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ss2-03 神域──アイシス──

蒼色の眼光が、閃光となって奔る。

一瞬でむき出しの入り口外まで駆け抜けた漆黒の夜鴉──アイシスは、右手の巨大な二刃の剣を振り抜き、下っ端として連れて来ていたゴライアスを数名両断する。

「チッ、ティーガ!」

アビアティック──厳密にはヴァンガードが叫ぶ。同時にティーガが両手のシングルガンを構え、ゴライアスと様々な方向からの一斉射撃を放つ。

散らばった弾丸を避け、叫んだデルファイターへ近づく夜鴉。

「チッ」

背中の部隊旗を目眩ましに投げつけ、右に大きく飛び跳ねる。着地予測時点にミサイルを放ち、レーザーで追撃。

「……無傷か」

入口付近で構えていたティーガが言葉を零す。

「遅いな」

機械音を垂れ流しながら、ミサイルとレーザーを凌いだ夜鴉が砂漠の地面に着地した。

静かに、ティーガがヴァンガードの方へ近づく。

ゴライアスの数は既に半数以下の7体。そのうち3体がティーガに合わせて動く。

「今の戦力じゃ、こんな奴に勝てねえぞ」

「チッ…。あの野郎も逃げやがったか…… ッ!」

振り下ろされた光の剣を左に転がって避け、重い六連ミサイルを投げ捨てる。

懐からツインブレードを取り出し、ワインレッドの刃を展開した。

ティーガとヴァンガードで挟み撃ちに相対している状況だが、下手に攻撃すれば反対側に当たってしまう。

作戦を考えていたころ、頭上から轟音が鳴り響いた。

「ッ!」

夜鴉の肩が炎を噴く。砂漠の砂を荒削りしながら、慣性で旋回し、相手の姿を確認する。

「ヴァンガード様!」

「お前…何でここに!」

動いた夜鴉への牽制としてレーザーを照射する。砂を蒸発させながら、焦げ跡を残して1本の線を作り上げた。

「私が抑えます、離脱してください!」

「チ…クッ」

ヴァンガードの方へ襲ってきた夜鴉を、アルテミスがビームブレードで抑えて蹴り飛ばす。

「邪魔をするな…ッ!」

機械音を淡々と吐き、背部のブースタを最大利用して一気にアルテミスに襲いかかる。

巨大な刃が振り下ろされると同時に、アルテミスがその場で一回転し、その神々しい翼で弾いた。

「そんなもの…!」

ズバッ、と光が光で相殺され、更に輝かしい光と閃光が広がる。

一瞬の間に右腕のビームブレードを突きだす。だが、それよりも早くナイトレーヴェンはサテライト移動で回避をすませており、右足でアルテミスを吹き飛ばした。

「ッッ…!」

(速、い…!?)

