世界が見えた世界・11話 A


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  • 10話選択肢で<貫く>を選んだ場合

 階段を下りると、混沌とした香りが鼻腔をくすぐった。くすぐるっつーか抉った。

大翔「美優のやつ、失敗しやがったな」

 呆れ、それでもまあ進歩はしているしその辺は認めないとなぁなどと胸中で呟きながら扉を開ける。

大翔「よう、もう二人とも起きてたのか」
美羽「おはよー兄貴。今日は昼まで寝てるかと思ってたけど」
大翔「せっかくの休日を寝て過ごすのはもったいないだろ」

 ま、それはそれで素敵な過ごし方だけどな。それよりも今問題にすべきはこの刺激臭だ。

大翔「美優はどのくらいキッチンに閉じこもってんだ?」
美羽「二時間……くらい?」

 えーっと、今八時半だから、大体六時半くらいからか。嘘こけ。
 ほれほれ本当の事を言いなさい。言わないと今漂ってくる匂いの元を全部お前の胃袋に流し込むぞ。

美羽「……五時くらいに、すでに物音が聞こえてました」
大翔「美優ー!!!!」

 うきゃあぁぁぁっ!! などという悲鳴と共にどんがらがっしゃんと何かが崩れる音。
 ため息ひとつ、俺は魔窟と化しているであろうキッチンへと踏み込んだ。




 俺は人の努力を否定したりなどしない。頑張ることはいいことだ、うん。方向性を間違っていたり度を越していたりしなければ、の話だけど。

大翔「というわけでジャッジタ~イム。本日の美優は度を越していると思う人」

 判決、二対一により有罪。

美優「ふ、不当採決だよぉ!」
大翔「ほほう……じゃあお前の背後に広がる天外魔境はどういうことだ?」

 朝っぱらから美優に占拠されたキッチンは、その様相を大きく変えて今や――ああいいや、なんか説明したくない。ていうかこの状況を説明できる人間がいたら尊敬する。
 水が重力を無視して宙に浮いてんだがどうやってんだこれ。魔法か、おい。

大翔「美優、お前の努力は認める。確かにお前はここしばらくでその料理の腕を伸ばし、確実に進歩を遂げている」
美優「だ、だよね、だよねっ!?」
大翔「しかしそれに伴って失敗時の被害も乗数的に拡大しているのはどういうことだっ!?」
美優「そ、それは、その……」

 おう、なんだ言ってみろ。

美優「ち、ちゃれんじスピリット?」
美羽「いやアタシに聞かないでよ……」
大翔「だからって二人揃ってこっちを見るな! 一番聞きたいのは俺なんだよ!!」

 結局台所を片付けるのに一時間近くかかってしまった……。

大翔「だからさぁ、お前はあまり時間をかけすぎると逆に失敗するんだってば」
美優「で、でもほら、酢豚はおいしくできたよっ!!」

 ああうん、確かにこの酢豚はうまい。ちょっと感動してしまうレベルだ。店で出てきても俺はがっつり食うね。

大翔「けど何で朝から酢豚よ」
美優「いつの間にかできてた」
大翔「酢豚か? これ本当に酢豚なのか!? 実は何か得体の知れないものなんじゃないだろうな!?」

 今まで自分が食べていた酢豚(?)を凝視する。大丈夫か、これ実は魔界の生命体だったりしないだろうな?

美羽「兄貴、ちょっと疑いすぎだよ」
大翔「といいつつなぜこっそり皿を俺のほうに寄せてきているのか詳しく説明してもらおうか」

 美羽は答えず、ただ親指をぐっと立てていい笑顔を浮かべた。敵前逃亡か貴様っ!
 食卓をはさんで火花を散らしていると玄関のチャイムが鳴った。誰だ、こんな時間……て時間でもないか。でも誰だ?

美羽「あ、たぶん陽菜さんだよ。さっき事情を話しておいたから」
大翔「事情……って?」
美羽「美優が朝食作るために台所に入っちゃったんですよーって。そしたら笑って『それじゃあ朝ごはん作ってもっていくよ』だって」
美優「あ、あれぇっ!?」
大翔「おおそれは助かる。さすがに酢豚(?)だけじゃ腹は満たされないしな。片付けで疲れて何かを作る体力もないし」
美羽「いやほんとほんと、持つべきは隣に住む幼馴染だよねー」

