Setting sun/プロローグ

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Setting sun/プロローグ」(2007/07/13 (金) 04:25:17) の最新版変更点

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*モノローグ 俺達の世界は、それなりに謎はあるけれど、それなりに問題はあるけれど、でも安泰だと思っている。 いきなり性別が変わったり、いきなり空が緑になったり、なんてことは起こらない。 そんなことすら起こらないのに、もし、こんなことを言われたら。 「あなたが居るこの世界は、あと一年で崩壊します」    ◆二周目から追加 もし本当にこの世界が崩壊してしまうとしたら、俺は A.戦ってでもそれを止めるだろう B.どこかに逃げてしまうかもしれない    ◆Aで通常編、Bで「setting sun」移行 *プロローグ ●シーン001 「…でさ、その時アイツ言ったのよ。『違うから、違うから、下心は消したから!』って」 「あはははは!! 消せるもんじゃねーし!」 「マジ有り得ねぇな、それ!」 ゲラゲラと友人が笑っている。俺も笑っている。黒須川は声こそ出していないが、口元は緩んでいた。 放課後の教室でなぜかトランプをしていた俺達は、ゲームが終わったにも関わらず下らない話をしていた。 学校に居ると三年の間に最低でも一回は大富豪が大流行するのはなんでなんだろうか。中学校の時も流行った気がする。 チャイムの音にふと時計を見ると、午後四時半を指していた。 「やっべ、俺もう帰るわ」 「じゃ俺らも帰るか」 ぞろぞろと連なって下駄箱まで帰る。こういう時の足取りは、なぜか妙に重い。帰りたくないからだろうか。階段を一段下りるのにも時間をかける。ただの牛歩だが、ちっとも気にならない。 ●シーン002 下駄箱に向かうと、ジャージ姿で靴ひもを結んでいる沢井を見つけた。俺達の話し声にこちらを向いた沢井は、立ち上がって手を振る。 「沢井、部活か?」 言いながら、眩しさに目を細めた。逆光のせいで沢井の顔がほとんど見られない。 「うん、もうクッタクター。さすがに四ゲームもスタメンで出ると疲れるね」 「四ゲーム? お前は本当にタフだなぁ」 黒須川が呆れたように言った。なんでもないと思った俺は問題があるんだろう。沢井は子供の時から元気で、俺と一緒にそこらへんを走り回っていたもんだから、それが普通な気がしていた。 沢井が照れたように笑う。この笑顔も見慣れている。底抜けに明るい笑顔で、俺がしょげた時はいつも癒されていた。 「一緒に帰ろうか」 「そうだな」 ぽんと肩を叩かれた。友人が軽快な足取りで走って行く。 「じゃ、大翔、また明日な」 「おう、また明日ー」 そういえばあいつはバイトがあるんだっけか。遊んでるように見えて、案外真面目な奴なんだなぁ。 沈みかける夕日に急かされたような気になって、俺は少し早足で校門を出た。 ●シーン003 「俺、そういや沢井のこと知ったの、入学して結構すぐだったな」 帰り道に黒須川がぽつりと言った。俺が夏休みに黒須川と沢井を会わせたから、沢井にとってはそこが黒須側との初対面なんだろう。 「え、そうだったの? なんで?」 「あれだよ、部活争奪戦」 あぁ、と俺は納得した。部活争奪戦は、うちの高校の名物で、新入生の親睦を深める球技大会の後に行われるものだ。あそこで活躍をすると、もれなく運動部の先輩方からの猛烈アタックを受けることになる。そこで沢井は女子とは思えぬ活躍をして、ほぼ全競技に出た挙げ句、軽く優勝をさらっていったのだ。 翌日から、陸上部、バレー部、水泳部、サッカー部、テニス部、等の様々な運動部から追い回された沢井は、最終的にバスケ部に入部した。決めるまでの一週間は、まさに沢井にとっての戦時だっただろう。