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ベルリオーズ、という男がいた。

 私の、師であり、目標であり、憧れの存在だった。

 私は、彼の専属メカニックマン・チーフと言う、当時若干23歳としては、あり得ないような立場に居た。そして当然収入も、同年代の平均を大幅に上回るような額だった。

 それは、彼──ベルリオーズ──が、26人のリンクスの頂点、No.1だったということが、大きな理由だろう。

 如何にして私と彼が出会ったかは、覚えていない。気付けば私は彼の弟子であり、流れるように新興企業レイレナードへと就職した。

 彼は、私も設計に関わった──厳密には、入社直後、当時まだ珍しかった僅かなAMS適正値より、強引にテストパイロットとして搭乗させられた──03-AALIYAH、固有名≪シュープリス≫を駆るリンクスで、非常に腕の立つ男だった。

 そんな彼の人生は、突然終わることとなる。

 ≪リンクス戦争≫。戦争後期、後に我がレイレナードを崩壊させた伝説的な傭兵と交戦し、戦死したという。

 彼──と、レイレナード社──を失った、当時25,6歳の私は非常に情緒不安定な状態だった。未来への不安、件の傭兵──リンクス間では、≪アナトリアの傭兵≫と呼ばれていた≫──への恐怖、そして自分の事であるかのような、途方もない喪失感。


 どうしてか、私は真っ先に、オーメルへと逃げていた。秘密裏に持ち出した、非武装の04-ALICIAを連れて。

 そして私は、オーメルのリンクスとして登用されることとなる。まさに奇跡だった。しかし当時私の頭には、ベルリオーズ以外の事は無かった。

 私はオーメルで初めて、「レイル・ナルド(Raileonard)」と名乗った。同じ部に、レイレナード出身の者も大勢いた筈だが、誰一人として気付く者はいなかった。特殊な発音だったからか、或いは、あの≪エグザウィル≫での惨劇を、思い出したくなかったからか。

 私の初陣は、グリーンランド、レイレナード残党基地から撤退を続ける小隊の追撃だった。敵は、≪マクシミリアン≫という男の駆るネクスト、≪アリシア≫(私の機体とフレームこそ同じだったが、武装は見たこともないものだった)、そして、≪真改≫の駆るネクスト、アリーヤタイプの≪スプリットムーン≫、そしてノーマルが数機と、複数の装甲車だった。

 オーメルの思惑が簡単に解った。レイレナードを捨て、オーメルへの忠誠心を確かめること。そして…。

 そんな私に課せられた兵装は、携行弾数100数発しかない04-MARVE突撃型ライフルと、格闘用レーザーブレード、02-DRAGONSLAYERだった。オーメルは端から、私たちに勝利など求めていない。私たちは、捨て駒だったのだ。

 “私たち”と言うからには、そう、僚機がいた。私とは違うネクストで、名前は覚えていないが、確かに強い男だった。

 私はノーマルACでの戦闘経験が豊富だったことも幸いして、スプリットムーンと互角以上に戦っていた。スプリットムーンは、マシンガンに紫色のレーザを放つブレードを装備していた。

 しかし、そんな攻勢も束の間。

 MARVEの弾丸が、底をついた。

 しかし、スプリットムーン、並びにマクシミリアンのアリシアは撤退して行った。不幸中の幸いと言うべきか。事実上のミッション失敗である。

 気が付けば、僚機はやられていた。恐らくマクシミリアンにやられたのであろう。残ったノーマルが、私のネクストに襲いかかる。

 接近への、ある種の強迫観念に駆られながらも、私は必死に後背部のクイック・ブーストを噴射していた。プライマル・アーマーにモノを言わせて、敵ノーマルの銃弾を防御する。が、高まった相対速度の中で迫るマシンガンは、どんどん機体の装甲に穴を開けて行った。

 ショート・レンジ。行ける!

 私は歓喜した。しかし、それよりも速く、敵ノーマルが、左腕のブレード・ユニットが蒼色の粒子を放出し、レーザーを展開して、それを振り上げていたのだ。

 あろうことか、私は右手を突き出していた。奇跡的にそれは敵ノーマルの左腕部接続部を抉り、エネルギー供給を失い、殆ど熱量を失った蒼い粒子が機体の胸部に照らされる。必死にドラゴンスレイヤーの刃を展開し、コアに突き刺していた。

 MARVEの、空気を切り裂く対空ブレードを利用した刺突。私は、すぐそばにベルリオーズを感じた。