 美羽が駆け足で陽菜を出迎えに行く。美優の視線がこちらへ向いてきた。はてさて、何か言いたいことでもあるのだろーか。

美優「ね、ねぇ、その会話、おかしいよね、ね? 何でワタシがご飯作ってるのにそんな話になるの?」

 なにやら美優が必死になっているけど聞こえません。あーあーきこえませんきこえませーん。
 都合の悪い事実には耳を貸しませんとも、ええ。

美優「大丈夫だよお兄ちゃん、かえって耐性がつくよっ」

 ……何に対しての? て言うかそれ認めてるぞ、自分の製作物の毒性。

陽菜「みんなー、おっはよーっ! 待ちに待った陽菜ちゃんのご登場だよ、オマケつき!!」
エーデル「げほっ! ごほっ! がほっ!!」

 青い顔をしたエーデルの襟を引きずりながら陽菜が賑やかに入ってきた。すごい、完全に気道が絞まっている。

大翔「陽菜、そいつはなんだ?」
陽菜「朝散歩してたら見つけたから拾ってきたんだよ、相変わらず不健康そうな顔してたから!」

 ナチュラルに酷いこといわれたアホ王子涙目。不健康というよりは貧弱なだけだと思うけど。
 じたばたと暴れているエーデルの動きがだんだん鈍くなってきた。

大翔「陽菜、そろそろ放したほうがいいんじゃないのか、それ」
陽菜「え、何が?」

 本気で理解なさっていない模様。
 別にエーデルがどうなろうと知ったことではないけどうちで人死にが出るのもいやだし陽菜を殺人犯にしてしまうわけにもいかない。

大翔「ほら、お前が引きずってるエロい物体だよ」
陽菜「んにゃっ? のぉぉぉっ!? え、えーちんが何者かの手により瀕死の状態にっ!?」
大翔「俺の目の前に犯人がいるんだが」
陽菜「えぇっ、美羽ちゃん!?」
美羽「なぜそこでアタシが出てくるんですかっ!?」
陽菜「んー、流れ的に?」
美羽「流れでいきなりアタシを殺人未遂の犯人に仕立て上げないで下さい! どこから見ても陽菜さんのせいでしょう!」

 陽菜はおもむろにエーデルから手を放すと、すすす……とすり足で俺の隣まで寄ってきた。
 そして、びしぃっ! とポーズを決める。

陽菜「今えーちんに一番近いのは美羽ちゃんだよ! つまり犯人は美羽ちゃ――い、痛い痛い痛いよー!?」
美羽「ええもう犯人なら犯人らしく強硬手段に出ることにいたしましたので……!」
陽菜「ヒロ君助けてー!!」
大翔「えーっと、あ、これが持ってきてくれた食事か。ありがたく頂くぞ、陽菜」
陽菜「華麗にスルー!?」

 あいにくと怒りの美羽には歯向かうつもりなどゼロだ。勝ち目云々以前に勝負にならない。

エーデル「げほっ、ごほっ……と、言うかだね。君たちは僕のことをもっと気にかけるべきではないのかい?」
大翔「殺しても死ななそうだしなぁ……」

 貧弱なのに。

エーデル「大体君、なんだい? 唐突に人のことをエロいなどと……失礼にもほどがあるだろう!?」
大翔「おいおい、勘違いするなよ。俺は褒めたんだぜ?」
エーデル「……何?」
大翔「つまりな、エロかっこいい=セクシーって伝えようとしたんだよ。んで、エロかっこいいって長いだろ? だから『エロ』かっこ『い』いっていう風に文字を取って略したわけだ」

 ま、嘘だけど。
 しかしエーデルはそんなほら話を真に受けたらしい。

エーデル「ふむ……そうか。エロかっこいい……セクシー、エロい、か。ふ、貧相な庶民にしてはなかなかのネーミングセンスだね!!」

 なにやら一人で納得している。
 とりあえず新学期からのあだ名はエロ王子で定着しそうだな。ていうか定着させてやるから覚悟しとけ。
 俺とエーデルは互いに不敵な笑みを顔に浮かべてにらみ合う。くくく、庶民の力というものを思い知らせてやる。

美優「お兄ちゃん、ワタシもエロい風味に……」
大翔「なれないっつーかならなくていいから」




 そんなこんなでなぜだか大所帯での食事になった。

大翔「っつーかエーデルはこっちのほうあまりこないだろ。何でノコノコ出歩いてんだよ」
エーデル「僕だって散歩くらいはするさ。それに……」

 エーデルが目を細める。
 この中では、俺にしかわからない意味を、込めて、

エーデル「あれから、ちょうど一年だからね」

 言った。


 一年。その言葉が表すものは、大きい。
 一年前の八月三十一日、世界規模で起こった天変地異が、日本時間の九月一日になった途端にその全てが収まった。
 原因不明の大災害。地震に津波、吹雪竜巻火山の噴火。本気で世界の終わりを想像した人も、いただろう。
 ……多くの人が、犠牲になった。
 それがほんの数人の人間によるものだということを知っている人間は、少ない。事実、今も世界中の研究機関や学者や、魔法使い達までもが原因の解明に奔走している。二度とあんなことが起こらないように。


