日本人作家:ま行


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舞城王太郎/阿修羅ガール

評価 ★★★★
ジャンル 小説
出版年 2005
出版社 新潮文庫
コメント 危険な文体だと思うが、見えるもの・聞こえるものをひたすら描写して、なおかつキャラクターの輪郭を作り上げていくという難しいことに成功している。縦横無尽に展開する内的世界。軽快なテンポで物語を構築していて、ちょっと衝撃を受けた。現代的なテーマを、かなりあけすけな感じで描いていて、10年も経てば色褪せてしまうテーマをわざわざ取り上げる潔さが舞城にはあるように思う。

舞城王太郎/みんな元気。

評価 ★★★
ジャンル 小説
出版年 2007
出版社 新潮文庫
コメント 舞城は不思議な作家だ。文体や、用いるテーマは非常に現代的で、ある意味では文学から逸脱している。しかし、そういったアカデミックな側面からは評せない面白さがある。突拍子もないアイデアの集合体を、リアルでシュールなものに変換するために舞城の文体はあるのではないか。つまりは確信犯だ。読みにくさは確かにあるが、その読みにくさを逆手に取って、彼の物語世界へと読者を強引に引き込んでいく。

三崎亜記/となり町戦争

評価 ★★
ジャンル 小説
出版年 2004
出版社 集英社
コメント 主人公の知らないところで「戦争」はひっそりと始まり、ひっそりと終わる。まるで隣のテーブルで行われているゲームを、その内容もルールも知らないまま傍観するような視点で、この物語は「戦争」と「日常」を描いている。リアルな「戦争」の描写がない分、まるで映画やニュースの中にしかない「戦争」のようで、明確なイメージは出来ず、それはあまり好ましくない。設定自体は面白く、村上春樹的な文体にうすら寒さを覚えることもなかったが、この物語を許容することは生理的に無理そうだ。

三島由紀夫/潮騒

評価 ★★★
ジャンル 小説
出版年 1955
出版社 新潮文庫
コメント 三島作品の中では比較的読みやすく、およそ三島らしくないほどのストレートな恋愛物語である。ただ、文体そのものには彼独特の視点というか美意識はあって、島や海の繊細な描写や、純愛を貫くがゆえ苦悩する男女の心の機微など、例え物語が「らしくない」としてもやはり三島作品であることに変りはない。読み慣れた人には物足りなさを感じさせるくらい、あまりに禁欲的な愛しか表れず、怒涛の展開もないまま、緩やかなハッピーエンドが待っている。そこに多少の歯痒さも感じる。

村上春樹/海辺のカフカ

評価 ★★★
ジャンル 小説
出版年 2005
出版社 新潮文庫
コメント カフカ少年の日々と、ナカタさんの謎に満ちた旅が交錯して描かれ、ミステリアスで抽象的な物語が紡がれていく。物語の最後で「この世界はメタファーだ」という発言もあるように、村上の作品は押しなべて「メタファー」に満ちている。そういった文体・物語構成には飽き飽きするが、この作品に限っては「メタファー」以外の文章は有り得ないのかも知れない。多少強引な方法でありながらも「成長」を「メタファー」によって描くことで、読者に物語の「メタファー」性を示しているようにも思う。

村上春樹/神の子どもたちはみな踊る

評価 ★★
ジャンル 小説
出版年 2002
出版社 新潮文庫
コメント 地震という要素があるからこその短編集なのだが、そこまで拘らなくても良かったのではないかと思う。まるで取ってつけたような印象を持ってしまい、その時点で感動を呼ばない。「蜂蜜パイ」という書き下ろし短編は秀作だった。

村上龍/限りなく透明に近いブルー

評価 ★★★★
ジャンル 小説
出版年 1978
出版社 講談社文庫
コメント 村上龍のデビュー作。当時の文壇においてはスキャンダラスな小説だったことだろう。村上龍作品における「破壊」の原点。映像的に繰り広げられるイメージは読者の脳内を揺さぶる。それはまるで、作中で描かれるドラッグとセックスである。快楽、あるいは絶望や不安を同時に与えるようなもの。ラスト近く、黒い鳥の描写に震えた。

