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《読み切り5》

 

太陽がちょうど真上にある午後二時ごろ、私は久々の休日を堪能していた。

私は高校生のころ必死にバイトをし、ただ快適な空間で読書がしたい一心で買った家具に囲まれながら、至福の時を過ごしていた。

この至福の時間が長くは続かないということをこの時点では私が知る由もなかった。


私がソファーの横に積んである文庫本の山を見て、どれから読もうかな~ などと考えていたら、
家の扉からコンコンという音がした。
そしてその音がノックであるということに気がつき、私は扉を開けた。

そこには私服の男女2人がいた。
「えーと どちらさまでしょうか?」
私は2人の顔を確認し、知り合いではないことを確信してから尋ねた。

「はじめまして、今日このアパートに引っ越してきた、蒼井 清 (あおい みつる)と申します。」
男がさわやかな笑顔で言う。

「桜井 美智留 (さくらい みちる)です…よろしく」
男とは対照的に女の方は、表情を変えることなく挨拶をする。

「こちらこそはじめましてM大学2年の北条 結華 (ほうじょう ゆいか)です。 よろしくお願いします。 それでお2人の部屋はどちらなのでしょうか?」
私の両隣の部屋は空き部屋なのでどちらに蒼井さんがいるのか桜井さんがいるのかはきちんと把握しておかないといけない。

「はい、私も美智留も右隣の202号室です。」

2人とも同じ? あぁ同棲か

「同棲なんですね?」

「えぇ まぁそんなところです。」
清は苦笑しつつ答えた。

「これ引っ越しそばです。 どうぞいただいてください」

「ありがとうございます。 そういえばお2人も大学生なんですか?」

「えぇ 私も美智留も大学2年なんですよ」

「じゃあ 同期ですね  ちなみに大学の方は?」

「K大です。 1年のころはキャンパスが別のとこで2年からこっちのキャンパスに移動になったので、引っ越してきたんですよ。」

「あぁ そうだったんですか。 そうだ時間があるのでしたらあがって行きませんか? 大したものは出せませんが、立ち話もなんですし」

「いえ、せっかく誘っていただいて何なのですが、引っ越しの荷物の整理をしないといけないので、とりあえず今回はこの辺で失礼します。」
「そうですか それではまた今度」

「ええ、また今度」

私は扉を閉めて、ソファーに戻り、さっきの2人について考え始めた。

蒼井の方は性格がだいぶ明るく、気さくな人だ。 
桜井の方はほとんど喋らず私が蒼井と喋っている時もほとんど表情が変わらずただ聞いているだけだった。

まぁ会って間もないし、第一印象なんてたいしてあてにはならないけどね

 


次の日の朝
いつも通り、朝ご飯を作って食べていたら、またノックの音が聞こえた。

全く、このオンボロアパートはいつになったらインターホンがつくんだ。

私が扉をあけると、昨日とは違った私服姿で蒼井と桜井が立っていた。
「おはようございます 北条さん」
清がまたもやさわやかな笑みであいさつしてきた。

「おはようございます 蒼井さん桜井さん それで何かご用でしょうか?」

「えぇ 実は僕たちまだここにきて日が浅いのでいろいろ買いたいものがあるのですが場所がわからなくて、もしよろしければ道案内をお願いしたいと思いまして…」

「そういうことですか、わかりました。 朝ごはんを食べ終えたら支度しますので、すこし待ってください。」

「すいません、ありがとうございます。」
蒼井がお辞儀をすると桜井も同じようにお辞儀をした。

私は急いで朝ごはんを胃の中に流し込んで支度を整え、家を出た。

 

 

 

「いや~今日は助かりました ありがとうございます。」

「いえいえ 困った時はお互い様ですから」

私たちは無事に買い物を終え、人ごみに流されながら帰宅しようとしていた。

「それにしてもやっぱり帰宅する人が多いですね」

「ホント、やはり商店街は人ごみができやすいですね おい美智留大丈夫か?」

私と蒼井の少し後ろにいた桜井は徐々に姿が見えにくくなっていた。

「美智留!」

蒼井は桜井のところに近づき手を握る…そしてそのまま人ごみの中に紛れ込んでいった。

 

 