 ニュースでは、ちょうど一年となる今日を祝って世界各地で催し物が行われていると言っていた。まだ完全に全てが元通りになったわけではないし失ったものも多いけれど、それでもこの一年、この世界は多くのものを取り戻してきた。
 今日は平日で本来なら学校があるべき日なのだが、そんな日なので休みになっている、というわけだ。
 ……俺としては、ありがたい話だ。

陽菜「それにしても、あれから一年かぁ。長かったようで、短かったよねぇ」

 陽菜はしみじみと天井を見上げた。

美優「あの時は本当に心配したから……」
美羽「そうだよ兄貴。自分の体に世界の礎を宿らせてそれを貫くなんて危ない真似を勝手にするんだもの」
大翔「だーかーら、悪かったって言ってるだろ?」
美羽「謝って済むものじゃないの! 大体兄貴はねぇ……」

 あーもう、美羽の小言は始まると長いんだよなぁ……。自然とため息が漏れた。
 ふと、視線を感じる。
 そちらをむくと……エーデルと、視線があった。ああ、わかってるってば。わかってるんだよ。

大翔「あー。その話はまた今度な! 俺今日学校に行かないといけないんだよ、もう行かないと。あとお前はもう出てけ」

 そういいながらエーデルを引き摺って居間を出る。

美羽「あ、ちょっと待ってよ、アタシも行くから!」
大翔「何かあるのか?」
美羽「生徒会には、色々とね」
美優「あ……わ、ワタシも行くよ」

 なんだ、結局全員出撃か。

大翔「陽菜はどうする? どうせだし、一緒に行くか?」

 陽菜は顎に指を手を立てて考えて――いや、これは、

陽菜「ううん、陽菜はいいよ、ヒロ君」

 考えている、ふり。

陽菜「大事な用事、なんでしょ?」

 まるで心のおくまで見透かすようなその視線に、俺は何も答えられなかった。

大翔「……んじゃ、行ってくる。留守番、頼んでいいか?」
陽菜「はい、頼まれたよ。だから、ゆっくりしてきてね、ヒロ君」

 俺は静かに、居間の扉を閉じる。
 何も知らないはず。でも、何かを感じてくれたんだと思う。それが純粋に、嬉しかった。

美羽「それじゃあアタシは制服に着替えてくるから先に玄関で待っててよ」
美優「あ、ワタシも」

 二人は階段を駆け上がっていった。途端に会話がなくなる。俺とエーデルはお互いを牽制しあうように並んで玄関の外に出た。
 なんていうか、やっぱりこいつとは何年経っても合わないな。

エーデル「世界は――」
大翔「あん?」
エーデル「世界は、あれだけのことがあったというのに、ほんの一年でこれほどまでに元の姿を取り戻す」

 ……何を語っていらっしゃるのでせうか、この人は。

エーデル「それに対して人の心の複雑で単純な事だとは思わないかい? 一年もかけずに新たな想いを抱くこともできれば、何年経とうとも想いを断ち切れないこともある」
大翔「人間が、そういう風にできてるんなら仕方ないだろうさ」

 日差しに手をかざす。どれだけ地上が騒がしくなっても、この空だけは一年前と何も変わらない。
 そのことが少し、嬉しい。

エーデル「僕は永遠に君という存在と相容れないだろう。僕は君のことが大嫌いだ」
大翔「そりゃ気が合うな。俺もお前のことはこの上なくだいっ嫌いだ」
エーデル「だが君のその想いだけは認めよう。誰が忘れても……たとえ君自身が忘れても、君がその一途な想いを背負って生きてきたそのことは、この僕は忘れない」

 なんとなく、こいつはそれが言いたいがためにうちにきたのかと、そんな風に思った。
 尊大で自己中心的で人の話を聞かないやつだったが……まあ、悪いやつじゃない、よな。

大翔「ま、俺もお前のことは認めてやらなくもないさ。お前がいなけりゃ、この世界の今はもしかしたら違うものになってたかも知れないしな」

 エーデルは不満そうにふんと鼻を鳴らすと、そのまま歩き出した。

大翔「? お前学校に帰るんじゃないのか?」

 ちなみに、今はエーデルは学校の敷地内に立派な一軒家を建ててそこに住んでいる。許可が下りたらしい。なんでやねん。

エーデル「ヒナ嬢が言っていただろう。ゆっくりしてくるといい」
大翔「……ああ」

 礼は言わないでおいた。なんとなく、アイツはそれを嫌がるような気がしたから。
 歩くエーデルが角を曲がりその姿が見えなくなったとき、玄関が開き二人が並んで外へと出てきた。

