ss-02 実験──輝ク光、AURA──
惑星アルモス行きシャトル内部。
デルザイル3機が何やら機械の調整をしている中、ヴァンガードはアストラエアと二人となり、何やら気まずい雰囲気が流れている。
「……」
「……?」
少し下を向き、アストラエアと目を合わせまいとしている中、件の彼女は、楽しそうにヴァンガードの様子を窺っている。
(……調子が狂うな。まったく)
と、嫌そうに思考を働かせるヴァンガード。
(ヴァンガード様、何を考えているんだろう……)
まったく関係ない事を考えながら、それでも楽しそうに観察を続けるアストラエア。
「ヴァンガード様、機械の調子が」
「あん?どうした」
よくやった、とばかりにデルザイルのもとに近づく。あとで報酬を上乗せしてやろうか、と高揚した気分の中考える。
「どうやら、エネミーとして指定する予定のロボに不具合があるようで」
「ふむ……。俺はこういうことは解んねえから、まあ頑張れや。時間はあるしな。間に合わなかったら、お前等にアイツの相手をさせりゃあいいだけだ」
「は、はいィッ」
急いで作業に入るデルザイル達。少し脅かし過ぎたか?とも思いながら、振り返る。
振り返ってしまった。
「……」
「……?」
振り出しに戻っただけじゃないか。
心の中で舌打ちし、何も無い方向を見つめる。
アルモスまで、残り────
惑星アルモス。
新生・天使軍と悪魔軍が激しい戦闘を繰り広げ続ける惑星である。
その激戦区は、今は物静かな雰囲気となっている。
「こんなものか」
「へい」
黄色い装甲を持つ、六体の巨大なデルゴン───アニキ・ザ・デルゴンと呼ばれる、デルゴン系列最上位を行く中級と上級の間に存在する悪魔ロボである。
「んじゃ、お前等は引き続き見張りを頼むぜ」
惑星アルモス、ビンカー演習場の更に奥にある、天使軍からは発見されていない悪魔軍演習場。
「行けるな、アストラエア?」
「はーい。いつでも使えますよ、ヴァンガード様」
「……。AURAシステムの実験を開始する。とりあえず、フルスロットルで飛びまわれ」
「了ぉ解!」
主翼であるアクイーアBSの上に格納されていたブースタが展開、計6枚の翼のように開き、重い身体を持ち上げる。
「フルスロットル、いきまーす!」
輝かしい光を放ちながら、アストラエアに搭載された新機構───Active Ultimate Replace Ability、AURA機構が起動する。
30秒間。
アストラエアは美しく、空を舞った。
旋回・加速・急停止。
機動性と空間戦闘に特化したそれは、及第点どころか、満点以上の出来だ。
「……流石だな」
「はい!お褒めにあずかり光栄です!」
聞こえていたのか、彼女の声が聞こえた。
「…チッ。聞こえるか?」
舌打ちをして、無線を繋げる。
『はい』
「例のものを出せ」
『了解しました』
演習場の奥にある小型ガレージから、一機の小型ロボが現れる。
「あれは…?」
それに気付いたのか、アストラエアが空中で声を上げた。
「オマエの相手だ。天使軍のデータを基に開発した。性能面では及ばないところもあるが、アレに勝てば一応合格だ」
「はい!頑張ります!」
言葉と同時に、赤いブースタを吹かし、その小型ロボへ向かって突撃する。
一方、当の小型ロボ───量産型オレガーに酷似したそれは、左手のライフルをおもむろに振り合えげ、一直線に突撃する彼女を狙い撃つ。
ビシュ、と音が鳴り、蒼く細い弾が高速で飛翔する。アストラエアはそれを紙一重で避け、チャージが完了したAURAを再び発動、左手のショットガンのトリガーを引いた。
ドォ、と一際大きな音が鳴り響き、散らばった弾丸が地面を抉る。量産型オレガーは跳びあがって避け、ショートレンジに入ったアストラエアにそのまま斬りかかる。
「くっ!」
右腕のレーザーブレードで受け止めつつ、斬りはらって吹き飛ばす。極端に軽い量産型オレガーは簡単に吹き飛ぶが、ブースタを吹かしながら着地、瞬時にアストラエアの真下に移動する。
「死角っ!?」
ライフルを頭上に発射されるが、持ち前の機動性を発揮し、前に避ける。振り返って高度を落とすが、先程の場所に標的は居ない。
「どこに…!」
簡易レーダーが後に赤印を示す。身体半分と頭だけ振り返ると、敵機のブレードが既に振り下ろされていた。
「ッッ!」
斬撃。一撃で巨大なアクイーアBSのジョイントが叩き斬られ、巨大なブースタが欠落する。
「見くびらないで!」
急速旋回と同時にブレードを一閃、量産型オレガーのボディに強烈な横薙ぎを叩きこむ。
ダメージと同時に煙を吹きながら後ずさる量産型オレガー。チャンスとばかりに、空から奇襲をかける。
AURA時間、残り5秒。
4
3
2
1────
ズバァッ、と。
赤色のレーザーブレードが量産型オレガーを両断した。
最終更新:2011年12月07日 17:14