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わるきゅーれ企画小説・第三章」(2010/06/14 (月) 00:31:16) の最新版変更点

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「ここなんだが…」 「ほぉ。お邪魔しまーす、と」 三人はその日の帰り、ユーリの家に寄っていた。 ユーリの父親が、どんな成果を挙げたことで殺されたのか調べるためだ。 「へぇ。こんなトコに住んでるんだね」 物珍しそうに部屋の中を見回すノーム。 「ああもう隅々見ないで。散らかってるし」 「で、どこだよ。その親父さんの研究成果は」 「こっちだ」 ユーリは、奥の部屋へと二人を案内した。 「あれ…?」 「どうしたよユーリ」 父親が研究に使っていた奥の部屋は、何も無くなっていた。 書類やメモの類もなければ、書籍も、鉛筆すらない。部屋は空っぽだ。 「誰かが持ち去ったのだろうね」 発言したのは、ノームであった。 「持ち去った…?誰が」 「おそらく政府だね。そんなに重大な成果だったのかな」 研究の内容について、ユーリは何も知らなかった。 「スマ君の時には、こんなことはなかったのかい?」 「あ、ああ。俺の親父は大学の研究室を使っていたからな。全て大学が管理しているはず」 スマの父親は、大学の非常勤講師だったそうだ。 その大学に父親の遺品を受け取りに行った際に、父親の机に置かれていた論文を盗み見たのだそうだ。 その後、全ての成果は大学の管理下に入った。 「それでもスマ君のお父さんの論文が発表されなかったって事は、そこにも政府の息がかかってたんだろうね」 「…そういう事か」 ノームは続ける。 「とにかく、これでユーリ君のお父さんの成果はわからなくなってしまった。どうするの?」 父親の成果は、恐らく何かとても重大なものであったはずだ。 政府が本腰を入れて消し去ったことが、それを煌々と物語っている。 ユーリが応えた。 「どうするも何も、地上に行けば全てが解るんだ」 「…そうだね」 ノームは頷いた。 「地上へ行き、卓上の空論でなく、実際に見てきたことを人々に話すんだ。政府も隠し通せないくらいにな」 「おおっ。よく言ったユーリ!」 スマがユーリの肩を叩く。 ノームは何も言わなかったが、代わりにユーリに向かってニカッと笑ってみせた。 ---- 数日後。『フロンティア』脱出作戦当日である。 「ここが、俺のアジトだ」 スマに案内されやってきたのは、裏路地のマンホールであった。 「ここに、入るのか?」 「ああ。大丈夫だ。中はキチンとしてる」 スマが慣れた手つきで、バールを用いマンホールをこじ開けた。 ゴトリ、とマンホールが開く。 円形の暗闇が顔を覗かせた。 「へぇ。いかにもアジトって感じだね。では、私はスカートだし、先に降りさせてもらうよ」 ノームはマンホールに入り、すぐに見えなくなった。 「じゃ俺も~」 それにスマも続く。 ユーリは、というと。 穴の前で立ち竦んでいた。 「はあ…」 恥ずかしながら、こういうのは苦手である。 「早く降りてこいよ~」 穴の下からスマの声がした。 仕方ない。覚悟を決め、梯子をしっかりと掴んでマンホールに潜っていった。 内部はコンクリの部屋であった。きちんと電気も点く。 「もともとは水道管整備員の拠点みたいなとこだったらしいな」 部屋の中には、電気ポットからガスコンロから、色々なものが運び込まれていた。 ここで生活でもする気なのか。 「そりゃなあ。今日の作戦が失敗したら、俺らは指名手配犯だ。家に帰るわけにもいかないぜ」 それもそうか。 「あと、これもな。お前らの分も」 そう言ってスマが取り出したのは、三丁の自動小銃だった。 「こんなものまで…」 ためらうユーリとは反対に、スマは慣れた手つきでマガジンをセットし、初弾を装填した。 