校門にずらりと待ち構える部長達の姿は、本当に圧巻だった。 「さんっざん話題になったからなぁ、あれは」 「どの部に入るかって賭けしてた奴も居たな」 「えー、何それ!」 笑っているが、実はこれには俺も一枚噛んでいる。沢井は中学の時に何部に入っていたか教えてくれないか、と、ちょっと仲良くなった奴から訊かれたのだ。  ◆Q.01   A.俺は本当のことを言った。   B.俺は冗談を言った。    →A  俺は本当のことを言った。バスケ部で元気にやってたけど、大会の実績なんかはないよ、と。そいつはニヤニヤしながら教室から出ていったが、今思えばあいつは賭けの為に情報を手に入れたんだろう。  その後だ、黒須川が俺に話しかけてきたのは。  『沢井陽菜の件では世話になったよ』  最初俺はよく分からなかったが、すぐにこいつも賭けをしていたんだと思いついた。損をしていたら最悪いじめられるんじゃないかと思ったものの、そんなこともなく三年経った今ではいい友人だ。  「あ、その賭けのディーラー俺」  まぁ、沢井の運動神経がいいのも、一概になんとも言い切れないような……って、なんだって?  「えぇーっ、本当!?」  「あぁ、なんかできそうだなって思って」  それは聞いていなかった。俺はてっきりただ賭けをしただけの奴かと思っていた。新入生にしてそんなことをするとは、こいつ本当にバイタリティがあるな。  「得したの?」  「いや、多分どっかで情報がリークしてなぁ、結構損したよ」  黒須川はちらりと俺を見た。なんだ、今更そんなこと責められたって、明日アイスの一本を奢る程度しかできないぞ。  黙ってアイコンタクトをとっている俺とは逆に、沢井は心配そうに言った。  「可哀想かもしんないけど、…でも自業自得だよね、それって」  「ま、趣味だから気にするな」    →B  俺は冗談を言った。実はああ見えて中学時代は根暗で、文芸部に所属してたよ、と。そいつは目を丸くしていたが、少し考えながら教室から出ていった。今思えばあいつは賭けの為に情報を手に入れたんだろう。  その後だ、黒須川が俺に話しかけてきたのは。  『沢井陽菜の件では世話になったよ』  最初俺はよく分からなかったが、すぐにこいつも賭けをしていたんだと思いついた。結構得をしたようで、その時に感謝の礼をされて以来、俺は黒須川と仲が良くなった。  「あ、その賭けのディーラー俺」  まぁ沢井の運動神経がいいのも一概になんとも言い切れないような……って、なんだって?  「えぇーっ、本当!?」  「あぁ、なんかできそうだなって思って」  それは聞いていなかった。俺はてっきりただ賭けをしただけの奴かと思っていた。新入生にしてそんなことをするとは、こいつ本当にバイタリティがあるな。  「得したの?」  「かなり得したなぁ、なんでか文芸部に賭けた奴がいっぱい居てな」  黒須川は俺を見て少し笑った。こいつは本当に嘘を吐くのが上手だと思う。将来は詐欺師にでもなるんじゃないだろうか。  黙っている俺とは逆に、沢井は少し怒ったように言った。  「ずるーい、陽菜にもちょっとちょうだいよ!」  「何言ってんだ、今更すぎるだろ」 軽く言って髪をかきあげる黒須川は、沢井を見て笑っている。もしかしたら、黒須川は沢井のことが好きなのかもしれない。なんとなく前々からそんな感じがしていた。女子とあまり親しく接することがない黒須川が、沢井にだけは特別によく話をしている。 前に好みの女のタイプを訊かれて「俺とは違ったタイプの奴かな」と言っていたし。ちょうどいいからとたまに頭に手を置いている。今も俺を置いて少し先を歩く二人は、なんだかんだでお似合いかもしれないと思う。 そう思うと、俺は  ◆Q.02   A.なぜかイライラした。   B.応援したいと思った。    →A(フラグA1)  俺はなぜかイライラした。どっちも俺にとっては大事な友人なのに、そこの二人でくっつかれると、俺が気まずい思いをするのは目に見えている。