアにめり込んだ。一瞬で鉄屑となったノーマルを一瞥し、“最後の一機”に目を向ける。

『うっ……』

 狼狽していた。無理もない。「ノーマル一機でネクストを倒してこい」と、対ネクスト戦を経験したことも無い奴に言っても、それは不可能だ。原理的にと言ってもいい。まず、兵器として違いすぎた。

 一切の容赦は無い。回復したKPを背部に溜め、放射する。オーバード・ブースタだ。武器はドラゴンスレイヤーのみ。十分だ。

『くそぉっ!』

 自棄になって、両手のマシンガンとライフルを連射する敵機。相対速度によって恐るべき弾速となって迫る鋼鉄を、QBで避ける。オーバード・ブースト停止。クイック・ブーストで接近。距離は既に100を切っていた。

 レーザー・ブレードによる攻撃。振り下ろす刹那、ノーマルは鋭く反応した。

『喰らえェッ!』

 肩部に装備していた、旧来の「エクステンション」と呼ばれる肩部兵装。後方へブーストするそれが噴射され、レーザーブレードは交わされた。同時にノーマルの肩部が展開し、内部から無数のミサイルが飛んできた。

 しまった。PAは無い。いくらネクストと言えども、多量のミサイルを受ければ、この装甲の薄いアリシア・フレームは撃墜されてしまう。

「…チィッ」

 右側を盾に。後へブースト。ミサイルが爆発し、上半身右側が死んだ。地面に転がっていたマーヴを左手で拾い上げ、追ってくる第二派のミサイルを引きつけ、少ないKPでオーバード・ブーストで接近する。

「──貫くぞ、そのノーマル」

 風を裂き、砂煙を裂く。既に音速に達していたヘクセン・ナハトの刃が、ノーマルのコアをオーバード・ブースタまで貫いた。

「……ありがとう、ベルリオーズ」

 私は、身震いした。