日本人作家:あ行


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阿部和重/ニッポニアニッポン

評価 ★★★
ジャンル 小説
出版年 2004
出版社 新潮文庫
コメント 阿部はよく「ハードな文体」と言われるが、読みにくいわけでもないし、難しいわけでもない。的確な描写と、緻密なストーリーで構成された純文学的な様相を示しながらも、現代的なテーマと、そこから生まれる現代的な空気が不純文学的な印象を与える、という面白い作家だと思う。内容はそこまで突飛なものではなく、三島の「金閣寺」を彷彿とさせる。面白いが、ベタで青臭い。

伊坂幸太郎/ラッシュライフ

評価 ★★★★
ジャンル 小説
出版年 2005
出版社 新潮文庫
コメント タランティーノの「パルプ・フィクション」のような巧妙な群像劇。自分の中でカット割りやカメラワークまで考えてしまうくらい鮮明な映像が広がっていく。エッシャーの騙し絵に関するエピソードが、5人のキャラクター像を個別のものにしており、造形の妙が垣間見れる。予想外の展開には舌を巻いた。

石田衣良/池袋ウエストゲートパーク

評価 ★★★★
ジャンル 小説
出版年 2001
出版社 文春文庫
コメント わかりやすい小説だ。文学としては普通だが、エンターテインメントとしては良質。色んな面白いエッセンスを含んでいるから、若者には支持されやすいだろうなと感じた。登場するキャラクターの心情や、彼らの行動原理とかいったものに現代的なニオイがある。そういう意味で、石田は今までにないタイプの新しい作家なのかも知れない。一番の成功点は「池袋」という場所を選んだこと。小説の中の場所を上手く描けば描くほど、物語に厚みが増す。描写にリアルな説得力が生まれるし、同時に現実と小説がパラレルになる。

石田衣良/うつくしい子ども

評価 ★★★
ジャンル 小説
出版年 2001
出版社 文春文庫
コメント リアリティが希薄で、先の展開がある程度読めるため、ミステリーとしては落第点。ただ、少年が社会からの弾圧を受けつつも、しっかりと自分の意志を貫いていくという過程には、ジーンとくるものがある。そして、この物語は、少年犯罪というものに対する姿勢において、他のあらゆる作品よりも秀でているように思う。事件そのものの背景ではなく、少年に対する理解であるとか、マスコミや社会に対する異常性であるとか、そのあたりを上手く描けている。少年犯罪に初めてちゃんと向き合った小説として、評価しておきたい。

大崎善生/パイロットフィッシュ

評価 ★★
ジャンル 小説
出版年 2004
出版社 角川文庫
コメント 現代文学にありがちな「村上春樹的文体」の典型的な作品。そのテーマとするところも、やはり村上的な「寂しさを前提的に内包したもの」だろう。そこに広がる透明感は理解できるが、歯痒く感じる。主人公や、彼を取り巻く人々との状況に、自分を強く重ね合わせることは出来た。ラストでの主人公のモノローグが印象的。

大槻ケンヂ/リンダリンダラバーソール―いかす!バンドブーム天国

評価 ★★★
ジャンル 小説
出版年 2002
出版社 メディアファクトリー
コメント バンド・ブームの隆盛から衰退をエッセイ色の濃い文体で書いた私小説。自分の心象を表現する際に話し言葉をよく使う、というタイプの文章はどうもよろしくない。そういう文章形式は、作家の素の部分が見られるという点では面白いと思うが、小説の要素としては非常にウザイ。とはいえ、当時の空気感であったり、ブームに翻弄されたバンドマンたちの生き様とか哀愁みたいなものは伝わってくる。「夢」と「現実」の板挟みの中で、ときに昂揚し、ときに苦しみ、色んなことに気付いていく過程というのがあって、そういうのがありありと表れているように思う。

小川洋子/博士の愛した数式

評価 ★★★
ジャンル 小説
出版年 2005
出版社 新潮文庫
コメント 小川洋子の文体はすっと頭に入ってくる自然なものだ。静謐な文章が心地良く、温かくも切ないストーリーに綺麗に収められている。数学には全く興味はないが、この物語のおかげで数学に多少の愛着を持つようになった。3人の交流をより深く描くためのエピソードが少な過ぎるし、ラストがあまりにすんなりと流れていってしまうために読後感も薄い。とはいえ、この物語においてはこれくらいの分量であることの方が成功なのかも知れないし、ハッピー・エンドであるからにはラストを軽くしなければならなかったのかも知れない。

乙一/GOTH

評価 ★★★
ジャンル 小説
出版年 2005
出版社 角川文庫
コメント 乙一のミステリ手法は本格的だ。文章によるトリックが巧く、読み終わった後の「なるほど」感も強い。しかし、そういうトリックがある、という認識を先に持たせてしまう作家でもあり、もう一段階成長してもらいたいとも思う。どんなに突飛な設定で有り得ないストーリーであっても、頭の中でイメージさせる映像美がある。キャラクターの描き方も巧く、登場する人物が紙面の上を勝手に動いてくれる。

乙一/ZOO

評価 ★★★★★
ジャンル 小説
出版年 2003
出版社 集英社
コメント 乙一は才能溢れる作家だ。「陽だまりの詩」のようなファンタジーも書けるし、「SEVEN ROOMS」のような本格ホラーも書ける。「血液を探せ!」はコメディ・タッチの面白いミステリーだし、表題作「ZOO」は良質なサスペンスとして成立している。ジャンルを越えた様々な文体の中で、彼の個性がしっかりと根付いているように思う。文章能力や文章構成が上手いということではないと思うが、無理をしていない感じが好感を持てる。読みやすいし、映像にしやすそうな的確な描写があって、なおかつアイデアが素晴らしい。久しぶりに刺激を受けた作品。

乙一/夏と花火と私の死体

評価 ★★★★★
ジャンル 小説
出版年 2000
出版社 集英社文庫
コメント 二人の子供が死体を隠す、隠すと見つかりそうになる、発覚を恐れて死体を移動させる、という一連のサスペンス演出がすごい。スリリングな展開で読者を飽きさせないような工夫と、緊張感を煽る描写と、余計なものが削ぎ落とされた完璧な視点があり、構成力もある。また特筆すべきは、その文体・語り口であり、少女は少女のまま「神」の視点を得るために、死んだ少女の「語り」を残したままになる。そこがすごく変で微妙だが、サスペンスにピタリと嵌る。


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