でも冷静に考えると、そうでもないような気もする。なんかむずがゆいというか、とにかくこの二人が恋人になるという姿を想像したくないというか。  …まぁ、そういうことは俺が決められることではないし、俺が制限することではないから、もしそうなったとしても…  ……いやいや、でもよくよく考えると、沢井が黒須川を相手にするか? 黒須川なんかと遊んでいたら、いつの間にかなんか胸とか大きくなっちゃって、露出度の高い服なんか着ちゃったりするんじゃないだろうか。なんか、そんな沢井になるのは、とても嬉しくない。普通に嬉しくない。むしろ腹立たしい。  沢井は俺にとっては姉というか妹というか、そういった存在だ。家族同然の大事な存在が、そんなチャラチャラした奴になるのは許せない。  ………いやまぁ、結局そうなったら俺はどうにもできなくて、黒須川に文句をつけるだけになるんだけどな。俺は沢井の家族でもなんでもないわけだから。  どうも俺は腑に落ちない気分になって、なぜか色々とその時になったらどうするかを思案していた。    →B  俺は応援したいと思った。黒須川はチャラチャラした奴だが、そんなに悪い奴じゃない。ちゃんと自分を持っていて男前の黒須川だったら、俺も胸を張って沢井を預けることができるというものだ。  問題は沢井が黒須川に釣り合うかということだが…まぁ、沢井もいい奴だ。元気だし、決して可愛くないわけじゃない。だが黒須川と違って子供っぽすぎる。地域の野球大会には十年以上の連続出場経験を持っているし、未だに化粧をしたことがない。この間なんか公園で子供と砂遊びに興じていた。花の十八の女子高校生がそれでいいのかと、俺はたまに心配になる。  でもそういったところも黒須川がちょっとずつ直してくれればいい、とも思う。黒須川なら沢井の魅力を引き出してくれるだろう。  思えば色々あったなぁ。ままごとで泥団子を本当に食べなければいけなかったり、一緒に木登りをしてうっかりパンツ見ちゃったり、山に遊びに行って迷子になっちゃったり…  俺は娘を渡すような心境に陥り、少しジーンとしていた。 ●シーン004 「ちょっと、ヒロ君」 「え?」 「どこまで行くの? ここヒロ君家でしょ?」 はっと我に返ると、そこは確かに我が家だった。いつの間にか黒須川も居なくなっている。 「ぼんやりしすぎじゃないの?」 「沢井に言われたくねぇよ、何もない所でこけるくせに」 「いっ、いいじゃんそれぐらい! 最近は昔みたいにそんなこけないもん!」 「どうだかなぁ〜」 頬を膨らませながら、沢井は隣の家の門を通っていった。俺の家とは隣同士で、だから昔からの幼なじみなのだ。 ぽんやりと香るカレーの匂いは、きっと沢井の家からしているんだろう。沢井の母親はカレーが得意で、よく俺達家族にもその腕を振る舞ってくれた。 「じゃ、また明日ね」 「おう」 「ヒロ君、帰ったらちゃんと顔洗うんだよ?」 ニヤニヤしながら言われた。何を考えているんだ? 沢井は機嫌が良さそうにドアを開けたが、 「ふぎゃっ」 次の瞬間には転んでいた。 だから気をつけろって言ったのに…いや言ってないが。だけど心の中ではちゃんと思っていたんだ。 「ばーか」 「うぅ…み、見てないよね!?」  ◆Q.03(フラグA1で発生、ない場合はAを自動で選択)   A.「くまさん」   B.「赤の水玉」    →A  「くまさん」  「んなっ、そんな子供じゃないよ!」  沢井は子供扱いされたことに怒りながらも、見られてなかったことには安心してるようだった。  まぁ本当のことを言うと見えていたんだが、それは黙っているのが優しさってものだろう。    →B  「赤の水玉」  バッとスカートを押さえた。うーん、うっかり言ってしまった。黙っていれば良かったかもしれない。  