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ss2-01 導入──蠢ク悪魔──

惑星シャーオック・ドルグ基地

静かに怒りを醸し出しながら、男が部下であるデルザイルの報告を聞いていた。

「で、なんだって?」

「で、ですから……回収した夜鴉が、再び奪取された、と……」

「見張りは何やってたんだ? タダで雇ってんじゃねえぞ」

「見張り人によると、侵入者は無し……夜鴉が単騎で離脱し、迎撃部隊を振りきったそうです」

「そうです、じゃねぇ。情報の精度は確かなんだろうな?」

「は、はいィッ」

全身から緊張という二文字の札を垂らしながら、デルザイルは震え続ける。

「チッ……あの試験機が逃げ出したってことは…まぁた厄介なことになりやがった」

「ヴァンガード様」

唐突に、後ろから女の声が聞こえた。

「アルテミスか。何の用だ」

声が幾分か落ち付いたのを見て、部下であるデルザイルが心の中で安堵のため息を吐く。

同時に、頬を僅かに染めながら、アルテミスが口を開いた。

「その……似合いますか、これ」

(……似合うも何も、飛行ユニットを取り付けただけだろ。しかも正面からじゃ見えねえ)

だが、こうなっては面倒くさい。

「あー、似合う似合う。さっさと持ち場に戻れ」

その言葉を聞いて、安堵と恥ずかしさで急いで飛び去って行ってしまった。

(…やれやれだ)

「とりあえず、この件はなんとかする。探せ」

「は、い…? 何をですか?」

「ナイトレーヴェンに決まってんだろ。あれが敵に回ると面倒なんだよ。見つけられなかったら…解ってるな?」

目を細めながら追い詰めるように問うヴァンガード。デルザイルは再び震えだし、「はいィィッ」と言いながら部屋を出て行った。

「さて……」

玉座のような大きな椅子に座るヴァンガード、背もたれに頭を預けながら、斜め上に備えられたモニタに目を向け、独り言をつぶやいた。

「本当に、やれやれだな…」

「失礼、ヴァンガード様」

そこで、後ろから声が聞こえる。

先程とは別のデルザイルが、こちらに声をかけた。

「そろそろ会議の時間ですので、ここはお任せ下さい」

「おう、変なとこ触って不祥事起こすんじゃねえぞ」

「了解です」



DF部隊会議。

惑星ポイーンでのアブストラクトの一件と、惑星デゴでの敗走から、惑星シャーオックへの本格攻撃が噂されている中、精鋭部隊であるDF隊が、ドルグ基地の会議室に集合していた。

一部欠席している者もいるが、大体の面々が顔を出している。

「───以上が現状だ。そこで、我々DF部隊は、集結を始める天使軍の動きを妨害・排除する」

お菓子に夢中な総帥・ヴァージニアに代わり、隊長であるダイムラーが説明を終える。

「連中の狙いはアビアティックなんだろう?むざむざやられるような奴でもないし、誘って潰せばいいんじゃねえのか?」

アルバトロスが意見を言う。

指名されたアビアティックは、終始無言で、目を閉じたままだ。居眠りではないようだが。

アルバトロスの言葉に、ダイムラーは首を横に振りながら答えた。

「今のところは保留だ。大まかな作戦はローランド、お前に一任する。」

「解りました」

「まだ時間はある、次の会議で、実際の作戦を決めて行こうと思う。以上だ。…マスター」

「よし、かいさーん!」

高い声が会議室にこだまし、隊員たちがせっせと退室していく。



「…? なにやってんだ、ヴァンガード」

既に殆どの隊員が退室した中、ヴァンガードは椅子に座ったまま端末を弄っている。そこに、ティーガが声をかけた。

「ん、見て解らないか? メール見てんだよ」

「手前、今がどんな状況なのか解ってんのか?」

「わーってるよ。そして、“今”俺が動いてもどうにもならないってこともな。だからこそ、俺に出来る仕事をやってんのさ」

「なんだ。女とじゃないのか」

挑発的に言うティーガだが、クカカッ、と笑い顔を歪めながら、ヴァンガードは楽しそうに言葉を続ける。

「面白いよなァ。こんな薄汚れた三流の悪党でも、名前変えて変装するだけで天使軍の一員になれるんだからよぉ」

「あぁ?」

意味が解らない、とティーガが首をかしげるが、そのまま言葉を紡ぎ続ける。

「先輩面して天使軍の下位グループを誑かしてやったら、要らねえ情報までベラベラ吐きやがってさぁ」

「何言ってんだ?」

「俺が、昔ガルドで潰した裏切り者共、覚えてっか?」

「…ああ、アビアティックを潰そうとしてた連中…」

「そ。そいつらの残党が、俺が誑かした天使軍共と手ェ組んで、率先してこっちを潰そうとしてるんだとよ」

「へぇ?」

そして、目を細めながら、最後の言葉を口にする。

「───本格的に俺らを…否。アビアティックを狙ってくるようなら…そんときは、俺やあんたの出番って訳だよ、ティーガさんや」



ドルグ基地内、アビアティック・個室。

その中に、一人の男が入ってきた。

「ヴァンガードか」

部屋に入るなり、モニタを睨めつけているアビアティックが、こちらに振り向かずに言った。

「……。どうするつもりだ?アビアティック」

「どうするもこうするも、何とかするしかねェだろうがよ。よりにもよってこんな時期になァ」

「俺が掴んだ情報がある」

「あぁ?」

「取引しないか?アビアティック」

「…なに?」

アビアティックが振り返ると、ニヤリと笑ったヴァンガードが、ドルグ部隊旗を背中に取り付けていた。