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ss-06 回収──蘇ル天使── デゴの悪魔軍基地付近に上陸したゼロファイター、アーヴァン──或いはヴァンガード。 彼は、現在凸凹の多い地帯に隠れ、ゼロファイターの白色を活かし、偵察を続けている。 (どこだ……) 見たところ、空にはいないようだ。 ならば、“想定されたどおりに撃破された”か。 (あいつなら、どっかに逃げ…ん?) 地上を見渡していると、洞窟が見え、その中に赤と白のロボが座っているのが見える。 (アイツ……っ) 即座にホバーモビルを操り、広大なデゴに駆けだした。 ------------------------------------------------------ (ヴァンガード…様……) 洞窟の中、赤と白で塗装された長身ロボ──アストラエアは、壁に背を預け、天井を見ながら意識を朦朧とさせていた。 ガサッ、と、洞窟の穴の方から音が聞こえ、同時に、こちらに向かうであろう、足音が洞窟内に木霊する。 (…ッ) とり落としたショットガンを拾い上げ、力の無い腕を振り上げて銃口を穴の方に向ける。 ダッ!!、と大きな音が鳴り、中型の天使軍ロボが侵入してきた。 (!!) トリガーを引く。が、それよりも早く、敵の弾丸が手首を襲い、そのままショットガンが吹き飛んだ。 「くっ…あ…」 止めを刺そうと銃を向ける敵機を睨めつけるが、敵機はニヤニヤしながらこちらを見ている。 そのまま敵がトリガーを引こうとした瞬間─── 横から一発の弾が侵入して来、天使軍ロボを貫いた。 「がッ」 一撃で倒れ、動かなくなった天使軍ロボを見ながら、現れた小さなロボを見る。 「こんなところにいたのか」 「ぁ……ヴァン、ガード……様…」 「無理にしゃべんじゃねえよ。回収しに来た。オマエはそのまま寝てろ」 無痛注射器を取り出し、胴体に突き刺す。 「ぅ…」 とうめき声をあげると同時に、アストラエアは更に口を開く。 「ありがとう、ございます……」 そう言ってから、彼女は気を失った。 「……」 「ありがとうございます、だと……?」 「礼なんて言うんじゃねえよ。俺は───」 「俺は、手前を捨て駒にしたんだぞ…ッ」 ------------------------------------------------------ 惑星シャーオック、ヴァンガード研究施設 「連れて帰ってきた。AI見直して、新造パーツと余剰パーツ使って作り直してやってくれ」 施設に入るや否や、中央のベッドに寝かせた後、ゼロファイター姿で、さっさと出て行ってしまう。 「あ、ヴァンガード様、そのお姿でどちらに…?」 デルザイルの一人が聞くが、ヴァンガードは振り返らずに答えた 「んー、残党共をぶっ潰してくる」 その声と同時に、ヴァンガードは青い光に包まれ、何処かへ移動してしまった。 ラムタ村 一人の天使軍ロボと、灰色に塗装された、鳥を思わせるような大きなロボが居た。 「いいかい」 「……」 「目標はこの男だ。取り巻きもつれているかもしれないから、本人が居ずとも、皆殺しにしろ。いいね」 「了解、マスター」 「奴はメタイヤ古戦場に居る。行けッ」 言葉と同時に、灰色のロボは跳び出した。 こうして── 二つの組織が、相手の名も知らず潰しあうこととなる。 惑星ポイーン、メタイヤ古戦場。 そこには、40人程の天使軍ロボが集まっており、その西側から、ゼロファイターが歩んでくる。 「来たか」 中央の男──ビクトリーが、憎しみの念を込めて言い放った。 「そりゃあなあ。後輩の頼みとありゃ、断るわけにはいかねえ」 「俺は手前と同期らしいがな、それにしても、随分喋り方が変わったな。グリーマン閣下の下に居た時の手前は、猫を被ってたってわけか?」 (こいつ等…グリーマンの残党か?或いは、部隊に就く筈だった志願兵か) 「どうかねえ。俺は、基本的に味方は作らない」 あくまで淡々と言い放つアーヴァンに、ビクトリーは言葉を続ける。 「……、手前、悪魔軍のデルファイターと繋がってるらしいじゃねえか?」 「……」 沈黙を図星と捉えたのか、笑いながらビクトリーは次の言葉を吐きかけた。 