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「B:水でも飲むか」(2007/07/22 (日) 05:38:03) の最新版変更点
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<p>B:水でも飲むか</p>
<p>「仕方ない、水でも飲むとしますか」</p>
<p> 体を起こし、美羽達を起こさないように台所へ。<br>
戸棚からコップを出し、水を注いで口にした。<br>
どうして水を飲むと急に汗をかくんだろう?<br>
何てくだらない事を考えていると、</p>
<p>「ヒロト様……?」</p>
<p> 含んだ水を思いっきり噴出した。</p>
<p>「ゴフ、エフ、ケハ!!」<br>
「だ、大丈夫ですか!?」<br>
「コフ、あ、ああ平気っす。えっと、ユリア、姫」</p>
<p> 異国のお姫様がそこにいた。<br>
忍び足で急に後ろから話しかけるのはやめて欲しい。<br>
正直、ちょっと怖かった。</p>
<p>「すいません、喉が渇いてしまいまして。皆様を起こさないよう<br>
にと思ったのですが、逆に驚かせてしまったようですわね」<br>
「あ、何だ姫様も? あー、コップはこちらの物を」<br>
「ユリア、です」<br>
「んあ?」<br>
「ユリア、で構いません。私達は今日から家族ですから。<br>
家族を姫、って呼ぶのも、なんだかおかしいでしょう?」</p>
<p> なるほど、姫様だけのことはある。<br>
どうやら、人の心を掴むのには長けているらしい。</p>
<p>「あいよ、んじゃユリア。コップはこっちのコレを使ってくれ。 それから、家族に様付けも変だよな?<br>
俺にはそんな風にいちいち畏まらなくても大丈夫だから」<br>
「はい。ヒロト……さん」<br>
「さん、なんてのも別に」<br>
「す、すいません……殿方を呼び捨てにするのは、その……」<br>
「あーそういうことか。んじゃ、さん付けで手を打とう」</p>
<p> ヒロトさん、だなんて名前で呼ばれたのは何時振りだろうか。<br>
なんだかこそばゆい感じがする。</p>
<p>「では、私はこれで。お休みなさいませ、ヒロトさん」<br>
「あ、ちょっと待った」</p>
<p> そういえば、ずっと疑問に思ってたことがあった。</p>
<p>「はい? なんでしょうか?」<br>
「俺達は、家族なんだよな?」<br>
「ええ、先ほども申し上げました通り、私達は家族です」<br>
「じゃあ家族に隠し事は無しだ。正直に答えてくれ、なんで家に<br>
来たんだ?」<br>
「……気づいて、らしたのですね」<br>
「そりゃな。あんな説明で納得できるほど、俺はバカじゃない」</p>
<p> そう。先ほどの説明じゃ、ユリア達が家に来た理由としては薄すぎる。<br>
ホームステイするなら何もこんな一般の家に来ないでも、ノア先生の家でもいいはずだ。<br>
むしろ、そちらの方が面倒な問題も起きなくて済む。<br>
それなのに家に来たということは、何か別の理由があるとしか思えない。そう考える方が自然だ。</p>
<p>「わかりました。正直にお話いたしましょう。ここでは何ですね、<br>
少し外に出ませんか?」<br>
「わかった、ちょっと待っててくれ」</p>
<p><br>
この時間帯にもなると、外はひんやりと冷たく。火照った体に丁度いい。<br>
ユリアは中々話し出そうとしなかった。が、やっと決意したのだろう、ゆっくりと重い口を開いた。</p>
<p>「私達の世界は、今崩壊の危機にあります」<br>
「私達の……世界?」<br>
「はい。私の世界と、そして……ヒロトさん達世界」</p>
<p> 信じてくださいね? と前置きして、ユリアは説明を始めた。<br>
曰く、ユリアは異国の姫様なんかではなく、俺達の世界と対を成す世界からやってきたこと。<br>
曰く、ユリアの世界は今崩壊の危機にあること。<br>
曰く、ユリアの世界が崩壊すると、俺達の世界も連鎖崩壊してしまうこと。<br>
一言で言ってしまえば、わけがわからなかった。</p>
<p>「世界は、後一年足らずで崩壊してしまうでしょう。<br>
それを止めるために、私はヒロトさんの元に来たのです」</p>
<p> 世界を救ってくれと、彼女は言った。<br>
まるでどこかのRPGのような話だ。<br>
世界の崩壊を止める勇者。それを慕うお姫様。<br>
ゲームの中じゃ当たり前な話も、言われてみると違和感が残る。当たり前だ。ここは現実であって、ゲームの中じゃないのだから。</p>
<p>「理解していただけましたか」<br>
「ああ、大体は。でも、すぐに返事するわけにもいかない。<br>
まだわからないことも多すぎる。少し、時間をくれないか」<br>
「……そうですよね、こんな話、すぐに信じろと言っても無理な<br>
話でしたわね……」<br>
「明日には、きっと答を出すと思う。だからそれまで」<br>
「わかりました。明日、もう一度だけヒロトさんの答を聞かせて<br>
いただきます」<br>
「ん。それじゃ、そろそろ帰るか。<br>
美羽達に見つかったらうるさいし、いい加減寒くなってきた」<br>
「そうですね。風邪を引いてはいけませんし。<br>
それに、早く寝ないと明日大変ですから」</p>
<p> 世界の崩壊。一日だけの猶予。考えることが山積みだ。<br>