大翔「おう、遅いぞお前ら」
美優「こ、これでも急いだんだよ~」

 わたわたと駆け寄ってくる美優。きょときょとと辺りを見回す。

美優「サフィールさんは?」
大翔「さあ。どっかいった」
美羽「適当ねぇ」

 適当で結構。肩肘張って生きるのは疲れる。
 俺達は並んで歩き出した。
 そういえば、この一年で俺達の生活の中で大きく変わった部分もある。そのひとつが学校だ。この春から、学校にいわゆる通学路というものが生まれた。
 今までは学内に直接転移していたが、今では学校の前の長い道の入り口に転移させられる。なぜこんな風になったのかといえば、これも一年前のあの災害によるものといっていいだろう。


 世界各地で各種自然災害が起こっていたわけだが、それは各地のコミューンにも共通する事だった。コミューンは空間的に実世界から隔離されているので津波や火山の噴火などの心配はなかったが、地震や暴風などの被害から逃れることはできなかった。
 いくら魔法使いが住む町とはいえ、怪我人が大量に出るし少なからず死人も出た。学園も授業どころではなかったので、活動の一環としてボランティア活動――つまりは災害復興の手伝いを全校生徒で行ったのだ。
 元々生徒は基本的に町との関わりをもてないが、これがいい機会になり経験になったということで、生徒と住民側との要望により通学路が設定されたというわけだ。
 今では通学路周辺には学生向けのアパートや食堂、商店なども並んでいる。一年でまあ、よくもここまで変わるものだと思った。
 まあその分色々と問題も多いようで、美羽は生徒会副会長としてせわしなく働いているわけだ。ちなみに美優は今では生徒会臨時委員としてかりだされている。
 一年もあれば、人も世界も、色々と変わるもんだな。


 体が沈むような浮くような不可思議な感覚に包まれ、瞳を開けると長い坂道の入り口だった。去年までなかった『通学路』も、今ではすっかりおなじみの光景だ。とはいえ、通るたびに何か建物が増えていくのを見るのはやはり面白い。ここがある程度形になるのは、まだ随分と先だろう。
 後ろを振り返る。すっかりと平穏を取り戻した町並みが、そこにはあった。
 一年前のあの光景を、俺は忘れることはない。特に二度目に礎を解き放ったのは俺だ。その影響がどれほどのものだったのかはわからないが、それが原因で何かを失った人も、やはり、世界にはいるんだろう。
 だから、この平穏な風景は俺にとっての免罪符であると共に、罪の証でもある。この痛みは少しばかり、重い。
 それを振り切り、長い坂道の一歩を踏み出した。

大翔「今日は学園か、通学路か?」
美優「お姉ちゃんと一緒に通学路の見回りだよ、最近こっちに引越ししてきてる人が増えているから、だって」
美羽「生徒側としては将来コミューンに入りたいのならこっちに居たいんでしょうね。そのおかげで、夏休みは結構人の動き激しかったみたいよ」

 むう、すでに将来を見据えた行動をしているのか。立派なもんだなぁ。まあ、魔法使いの力を生かしたいのならコミューンに入る方が都合はいいよな。魔法の使用の制限がないわけだし。

美羽「一応ここで待ち合わせなんだけど……」

 待ち合わせ?
 はて、と首をかしげた時、二人が現れた。

貴俊「うぃーっす、乙カレー!」
レン「久しいな、三人とも」
大翔「貴俊、レン」

 待ち合わせてたのは二人だったのか。

大翔「お前も一緒に見回りすんのか? 意外としっかり仕事してんだな」
貴俊「ふっ……これも、愛の力の為せる技だ。お前が帰ってくる頃にゃ面白可笑しく舞台設定しておこうと思ってな!」

 ああなるほど、余計なお世話か。

大翔「美優、塩撒いとけ」
美優「え、う、うん!」

 ごすがすごすぅっ!!

貴俊「ぎゃぁぁぁぁっ!?」
大翔「うぉお? い、岩……いや、岩塩かっ!?」

 大量の岩塩が貴俊に降り注いでいた。

大翔「いやまて、何でお前岩塩なんか持ち歩いてるんだっ!?」
美優「え……は、伯方の塩のほうがよかった?」

 違う。そういう意味で言ったんじゃない。つかポケットに塩を常備しているのがおかしいと思う。冗談で言ったのに。

大翔「けどまあしかし、攻撃力は必要ないんだし伯方の塩のほうがよかったって言えばそっちのほうが――ってどばーってかけてる!?」
美優「あ、あれ? だ、だめだった?」

 だめっていうか。いや確かに俺が言ったんだけど、本当にするとは思わないよね? て言うか俺撒けって言ったんだよ? そんな袋さかさまにしてぶっ掛けろとか言ってないよ?