「ティーガ!」

ゲートを配置したヴァンガードが叫ぶ。

「わぁってる!」

対してティーガも叫び、両手の銃で夜鴉を牽制し続ける。

「アルテミス、戻るぞ!」

「了解、しました…!」

正方形の蒼白い光が砂漠に広がり、3人が順に移動する。

「……」

夜鴉は滞空したまま、残ったゴライアスを“処理”する。

そして、基地であった部分を眺めた。

拠点という名目の施設は廃工場と化しており、無数の弾痕と焦げ痕を残し、壁にも大小含めた様々な大きさの穴が転々と出来ている状態だった。

「終わったか」

不意に、背後から声が聞こえた。

静かにそのラインアイを向けると、デルゴンが一人。足元には手下であったデルビンや天使軍たちの残骸が散らばっており、平気に踏みつけている状態だ。

「あれで良かったのか」

機械音で棒読みされた文章を聞き取り、デルゴンは目を閉じながら、天使軍の前での弱弱しさを感じさせない、力のこもった声を出した。

「俺も悪党だがよ、精鋭とかいう名目でちいせぇ癖に幅利かせてる野郎どもが気に食わねえんだ。奴らは俺が叩き潰してやらねえとな」

「……」

「調整役の奴も殺られちまったし、お前は暫く俺直々の傘下だ。いいな」

「了解した、マスター」

「此処もダメになった。残りの部隊を回収して、未開拓地にでも踏み入るとしよう」





代わって、惑星シャーオックドルグ基地。

「相変わらず無茶なことをしやがる」

「…すみません」

通路を歩きながら、ヴァンガードは文句を言い続ける。

「うるせえなあ。そんなにコレが大事かよ」

右側を歩くティーガが、左手で小指を立て、挑発するように言う。

それを見たアルテミスがハッとし俯く。見なくても解る行動を考えないように、ヴァンガードはティーガの手を握力で掴みこんだ。

「っ、ってぇ!」

振りほどき、右手にシングルガンを握ろうとした時。

ヴァンガードの端末が、音を立てた。

「あん?」

懐から取り出した端末の通信回線をオンにする。

『よォ、宜しくやってるか。ヴァンガード』

渋く、何処かかすれた声が聞こえる。

「……お前か。何の用だ」

『何の用だ、はねえだろうが、なあ? …とりあえず、頼まれたブツはてめぇの倉庫にぶち込んでおいた』

「…ああ。それについてだがな」

『あ?まだあるってか?』

「ああ…。ちょっと待ってくれ」

通信を一旦止め、傍らで待っている二人に声をかける。

「先に戻ってくれ。会議には間に合う」

「はいよ」

「了解しました」

『で、なんだ』

足音が無くなったのを合図に、相手が声をかけてくる。

「例の装置は、どこまで出来てる」

『70%ってとこか。残りのパーツが集まらないったらねェ。一日中情報の風呂に浸かってるてめえにゃ解んねえだろうがな』

「最近運動を始めてな」

『ハッ。そいつも転覆の一環か?』

「…貴様」

『ヒヒッ、拾われるこたぁねえから安心しろ』

「フン…。デゴの基地へ向かえ。残骸はいくらでも使っていいとのことだ」

通信を切り、早足に通路を歩く。

「──狂ってやがる」



ドルグ基地・会議室。

第一陣の布石として、ティーガ、ヴァンガードが天使軍部隊を撃破し、第二会議が執り行われていた。

「それで、デルゴンがヴァンガードの夜鴉を独自運用していたと?」

資料を見ながら、ダイムラーが問いかける。

「調べてみたら、どっかからハッキングがあった。あれのロックをはずせるんだ。相当な実力者が離反してやがる」

対して、腕を組み、苛立ちを少し出しながら、ヴァンガードが答えた。

「ドルグの前線部隊であるゴライアス隊の出動もあったようだが?」

「それについては、オレが一部連れ出した。残念ながら“奴”に全部潰されたがな」

ゴライアスの件についてティーガが報告をする。厳密には半分ほど置き去りにしてしまったのだが、恐らく破壊されているんだろう。

「なるほどな。……第一陣としての作戦は概ね成功、リーダー格のデルゴンが怪しいが、直に第二陣を立てるとしよう……ローランド」

「はい」

ローランドと呼ばれたデルファイターが立ちあがり、モニタを起動して幾つかの情報を開示する。

「現在天使軍が転覆している地点が惑星ポイーン、対して離反した悪魔軍の集結場所は、惑星プーシャとなっています」

「プーシャ?」

モニタに写された惑星。画面ではUNKNOWNとなっており、どんな場所なのかも解らない。

「最近発見された惑星、との報告がありますが……」

「とにかく、行ってみれば解ることだ。デルゴンを何部隊か派遣しよう」

ダイムラーが早速行動に移ろうとするが、誰かがそれを制止する。

「待ってくれ。俺が行く」

ヴァンガードが声を出した。

「この惑星プーシャは未知数だ。下調べ無しに足を踏み入れるなど…」

「裏切り者共はそこにいるんだろ?だったら、自分以外が全て敵なわけだ。なんとも解りやすい絵図だろうよ」

「専門外のお前がやる仕事じゃねェだろ?」

アルバトロスもダイムラーに続き反論する。が。

「諜報員を見縊って貰っちゃ困るな。情報を仕入れて本部に送る仕事だとでも思ってくれ」

それだけ言うと、椅子から降りて早足に会議室を出る。

「あいつ…」

ダイムラーが追いかけようとするが、終始無言だった者が、それを遮った。

「勝手にやらせりゃいいだろォ?。しくじれば死ぬ。それだけの話だ」

アビアティックが後頭部に腕を組んで、半分寝転んでるような姿勢で意見を口にした。

その後、結局その意見に誰も反論できず、流れ解散の形となった。



「早くも最終段階か?」

部屋に入るなり、デルファイターは中の人物に声をかける。

ヴァンガード・個室。

「アビアティックか。例の装置が完成次第、ってところだがな。夜鴉は残して置くとこんなことになる。あとは…あんたがどう頑張るか、だがな」

「“強者”ねェ。そもそも、本当の強者なんて存在するのかどうか」

「存在して貰わなければ困るな」

振り向かず作業を続けるヴァンガード。

「“アイツ”はどうするんだ」

「連れていくさ。“装置”があっても、アイツが居ないと意味が無い」

そこまで言うと、端末を出し、連絡を入れる。

「聞こえるか?ファルス」

『おゥ、パーツは集まった。明日には完成するから安心しろ』

「了解した」

端末を切ったヴァンガードの顔面には、不敵な笑みが浮かんでいた。