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 オーメルの思惑通り“失敗”した私には、何のお咎めもなかった。リンクス戦争後の軍備増強を図っていた中で、使える人材だとでも思われたのか。

 オーメルグループは、(まだ完全な提携関係ではないにしろ)ローゼンタールの騎士、ノブリス・オブリージュや、オーメル・サイエンスの天才、セロをリンクス戦争にて失っている。その原因は、レイレナードの我が師、ベルリオーズによるものだったのだが、それを知ったのは、ついさっき、過去の資料を見ていた時だ。

 弾数の少ないMARVEのお供に、私はレイレナードのマシンガン、01-HITMANを購入した。メカニックマン時代の貯金はたんまりとあった。
 02-DRAGONDRASLAYERはマーヴの弾切れを考慮して右のハンガーに格納。レイレナードの製品のライセンスはオーメルが持っており、リンクス戦争後暫くの間、オーメルによって生産がされていたのだ。

 二度目の戦闘は、またもや追撃作戦だった。南米のコロニー・ラズグールから10km程離れた、名も無い戦場。複数のノーマルACを連れて、これまた、レイレナード残党と思われるネクストの追撃である。

 リンクス、オービエの駆るネクスト、≪メメント・モリ≫。ラテン語では自分もいつかは死ぬということを自覚すべしという意味の警句であるらしい。

 フレームはアリーヤだった。両手にレイレナード製のマシンガン──よく覚えていないが、私の使っていたHITMANとは異なった上に、装弾数は多かった気がするので、恐らく03-MOTORCOBRA──を備え、右背部兵装には同じくレイレナード製のプラズマキャノン(こちらも、どの型だったかは全く覚えていない。何しろ、二、三度しか使ってこなかった)を装備していた。

 会敵と同時に、鋼鉄の雨が前方から降り注いだ。狙いは私のアリシア──私はその機体に、“ヘクセン・ナハト”と名付けた──だ。一瞬でプライマルアーマーが削がれ、次の瞬間にはプラズマが迫っていた。咄嗟に右にクイックブーストを吹かし回避、だが、後のノーマルが直撃し、爆散していた。

「私が先行する、包囲しつつ援護しろ!」

 確か、そんな事を言った。右手のマーヴと左手のヒットマンを起動し、タイプ・アリーヤのコアめがけて撃ち込む。敵の弾幕をひたすらにクイックブーストで避け、ノーマルによる援護で回避ポイントをなくして行った。

 メメント・モリのプライマルアーマー前方が、再び光った。プラズマキャノンである。私は逆関節型の利点を生かし、大きくジャンプした。トップ・アタック。上方からの、マシンガンとアサルトライフルの攻撃。ノーマルACの援護も相まって、プライマルアーマーも剥がれ、着々と装甲を抉っていた。

『強ぇじゃねェか、あんた』

 突然、オービエと思われる男の声が流れた。

 終始、私は無言を貫こうとしたが、質問されてしまった。

『あんた、名前は』

「……」

 互に一歩も引かずの撃ち合い。そんな中で、まるでお茶会で、初対面の時に、握手しながら尋ねるかのごとく、声を出してきた。

『減るもんじゃねぇだろ≪裏切り者≫』

 このアリシアを見て、のことだろう。私はその言葉に、頭が沸騰した。

「私はッ! ……私は、レイル・ナルドだ」

 激昂したように反応した。それを面白そうに笑いながら、オービエは言葉を返してきた。

『ハハッ、反応が早ェな。しっかし…Raileonard……心だけは、ってか?』

「貴様!」

 弾切れになったマーヴを投げ捨て、格納していたドラゴンスライヤーを展開し、バックブーストを吹かして上空から斬りかかった。

『おっと、速ぇな』

「私は、ベルリオーズの……」

『あんた、ベルリオーズの知り合いなのかい? …奇妙だったな、あの男は』

「くッ」

『あんなくたばり方をして』

「貴様ァァ!」

 私は既に、我を失っていた。最大展開したドラゴンスレイヤーの刃を、発信器の負担も気に掛けずに突き出し、ひたすら前へクイックブーストを連射した。2度噴射したところで、紅い刃が、アリーヤに突き刺さる。

『Mement Mori』

「…なに?」

『”Memento mori(メメント・モリ)”死を想え。死を忘れるな。死を記憶せよ。』

「……」

『俺の負けだ、オーメルのレイレナードさんよ』

「……」

『覚えておけ、Mement Moriを。死は───いつでもお前の、すぐ傍に居るぞ』


 気が付けば焼き切れた発信器からレーザーが消え、大穴の空いたアリーヤが横たわり、ノーマルは既に撤退していた。



「ベルリオーズ、私は……」

 ────私はオーメルに居て良いのか。

 当時、27歳。まだまだ幼い心の中の、葛藤があった。..