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第五話:夜、家
納涼祭も無事終わり、帰宅、夕食後のまったりとした時間。
俺は仰向けになって買ってきた心理学の読本を読んでいた。
居間では美羽と美優がTVゲームに興じている。
俺が開けた(バレてはいないが)床の修理、犯人の捜索でヘトヘトになったレンさんは、ユリアと一緒に風呂に入った後、すぐに寝た。
ユリアも多分もう寝ているだろう。……やっぱりまだ違和感。
いずれ慣れるだろうか。慣れないと困る。
そういえば、あの春先男はレンさんの話だと見つかっていないようだ。
三階から落ちた後逃げたのか……流石は外人の変質者だ。
一応レンさんに話そうかとも思ったが、今日はタイミングを逃してしまった。
美羽「兄貴、私等もう寝るよ」
大翔「ん。じゃあ俺も上がるわ」
本を棚に戻し、立ち上がって二階に上がる二人の後を着いていく。
美優は大和撫子喫茶で相当疲れたらしく、半分眠っていた。
立ちんぼうの仕事だったし、元来体力がない美優にはキツかっただろう。
階段を上りきって見ると、ユリアが天井窓から星空を見上げている。
美羽「ユリさん、何かの星座でも探してるんですか? 」
ユリア「いえ……流れ星を見ていました」
美優「私も見たいなぁ……3回願い事言うの」
大翔「俺いっぺん言えたけど、叶わなかったぞ」
美優「美優の夢が……」
夢を壊してしまったようだ。
俯く美優の頭を軽く撫でながら、自分も夜空を見上げる。
月が明るい。満月だ。
星雲を照らす太陽は見えないが、数多の星が見えていることがその存在の証明。
蒐集を待つ宝石のように輝く星。
自分と比べてあまりに壮大な存在感。
長く見続けていると、心が奪われそうだ。
空から目を逸らし、ユリアに目が移る。
碧い瞳に、金色の髪。
鼻筋が通り、整った顔立ち。
そして何より、彼女が持つ威厳に満ちた、それでいて優しげな雰囲気。
少し、星に似ている、と感じた。
手が届きそうにない……とでも言うのか。
嘆息して、三人に「お休み」と声をかけて、自分の寝室に向かう。
ベッドに飛び込む。
天井を見上げながら、人を想う。
沢井。
美羽。
そして、ユリア。
……上手く距離感を測らないと。
人間関係に頭を悩ませられるなぁ、最近。
最後にそう思って、眠りについた。