セカツナ001

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>さて、ここで状況を整理してみよう。 >俺は風呂に入りたかった。 >そして風呂場の前まで来て、電気も消えていて人の気配もないのを確認してガラス戸を開けた。 >だが中にいたのは蒸気でもゴキブリでもなくレンさん。 >騎士だというレンさんくらいになると気配くらい簡単に消せるのだろうか?暗闇の中でも風呂に入れるくらいだしな。 >だが、そこでもう一つ問題が浮上する。何故レンさんは俺の気配に気付いていながら、一言も声を上げなかったのか? >開けたとき既にこちらを向いていたことから、気配に対応できていたことは明白。ひょっとして向こうの国の風呂は混浴が普通なのか? 選択肢A「真面目に弁解する」>咀嚼氏ルートのまま 選択肢B「冗談でごまかす」>ががルートに以降 「えっと、レンさん。落ち着いて聞いてください」 「……死者への手向けだ。一言ぐらい残させてやる」 左手を使ってバスタオルで体を覆い隠しながら、開いている右手で洗面台に立てかけてあった木刀に手を伸ばすレンさん。 顔は無表情のままなのに、僕に向けられたその瞳に映る感情は、煮えたぎるような怒りと、微かに今から死に絶える愚者に対する哀れみが感じられた。 ――モシ ココデ スコシデモ ミスヲ オカシタラ―― 死は免れまい。 いや、死ぬだけならばまだいい。同居三日目の女性が風呂に入ろうとしたところを襲おうとした野獣が、返り討ちにあった末に、磔獄門さらし首―― いや、僕には助けてくれる妹たちや先生が 『兄貴……最低だよ(まるでゴキブリホイホイに捕まっているゴキブリを見るような目で)』 『うう…お兄ちゃんは…そんなことしてないって…信じてるよ……(ならなぜ泣く)』 『君も一応女に興味があったんだな。私に興味がなかったようなのであちらがわの人間かと思っていたが安心したよ(そんな趣味はありません)』 なんだこの三百六十面楚歌は―― 「……この格好は少し寒いんだが――さっさと答えてもらおうか」 液体窒素でもそこまでは冷たくはないだろうと思われるレイさんの声で、僕は辛い空想から更に辛い現実へと引き戻された。 「レンさん……」 「なんだ?」 肝心のところをタオルで隠しているとはいえ、なんでこうも威風堂々としているのか。目のやり場に困った僕は仕方なく目をそらしていた。 なにか、何か言い訳をしないと―― 「てっきり、美優が入っているのかと思って」 どんな言い訳だ、僕。 「どんな言い訳だそれは! お、お前は妹とはいえ女と一緒に湯浴みをするのか……!」 レイさんの目に、わずかながら僕に対する恐怖の色が追加された。 「も、もしかして、レイさんの国にはお風呂という習慣がなかったりしせんか?」 レイさんは眉根を上げ、 「たしかに、湯を張って入るという習慣はない。が、姫に『郷に入り手は郷に従え』といわれている。その地に住むのならその地に合わせろということだろう? それとお前が妹とともに湯浴みをするのとなんの関係があるというのだ!」 「では」ああ、大翔、それは墓穴を更に掘り下げる行為だと思うのだが「お風呂は複数人数で入るということは知っていますか?」 「!! そうなのか? ……確かに、姫はミウと一緒に入っていたな」 と、少し考え込む。ここを逃してはならない。僕は更に畳み掛けるように、 「でしょう? お風呂は一人ではなく、二人で入ることもあるんです。背中を流したり、一人ではできないところをお互いでするんです。『男女関係なく』一緒に入るのです。いいですか。お風呂というのは体を清める場です。それはすなわち、心をも清めるところでもあるということ。