家に入るとき、後ろでユリアが呟いた、</p>
<p>「私は、ヒロトさんを信じています」</p>
<p> という言葉が、やけに強く胸に残った。<br></p>
<p>B:水でも飲むか</p>
<p>「仕方ない、水でも飲むとしますか」</p>
<p> 体を起こし、美羽達を起こさないように台所へ。<br>
戸棚からコップを出し、水を注いで口にした。<br>
どうして水を飲むと急に汗をかくんだろう?<br>
何てくだらない事を考えていると、</p>
<p>「ヒロト様……?」</p>
<p> 含んだ水を思いっきり噴出した。</p>
<p>「ゴフ、エフ、ケハ!!」<br>
「だ、大丈夫ですか!?」<br>
「コフ、あ、ああ平気っす。えっと、ユリア、姫」</p>
<p> 異国のお姫様がそこにいた。<br>
忍び足で急に後ろから話しかけるのはやめて欲しい。<br>
正直、ちょっと怖かった。</p>
<p>「すいません、喉が渇いてしまいまして。皆様を起こさないよう<br>
にと思ったのですが、逆に驚かせてしまったようですわね」<br>
「あ、何だ姫様も? あー、コップはこちらの物を」<br>
「ユリア、です」<br>
「んあ?」<br>
「ユリア、で構いません。私達は今日から家族ですから。<br>
家族を姫、って呼ぶのも、なんだかおかしいでしょう?」</p>
<p> なるほど、姫様だけのことはある。<br>
どうやら、人の心を掴むのには長けているらしい。</p>
<p>「あいよ、んじゃユリア。コップはこっちのコレを使ってくれ。 それから、家族に様付けも変だよな?<br>
俺にはそんな風にいちいち畏まらなくても大丈夫だから」<br>
「はい。ヒロト……さん」<br>
「さん、なんてのも別に」<br>
「す、すいません……殿方を呼び捨てにするのは、その……」<br>
「あーそういうことか。んじゃ、さん付けで手を打とう」</p>
<p> ヒロトさん、だなんて名前で呼ばれたのは何時振りだろうか。<br>
なんだかこそばゆい感じがする。</p>
<p>「では、私はこれで。お休みなさいませ、ヒロトさん」<br>
「あ、ちょっと待った」</p>
<p> そういえば、ずっと疑問に思ってたことがあった。</p>
<p>「はい? なんでしょうか?」<br>
「俺達は、家族なんだよな?」<br>
「ええ、先ほども申し上げました通り、私達は家族です」<br>
「じゃあ家族に隠し事は無しだ。正直に答えてくれ、なんで家に<br>
来たんだ?」<br>
「……気づいて、らしたのですね」<br>
「そりゃな。あんな説明で納得できるほど、俺はバカじゃない」</p>
<p> そう。先ほどの説明じゃ、ユリア達が家に来た理由としては薄すぎる。<br>
ホームステイするなら何もこんな一般の家に来ないでも、ノア先生の家でもいいはずだ。<br>
むしろ、そちらの方が面倒な問題も起きなくて済む。<br>
それなのに家に来たということは、何か別の理由があるとしか思えない。そう考える方が自然だ。</p>
<p>「わかりました。正直にお話いたしましょう。ここでは何ですね、<br>
少し外に出ませんか?」<br>
「わかった、ちょっと待っててくれ」</p>
<p><br>
この時間帯にもなると、外はひんやりと冷たく。火照った体に丁度いい。<br>
ユリアは中々話し出そうとしなかった。が、やっと決意したのだろう、ゆっくりと重い口を開いた。</p>
<p>「私達の世界は、今崩壊の危機にあります」<br>
「私達の……世界?」<br>
「はい。私の世界と、そして……ヒロトさん達世界」</p>
<p> 信じてくださいね? と前置きして、ユリアは説明を始めた。<br>
曰く、ユリアは異国の姫様なんかではなく、俺達の世界と対を成す世界からやってきたこと。<br>
曰く、ユリアの世界は今崩壊の危機にあること。<br>
曰く、ユリアの世界が崩壊すると、俺達の世界も連鎖崩壊してしまうこと。<br>
一言で言ってしまえば、わけがわからなかった。</p>
<p>「世界は、後一年足らずで崩壊してしまうでしょう。<br>
それを止めるために、私はヒロトさんの元に来たのです」</p>
<p> 世界を救ってくれと、彼女は言った。<br>
まるでどこかのRPGのような話だ。<br>
世界の崩壊を止める勇者。それを慕うお姫様。<br>
ゲームの中じゃ当たり前な話も、言われてみると違和感が残る。当たり前だ。ここは現実であって、ゲームの中じゃないのだから。</p>
<p>「理解していただけましたか」<br>
「ああ、大体は。でも、すぐに返事するわけにもいかない。<br>
まだわからないことも多すぎる。少し、時間をくれないか」<br>
「……そうですよね、こんな話、すぐに信じろと言っても無理な<br>
話でしたわね……」<br>
「明日には、きっと答を出すと思う。だからそれまで」<br>
「わかりました。明日、もう一度だけヒロトさんの答を聞かせて<br>
いただきます」<br>
「ん。それじゃ、そろそろ帰るか。<br>
美羽達に見つかったらうるさいし、いい加減寒くなってきた」<br>
「そうですね。風邪を引いてはいけませんし。<br>
それに、早く寝ないと明日大変ですから」</p>
<p> 世界の崩壊。一日だけの猶予。考えることが山積みだ。<br>
家に入るとき、後ろでユリアが呟いた、</p>
<p>「私は、ヒロトさんを信じています」</p>
<p> という言葉が、やけに強く胸に残った。<br></p>