「そいつと取引して、手前を始末させてほしいと誘ったら、行方不明なりにすりゃOKだとよ。ポンジャバにでも埋めりゃ、証拠隠滅になるよなあ?」 「ああ、もしかして“上”とは話が付いているのかい?」 「ああ?……手前と俺らとのやりとりにゃ、お前等のお仲間の悪魔軍は手助けしねえってよ。捨てられたんだよ、お前は!」 叫ぶように言うビクトリーに、対するアーヴァンは笑いながら答える。 「クハハハハッ! 誰も、“悪魔軍”とは言ってねえだろうが?なあ」 「なッ…に、を……」 「クククク…クハハッ」 やがて少し落ちついたのか、ビクトリーは一つの確信を持って、アーヴァンに声を出した。 「…ふん、ハッタリだろう?」 「そう思うんなら、後ろを見てみればいいや」 「なに…ッッ」 彼らが後ろを見た先には、灰色の大きなロボ──遠くて小さく見えるが──が接近しており、両手の銃をこちらに向けている状態だった。 「な、な、な…ッ」 ビクトリーが恐怖を感じると同時に、灰色のロボの左腕から、蒼白い閃光が奔った。 ドォォォッ、という轟音と同時に、陽電子砲が駆け抜け、かたまっている天使軍ロボ10体程を薙ぎ払う。 「く、き、貴様ぁ……ッ」 正面を見るビクトリーだが、既にアーヴァンの姿はない。 「貴様…ハメやがったのか、アーヴァアアアン!!」 「やっぱり手前が…グリーマン閣下を殺しやがったんだなあああ!」 (やはり、事実を知らないってことは、志願兵か何かか) ビクトリーが叫ぶと同時に、2撃目の陽電子砲が奔る。 「うわああっ」 周囲の天使軍ロボが薙ぎ払われ、また数十人のロボが潰された。 「よぉ、ビクトリーさんよ」 「て、手前…」 いつの間にか高台に上っていたアーヴァンは、天使軍ロボ達を見下すように声をかける。 「オマエが取引したデルファイター……。もしかして“ヴァンガード”って名前じゃなかったか?」 「な、んで……それを…」 仲間を何十人も潰され、最後の頼みにしていた悪魔軍の名前を出され、遂に絶望の色を見せるビクトリー。 「なんでってそれ……俺だもの」 「な…ッ───」 同時に、ビクトリーの横に陽電子砲が奔り、残りは10数人とビクトリーだけとなっている。 「ヒィッ」 「クハハハハッ!精々楽しめよ、天使軍所君!」 高らかに宣言するヴァンガードに憤怒し、ビクトリーは叫び続ける。 「貴様ぁ、悪魔軍…貴様ァァァァ!!!」 炎に包まれたメタイヤこ戦場の中、青い光に包まれたヴァンガードは、何処かに飛んでいく。 こうして── 二つの組織が、相手の名も知らず潰しあうこととなった。   ------------------------------------------------------ 惑星シャーオック、ヴァンガード研究施設。 「ったく、天使軍ってのは、恐ろしいなあ」 「あ、ヴァンガード様、お帰りなさいませ」 近くにいたデルザイルが、ゼロファイター姿のヴァンガードに声をかける。もう慣れられたようだ。 「俺、デルファイターに戻るから、奥の施設借りるぞ」 「はい。丁度彼女も、完成したところです」 「そうか、んじゃちょっと行ってくる」 研究施設奥地。 デルファイター姿に戻ったヴァンガードは、青いカプセルに収容されているロボを見ながら、苦笑する。 「なんでわざわざ閉じ込めたんだよ……」 誰にも聞こえない声で呟いた後、デルザイルに問いかける。 「で、どんな感じになったんだ?」 「ええ、見ての通り、脚部を縮めたことで、安定性能が向上、左右のガトリングシールドで、火力と防御力を高めています。それ以外は、以前と同じです。AIは、こちらで再調整させていただきました」 「そうか…上出来だ。よし、解放しろ」 身の危険を感じながら、カプセルを解放させる。 電子音とブザーが鳴り響き、中から一回り小さくなった女神──アルテミスが、目を覚ました。 「……」 「……ん?喋らねえぞ?」 「ヴァンガード様?」 「あ、普通に喋るのな」 (前より落ち着いた雰囲気…やりゃあ出来んじゃねえか) 「よし、んじゃ、付いてこいアルテミス。やり残したことがあるからな」 「了解しました、ヴァンガード様」 [[BACK>ss-05 暗躍──裏切リト目的──]] [[戻る>ヴァンガード編]] [[NEXT>ss-07 夜鴉≪ナイトレーヴェン≫]]