そのような場で男女の劣情などは一切関係ありません」 僕はできる限りの真面目な顔で(まあ、恐らくガラス玉のような瞳ではあっただろうが)言い切った。 「そ、そうだったのか……すまない、少し思い違いをしていたようだ」 き、切り抜けた……! 墓穴の底(深さ30km弱)から脱出成功! レンさんは自分の勘違い(勘違いではないのだが)を少し恥じているのか、ばつの悪そうな顔でこちらを見て、 「しかたない……では――ともに入ってもらうおうか? ヒロト殿」 少しだけほほを赤らめ、だが毅然と、そう僕におっしゃられた。 脱出失敗――墓穴はマントルまで到達した。 なぜこんなことになってしまったのだろう。 いや、全ては自分のでまかせのせいなのだけれど。 いつもは広く感じる湯船が、今はとても狭い。そりゃそうだ。日本の一般家庭にある浴槽は男女二人で入るようにできていないのだから。 目の前には、湯船に浸かっているレンさん。そして、同じ湯船に浸かっている僕。 おたがいに身体にタオルを巻いている上、美羽が入れたのであろう入浴剤でお湯が乳白色に濁っているため、お互いに身体を見られることはない。助かったと同時に残念だった。いや、とても助かったヨ。そういうことにしておく。 目を合わせることはなく、なんとなくお互いに湯船の中心を凝視していた。 「……はぁ……」 レンさんには気づかれないようにそっとため息をつく。 ――気まずい。まるで僕と彼女の間に見えない壁があるかのようだ。しかし、実際には壁はない。むしろお互いに触れないほうが難しい。少しでも足を緩めれば相手の足に当たってしまう。 「……ヒロト殿」 「な、なんでございましょうか!」 「何で裏声なんだ?」いぶかしげにこちらを睨んでくるレンさん。「まあいい……それで、ともに入ってどうするのだ? その……互いの身体を洗ったり、するのか?」 なんでもないような顔をしているが、耳まで真っ赤になっている。 「まあ、手の届かない背中などは……」 「くっ……郷に入りては郷に従え郷に入りては郷に従え……」自分に言い聞かせるがごとく、なんども姫に言われた言葉を呟き、「では、先にヒロト殿の背中を洗って…やろう」 「で、では、お願いします……」 ええい。ここまできたらなるようになるまでだ。数時間後のことなど考えるな。そのころ自分が存命している確立は、来週のヂャンプにハンターハンターが載るよりも低い。 僕は身体を洗うべく、ゆっくりと湯船で立ち上がる。 「!! ちょ、待って! 何で立ち上がる!?」 あわてて両手で自分の顔を覆い、抗議の声を上げるレンさん。 「いや、湯船から出ないと身体洗えないですから」 「そういうことは先に言え! 貴様の裸体を見てしまうところだったじゃないか!」 「申し訳ありませんでした。今後気をつけさせていただきますぅ……」 あまりの剣幕に思わず謙譲語が出てしまう僕。 顔を背けて顔を手で隠したままのレンさんを尻目に、僕はそっと湯船を出て浴槽の向かいに設置されているシャワーの前に座る。 何はともあれ、理由はないのだが僕は洗う順番を頭からと決めている。 いつも通りにシャンプーの蓋を押して液を手の上に乗せ、少し両手で泡立ててから洗髪を開始する。 わしわしわしわし―― 僕が髪をかき混ぜる音だけが、浴槽に響く。 いや、微かにだが少し荒いレンさんの吐息が聞こえる。それだけで背後に女性がいるということがはっきりと実感できてしまう。 普段は大剣を常に帯び、勇ましく雄々しくそれでいて凛としたレンさんだが、よく考えれば僕と同い年ぐらいの女の子だ。それに加え、無駄な部分をそぎ落としたようなすらりとした身体。美優のような上から下まで同じようなちくわ体形ではない。全体的に細くとも女性的な曲線のあるプロポーションは数秒しか見ていないのに脳裏に焼きついて離れない。 ……うあ、だめだ、意識したら、理性が……。 