北条が桜井と蒼井が人ごみに流されたと思っているが実はそうではない。

確かに周りからみると人ごみに流されてるように見えるが、実は蒼井が伸ばした手を桜井が引っ張り誘導していたのである。

「おい美智留、どうした? 北条さんから離れて行くぞ」
俺は美智留が何をしたいのか全くわからないままなすがままに引っ張られていく。

そして美智留の足がついに止まり、周りを見渡した。

そこは薄暗い路地裏だった。

「美智留? こんなとこに連れてきて何がしたいんだ?」
そうすると美智留はいきなり俺に抱きついてきた。 

急なことだったので俺はそのままの勢いで尻もちをついてしまい、美智留が俺に覆いかぶさる形になってしまう。
「ねぇ、清 私のこと好き?」
覆いかぶさられているので顔は見えないが、声が少しさびしそうな感じがする。

「もちろんだよ すきすきだいすきあいしてる」

「じゃあなんで、北条さんとあんなに仲良くするの? 北条さんといるとき私と一度も喋ってくれないじゃない」

「それはお前が俺以外のやつと喋るの嫌いだからだろ」

「そうだけど…でも…」

「わかってるって、とりあえずお前のしたいことは分かった だからまず降りてくれ」
口には出さないがさすがに重たい。

「ご、ごめん」

俺はやっと立ち上がることができたことにほっとして、それから美智留に話しかけた。

「一応言っておくけど、俺はお前のことが…」

なんか面と向かって言うのは照れるが言っておかないと美智留の機嫌が直りそうにないから言おうとした。 その時、路地の向こうからいかにもヤンキーみたいな格好をしている男が現れた。

「おうおう 見せつけてくれるじゃねーか!」
3人いるヤンキーのうちの一番前にいた坊主頭の男が近寄りながら言ってきた。

「それにしてもあの女かわいいじゃねーか ちょっと俺らと遊ばない? そこにいる男より俺らと遊ぶ方がきっと楽しいぜ」

俺は不覚にも美智留がかわいいと褒められたことに嬉しさを感じて、美智留の様子の変化に気がつかなかった。

「もう一回言ってみて」
美智留がフラフラしながら男たちに近づいて行った。

「あ? 聞こえなかったのか俺らと遊ばねーか? って聞いてるんだよ」

「あんたらのことなんかどうでもいいけど、清のこと悪く言うのは許さない、許さない、絶対に許さない」
美智留がぼそぼそと何かをつぶやくように男たちに近づいているのを俺は少し後ろの方でボーっとしながら見ていた。

そしてあることを思い出した。
美智留が俺以外の人とまともな言葉を交わす時の条件が自分の感情に身を任せている時だということを…。

「おい 美智留! 戻ってこい!」

危なすぎる、いくら路地裏は狭いからただでさえ、けがしやすいのに…まして今の美智留は冷静じゃない。

「どうしたのかな? 俺たちと遊びたくなったのかな」
ヤンキー達が下品な笑い声を上げながら美智留の目の前に立ちふさがった。

「下劣な豚どもが、清のことを悪く言った…屑どもが屑、屑、屑、屑」

美智留はぼそぼそと言っているせいで男たちには聞こえていない。

そして一番前にいた坊主頭のヤンキーが美智留に触れようとしたとき事態が急変した。

ボゴッ! 男の体に美智留の靴のつま先が食い込む音がした。

「あーあ やっちまった。」
路地裏であいつに喧嘩売るなんて絶対に病院送り決定だ。
美智留は子供のころからまぁいろいろと格闘技に手を出してたからタイマンではほぼ無敵だ。
だから止めたのに、はぁ 救急車呼ぶのめんどくせーな

そんなこと考えてたらいつの間にか喧嘩(一方的な暴力)は終わっていた。

言うまでもないがヤンキー達は見るも無残な体になっていた。 まぁ死んではないけど。

「美智留! もういくぞ!」

「うん」
そんなこんなで俺たちは帰宅した。

 


まったくひどいよなー 2人とも私をほってどっかいっちゃうんだもん。

せっかく聞きたいことあったのに
あーあ 結局聞きそびれちゃったな 桜井さんに「なんでそんなに鍛えてるの?」って

それよりも興味を持ったのは蒼井さんだな~ なんで左胸にナイフなんてしこんでるんだろ。
しかもわざわざすぐ取り出せるようにいじってあるし、まぁ私が気付いたことには多分気付かれてないと思うけど……