第1章~拙い喧騒


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本編導入部 Ver1.3 07/08/01


【大翔】「えっと…どちら様?」

 やばい、素っ頓狂な声になった。

【???/レン】「こちらのお方は…その…」
【???/ユリア】「国の名前など、どうでも良いのではないでしょうか、レン?」

 レンと呼ばれた少女は少し苦い顔をしたかと思うと、もう一度こちらに向き直る。

【レン】「承知しました。 こちらのお方は王女、ユリア・ジルヴァナ様にあらせられる。」

 は? 王女?

【大翔】「王女っていうと、やっぱりお姫様…ってこと?」
【レン】「そうだ。」

 ユリアと呼ばれた少女に視線を移す。
 目が合い、彼女は小さく微笑む。

【レン】「そして私は、ユリア様の侍女を勤めさせて頂いている、レン・ロバインだ。」

 侍女。
 つまりメイドさん。
 メイドさん?

【大翔】「ちょっ、ちょっと待ってくれ。 考えがまとまらない。」

 廃教会に、光と共に突如現れた彼女達。
 で、彼女達はお姫様とメイドさん。
 そして…

【大翔】「ん? そういや、さっき世界がどうとか言ってなかったか?」
【ユリア】「ええ。 この世界は、崩壊の危機にあります。」

 まて
 いまなんていった?

【大翔】「世界が崩壊する?!」
【ユリア】「正確に言えば何が起こるかは分かりませんが、便宜上崩壊という言葉を使わせて頂きます。」

 何を言っているのかがまったく理解できない。
 世界が崩壊する?
 いきなりそんなことを言われて、はいそうですかと答えられるほど俺の頭はやわらかくはない。

【レン】「やはり信じては貰えんか…。」
【大翔】「そりゃまぁ、現実味無いし。」

 顔に出てたか。
 まぁ、どっちにしたって同じことだけど。

【ユリア】「ですが、これは本当なんです!」

 ついさっきまで大人しい物腰だったお姫様が、急に激昂する。

【大翔】「で、でも…」
【ユリア】「でもも何も無いんです! 貴方は、今存在しているこの世界が崩壊しても良いと言うのですか?!」
【レン】「ユリア様!」

 メイドの少女がお姫様と俺の間に飛び出し、お姫様を制止させる。

【ユリア】「何なのですかレンまで!」
【レン】「その様なおっしゃり方では、人に納得してもらえるはずもありません。」
【ユリア】「私達…ひいては双方の世界にはもう時間が無いかもしれないのですよ?!」
【レン】「だからこそ、です。」
【ユリア】「え…?」
【レン】「物事を順序立てて冷静に説明しなければ、我々の目的を理解する人など現れません。」

 メイドの少女の言葉に、はっとしたように我にかえるお姫様。

【ユリア】「急に取り乱してしまい、申し訳…ありませんでした。」

 俯きながら、しょんぼりとした声色で謝罪の言葉を並べる。

 こうなると弱いんだよなぁ。

【大翔】「分かった分かった。 もっかいちゃんと話してもらえる?」

 ぱあっと表情が明るくなり、こちらを見つめる碧眼に光が灯る。

【大翔】「ただし、分かりやすくしてくれよ?」
【ユリア】「は、はいっ!」

 若干変な顔でメイドの少女…レンがこちらを睨んでいたが、なんだったんだろう。

【ユリア】「まず今現在、2つの世界が存在しています。」
【大翔】「えっと、いきなり意味が分からないんだけど?」
【ユリア】「ようするに私達がもと居た世界と、今貴方達が存在しているこの世界がある、ということです。」
【大翔】「むむ…まぁいいか、続けて。」
【ユリア】「承知しました。 その二つの世界は、現在は均衡した状態を保っています。」
【ユリア】「ですが、その均衡を破ろうとしている者がこの世界に居ることが判明したのです。」
【大翔】「それは誰?」
【ユリア】「そこまではまだはっきりとしてないのですが、本来なら私達の世界に存在しているはずの人のようです。」

 つまりは、”ユリア達が居た世界”の住人というわけか。
 しかし、なぜわざわざこっちの世界でことを起こす必要があるんだろう。
 わからん…

【ユリア】「あの…続けてもよろしいでしょうか?」
【大翔】「あぁ、ごめん。 お願い。」

 どうやら、一人で悩んでいたようだ。
 イカンイカン、人の話はちゃんと聞かなくては。

【ユリア】「私達の目的はその者を捜索、発見し、討伐することです。」
【大翔】「ふむ。 あ、でも討伐って?」
【ユリア】「読んで字の如く、討ち倒すことですが。」
【大翔】「いや、二人ともそういうの出来るのかなって思ってさ。 お姫様とメイドさんじゃ…」
【レン】「そのために私が居る。」

 レンが、話に割って入る。
 それまで座っていた長椅子から立ち上がり、ずずいっと目の前に寄って来る。

【レン】「私はメイドであると同時に、ユリア様を守護する騎士でもある。」

 そう言って、レンが右手を前に差し出す。

【レン】「鳴り響け、我が白銀の旋律よ!」

 キィィンと短い耳鳴りがしたかと思うと、レンの右手が光を放ち始める。

 次の瞬間には、その手には鋭く光を返す剣が握られていた。

【大翔】「は…?!」

 どっから沸いたの!?
 マジック!?