村上龍/空港にて

評価 ★★★
ジャンル 小説
出版年 2005
出版社 文春文庫
コメント 限られた空間の中での、ほんの一瞬を切り取った作品群。あまりに仔細な情景描写と語り手の心情描写だけで構成され、ストーリーと呼べるようなものは存在しない。ただ、そこには必ず「希望」が設定され、スケッチとしての文章に大きな広がりを持たせている。文体は処女作から変らず正確だが、あくまでも虚構である小説世界から「希望」を示そうとしたところで、きっと読者には伝わらないだろう。反体制的な指向のない村上作品はちょっと物足りない気がする。

村上龍/半島を出よ

評価 ★★★★★
ジャンル 小説
出版年 2005
出版社 幻冬舎
コメント あまりに奇抜なアイデアだが、そこにリアリティを付加してしまうのが村上龍だと思う。細かな研究・分析があり、さらには彼のあくまで客観的な視点による文体が、より一層の生々しさを持つ。特にホテルでの戦闘シーンにおいて、グロテスクな描写を淡々と重ね折ることによって生み出される緊張感は村上ならでは、という感じがする。そのせいでエピローグが尻つぼみになり、読後の虚しさが強くなってしまう。長編にも関わらず、見事なテンションを保っている。

村上龍/恋愛の格差

評価 ★★
ジャンル エッセイ
出版年 2004
出版社 幻冬舎文庫
コメント 村上のエッセイが面白いのは、誰もアナウンスしないことをはっきり言ってくれるところだろうか。「変だな」と思うことを、しっかり文章にしてくれる。「経済格差が露呈し始めた現代の日本では、恋愛にも格差が生じてきている」というテーマで書かれたエッセイ集だが、実際は市場経済の社会化、日本語の多様化、人生モデルの消失、マジョリティとマイノリティ、引きこもりやフリーターの現状を暴く中で、個人の生活スタイルが変わってきていて、そのことを多くの人が気付いていない、メディアはアナウンスしない、そのことに危機感を持て、という彼お得意の理論展開が為されているだけだ。個人の生活スタイルが変わってきているということは、同じように恋愛スタイルも変化しているとわざとらしく付け加えることで、辛うじて「恋愛」に関するエッセイとして読めるだろうか。

モブ・ノリオ/介護入門

評価 ★★
ジャンル 小説
出版年 2004
出版社 文藝春秋
コメント この作品は小説として成立していない。会話や描写のない独白ばかりが続いて、文法もへったくれもない。そのくせ表現が堅苦しい。「小説慣れ」していないと読みにくいだろう。ある一定のリズムが掴めれば割とさらっと読めるが、テーマがテーマだけにその点は許容すべきなのかも知れない。なんとなく「芥川賞」の必然性みたいなのは感じる。上手か下手かで言えば下手ではあるが、その下手さが文学性を内包するといった逆転が起こる。

森村泰昌/時を駆ける美術

評価 ★★
ジャンル エッセイ
出版年 2005
出版社 知恵の森文庫
コメント 衒学や押し付けで構成された評論ではなく、非常にわかりやすい言葉と独自の視点で美術を語っているので好感が持てる。既存の美術の魅力を理解した上で、それをある意味で冒涜している彼らしいユニークな文章だ。例えば、ピカソの「ゲルニカ」を引き合いに出して「良い絵なのか、そうでないのかわからない」とさえ言っている。ピカソを評する上で最も正しい言葉は「わからない」だと思うが、「わかった」素振りをしない森村は潔くて面白い。美術初心者が「美術鑑賞の副読本」として読むものではなく、芸術家の文章に触れることで、今一度「芸術」を考え直すための上級者用のマニュアル本である。

森山大道/犬の記憶

評価 ★★
ジャンル エッセイ
出版年 2001
出版社 河出文庫
コメント 森山の文章には、彼が撮り続ける写真と同様のパワーと描写と難解さがある。そこに森山の写真家としてのアイデンティティが見えてくる。例え文章であっても、彼が表現しているのはあくまで写真であり、いつだってシャッターを切っているのだ。自分の中で論理的に、あるいは突発的に浮かんだ感情を、今まさに見えている風景に投影して記録する。そのツールが言葉であるか写真であるかの違いしかない。「ふるさと」を持たない森山だからこそ、あらゆる場所が「ふるさと」になる。そこで邂逅した様々な人や風景、そして自分自身の葛藤や衝動についても書かれている。


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