貴俊「お、俺はもうだめだ……塩塗れになって干からびるんだ。あ、あとはみんなに任せて、俺はここで大翔の膝枕で休んで――」
大翔「美羽、水ぶっかけろ」
美羽「言われなくても準備できてるから」
貴俊「ごぼがばごべ!!」

 うわー、俺地上でおぼれそうになってる人初めて見たわ。
 二分くらいで静かになった。

美羽「それじゃあアタシ達は見回り行ってくるね」
大翔「ああ、気をつけて」
美優「い、行ってきます!」
大翔「美優、張り切るのはいいけど緊張しすぎるのもよくないぞ。それと、美羽のことを頼むぞ、こいつがもし暴れてる人間を勢い余ってついやっちゃいそうになったらあががががっ!?」

 脇腹が痛い! 刺す様な締め付ける様な痛みがっ!?

美羽「あーにーきー? ちょ……っと、静かにしようかぁ?」
大翔「静かにしたくてもお前の攻撃が……あああああ、します、いつまでも静かにしていますからっ!!」

 ようやく解放された。な、なんだったんだ今の痛みは。かつて味わったことのない種類の痛みだった……。
 どこであんな技術を身につけてくるんだろうなぁなどと思いながら、貴俊を引き摺って歩く美羽とその後ろをついていく美優を見送った。
 ……俺の周りの男は女に引き摺られる運命にあるんだろうか。となると次は……俺?

レン「? どうしたヒロト殿、何か怯えているように見えるが」
大翔「ああいや、なんでもない」

 いや、大丈夫だよな、うん。レンは理由もなく俺のことを引きずりまわしたりなんか……理由、理由、ねぇ。
 今日という日を考えるとおもくそその理由に心当たりができるんだんが。

大翔「えーっと、久しぶり、だな。二ヶ月ぶりくらい?」
レン「およそそのくらいかな。お元気そうで、何よりです」

 レンの恭しい礼に背中がむずかゆくなる。

大翔「なあレン、その敬語やめない?」
レン「従者が主に礼払うのは当然のことですが」
大翔「だったらその意地悪な目をやめてくれ」
レン「了解した」

 ふっとレンは笑顔を浮かべると、いつもの態度に戻ってくれた。

レン「この二ヶ月はどうだった? 顔つきは多少変わっているようだが」
大翔「人数が一人減るだけで負担が全然違うってのがよくわかったよ。ま、面白かったは面白かったけどさ」

 俺達が話題にしているのは、この二ヶ月――俺が、一人で旅をしていた時期の話だ。
 親父のように異世界を渡り歩いてみたいという気持ちを俺が打ち明けたところ、レンが旅の仕方を教えてくれるというのでしばらく一緒に旅をしていた。そして二ヶ月前にようやく大丈夫だろうという太鼓判を貰い、俺は一人旅に出たわけだ。
 俺が親父のように旅先で死んでしまわないかと本気で心配する美羽を説得するのは骨だったが、意外にもすんなりと受け入れてくれた美優と一緒に説得して説き伏せた。

レン「それで、無用な責任感も少しは和らいだか?」
大翔「相変わらずストレートな物言いだな……まあ、自分なりに解消はできたと思うよ」
レン「ふむ。ま、この世界で事の顛末を正確に把握しているのは我々しかいないのだから、あまり気負う必要はないと思うが」
大翔「誰かが知っているから償うんじゃない、俺が納得するために償うんだ」
レン「わかっているさ。そういうあなただからこそ協力した」

 そう言って、レンは紋章を取り出した。ん、どこかで見たやつだな。えっと、これは……

大翔「騎士団の紋章?」
レン「それがあれば騎士団寮に自由に出入りできる。団長がぜひとも一度全力で手合わせしたいそうだ」

 人というか熊にしか見えない騎士団長の姿を思い出す。うん、全力で拒否願いたい。

大翔「けど俺は……」
レン「姫様のことは関係なくあなたという人間に対しての要望だ、気にすることはない」

 そこまで言われると、断り辛いものがある。
 けどなあ、あの騎士団だろ?
 一日訓練に参加させられただけで三日間まともに動けなくなった、あの地獄の。いや、体力的にきついんじゃなくて、精神的にきつかった。詳しく思い出すと胃の中のものがナイアガラするから思い出さないけど。
 ていうかさ、もう体力的精神的に限界の人間を魔法で操って意地でも動かすって悪魔のすることだよね?

大翔「まあなんていうか、過ぎてみれば全部思い出になるのが怖いな」
レン「出来事とは得てしてそういうものだ。辛い苦しいと思ってみても、過ぎてみればそれでも良かったと思い返せる。もっとも、世の中には都合のいいことしか思い返そうともしない人間もいたりするが」
大翔「ええほんとにねぇもう!」

 ちくちくと人の弱点をピンポイントで! そういうことすると泣いちゃうぞ!?