「……っ、今しかないか」 唐突に――背後から何かが水の中から飛び出す音と、どこか吹っ切れたような声が聞こえた。 「ちょ、まだ髪を洗っている途中――」 「その状態ならこちらが見えまい。ちょうどいいから、今から背中を洗ってやる」 ひたひたと、足音がこちらに近づいたかと思うと、その足音の主は僕の背後に座り込んだらしい。音と気配から察するに、壁に設置されてある棚から石鹸とタオルを手にとり、泡立てているようだ。 「このぐらいか……? いくぞ」 タオルが背中にやさしく乗せられたかと思った次の瞬間、レンさんは全力で背中を磨き始めた。いや、こそぎ落とし始めた。 「がっ! ぎゃああああああ! いた! 背中なくなる! やめてーッ!!」 この浴室の中にはやすりはなかったはずだ。なのに、なんなんだこの破壊力。すでに背中の皮は無くなっているに違いないと、僕は気が遠くなるほどの痛みの中で確信した。 「よし。終わりだ!」 べちゃんと手に持っていた紙やすり――もとい、アミノ酸織り込みタオルを床に放り投げ、今度は湯船の水を掬い上げ、火が点いているかのような激痛の走る背中に勢いよくお湯をぶちまける。 「アーッ!!!」 美羽曰く肌にいいらしい入浴剤入りのお湯は、火傷を負った肌にはよくないらしい。傷口に粗塩を刷り込むぐらいによく沁みた。 「髪の泡も落としてやらないとな」 「いや、自分でやれま――」 今度は座布団で思いっきり殴られるような衝撃の打ち水を、後頭部に連続で五発いただいた。僕は衝撃波で壁に頭を打ちつけ、半分意識を失いかけた。 「はあ…はあ…はあ…」軽く息が上がっているレンさん。「よし……こんどは、そちらの番だ」 「は、はい?」 水が目に入ってぼやけた視界の中のレンさんは、こちらに胸の高さまでタオルを巻いた背をこちらに向ける。なぜか正座だ。 「……背中、洗うのだろう?」 レンさんは向こうを向いたまま ゆっくりと胴にまとっていたタオルを下ろした。 「くっ……好きに、するがいい」 しばらくの間、僕は何も考えられないまま、目の前に置かれた白磁の彫刻に魅入られていた。 剣士である事など想像できないほど、彼女の体つきは細く、神秘的に美しい――それが手を伸ばせば届く距離にあった。 「早くしろ……」 小さく、つぶやくレンさん。どのような表情をしているのか知るよしもないが、耳が真っ赤になっている。 恐怖半分、喜び半分――僕は先ほどレンさんが投げ捨てたタオルを拾い上げ、洗面器の中で泡(血はついていなかったようだ)を洗い流し、石鹸で再度泡をつける。 そして、彼女の背中に恐る恐るタオルで触れた。 「ひゃぅう」 ――どこからか、とてもかわいらしい嬌声が上がった。 「……続けろ」 レンさんは耳だけでなく、首の辺りまで真っ赤になっていた。 僕は―― 選択肢A「早く終わらせようと、彼女の背中を洗い始めた」 下記へ 選択肢B「本能に任せて後ろから抱きしめた」 未実装・恐らくバットエンド 僕は早く終わらせようと、彼女の背中を洗い始めた。 「っ……ん……ぁ……」 押し殺した声が、浴室に響く。 タオルが背骨の辺りを通過すると、彼女の身体が小さく震える。 「もう少し、強くしていい……やさしくされると、なんか変……」 「わかった」 ごしごしと上のほうから背中を洗ってゆく。 「このぐらいか?」 「ん……そのぐらい……」 タオル越しではあるが、やはり、しなやかでいて少しやわらかい感触だった。あの俊敏さや力強さは何処から生まれるのだろう。 そのさわり心地を後ろめたい気持ちで堪能していると、あっというまに背中は泡だらけになった。 「じゃあ、泡流すよ」 床にタオルを置き、シャワーのノズルを手に取る。 「え? そ、そうか、もう終わりか……」 名残惜しそうに聞こえたのは僕の気のせいだろうか。 