プロローグ ~ Ten years before ~

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  プロローグ ~ Ten years before ~ ;--------------------------------------------------------- 時は西暦二〇二〇年。 新宿副都心に建造された一〇八階建ての高級ホテル。 その最上階会議室で、虎宮博士はシュヴァルツドライヴプロジェクト(SDP)の起動実験プランの説明会を行っていた。 ヘリウムⅢによる核融合システムの開発に成功し、自称二〇歳(実年齢は不明)にして、ノーベル物理学賞を受賞したエンジニアたちのカリスマ。 日本が生んだ希有の才能、虎宮沙良博士。 一四〇センチの低長身に、幼い顔立ちだが一説には三〇代後半とも四〇代かもと囁かれている。 とにかく年齢に関する話だけはダブーとされていた。 また、頭にはなにやら変な生き物が乗っかっている。生物なのか機械なのかわからないが、ぬいぐるみではないことは確かだ。 そのような奇抜な格好と容姿は、おおよそ科学者に抱くあらゆるイメージを根底から覆してくれた。 そうして、その伏目がちな双眸が開眼し、その瞳に射すくめられたならば、大抵の人間は言葉を発する前に屈服してしまうだろう。 もちろん議論やディベートで負けたことは無い。 その二一世紀のアインシュタインと謳われた虎宮博士が提唱した、次世代エネルギーシステム、シュヴァルツドライヴ。 顕微鏡クラスの極小ブラックホールを作り出し、その光をも吸引するエネルギーを利用して発電を行おうというのだ。 論理的には無尽蔵のエネルギーが半永久的に供給される。 そのための実験用プラントは、すでに九割がた完成しており、その内の七割は実際に稼動していた。 プロジェクトの総予算は二四兆六千億円。 国の開発事業としては戦後最大規模であろう。 この、国家の威信を懸けた巨大プロジェクトはいま、最大の山場を迎えようとしていた。 「まだ早すぎるのではないか?」 起動実験に消極的な岩崎教授が異を唱える。 「何をおっしゃるかと思えば……。むしろ遅いくらいですよん。そう、あなたが担当するセクションみたいにねっ!」 壇上に立った虎宮博士は、進捗の遅れている岩崎教授のチームを皮肉りながら反論した。 「だからこうして恥を忍んで進言しているのだ。私のチームが担当した制御プログラムは不完全で、まだテストに耐えうる仕様ではない。無謀な実験は失敗を招くだけだ」 「アハハ心配ないよー。そもそも制御する必要なんてないんだからさぁ。それに制御プログラムの仕様書とソースコードをざっと眺めてみたけど、あれじゃ駄目だよ。研究所の修士だってもう少しマシな仕様を提出できるんじゃないかな? でもね、だからといって気を落す必要はないよ。あんなものが制御できるのなら、今頃人類はタイムマシンだって開発してるはずだからね」 「ど、どういう意味だそれは。何を考えている虎宮博士!」 岩崎教授は席を立って怒鳴った。こめかみの血管が浮かび上がり、ヒクヒクと脈打っていた。 「とにかく! 実験はタイムスケジュールに則り、計画通りに行うよー。いまは一分一秒が惜しいから、早く準備させるよう手配してねー」 虎宮博士は脇に立っている秘書にそう命じた。秘書は無言で頷くと、連絡を行うべくその場を退席した。 「ま、待て! 私は反対する。この起動実験には異議を唱える。実験を強行するようなら、査問委員会の招集を行う」 荒い息を吐く岩崎教授に相反して、虎宮博士は冷静だった。 まるで、餌を求めて山から下りてきた熊を射殺するハンターのように、冷ややかな視線を岩崎教授に送っていた。 「五月蝿いなぁ。好奇心を無くし、権威や権力を手に入れたがる技術者ほど醜悪なものはないねぇ。もういいや。ねえねえ誰かこいつをつまみだしてよ」 岩崎教授の言葉を、あくびをかみ殺しながら聞いていた虎宮博士は、面倒臭そうに指示した。 