エピローグ ~ live ~

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;(効果:センタリング)
  エピローグ ~ LIVE ~
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;(BGM:)
;(背景:)


東京某所にある高級ホテルのスイートルーム。

そこは完全防音、防弾、防盗聴処理が施され、世界一のセキュリティを誇っていた。

「さてと。これで良かったのかな~?」

虎宮沙良博士は、蒼く輝く球体に向かってそう呟いた。

(……うむ。上出来だ。私が意識を消してから、地球時間で一〇年余りしか経ってないが、何もしないというのは永遠にも近い時間に感じたよ。君らの多大な協力には感謝する。ここまで計画通りに進むとは思ってもみなかったよ。結局二千三百億パターン近く用意していた修正プログラムの殆どが無駄になってしまった。だがそれは喜ぶべきことなのだろうな)

「一〇年ぶりの会話ともなると、幾らか饒舌になるんようだね。それはそうと、お役に立てて光栄ですよ。表向きの実験も成功したようだし、利権に群がる強欲な連中もさぞ満足したことでしょうよ」

(その人間が持つ私利私欲が、私の計画を推し進める原動力となった。人間とは面白い生物だ。何万年と観察してきているが、全く飽きることがない)

「ではそろそろキミが乗って来たと言う宇宙船をボクに譲渡して貰えないかな」

(欲しければくれてやると何度も言ったと思うが?)

「キミも意地悪だねぇ。残念ながら我が国の技術レベルでは冥王星軌道上に浮かぶ宇宙船の回収なんてとても無理なんだよねー。それはサフィール、キミも承知してるだろう?」

(冗談だよ沙良。宇宙船は近々月の裏側にでも移動させよう。しかし、ただの恒星間航行宇宙船がそんなに珍しいのかね?)

「珍しいいとも! しかもそのエンジンが欠陥品でない、完璧な理論で作り上げられたシュヴァルツドライヴで出来ていると知ったら、研究者として解析したいと思うのが普通の反応だと思うよん」

(人間は沢山知っているが、キミのようなタイプの人間は……、そうだな。レオナルド・ダビンチ以来かもしれないな。彼もまた私の話に耳を傾けられた稀少な人物だったよ)

「ところでサフィール。キミのお仲間。ユリアという君の同族はあの兵器でバグリーチャーを殲滅できそうなの?」

(ゼロワンだったかな? ああできるさ。そのために色々と手を尽した。自分でトリガーが引けるまで成長したのには驚きだったが。やはり若さゆえなのだろうな)

「サフィールは故郷へ帰ろうとは思わないのかい?」

(あと一千万年くらいこの惑星を観察したら帰ってみてもいいかな。君達人類がどこまで進化するのか見極めてみたいしな)

「すでに進化のモデルケースは実験済みじゃないの?」

(ふむ。しかしあれでよかったのか? 私にはモラルというものが欠落しているらしく、良く分からないのだが)

「事故に遭った道民の魂を保管してるんでしょう。君たちと同じ精神生命体として……」

(正確には意識の集合体だな。彼らの精神状態を分析すると概ね居心地はよいみたいだな)

「概ね好評と言うわけかー。だからと言ってボクの罪は減刑されるわけでなし、地獄があるのとしたならそこへ叩き落されるだろうね。まあ仕方ないか。五〇〇万人は殺しすぎたよ」

(地獄とは面白いことを言う。キミも死んだらそこへ行くんだよ? いやなのかね?)

「いやじゃないよ。ただね。生きている間は、この身体に執着させて貰うってだけだよ」

虎宮博士は小さな胸をドンと叩く。

(うむ。それがいいだろう)

「それより乾杯でもしない?」

(何に対して乾杯するのかね?)

「我が友サフィールの種族復興を願って、……というのではどうかな?」

(ユリア次第だな。まあそれもよかろう。あのひよっこにどこまでできるか少し不安が残るがな)

蒼く輝く球体から、長身の男性の姿を模した立体映像のホログラフが出現する。

実体化したホログラフ、サフィールは虎宮博士が注いだグラスを受け取った。

「キミの種族と、ボクが種族の繁栄を願って……」

(乾杯!)





最終更新:2007年09月23日 13:01
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