僕はシャワーの蛇口を回しながら、 「身体もあらって欲しいの?」 と、冗談っぽく聞いてみた。 「いいの? それじゃ――いや、いい! いらないから!」 「そうか。残念」 僕は苦笑しながら、ちょうどいい温度になったシャワーのお湯を彼女の背中に浴びせる。またたく間に泡は流れ落ち、もとの白い肌が現れた。 「あとは、私ひとりで洗えるから……先にでていろ」 「あ、うん。じゃあお先に」 自分の身体も軽くシャワーで洗い流して、素早く浴室を後にした。 ……どうやら、今夜中にこの世から撤退することは免れたらしい。 僕はダイニングルームで冷蔵庫に入っていた麦茶をコップに注ぎ、一気に仰いだ。 問題は明日、レンさんがお風呂に関して、本当のことを知ってしまった場合だ。 『貴様! 昨晩のことは全て偽りだったのか!』 『ごめんなさいごめんなさいごめんなさい! ほんとすいませ』 『うるさい! 死ね! 氏ねじゃなくて死ね!』 ――間違いなく、十七分割化決定だ。 二杯目の麦茶を注ぎながら、どうにか寿命を一年ぐらい延ばせないかと考える。 レンさんがお風呂の常識を得た時点で、死が確定するのだから、ようはレンさんがお風呂に関しての情報が入らないようにするしかない。なにもしないままでいると、どの拍子に真実にたどり着いてしまうかわからない。一番の問題は妹たちだろう。 現在の状況を妹たちに伝えて口止めをしてみると―― 『最低』 『最低です……』 《咎人(僕)は死刑執行人(レンさん)に差し出された》 誰がどうもみてもゲームオーバーです。本当にありがとうございました。 まあ、全部自業自得なので、十七分割や縛り首もしかたないのだが……。 はぁ、とため息をつき、麦茶の入ったボトルを冷蔵庫に直す。 「……あがった」 「!!」 そこにはいつもどおりの服装をしたレイさんがいつもどおりの無表情で立っていた。違うところは少しだけ、顔がほてっているぐらいか。 「お風呂上りも、同じ服?」 「ち、違う! 今日来ていたのは脱いで、これは洗濯したものだ。守衛騎士たる者、警護中は基本的に正装でないといけないからな」 ふと、思いついたことを聞いてみる。 「寝るときはどうしてるんだ?」 「? 下着だが?」 さらりと予想外な答えが返ってきた。特別なにも恥ずかしがってないようなので、もしかすると彼女の世界ではそれが当たり前なのかもしれない。 「どうかしたのか? ……まあいい。ところで、お前はいつもこの時間帯に入っているのか?」 「ん? お風呂?」 「そうだ」こくりと頷く。「どうなんだ?」 「まあ、妹たちが結構早めだから、必然的に遅くなるね」 「そうか……ならばしかたないな」 目をそらし、まるで口の中に99%カカオのチョコが入っているかのような苦い顔をしているレンさん。 「なにが?」 「明日もまた頼むぞ」 ……はて。『また頼む』とはいったいわたくしは何を頼まれているのか。 「べ、別に初めて人に洗ってもらって気持ちよかったとかそういうことじゃないからな! ただ……そういう慣習があるのならば仕方があるまい。姫は十時には寝てもらわなくてはならないし、ミウとミユも早く入っているようだし、お前しか私と同じ時間に入れるものはいないようだしな。百歩譲って――いや、万歩譲って妥協する」 心なしか、お風呂上りのときよりも頬の赤みが強くなっているような気がしたが、レンさんの剣幕に押され、僕はこくこうと頷いた。 「わ、わかりました」 「では私は寝る。お前もさっさと寝るがいい」 颯爽ときびすを返すと、レンさんは部屋に戻っていってしまった。 ばたんと、レンさんの部屋のドアがなった時―― 「……明日も?」 僕は事態が更に悪化したことに気づいた。

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