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日本人作家:は行

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灰根子/カミキレ

評価 ★★★
ジャンル 詩集
出版年 2005
出版社 新風舎
コメント 「カミキレ」という言葉は「神切れ」と変換すべきであろうか。「神からの脱却」=「神的なものへの拒否」へと繋がり、それは世界や個人への否定にも結びついていく。むしろ、世界や個人への拒否・否定というのが最初にあって、神や天使といった存在はそのメタファー以上にはならない。そこには宗教的なニオイもないし、無神論的な糾弾があるわけでもない。あくまで私的な視点からの詩が表出している。重苦しいテーマやイメージがあるリズムに縛られることで、詩そのものを読みやすくさせ、それによって読者に良い意味での違和感を与えているように思う。しかし、そのせいで一つ一つの作品に大きな印象を与えにくくさせてもいて、全体を読み終えないと何も見えてこない、といったある種の転倒が起こる。

萩原朔太郎/猫町 他十七篇

評価 ★★★
ジャンル 詩集
出版年 1995
出版社 岩波文庫
コメント 頭から爪先まで徹底的に詩人である朔太郎の感性に痺れる。例えば鉄筋コンクリートを虫だと捉える無邪気さ、群集の中にこそ居場所を見出す孤独感、イメージを現実に置き換える想像力、そういった詩人の要素の全ては朔太郎の中にこそある。表題作「猫町」におけるファンタジー性も面白いが、彼の散文詩の幾つかには感動で涙が止まらなかった。

保阪正康/あの戦争は何だったのか―大人のための歴史教科書

評価 ★★
ジャンル ノンフィクション
出版年 2005
出版社 新潮新書
コメント 日本における戦争の形、その全体像は見えてくる。しかし、明確な出典先が示されない資料や発言を基にした、著者のやや右寄りな視点が加わることで、結局「何だったのか」をわからなくさせてもいる。「戦争を引き起こしたのは実は海軍だった」という糾弾は面白いが、なぜ責任をそこに持っていくのかわからない。ただ、こういう書物が売れる背景というのは興味深い。一般的なヒューマニズムしか映し出さない「戦争」については、誰もが無知なのだ。

本多孝好/MISSING

評価 ★★★★
ジャンル 小説
出版年 2001
出版社 双葉文庫
コメント 物語だけを取り出すと、そこに新鮮な雰囲気はないかも知れない。心を打たれるのは、構成が巧みだからだろう。五つの短編が収められていて、それぞれのストーリーが切なく進んでいくわけだが、小さな小さなトリック・謎を潜ませている。主人公となる人物が看破あるいは推理すればするほど、その切なさは広がっていくのだ。「祈灯」「瑠璃」など、人間の醜さとその苦悩、あるいは欲望と自己批判のジレンマを体現する。「MISSING」というタイトルが読者に迫ってくるようだ。


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