※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

ss-05 暗躍──裏切リト目的──

レルグナ隊出撃から数分、ブリッジで、オペレータを務めるパラボロイドが声を出した。

「レルグナ隊、全小隊ともに現在遭遇した敵を各個撃破しながら進んでおります」

レルグナ隊が上陸し、善戦しているとの報告があり、、シュトルバンガー=グリーマンは鼻が高い様子だった。

「うむ、重畳だ」

「順調に進んでおりますね。アビアティックの提供した情報でしたが……」

「そうだな。あの男も信用できるか疑わしいものだったが、今回はきちんとやってくれたようだ」

(……哀れ男だ。“信用できない”男と軽々と取引するとはな。尤も、最初に誑かしたのは俺だが)

多目的戦闘補助システム『アブストラクト』の情報と引き換えに悪魔軍秘密基地の情報を得る、という取引。

その“アブストラクト”の情報を最初に売り付けたのは、隣のゼロファイター──否、DF部隊のヴァンガードであるとも知らずに。

「これで、また貴方様の功績がひとつ。今後のポスト争いで有利に導いてくれるものかと」

「まぁ焦るなアーヴァンよ。取らぬ狸の皮算用と言うものだ」

(そんなオマエにこの言葉を送ってやろう、“大は小を兼ねる”ってな)

この男は、小さすぎる。自分の野心を求めるあまり、計画性に欠けている。

だが、彼は──アビアティックはどうだ。自身が信頼を寄せているのもあるが、彼こそ強者なのではないか。

(……なんて、な)

それに、と置いてグリーマンは言葉を続ける。

「まだ奴らの始末をつけねばなるまい。今後とて利用することは出来るが、信用の置けん男だ。いつ裏切られるか分かったものではない」

(やはり……か)

「それでは、アビアティック一派も処分すると?彼らとてそう一筋縄ではいかないと思われますが、良いのですか?」

アーヴァン──ヴァンガードは少し怪訝そうな顔をしながら、グリーマンに問う。

「証拠を残す訳にはいかんのだよ、アーヴァン」

「…そうですか」

同時に、予めセットしておいた電子媒体文章を送信する。

(……哀れな男だ)

グリーマンはどこか乾いたようなアーヴァンの返事に頷くと、オペレーターごしに指示を出した。


「レルグナ隊に告ぐ。アビアティック一派もまとめて殲滅せよ。協力を装って近づき討て!」

オペレーターを通してアビアティック一派殲滅の任がレルグナ隊に下された。

その直後である。

先ほどのパラボロイドが声を上げた。

「通信が・・・遮断されています!」

「何!?」

「レルグナ隊!レルグナ隊!応答せよ!」

其処まで言ったところで、ヴァンガードは用意しておいた別のスイッチを押す。

内側から簡単にハッキングする為の装置。

すると、突然、悪魔軍基地内部の構造図を映していたブリッジのモニタが全てフリーズを起こし、画面が揺らめいて消える。

次いで真っ黒なモニタの中に、デルファイターを模した赤い横向きの髑髏が次々と浮かんだ。

(成功か。後は……)

「おい…何だよコレ…」

「何だ!どうなっている!」


突然のことに叫ぶグリーマン。

焦る天使軍ロボを見て心の中で嘲笑いながら、想定されたどおりに、コンソールから声が流れ出した。

『あはは、ごめんなさい。そちらの通信、乗っ取らせてもらっちゃいました』


ドゴォ、という音がしてブリッジの後ろの壁が吹っ飛び、穴が開く。

「なっ……」

「筒抜けなんだよ、バァカ」


振り向こうとしたグリーマンの脇腹を、緑色の光が貫く。

腹部を焼かれ、前に崩れるグリーマン。


「バ、カな……。なぜ…」

息も絶え絶えに見据える先には、黒地に赤い横向きの髑髏の描かれた部隊旗を翻し、レーザーとミサイルポッドを携えたデルファイター。

その肩には多目的戦闘補助システム『アブストラクト』が見える。

アビアティックはヴァンガードに一瞬目を向けジェスチャーを送る。同時に、床に伏したグリーマンを一瞥すると、前に一歩踏み出す。

「お、お前達、何をしている!殺せ!」

(……っ)

グリーマンが叫ぶと、茫然としていたブリッジの天使ロボ達が次々と手持ちの火器を取りだし、撃ちだした。

メガトンオーがバズーカを撃ちこみ、爆音と共に煙に包まれた。


「は、ははは…。み、見たかね諸君、木端微塵だ!ははは…」


床に伏したまま気が抜けたかのように笑うグリーマン。

だが次の瞬間には、その笑い声が凍りつく。


「はは…は?」


煙の中からミサイルが飛び出し、それぞれの弾頭が火器を放っていた天使ロボ達と共に爆ぜる。

そして現れたのは無傷のアビアティック。

両肩のアブストラクトからは六枚の光の翼が噴きだし、虹色に輝くそれがアビアティックの体を包むようにしていた。


「ハハッ、やっぱコイツぁすげぇ」


自らを包み込む光の羽根を眺めながら嘆息すると、アビアティックはブリッジの方に向き直り言葉を放つ。

「ったくご苦労だよなぁ、ヴァンガード。いや、今はアーヴァンって名前だっけ?」

「なっ……」

「……」

ばらすの早ぇよ、と文句を付けながら、隠していた嘲笑う顔をグリーマンに突き付ける。

「あ、アーヴァン…貴様……貴様ァ!」

(……つくづく)

倒れているグリーマンは右腕を立て、僅かに上半身を起こす。

肩のハッチが展開し、鈍く光る弾頭が顔を出す、が。

同時に、銃声がブリッジ内を支配した。

(……哀れな男だ)

「だから、警告しておいたのにな…」

銃を下げながら呟くヴァンガード。

銃を下げ終わると、後方からドン、と音が鳴ってブリッジの壁が吹き飛んだ。

ショットガンを持ったデルファイターを先頭に、次々とデルダータイプ、デルビンタイプといった下級悪魔がなだれ込み、銃を構えた。


「おせーよコラ、ハヴォックちゃんよ」

「……ありゃ、終わっちゃってましたか」

ハヴォックと呼ばれた先頭のデルファイターが報告する。


「とりあえず、艦内の全域を制圧しました」

「そうか」


ハヴォックの報告を聞くと、背中の部隊旗を引き抜きながらアビアティックが指示を出した。


「残りの部隊はココで待機だ。指揮はヴァンガード、お前に任せといてやる」

(面倒臭ェ)

「アビアティックはどうするつもりなんだよ…」

ゼロファイター姿のままのヴァンガードが、アビアティックに問う。

「俺様はグレイヴとスタイヤーを連れて基地の方に戻る。やらなきゃならねぇ事があるんでなぁ」


アビアティックの手によって、艦長席のシートにドルグ部隊旗が突き立てられた。


アビアティックが出て行ってから、妙に静かな艦内を見渡す。

(…つっても)

(指揮なんて執れねェぞ、俺はこの後アストラエアの回収に行かないといけないってぇのに…チッ)

心の中で文句と舌打ちをセットで出しながら、ふぅ、と息を吐いて指示を出す。

「俺はこのあとやることあるからよ、制圧できてるんなら、お前等の中で何とかしといてくれや」

それだけを言うと、艦内のガレージにあるホバーモビルに跨り、やけに騒がしい氷原へ向けて走り出した。