最終話3

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『エピローグ』 幽霊少女との別れから、ずいぶんと時間が経過した。 勿論、それは私にとっての『ずいぶん』であり、実際は何ヶ月かどうか。 もしかすると何年かどうか。時間の経過すら曖昧である。 時間の概念を忘れる。それくらい、私は毎日が忙しかった。 死んだ人を説得して、賽の河原で追われに追われ、先輩と談笑してまた仕事。 毎日が目まぐるしくて……でもどこか楽しくて、祭りをしているような気分ですらある。 時折、あの幽霊のことを思い出すことだってある。 そんな時、私の双眸はうるみ、あの広遠なる空の景色が浮かぶ。 彼女にかけられた言葉は、幾重もの悲しみと幾重もの原動力となり、私の体を揺さぶる。 私は、いっぱい、死んだ人と接してきた。 彼らは、未練があった。けれども死んだから何も出来ず、送られていった。 生きていることをことに強く尊ぶのは、死に瀕した際だと誰かが言う。実際、その通りなのかもしれない。 でも、生きていることを味わう瞬間は、いくらだってあると思う。 自然に美を感じた時。慕情を寄せる人が出来た時。 喜怒哀楽の情を覚える時。今、ここに自分があることを認識した時。 色々あって良いと思う。 感じ方は、人それぞれなんだから。 生きることは、素敵なことだと思う。 色々と悲しいことがあったり、嫌なことがあったり。 物事がうまくいかなかったり、どうして良いのか分からなくなったり。 そういう時、生きるのが嫌になる人もいるのかもしれない。 私だって、そういう気持ちになることがある。 そんな時、私は、空を感じる。 実際に首を曲げて見なくてもいい。無理をして注視しなくていい。 ただ、自分の上に、広遠なる空間が、彩りが、きらめきがあることを感じて。 それだけで嬉しくなる。こんなに素敵な空間が、誰の上にもあることを感じて。 生きていたくなる。美しいものを、自然を、見ていたくなる、感じていたくなる。 それは、きっと、とてもとても素敵なことではないのだろうか。 生きていることは、本当に、素敵なことだ。 だから私は生きる。生きて生きて、生きる。 「私は、生きる」 それと同時、私は、願う。 遠くへ放ったこの言葉が。 どうか、どうか、あなたのもとに、届いていますように。 ――この、広い広い空を通じて、どうか、どうか。 (おわり)

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