【レン】「これが、私が騎士であるという証だ。」
【ユリア】「ついでに、少しでも私達の話を信じてもらえるきっかけになればありがたいのですが…」

 と言って、苦笑を漏らすユリア。

【大翔】「は…はぁ。」

 もう一度、ユリアに視線を移す。
 視線が交差し、彼女の碧の瞳の中に俺の姿が映る。

 可愛い…というより、美しいという表現の方が似合うのかもしれない。
 まだ幼さが残っているが、端整な顔立ち。
 流れるようなストレートの金髪。
 歳相応の膨らみをもっているであろう胸。
 それらを含めた全てが、ユリア・ジルヴァナの女らしさを象徴している。

【レン】「何をジロジロと見ている?」

 はっ!

 気付くと、レンがこちらを睨んでいる。
 それも結構本気モードのような目で。

【レン】「先ほどから聞いていれば、身分を違えた言動を…それに、ユリア様の体を舐め回すように…」
【レン】「まさかとは思うが、何かいかがわしいことでも考えていたのではないだろうな?」

 胸のくだりだけならそう捉えられてもおかしくはないだろう。
 だが、表情には出してないはず。
 …きっと。

【大翔】「いや、ま、マッタクモッテソンナコトハ。」

 あ、また声が…

【レン】「きっさまぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
【ユリア】「レ…レン…?」
【レン】「ユリア様はお静かになさってください! 今から私はこの不届き者めに天誅を!」

 風を斬る音と共に、レンの手にした剣が首筋に迫る。

【大翔】「ちょっ、ま、待て! 本当にそんなこと考えてないから!」
【レン】「問答無用! 斬るッ!」
【ユリア】「もうやめなさい、レンっ!」

 レンの手が止まる。
 助かった…のか?

【レン】「ですがユリア様、こやつは…」
【ユリア】「良いのです。 下がりなさい、レン。」
【レン】「…承知いたしました。」

 渋々ながら、といった面持ちでレンが剣を収める。
 ユリアはといえば、ほっとしたかのような表情を浮かべてこちらを伺っていた。

 主人がぴしゃっと(?)言い放ち、メイドさんがそれにしっかり従う。
 うん、確かに理想的だ。
 こんな状況でなければ、だが。

【大翔】「いや、そういう風に見てたと思わせちゃったなら謝る。」
【ユリア】「いえ、こんな話をしておきながら、急に信じろと迫ってしまった私達も無作法だったのですから。 それに…」
【ユリア】「貴方も、男性ですから。」

 どうやら、そういう方向で固定されてしまったらしい。

【レン】「ところで。」

 レンが、再度身を乗り出してくる。

【大翔】「な、何でしょう。」

 怖い人には敬語を使おう。
 お兄さんとの約束だぞ!

【レン】「そう身構えなくても良い、先ほどは失礼した。」
【大翔】「はい…」
【レン】「まず、私達はこの世界に来たばかりで、居住する場所が無い。」
【レン】「でだ、出来ればでいいのだが…」
【ユリア】「私達を、貴方の家に泊めてはいただけませんか?」

 は?

【レン】「ゆ、ユリア様?!」
【大翔】「今なんと?」
【ユリア】「ですから、私達を貴方の家にしばらく住まわせて頂きたいのです。」

 えーと
 現状は、俺一人と妹二人。
 追加でお姫様とメイドさん。
 ………ハーレムか!
 って違うだろ!

【レン】「いけませんユリア様! こんなどこの馬の骨とも分からぬ凡俗の家に住まうなど!」
【レン】「ユリア様には、もっと相応しい場所というものがおありのはずです!」
【大翔】「酷い言われようだな…。」
【ユリア】「そうですよレン、このお方に失礼でしょう?」
【レン】「そうではなくてですね!」
【ユリア】「それに、この世界に他に誰か顔を見知った人物が居るとでも?」
【レン】「うっ…。」

 あたふたと説明しようとするレンに対し、ユリアは的確な指摘でレンの反論を抑える。
 肝が据わっているというかなんというか、とにかく落ち着いた様子で、しゃんと構えている。

【レン】「承知しました…では、貴様の家はどこにある?」

 というか、泊まるっていうのがもう確定事項になりかけている。
 でも、断ったりしたら今度こそ首が胴体と涙の別れを告げることになりそうだしな…。

【大翔】「えーと、一ついいかな?」
【ユリア】「なんなりと。」
【大翔】「今夜はもう遅いし、泊めるにしろ泊めないにしろ返事は明日じゃだめかな?」
【レン】「つまり貴様はユリア様に、この小汚い場所で一晩を過ごせと?」

 すでにレンの右手が少し光っている。
 これはやばい。
 本能がそう告げている。

【大翔】「ほら、俺にも家族が居るし、それにえーと、多分今は夏だから冷えたりはしないはずだし。」
【レン】「ユリア様に何かあったら、貴様はどう責任を取るつもりだ?」

 いや、俺に責任を取れとか言われても。

【大翔】「頼む! 出来るだけ家族を説得するようにはするし、明日だって出来る限り早くここに来るから!」
【ユリア】「レン、このお方もこう言って下さることですし、今日だけは我慢しましょう?」
【レン】「ユリア様がそう仰るのでしたら…。 だが貴様、もし約束を違えた場合は、容赦無く斬り捨てるぞ。」

 レンが、恨みやら何やらの黒い感情が篭った眼でこちらを睨んでくる。

【大翔】「りょ、了解。 じゃあ、今晩は一旦戻らせて貰うよ。」

 そう言って二人に背を向け、教会を立ち去ろうと扉に手をかける。

【ユリア】「あっ! そういえばお伺いしていませんでしたが、貴方のお名前は?」
【大翔】「大翔。 結城大翔だ。」

 振り返って、そう答える。

【ユリア】「ユウキヒロト様、ですか。 ではヒロト様、良いお返事を期待していますね。」

 そこには、正に天使のような微笑を浮かべたユリアと
 悪魔のような形相で俺を睨み続けるレンが並んでいた。
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