大翔「……っと、それよりも今日は俺に会いに来たのか?」
レン「ああ、今日が最後、なのだろう」
大翔「そうだな、今日で最後だ」

 息と共に感慨を吐き出す。虚空に溶けた気持ちは、果てない空へ上っていく。限りなく薄く透明に広がりながら、それでも、消える事無く。

大翔「長かったようで、短かったな、やっぱり」
レン「ヒロト殿……」

 レンの視線を避けるように空を見上げ、歩き出す。学園までは、もう少し歩く必要があった。


 一年前の、あの日。ユリアが消えた後、世界は少しだけ残酷な現実を俺に突きつけてきた。
 ユリアという存在の消失。その結果、ユリアはこの世界に存在していなかったことになっていた。この世界の人間でユリアのことを覚えていたのは、直接干渉した俺だけ。レンとエーデルは異世界に属していたおかげで、この世界の干渉を受けることはなかった。
『姫様は、もうこちら側の人間といっても差し支えないほどに、この世界へ溶け込んでいたのだろうな』
 そう呟いたのはレンだった。
 存在の消失による影響が出るのは、その存在の属する世界においてのみ発生する、とのことだ。ユリアは、俺達の世界の一員になっていた。
 俺はそれを嬉しく、誇らしく思う。
 俺が休学届けを出したのは、二学期が始まって二週間が経った頃だった。

大翔『っつーことで、よろしくお願いします』
沙良『……世界を見て回りたい、なぁ。世界を股にかけた災害復興でもするつもりか? ま、うちは構わんけどあんたはそれでええんか? 乃愛もおらんし妹達二人っきりになるで?』
大翔『あいつらだってもう子供じゃないんだし、俺なんかがいなくてもしっかりやれますよ。むしろ俺がいないほうがしっかりできそうで怖いし』

 ちなみに俺がいないと食事は壊滅的な事になっていたけどそれ以外はきっちりやっていた。どうやら俺が今まで全部やっていたのが悪かったらしいと反省して、今では家事はそれなりに分担している。
 食事も。おかげで毎日がスリリングだちくしょう。

沙良『ふーん、あんた、ちょっと変わったなぁ』
大翔『そすか?』
沙良『なんていうんやろ、余裕ができたな、いい具合に。ちゃんと周りが見えとる、見えたままに周りを受け入れとる、そういう風に見えるわ』

 言葉に詰まった。そんなに俺は変わったんだろうか。
 変われたんだろうか。

沙良『まあ自由にしたらええ、幸いうちの学園はその辺おおらか言うより適当やからな。手続きの書類は――』

 休学届けを出すのに三十分もかからなかった。たいした悶着もなく俺は一年間の猶予を得たわけだ。


 巡った世界の数は両手の指の数を超えた。その中にはユリアの世界も入っている。
 というよりも、この旅の目的の大きな目的のひとつだったのだから当然だ。
 ユリアの父――つまりは一国の王様なわけだが、思い込みでもなんでもいい、その人にユリアの最期を伝えるのは俺の役目だと思っていた。
 彼は静かに俺の話を聞いてくれた。すでに詳しい報告は受け取っていたはずだが、それでも俺の言葉の一つ一つ、単語の欠片に至るまでの全てを受け取ってくれた。
 彼は俺の肩に手を置くと、深く肯いた。深い光を宿した瞳が、優しく俺を見ていた。それだけで俺は、何か許されたような気持ちになったんだ。
 そして彼はこんなことを言った。

王『ところでレン、君は国ではなくユリアに仕えていたな』
レン『は、はぁ……恐れながら』
王『うん、それは構わないんだ。そしてユリアに子供ができたなら、その娘にも仕えるつもりだった』
レン『相違ございません』

 唐突に目の前で始まったやり取り。なんだろうと軽い気持ちで見ていた。

王『そうなると、その娘の父親……つまりはユリアの旦那に仕えることになるわけだ』
レン『……ええ、そうなりますね』

 げっ。
 その時点でどういう話になりつつあるのかを察した。察したが、まさか王様の前から全速力で逃げ出すなんて真似もできるわけがない。レンの悪巧みをする越後屋みたいな顔が恨めしかった。

王『さて、君という剣は今仕えるべき主をなくしているわけだが……ちょうどいいことに、そこにいずれ仕えることになったであろう青年がだね』
大翔『ヘイヘイヘイ、ヘーイ!!』
レン『どうしたヒロト殿、唐突にそんな大声を出すなどとはみっともない』

 みっともなくていいから! 話が変な方向に流れるよりはずっといいからっ!!
 けど異世界だろうがなんだろうが俺の話は無視されてしまうようで。

王『というわけで、レンのことは任せたよ』
レン『そういうわけでよろしく頼むぞ、ヒロト殿』

 そういうわけで、なぜかレンと俺が何故か主従関係になった。ユリアの頑固なところは父親譲りかもしれない。


レン「そういえば、結局ファイバーの故郷へは辿り付けたのか?」
大翔「ああ、なんとかな。ファイバーのお姉さんにも会えたよ。まあ、二度と会いたくない連中もいたけどな」
レン「二度と……ああ、エラーズたちか」