「なっ、なにをほざくか、このケツの青い小娘が! た、たかがノーベル賞を受賞したくらいで天狗に乗りおって、貴様を学会から、いやこの世界から追放してやる!」 虎宮の暴言に、岩崎教授は顔を真っ赤にして怒鳴り散らした。 「たかが……ね。うん。確かにたかがノーベル賞だよ。なんの価値も無いね。でもまあ研究資金を調達するくらいの役には立ったかな? それはそうと岩崎教授。周りを見てごらんよー」 円卓になった会議室に居る科学者、政治家、投資家たちが岩崎教授に送る視線は、侮蔑以外の何者でもなかった。 この会場の雰囲気、出席者の支持は、すでに虎宮博士が勝ち取っており、虎宮博士はプロジェクトを遅延させる病巣のように唾棄すべきものとして皆の目には映っていた。 「なっ、なんだきさまら……」 「おっほん。岩崎教授は疲れてらっしゃる。寛容なぼくは教授に休暇を差し上げることにしました! そうだなぁ、北海道にでも行ってクールダウンしてくるといいかも。それじゃー行ってらっしゃーい」 虎宮が顎で合図すると、扉の両脇に阿吽像のように立っていた黒服のSPが、岩崎教授の両脇を抱えあげ、会議室から連れ出した。 岩崎教授の言葉にならない恨み言が、退出したドア越しに聞こえてくるが、虎宮の関心はもう他のことに移っていた。 「さてと、それでは本題に入りましょうー」 虎宮博士の双眸が妖しく光った。 「みなさまに、我々人類の更なる繁栄を約束する友人を紹介致しまーす」 虎宮博士の言葉を聞いた要人たちは席を立ち、拍手でもって、虎宮の友人を歓迎した。
;--------------------------------------------------------- ;インパクトファイター ~事象の地平線へ~ ;--------------------------------------------------------- ;(BGM:OFF) ;(背景:フェードアウト) ;--------------------------------------------------------- ;(効果:センタリング)   プロローグ ~ Ten years before ~ ;--------------------------------------------------------- ;(BGM:) ;(背景:) 時は西暦二〇二〇年。 新宿副都心に建造された一〇八階建ての高級ホテル。 その最上階会議室で、虎宮博士はシュヴァルツドライヴプロジェクト(SDP)の起動実験プランの説明会を行っていた。 ヘリウムⅢによる核融合システムの開発に成功し、自称二〇歳(実年齢は不明)にして、ノーベル物理学賞を受賞したエンジニアたちのカリスマ。 日本が生んだ希有の才能、虎宮沙良博士。 、幼い顔立ちと一四五センチの低長身だけに、天才小学生などと揶揄されることもあるが、年齢不詳で公式の記録には一切記載されていない。 一説には三〇代後半とも四〇代かもと囁かれている。 とにかく年齢に関する話だけはダブーとされていた。 また、頭にはなにやら変な生き物が乗っかっている。生物なのか機械なのかわからないが、ぬいぐるみではないことは確かだ。 そのような奇抜な格好と容姿は、おおよそ科学者に抱くあらゆるイメージを根底から覆してくれた。 もしも一つの型に定義するならマッドサイエンティスト。この言葉が彼女を言い表すに相応しい呼称と言えた。 そうして、その伏目がちな双眸が開眼し、その瞳に射すくめられたならば、大抵の人間は言葉を発する前に屈服してしまうだろう。 もちろん議論やディベートで負けたことは無い。 その二一世紀のアインシュタインと謳われた虎宮博士が提唱した、次世代エネルギーシステム、シュヴァルツドライヴ。 顕微鏡クラスの極小ブラックホールを作り出し、その光をも吸引するエネルギーを利用して発電を行おうというのだ。 論理的には無尽蔵のエネルギーが半永久的に供給される。 