ss-06 回収──蘇ル天使── デゴの悪魔軍基地付近に上陸したゼロファイター、アーヴァン──或いはヴァンガード。 彼は、現在凸凹の多い地帯に隠れ、ゼロファイターの白色を活かし、偵察を続けている。 (どこだ……) 見たところ、空にはいないようだ。 ならば、“想定されたどおりに撃破された”か。 (あいつなら、どっかに逃げ…ん?) 地上を見渡していると、洞窟が見え、その中に赤と白のロボが座っているのが見える。 (アイツ……っ) 即座にホバーモビルを操り、広大なデゴに駆けだした。 ------------------------------------------------------ (ヴァンガード…様……) 洞窟の中、赤と白で塗装された長身ロボ──アストラエアは、壁に背を預け、天井を見ながら意識を朦朧とさせていた。 ガサッ、と、洞窟の穴の方から音が聞こえ、同時に、こちらに向かうであろう、足音が洞窟内に木霊する。 (…ッ) とり落としたショットガンを拾い上げ、力の無い腕を振り上げて銃口を穴の方に向ける。 ダッ!!、と大きな音が鳴り、中型の天使軍ロボが侵入してきた。 (!!) トリガーを引く。が、それよりも早く、敵の弾丸が手首を襲い、そのままショットガンが吹き飛んだ。 「くっ…あ…」 止めを刺そうと銃を向ける敵機を睨めつけるが、敵機はニヤニヤしながらこちらを見ている。 そのまま敵がトリガーを引こうとした瞬間─── 横から一発の弾が侵入して来、天使軍ロボを貫いた。 「がッ」 一撃で倒れ、動かなくなった天使軍ロボを見ながら、現れた小さなロボを見る。 「こんなところにいたのか」 「ぁ……ヴァン、ガード……様…」 「無理にしゃべんじゃねえよ。回収しに来た。オマエはそのまま寝てろ」 無痛注射器を取り出し、胴体に突き刺す。 「ぅ…」 とうめき声をあげると同時に、アストラエアは更に口を開く。 「ありがとう、ございます……」 そう言ってから、彼女は気を失った。 「……」 「ありがとうございます、だと……?」 「礼なんて言うんじゃねえよ。俺は───」 「俺は、手前を捨て駒にしたんだぞ…ッ」 ------------------------------------------------------ 惑星シャーオック、ヴァンガード研究施設 「連れて帰ってきた。AI見直して、新造パーツと余剰パーツ使って作り直してやってくれ」 施設に入るや否や、中央のベッドに寝かせた後、ゼロファイター姿で、さっさと出て行ってしまう。 「あ、ヴァンガード様、そのお姿でどちらに…?」 デルザイルの一人が聞くが、ヴァンガードは振り返らずに答えた 「んー、残党共をぶっ潰してくる」 その声と同時に、ヴァンガードは青い光に包まれ、何処かへ移動してしまった。 ラムタ村 一人の天使軍ロボと、灰色に塗装された、鳥を思わせるような大きなロボが居た。 「いいかい」 「……」 「目標はこの男だ。取り巻きもつれているかもしれないから、本人が居ずとも、皆殺しにしろ。いいね」 「了解、マスター」 「奴はメタイヤ古戦場に居る。行けッ」 言葉と同時に、灰色のロボは跳び出した。 こうして── 二つの組織が、相手の名も知らず潰しあうこととなる。 惑星ポイーン、メタイヤ古戦場。 そこには、40人程の天使軍ロボが集まっており、その西側から、ゼロファイターが歩んでくる。 「来たか」 中央の男──ビクトリーが、憎しみの念を込めて言い放った。 「そりゃあなあ。後輩の頼みとありゃ、断るわけにはいかねえ」 「俺は手前と同期らしいがな、それにしても、随分喋り方が変わったな。グリーマン閣下の下に居た時の手前は、猫を被ってたってわけか?」 (こいつ等…グリーマンの残党か?或いは、部隊に就く筈だった志願兵か) 「どうかねえ。俺は、基本的に味方は作らない」 あくまで淡々と言い放つアーヴァンに、ビクトリーは言葉を続ける。 「……、手前、悪魔軍のデルファイターと繋がってるらしいじゃねえか?」 「……」 沈黙を図星と捉えたのか、笑いながらビクトリーは次の言葉を吐きかけた。 「そいつと取引して、手前を始末させてほしいと誘ったら、行方不明なりにすりゃOKだとよ。ポンジャバにでも埋めりゃ、証拠隠滅になるよなあ?」 