 肯く。
 一人旅を始めて最初に訪れたのが、エラーズの故郷だった。たどり着いたその場所は酷い有様だった。その地域に詳しい老人に話を聞いたところ、三十年近く降り続いた雨がようやくつい最近上がったのだという。
 三十年。それだけの間雨が降り続けば、そこはもう生き物の住む世界ではなくなる。一面が沼地となり、所々に見える腐れた組木が、かろうじてそこがかつて村であったことを主張していた。
 その沼の真ん中に、真新しい木で組まれた十字架が突き立っていた。
 エラーズの話によれば、それはつい最近までファイバーの姉が磔にされていたものだという。三十年、ただひたすらに大地が、木々が腐り続け、命の気配が消えていく様を見せ付けられる。
 俺は何も言わず……何も言えず、ただその光景をずっと見ていた。日が落ち、月が昇り、星が輝いても、ずっとそれを見ていた。

レン「それで、その人とはどんな話を?」
大翔「挨拶をしただけだよ。向こうは三十年の束縛が解けたばかりだったし、俺も正直、何を言ったらいいのかわからなかったしな」

 ただ、一言だけ。搾り出すように紡がれた言葉は、今でも耳の奥にこびり付いている。

レン「そうか……まああなたが納得する為の旅だ、私は何も言わないさ。さて、そろそろ学校だな」
大翔「ん、レンは学校まで行かないのか?」

 レンの足が唐突に止まった。並んでいた肩が、一歩分だけ前に出た。

レン「あなたの戦いに水を差すつもりはない」

 レンは一歩身を引き、剣を水平に掲げた。

レン「私はあなたの剣だ、これは私が私自身に誓ったことだ。たとえあなたが姫様の事を忘れても、その事に変わりはない」

 レンはまっすぐに俺を見ていた。
 信頼と、優しさを込めて。

レン「あなたの生き方を誇るといい。ユリア様が守りあなたが手に入れた今日は、いつも変わらずここにある」
大翔「――――――」

 ああ、本当。俺はいつも、周りの人たちに助けられている。
 この人たちと、今日という日を歩けることを、本当に嬉しく思う。

 そこに、君がいないことだけが悲しい。




 ぎょっとした。心臓が止まるかと思った。
 校内を歩いていたら沙良先生の背中が見えて、その向こうには変なお面をつけた男と、制服姿の女子の姿があった。
 逃げよう。
 その場で反転し、全速力で――

エラーズ「やあ、君ですか。まさか今日会えるとは思っていませんでしたよ」
大翔「早っ、回り込むの滅茶苦茶早っ!?」

 逃げ出そうとしたらいつの間にか回り込まれてた。ああそうか、こいつなんか変な体術使うんだっけ。迂闊だった。

大翔「なんでお前がここにいるんだよ、ていうか、あの制服の女の子ってまさか……!?」
エラーズ「そのまさかですよ」

 うわー、やっぱりだよもう。

大翔「っつーかてめえは何でこんなところにいるんだよ。いくら事情を知っている人間が少ないからって、お前らに襲われたコミューンの人たちがお前を見たらただじゃすまねえぞ」

 どちらがただではすまないのかはさておき。
 ていうか、俺だって正直複雑だ。そもそも俺とこいつの関係はいまいち微妙なんだよな……。俺がエラーズに対して嫌悪感にも似た感情を持っているのは陽菜やユリアを攫ったからというのが大きい。が、その仕返しとばかりにこいつらの長年の計画をぶっ壊してやったから、結構腹の虫は収まっていたりするのだ、個人的には。
 礎を作り出したことに関しては、まあ多少思うところもなくもないが、それであの結末になったのは俺の行動の結果なんだ。別にエラーズをとやかく言うつもりはない。
 そんなわけで、俺としてはこの男相手に一戦やる意志は薄い。殴っていいなら殴るけど。全力で殴るけど。赤い狐になるまで。

エラーズ「大丈夫ですよ、これでも私も色々と修行をしているんですから」
大翔「修行ねえ……」

 そもそもお前の心配なんかしてないけどな。

エラーズ「この世界の漫画というもので学んだんですよ、行きますよ。フタエノキワ――」
大翔「アーーーーーーッ!!!!」

 なんかヤバい表現が出てきそうな雰囲気だったので全力で止める、体張って止める。

エラーズ「危ないですね、いきなり魔法を使うなんて」
大翔「貴様の発言もいろんな意味で危ないんだよ、自重しろ!」

 世の中には! 触れちゃいけない領域ってもんがあるんです!!