そのための実験用プラントは、すでに九割がた完成しており、その内の七割は実際に稼動していた。 プロジェクトの総予算は二四兆六千億円。 国の開発事業としては戦後最大規模であろう。 この、国家の威信を懸けた巨大プロジェクトはいま、最大の山場を迎えようとしていた。 「まだ早すぎるのではないか?」 起動実験に消極的な岩崎教授が異を唱える。 「何をおっしゃるかと思えば……。むしろ遅いくらいですよん。そう、あなたが担当するセクションみたいにねっ!」 壇上に立った虎宮博士は、進捗の遅れている岩崎教授のチームを皮肉りながら反論した。 「だからこうして恥を忍んで進言しているのだ。私のチームが担当した制御プログラムは不完全で、まだテストに耐えうる仕様ではない。無謀な実験は失敗を招くだけだ」 「アハハ心配ないよー。そもそも制御する必要なんてないんだからさぁ。それに制御プログラムの仕様書とソースコードをざっと眺めてみたけど、あれじゃ駄目だよ。研究所の修士だってもう少しマシな仕様を提出できるんじゃないかな? でもね、だからといって気を落す必要はないよ。あんなものが制御できるのなら、人類はタイムマシンだって開発してるはずだからね」 「ど、どういう意味だそれは。何を考えている虎宮博士!」 岩崎教授は席を立って怒鳴った。こめかみの血管が浮かび上がり、ヒクヒクと脈打っていた。 「とにかく! 実験はタイムスケジュールに則り、計画通りに行うよー。いまは一分一秒が惜しいから、早く準備させるよう手配してねー」 虎宮博士は脇に立っている秘書にそう命じた。秘書は無言で頷くと、連絡を行うべくその場を退席した。 「ま、待て! 私は反対する。この起動実験には異議を唱える。実験を強行するようなら、査問委員会の招集を行う」 荒い息を吐く岩崎教授に相反して、虎宮博士は冷静だった。 まるで、餌を求めて山から下りてきた熊を仕方なく射殺するハンターのように、憐れんだ視線を岩崎教授に送っていた。 「五月蝿いなぁ。好奇心を無くし、権威や権力を手に入れたがる技術者ほど醜悪なものはないねぇ。もういいや。ねえねえ誰かこいつをつまみだしてよ」 岩崎教授の言葉を、あくびをかみ殺しながら聞いていた虎宮博士は、面倒臭そうに指示した。 「なっ、なにをほざくか、このケツの青い小娘が! た、たかがノーベル賞を受賞したくらいで天狗に乗りおって、貴様を学会から、いやこの世界から追放してやる!」 虎宮の暴言に、岩崎教授は顔を真っ赤にして怒鳴り散らした。 「たかが……ね。うん。確かにたかがノーベル賞だよ。なんの価値も無いね。でもまあ研究資金を調達するくらいの役には立ったかな? それはそうと岩崎教授。周りを見てごらんよー」 円卓になった会議室に居る科学者、政治家、投資家たちが岩崎教授に送る視線は、侮蔑以外の何者でもなかった。 この会場の雰囲気、出席者の支持は、すでに虎宮博士が勝ち取っており、虎宮博士はプロジェクトを遅延させる病巣のように唾棄すべきものとして皆の目には映っていた。 「なっ、なんだきさまら……」 「おっほん。岩崎教授は疲れてらっしゃる。寛容なぼくは教授に休暇を差し上げることにしました! そうだなぁ、北海道にでも行ってクールダウンしてくるといいかも。それじゃー行ってらっしゃーい」 虎宮が顎で合図すると、扉の両脇に阿吽像のように立っていた黒服のSPが、岩崎教授の両脇を抱えあげ、会議室から連れ出した。 岩崎教授の言葉にならない恨み言が、退出したドア越しに聞こえてくるが、虎宮の関心はもう他のことに移っていた。 「さてと、それでは本題に入りましょうー」 虎宮博士の双眸が妖しく光った。 「みなさまに、我々人類の更なる繁栄を約束する友人を紹介致しまーす」 虎宮博士の言葉を聞いた要人たちは席を立ち、拍手でもって、虎宮の友人を歓迎した。 ;(BGM:OFF) ;(背景:フェードアウト)

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