プロローグ

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プロローグ」(2007/06/29 (金) 16:48:03) の最新版変更点

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子供の頃、世界の中心は俺だった。 世界は俺のためにあり、全ては自由自在。 根拠のない予感と、意味のない自信。 望めば全てが叶うんだと信じて疑わなかった。 夢は魔法使いになること。 それは、何がきっかけだったのかは思い出せない。 テレビで見た映画だったような気もするし、 親が寝物語に読んでくれた絵本だったような気もする。 ただそれは俺にとって、とても大事なことだった。 必ず魔法使いになる。 そうならなければいけない気がした。 俺は、とにかく魔法使いに憧れた。 妹が買った、魔女っ子変身用のステッキをこっそり拝借して 空き地で1人振り回したりしたこともある。 練習さえすれば、魔法は使えるはずだって思ってた。 いつか、手の平から炎の玉が飛び出したり、 自由に空を飛んだりできるはず。 兎にも角にも自分で思いつく限りの特訓の日々。 同年代の男達が、ヒーローやロボットにうつつを抜かしている時、 俺はひたすら魔法使いになるための行動に没頭していた。 それが最善だと信じていたから。 やがて、こんな俺も少しずつ年を取り、 空き地で1人、妹の魔女っ子変身ステッキや 杖に見立てた棒切れを振ることもなくなり、 サンタクロースの正体が親だったことを知った辺りの頃。 俺の魔法使いへの夢は現実という壁にぶつかった。 当然のように夢は磨耗し、擦り切れていった。 子供の頃の情熱は次第になくなり、 声高に魔法使いになりたいと言わなくなった。 いや、言えなくなったと言った方が正しい。 結局のところ、俺は世間に迎合したのだ。 どうしてかつての俺が魔法使いを目指していたのか、 何でそんなに魔法使いになりたかったのか。 そんなことすらも曖昧になっていた。 そして時は過ぎ、季節は何事もなかったかのように巡る。 初夏。 まだ春の足跡が薄っすらと残る頃。 何が目的かも忘れてしまった俺が、 ただその日その日を無為に過ごしていた時。 ──俺の前に、彼女が現れたのだ。

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