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同時刻、基地の北側の海面には一隻の巡洋艦が浮かんでいた。 海中から基地の内部へと侵入した天使軍別働隊の母艦である。 「レルグナ隊、全小隊ともに現在遭遇した敵を各個撃破しながら進んでおります」 ブリッジではオペレーターのパラボロイドが報告する。 対して答えたのは艦長席に座る深緑色のシュトルバンガー。 「うむ、重畳だ」 別働隊の指揮を執る、シュトルバンガー=グリーマンであった。 その隣に佇んでいた副官らしき白と緑のゼロファイターがグリーマンに言う。 「順調に進んでおりますね。アビアティックの提供した情報でしたが・・・」 「そうだな。あの男も信用できるか疑わしいものだったが、今回はきちんとやってくれたようだ」 グリーマンの言うあの男とは、勿論デルファイター=アビアティックの事であった。 グリーマンは手元のモニタに映し出される悪魔軍基地の構造図を眺める。 多目的戦闘補助システム『アブストラクト』の情報と引き換えに悪魔軍秘密基地の情報を得たグリーマン。 副官のゼロファイターは満足そうな様子の彼に口を添える。 「これで、また貴方様の功績がひとつ。今後のポスト争いで有利に導いてくれるものかと」 「まぁ焦るなアーヴァンよ。取らぬ狸の皮算用と言うものだ」 それに、と置いてグリーマンは続けた。 「まだ奴らの始末をつけねばなるまい。今後とて利用することは出来るが、信用の置けん男だ。いつ裏切られるか分かったものではない」 「それでは、アビアティック一派も処分すると?彼らとてそう一筋縄ではいかないと思われますが、良いのですか?」 ゼロファイター=アーヴァンは少し怪訝そうな顔をすると、グリーマンに問う。 「証拠を残す訳にはいかんのだよ、アーヴァン」 「・・・そうですか」 グリーマンはどこか乾いたようなアーヴァンの返事に頷くと、オペレーターごしに指示を出した。 「レルグナ隊に告ぐ。アビアティック一派もまとめて殲滅せよ。協力を装って近づき討て!」 オペレーターを通してアビアティック一派殲滅の任がレルグナ隊に下された。 その直後である。 先ほどのパラボロイドが声を上げた。 「通信が・・・遮断されています!」 「何!?」 「レルグナ隊!レルグナ隊!応答せよ!」 突然、悪魔軍基地内部の構造図を映していたブリッジのモニタが全てフリーズを起こし、画面が揺らめいて消える。 次いで真っ黒なモニタの中に、デルファイターを模した赤い横向きの髑髏が次々と浮かんだ。 「おい・・・何だよコレ・・・」 「何だ!どうなっている!」 突然のことに叫ぶグリーマン。 騒然とするブリッジに突如、コンソールから声が流れ出した。 『あはは、ごめんなさい。そちらの通信、乗っ取らせてもらっちゃいました』 ドゴォという音がしてブリッジの後ろの壁が吹っ飛び、穴が開く。 「なっ・・・」 「筒抜けなんだよ、バァカ」 振り向こうとしたグリーマンの脇腹を、緑色の光が貫く。 腹部を焼かれ、前に崩れるグリーマン。 「バ、カな・・・。なぜ・・・」 息も絶え絶えに見据える先には、黒地に赤い横向きの髑髏の描かれた部隊旗を翻し、レーザーとミサイルポッドを携えたデルファイター。 その肩には多目的戦闘補助システム『アブストラクト』が。 デルファイター=アビアティックは床に伏したグリーマンを一瞥すると、前に一歩踏み出す。 「お、お前達、何をしている!殺せ!」 グリーマンが叫ぶと、茫然としていたブリッジの天使ロボ達が次々と手持ちの火器を取りだし、撃ちだした。 メガトンオーがバズーカを撃ちこみ、爆音と共に煙に包まれた。 「は、ははは・・・。み、見たかね諸君、木端微塵だ!ははは・・・」 床に伏したまま気が抜けたかのように笑うグリーマン。 だが次の瞬間には、その笑い声が凍りつく。 「はは・・・は?」 煙の中からミサイルが飛び出し、それぞれの弾頭が火器を放っていた天使ロボ達と共に爆ぜる。 そして現れたのは無傷のアビアティック。 両肩のアブストラクトからは六枚の光の翼が噴きだし、虹色に輝くそれがアビアティックの体を包むようにしていた。 「ハハッ、やっぱコイツぁすげぇ」 自らを包み込む光の羽根を眺めながら嘆息すると、アビアティックはブリッジの方に向き直り言葉を放つ。 「ったくご苦労だよなぁ、ヴァンガード。いや、今はアーヴァンって名前だっけ?」 「なっ・・・」 「・・・」 アビアティックに名を呼ばれたゼロファイターは無言でグリーマンを見下ろした。 「あ、アーヴァン・・・貴様・・・貴様ァ!」 グリーマンがすかさず右腕を立てて僅かに上半身を起こす。 肩のハッチが展開し、鈍く光る弾頭が顔を出す、が。 銃声が響き、ボディを撃ち抜かれたグリーマンは鉄塊と化した。 「だから、警告しておいたのにな・・・」 グリーマンに向けていた銃口を下ろし、ヴァンガードはボソリと呟く。 その時、ドンと音がしてブリッジの扉が吹き飛んだ。 ショットガンを持ったデルファイターを先頭に、次々とデルダータイプ、デルビンタイプといった下級悪魔がなだれ込み、銃を構えた。 「おせーよコラ、ハヴォックちゃんよ」 「・・・ありゃ、終わっちゃってましたか」 ガチャガチャと音を立てて銃を下ろす下級悪魔達。 ハヴォックと呼ばれた先頭のデルファイターが報告する。 「とりあえず、艦内の全域を制圧しました」 「そうか」 ハヴォックの報告を聞くと、背中の部隊旗を引き抜きながらアビアティックが指示を出した。 「残りの部隊はココで待機だ。指揮はヴァンガード、お前に任せといてやる」 「アビアティックはどうするつもりなんだよ・・・」 ゼロファイターの姿のままのヴァンガードの問いに、アビアティックが答える。 「俺様はグレイヴとスタイヤーを連れて基地の方に戻る。やらなきゃならねぇ事があるんでなぁ」 アビアティックの手によって、艦長席のシートにドルグ部隊旗が突き立てられた。 [[BACK>Scene9 特務部隊]] [[戻る>反逆編]] [[NEXT>Scene11 最強との遭遇]]

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