「ああ、もしかして“上”とは話が付いているのかい?」 「ああ?……手前と俺らとのやりとりにゃ、お前等のお仲間の悪魔軍は手助けしねえってよ。捨てられたんだよ、お前は!」 叫ぶように言うビクトリーに、対するアーヴァンは笑いながら答える。 「クハハハハッ! 誰も、“悪魔軍”とは言ってねえだろうが?なあ」 「なッ…に、を……」 「クククク…クハハッ」 やがて少し落ちついたのか、ビクトリーは一つの確信を持って、アーヴァンに声を出した。 「…ふん、ハッタリだろう?」 「そう思うんなら、後ろを見てみればいいや」 「なに…ッッ」 彼らが後ろを見た先には、灰色の大きなロボ──遠くて小さく見えるが──が接近しており、両手の銃をこちらに向けている状態だった。 「な、な、な…ッ」 ビクトリーが恐怖を感じると同時に、灰色のロボの左腕から、蒼白い閃光が奔った。 ドォォォッ、という轟音と同時に、陽電子砲が駆け抜け、かたまっている天使軍ロボ10体程を薙ぎ払う。 「く、き、貴様ぁ……ッ」 正面を見るビクトリーだが、既にアーヴァンの姿はない。 「貴様…ハメやがったのか、アーヴァアアアン!!」 「やっぱり手前が…グリーマン閣下を殺しやがったんだなあああ!」 (やはり、事実を知らないってことは、志願兵か何かか) ビクトリーが叫ぶと同時に、2撃目の陽電子砲が奔る。 「うわああっ」 周囲の天使軍ロボが薙ぎ払われ、また数十人のロボが潰された。 「よぉ、ビクトリーさんよ」 「て、手前…」 いつの間にか高台に上っていたアーヴァンは、天使軍ロボ達を見下すように声をかける。 「オマエが取引したデルファイター……。もしかして“ヴァンガード”って名前じゃなかったか?」 「な、んで……それを…」 仲間を何十人も潰され、最後の頼みにしていた悪魔軍の名前を出され、遂に絶望の色を見せるビクトリー。 「なんでってそれ……俺だもの」 「な…ッ───」 同時に、ビクトリーの横に陽電子砲が奔り、残りは10数人とビクトリーだけとなっている。 「ヒィッ」 「クハハハハッ!精々楽しめよ、天使軍所君!」 高らかに宣言するヴァンガードに憤怒し、ビクトリーは叫び続ける。 「貴様ぁ、悪魔軍…貴様ァァァァ!!!」 炎に包まれたメタイヤこ戦場の中、青い光に包まれたヴァンガードは、何処かに飛んでいく。 こうして── 二つの組織が、相手の名も知らず潰しあうこととなった。   ------------------------------------------------------ 惑星シャーオック、ヴァンガード研究施設。 「ったく、天使軍ってのは、恐ろしいなあ」 「あ、ヴァンガード様、お帰りなさいませ」 近くにいたデルザイルが、ゼロファイター姿のヴァンガードに声をかける。もう慣れられたようだ。 「俺、デルファイターに戻るから、奥の施設借りるぞ」 「はい。丁度彼女も、完成したところです」 「そうか、んじゃちょっと行ってくる」 研究施設奥地。 デルファイター姿に戻ったヴァンガードは、青いカプセルに収容されているロボを見ながら、苦笑する。 「なんでわざわざ閉じ込めたんだよ……」 誰にも聞こえない声で呟いた後、デルザイルに問いかける。 「で、どんな感じになったんだ?」 「ええ、見ての通り、脚部を縮めたことで、安定性能が向上、左右のガトリングシールドで、火力と防御力を高めています。それ以外は、以前と同じです。AIは、こちらで再調整させていただきました」 「そうか…上出来だ。よし、解放しろ」 身の危険を感じながら、カプセルを解放させる。 電子音とブザーが鳴り響き、中から一回り小さくなった女神──アルテミスが、目を覚ました。 「……」 「……ん?喋らねえぞ?」 「ヴァンガード様?」 「あ、普通に喋るのな」 (前より落ち着いた雰囲気…やりゃあ出来んじゃねえか) 「よし、んじゃ、付いてこいアルテミス。やり残したことがあるからな」 「了解しました、ヴァンガード様」 [[BACK>ss-05 暗躍──裏切リト目的──]] [[戻る>ヴァンガード編]] [[NEXT>ss-07 夜鴉≪ナイトレーヴェン≫]]

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