沙良「あんたら、仲ええなぁ……」
エラーズ「いえいえそんな、隙があれば八つ裂きにして氷海に鎮めてしまいたい気分ですよ」
大翔「爽やかに毒吐いてんじゃねえよ、穴開けるぞ」

 あ、やっぱこいつ嫌いだ。エラーズは性格の不一致だが、こいつは明らかに俺に対して敵意、というには拙いか、とにかく隔意を持ってる。

大翔「で、何してんだ、変態仮面」
エラーズ「彼女を見ればわかるでしょう、転入……というよりは入学ですね、その手続きですよ、穴掘り小僧」

 ほう……いい度胸じゃねえかこのヤロウ。そういえばエラーズには一度背後から不意打ち食らってたな。その借りを今ここで返すのもいいかもな。

沙良「こーら」
大翔「だっ!」
エラーズ「む」

 危険な考えが浮かんだとき、頭の上に柔らかく、しかしそれなりの重量のある物がのしかかってきた。

大翔「なんだ……ん、柔らかくふわふわしたこの手触りは……大福か!?」
沙良「ましゅまろや!!」

 ごはっ!? ぜ、全力で蹴りいれられた……。

沙良「ったく、アンタ等だけで会話しとるからあの娘がおいてかれとるやろ」

 そういって沙良先生が示したのは、エラーズと一緒に立っていた制服を着た女子だった。パリッとのりの利いた一年生の制服に身を包み、世界に対して戸惑うように視線を漂わせている。
 少女と目が合った。俺は思わず気まずさから視線をそらした。こんなところにいるなんて思いもしない人物。
 レイネ。ファイバーの、姉。

沙良「……ま、いきなり仲良くなんかできんか。それはおいおい、てことで」

 沙良先生はレイネの手を引く。彼女が背を向けたことにほっとしている自分を知り、嫌悪感を覚え、これじゃだめだと思った。
 ……ちゃんと、向き合おう。お互い、痛みから目をそらすだけじゃ何も変われない。

大翔「あの!」
レイネ「――っ」

 う、焦ってつい大きな声を。
 レイネが怯えを含んだ視線を、それでもそらす事無く向けてきた。
 ……あ。何を言うのか考えてなかった。

大翔「あー、えー」

 ど、どうしよう。
 困っていると、レイネの横に立つエラーズがなにやら仮面を外して……って、嘲笑ってるのを見せ付けるためだけかよ! すぐに仮面元に戻しやがった!
 く、沙良先生もニヤニヤ見てるし! とにかく、ここは俺一人の力で乗り切らないと。大丈夫、俺はできる子だ……たぶん!

大翔「その、何でこの世界に?」

 出てきたのはただの質問だった。けど確かに疑問だった。なぜわざわざ、この世界に? 世界の穴がほとんど閉じている今、世界を渡るのも相当の苦労が必要なはずなのだが。

レイネ「……弟」
大翔「は? ファイバー?」
レイネ「弟の不始末は姉の不始末よ。あいつがこの世界でやらかした事、とても償えるものじゃないけど償わないわけにはいかないから」
大翔「君が弟の代わりに、この世界でその罪を償う、と?」

 レイネはこくんと小さく首を立てに動かした。本当に小さな動き。それでも、その意志の強さは伝わった。
 エラーズは仮面で表情を隠している。沙良先生は壁に寄りかかって目を閉じていた。

レイネ「あの子は私のためにあんなことまでしてくれたから。今度は私が、あの子のために何かをしてあげようと思う」
大翔「償いが、ファイバーのためになるのか?」
レイネ「私の知るあの子はそういう子だったわ」
大翔「あいつが、か。まあそうかもな、そういう人間だからこそ、思い詰めちまったのか」

 姉を束縛して、故郷を滅ぼして。レイネが止まった時の中で変化を捉え続けていたのに対し、ファイバーは流れる時と共に変化を感じ続けていたんだろう。
 焦燥が身を焦がす感覚は、誰にでも覚えがある。何十年もそれを感じ続けその意志を折らなかった事は、まさに驚愕に値する。

レイネ「あなたは……少し、変わった」
大翔「え?」
レイネ「雰囲気が。そう思っただけ」

 それ以上説明する気はないのか、口をつぐんでしまった。
 ……会話が途切れてしまった。

大翔「じ、じゃあ俺はもう行くよ。先生、それじゃあ」
沙良「ん。ああそや、明日は朝は早めにな、あんたはあんたで色々準備があるから」

 沙良先生の言葉を聞きながら、レイネとエラーズの間を通り抜ける。

レイネ「――――――――」

 小さく呟かれた言葉に立ち止まりそうになったけど、そのまま俺は階段を上った。

 初めて会った時に呟かれた言葉。それに連なる、その言葉を、俺は深く胸に刻んだ。

『私はあなたを、許せないかもしれない。理不尽だけれど、弟を止めてもらって、感謝できないかもしれない』

 それでも。

『生きていてくれて、ありがとう』

 生きていれば。生きてさえいれば。
 変わっていくことができるから。
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