「マジメに考えれば、こういうことになる。見るんだろ、空を」 自動小銃をユーリに突き出す。 「…ああ」 受け取った小銃はずっしりと重かった。 「では、作戦を説明するよ」 参謀役はノームである。 「狙い目は中央ゲートではなく、警備の少ない通風ダクト。少ないとはいえ三人の武装警備隊がいるね」 数では互角だが、相手は恐らく手練れだろう。 「さらに後々の追っ手を遅らせるために、その三人は確実に仕留める必要がある。そこで…」 続けるノーム。 「私が少しの間注意を引きつけるから、その隙に二人は背後に回りこんで警備隊を仕留める。以上だよ」 つまり、囮作戦である。 警備隊はいきなり撃ってはこないだろうが、こちらが撃てば発砲するだろう。やはり囮は危険度が高い。 「ダクト入り口さえ突破してしまえば、あとは距離を稼ぐだけだからね」 「その囮だが…」 ユーリが口を挟んだ。 「俺が代わるよ」 「どうしてだい?」 しばし沈黙が流れる。 ユーリが口を開いた。 「俺は体がでかいから目立つ。気づかれずに回り込むのに向いてない」 ノームは、しばらく考えた後、言った。 「…そうだね。ではユーリ君。危険な仕事だけど、頑張って」 ---- ノームは席を外している。 景気付けの宴会の、買い出しに行ってもらったのだ。 「なあユーリ」 「なんだ」 「何でさっき、ノームを囮から下ろしたんだ?」 ユーリは、しばらく黙りこんだあと、応えた。 「なんていうか、とっさに庇いたくなったんだ」 それを聞いてへぇ、と言い、ニヤニヤ笑うスマ。 「何だよ」 スマは唐突に叫んだ。 「世界じゃそれを、愛と呼ぶんだぜ~!!」 「や、やかましい。黙れ」 「おあっ、図星か!?図星なのか!?」 ---- その後。 宴会も終わり、いざ出撃となった。 自動小銃を隠したギターケースを、各自背負う。 そこでユーリが言った。 「なあ、果たして上手くいくんだろうか」 「さあな。わからん」 それを聞いたノームが言う。 「二人共、これを見て」 ノームが持っているのは、スマの目を一時的とはいえ機能停止に追い込んだ、あの100円玉であった。 彼女はその100円玉を真上に放り投げ、落ち目になったそれをキャッチした。 両手を動かして素早くキャッチしたせいで、どっちの手に100円玉があるかまではわからない。 「さあ、100円玉は右手にあるか、それとも左手にあるかな」 「……?」 二人は拍子抜けした。 「どゆこと?」 「いいから、どっちだと思う?」 二人は顔を見合わせたが、 「右手、かな」 「俺は左手だとおもうぜ」 やがてそれぞれの意見を述べた。 彼女はゆっくりと手を開いた。 100円玉は、どちらの手にも入っていなかった。 彼女は、ユーリの服の襟元から100円玉を抜き取った。 「…え?」 二人は同じように驚いた。 「ほらね。ものごとなんて、こんなものだよ」 ノームは続ける。 「上手く行くことも、行かないことも、こんな風に予想もしなかったことが起こることだってある。やってみなくちゃ、わからないんだ」 彼女はそう言って、100円玉をポケットに収めた。 「そうか…。そうだよな」 「ああ」 二人はなんだか妙に納得できた。 同時に、不思議と恐れも鎮まった。 「さあ、行こうか」 少年達は空を見るために、地上へと旅立った。 -------- あとがき 読み切りのサイズに収めるために、結構話がカツカツになってしまいました(い や、まだオーバー気味ですが)。 この雑文は、キーワードである『愛』『空』『地底』『100円玉』を、最もストレートに解釈した結果です、はい。 ギャグの才能はなかろうし、ラノベみたいになるのも何か嫌だったので、結構重めなストーリーにしたつもりです。 心理描写とかのテクとかは無いに等しいですが、文才のない自分なりには頑張ったかなと。

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