「助けて!さーか!」
さーかは私の友人であり、親友だ。
私はさーかが助けにくるはずが無いことを知っていて呼んだ。
「おしゃべりはそこまでです」
部屋中に無機質な声が響き渡る。
変声機を使っている…….
突然、壁に映像が映った。
「皆様、マーダーゲームへようこそ」
キノコのドクロを模したキャラクターが声に合わせて口を動かす。
ていうか、キノコにドクロはないだろう。
「私は主催者でありゲーム進行役のピノコオです」
ピノコとピノキオ混ざってるよ!
そういう突っ込みをしそうなぐらいには私は混乱していた。
「さて、マーダーゲーム、即ち、人殺しゲームのルールは簡単です。
部屋には3人の人間がいるでしょう。
誰か一人を決めて殺してください」
は……?
いま、なんて……?
「ふざけんな!はやくここからだせ!」
ロボが映像に向かってどやしかける。
「マーダーゲームの勝利者はここから出る権利を与えられます」
無機質な声は無機質に、私たちに暗に殺し合いを命じた。
誰も殺さなければ、この部屋に留まり続ければ、死は逃れられない。
誰かを殺して、誰かが生きる。
そういうことだ。
悪質で劣悪で、何よりも非道なゲームの始まりだった。
部屋にいる全員が互いを見合わせた。
恐らく探っているのだろう、殺すのか殺さないのか。
「あの……まさか、みんな本気にしてないよね?」
最初に口を開いたのは333の人だ、この人は何故か沈黙が耐えられない。
「バカバカしいよ、出られるってことは出口があるってことじゃないか」
それはそうだ、だが、恐らく出られないだろう。
「相手は殺し合いを求めてる、逃げ道は無いと考えたほうがよさそうよ」
酷く、小さな声だったと思う。
人が人を殺すのはその人が窮地に立ったとき。
逆に言えば人殺しを求めるということは窮地に立っていることを暗に知らせているのだ。
「じゃあ、殺し合うっていうのか!?」
咀嚼が怒声を上げる、だんだんムカっぱらが立ってきた。
「反論するなら具体案を言いなさいよ!ただ吼えても何も変わらないわ!」
「グ……」
咀嚼が黙る。
正論だからだ。
しかし正論は時に人を傷つける。
そのとき私は失敗したことを自覚した。
「じゃあやってやる!俺が指名するのは監修、あんただ!」
やってしまった。
殺し合いをするのなら、仲間を作ることが大事だと言うのに。
「僕は咀嚼を指名するよ」
え?どうして?
今、私を指名すれば私が死ぬ確立が2分の1になり、自分が死ぬ確立がかなり減るはずだ。
一体どうして……。
「女の子を殺すのは忍びないからね」
「はっ!フェミニストを気取ってる場合じゃないぜ!」
咀嚼の言うとおりだが、私にとっては僥倖だった。
だが、私の運命は残されたロボに握られてしまうことになってしまう。
ロボが私を指名すれば2対2で引き分け、ロボと咀嚼と戦うことになる。
もちろん結果は死。ヒョロイ優男と女の私とでは実力差が違う。
逆に、ロボが咀嚼を指名すれば一気に勝率は高くなる。
3対1。
プロの格闘家が素人相手でも勝てる見込みは二人までだという話を聞いたことがある。
女の私でも足止めぐらいはできるだろう。
そして、ロボと優男が二人がかりで攻撃すれば……。
……私、どうしちゃったんだろう。
もう、咀嚼を殺すことしか考えていない。
自己嫌悪に陥りそうになる。
しかし、生きるためには殺すしかないのだ。
弱肉強食。
ここは平和な私たちの世界とは違うことを認識しなければならない。
「ロボは誰を指名するの?」
なかなか動かないロボに意を決して聞いてみる。
もし、ここで私なら死は決定する。
咀嚼なら、まだチャンスがある。
お願い……咀嚼を選んで!
「俺は――」
ロボが口を開く。
お願い!お願い!お願い!
「俺は333の人だ」
は?
今、なんて?
「……」
333の人は黙ってロボを睨んだ。
しかし、その指名はあり得ないはず、ロボが一番出たがっていたのではないか
何故、そんな勝率のひくい……。
……そうか!
見るからに筋肉の無い333の人と女の私では、例えロボが加勢したとしても咀嚼に勝つには多少の傷を覚悟しなければならない。
333の人を指名するということは、咀嚼に力を貸すというわけではないのだ。
むしろ、333の人と私VS咀嚼の構図が出来るから、残ったほうを潰すという戦略だろう。
くっ、あれだけ取り乱していたのに、今この状況でそんなに頭が回るとは……。
変な格好をしているが、ロボは侮れない。
となると、私はもう宣言をしてしまった。
333の人と一緒に戦い、勝機を見出さなければならない。
最終更新:2007年07月04日 05:53