「…えっち」  「今更沢井のパンツなんか見ても何も思わねーよ」  思わない、わけでもないが…まぁ、思わないということにしておこう。 沢井は照れつつ立ち上がり、スカートの裾をはらった。いや、そこで見えるかもしれないから注意しろよ。 「顔擦りむいてるから、バンソウコウ貼っとけよ」 「うん、分かった。じゃあね!」 こけたくせに元気がいい。立ち直りが早いのはあいつのいいところだ。 俺はポケットから鍵を取り出すと、ドアを開けて中へ入った。 ●シーン005 「ただいまー」 家に帰ってまず気付いたのは、カレーの匂いだった。沢井の家からかと思ったが、これは我が家でやっていたのか。 キッチンを覗くと、レンがユリアと美優に料理を教えていた。 「おかえりなさい、ヒロトさん」 「お疲れ、ヒロト殿」 「お兄ちゃん、おかえりなさい」 女三人から一斉におかえりコールをされるというのは、中々悪い気分ではない。その内一人が妹だったとしてもだ。 「レン、料理を教えていたのか?」 「そうだ。ミユは覚えがいいのだが、作業効率が悪いのが問題だな」 恥ずかしそうに美優は笑う。 「でも、レンさんのおかげで上手になったのよ」  ◆Q.04   A.「そうか、偉いな」   B.「ありがとう、レン」    →A(フラグB1発生)  「そうか、偉いな」  そう言って俺は美優の頭を撫でた。美優はにこにこしている。  美優は俺の妹ではないが、両親が健在の時に連れてきた子だ。父親の友人の子で、俺も何度か遊んだことがある。美優の親が事故死をしてからは、父親が引き取ってずっと暮らしている。ちょっと気弱だが性格の優しいいい子だ。    →B  「ありがとう、レン」  そう言って俺はレンに軽く頭を下げた。  「やめてくれ、そんなに大したことはしていないんだ」  レンは少し照れたようだ。普段キリッとしているだけに珍しい。  レンはユリアのお付きのメイドだ。最初見た時は美少年だと思っていたが、本当は女だった。黙っていると少し怖い雰囲気があるので、美優とは折り合いがあまり良くなかったのだが、どうやら仲良くなったらしい。 「ユリアは姫様なのに料理するんだなー」 「レンはいいって言うんですけどね、でも料理ぐらいできるようになりたいじゃないですか」 ふわりとレンは言った。漂う気品と似つかわしくないカレーの匂いが、俺の心を優しくする。 ユリアは諸事情があって俺の家に住んでいる、本当は異世界のお姫様だ。雰囲気や物腰が柔らかく、見る人をほんわかさせる。ただ意志の強さは半端ではなく、わりと頑固なところもあったりする。 「…あれ、お兄ちゃん、それ…」 美優が俺の顔を指差した。 「ん?」 そういえば、さっきも沢井が何か言ってたな… ●シーン006 俺が気になって洗面所へ向かおうと廊下へ出た時、玄関のドアが開いた。 「ただいま、兄貴」 髪をなびかせて美羽が帰ってきた。匂いにつられるようにキッチンへ視線が向かっている。 「美羽、おかえり。今日の夕飯はカレーだぞ」 「匂いで分かってるわよ。レンさんが作ったの?」 口が悪いが、美羽は俺の実の妹だ。元気といえば元気だが、沢井と違い生意気という方向へ集約されている。頭もいいし運動神経も抜群で、学校では生徒会長も務めているほどだ。 「レンと美優とユリアの特製だ。お前も作れればいいんだけどなぁ」 俺がそう言うと、美羽はムッとした顔をした。 「じゃあ今度アタシがご飯作るわよ!」 こいつは結構負けず嫌いなせいか、こういうことを言うとすぐに怒る。どうしたものか…  ◆Q.05   A.「じゃあレンに教わらないとな」   B.「忙しいんだろ、無理するなよ」    →A  「じゃあレンに教わらないとな」  俺としては普通に受け答えをしたつもりだったが、美羽はますますムッとした。あれ? なんでだろうか。  「一人でできるわよ!」  あ、そうか。どうやら美羽は一人で作りたかったようだ。ぷんぷんという擬音語が似合う状態になりながら、美羽は靴を脱いでキッチンへ向かった。    →B(フラグC1発生)  「忙しいんだろ、無理するなよ」  「え…」  美羽は部活や生徒会で忙しい。優等生であろうと頑張る美羽の姿は、誇らしくもあり心配でもある。だから俺はたまにこうやって美羽の肩の力を抜いてやるのだ。  「暇な時でいいよ、兄ちゃんいくらでも味見してやるからさ」  「あ、う、うん…」  こうやってたまに照れると、まだまだ子供だなぁと俺は思う。美羽はどこかぎこちない仕草で、靴を脱いでキッチンへ向かった。 「あれ?」 ふと美羽が足を止めてまじまじと俺の顔を見た。そういえばさっき、美優に… 「あははははっ!! 何兄貴、その顔っ、有り得ない!」 また言われた。しかも笑われた。俺は美羽の笑い声を背中に受けながら洗面所へ向かった。 ●シーン007 鏡を見る。俺はどうなっているんだ? ……一瞬、気付けなかった。それからハッと気付いた。鼻の穴の淵がペンで黒く塗られている。 ●シーン008 俺は走って階段まで行き、窓を開けて叫んだ。 「沢井ーっ!!」 「あはははっ、今気付いたんだ? ごめんね」 沢井が窓を開けて返事をした。 「何だこれっ!」 「黒須川くんがさぁ、ぼーっとしてるからって書いたの」 「…あ、い、つ〜!!」 けらけらと沢井は笑っている。本当に子供のようだ。美優なんかよりよっぽど子供なんじゃないか、こいつ。 「いやー面白かったよ、あれ、今日カレーなの?」 「あぁ。でもお前には食べさせないからな!」 「えぇ〜っ」 沢井のブーイングを無視して窓を閉めると、美羽が堪えきれない様子で廊下の壁を叩いていた。ユリアと美優もくすくす笑っている。畜生、お前ら、許さんぞ。 ●シーン009 顔を洗った。黒須川の奴は油性で書いていたらしく、落とすのに随分手間がかかった。また鼻の穴だから粘液に染みること染みること。明日会ったら、購買の乱戦必至の限定クリームパンを買ってきてもらおうと決めた。 ふと、目の前の鏡が気になった。もう、あれをしなくなって一ヶ月ぐらいは経つだろうか。もしかしたら、変わっているかもしれない。 もしかしたら。俺はそう思って鏡に手を触れた。 ●シーン010 …変わっているはずがなかった。やはり、そうなのだ。世界は崩壊する。よく分かっていたはずなのに、どうして今、希望を持ったりなんかしたのだろう。 悲鳴を上げる人々、蒸発していくビルや樹。押し寄せる、崩壊という名の波だ。 ●シーン011 鏡から手を離すと、後ろにユリアが立っているのが見えた。悲しそうな顔だ。  ◆Q.06   A.「…カレー、いつできあがる?」   B.「…未来は、変わらないんだな」    →A  「…カレー、いつできあがる?」  できるだけ明るい声で言ってみた。ユリアも少し表情を悩ませてから、多分作ったんだろう笑顔で言った。  「もうすぐできると思います。でもミユさんが、あと三十分は寝かせろって」  「はは、美優らしいな」  俺は乾いた嘘くさい笑いをして、自分の部屋へ戻る。    →B(フラグD1発生)  「…未来は、変わらないんだな」  「……すいません…」  「ユリアが謝ることじゃないよ」  そう言ったが、ユリアは本当に申し訳なさそうな顔をしていた。俺はどうしようもない気持ちになる。  だけど、本当にどうしようもないのだ。誰が悪いわけでもない、来たらどうにかなったのか、来なかったらどうにかなったのか、そんなことは誰にも分からない。  「まだなんか作ってくれるんだろ?」  「え?」  「俺、海藻サラダ好きなんだよね」  「あ、ミユさんから聞いてます。だから買ってきました」  さすが美優だ。俺の好みはきちんと把握しているらしい。  「美味いの期待してるよ」  「…はい!」  俺はさっきから空腹を訴える腹を押さえながら、自分の部屋へ戻る。 ●シーン012 ……自分の部屋に来ると、妙に暗い気持ちになるのは、俺だけなんだろうか。 またここに来たという安心と共に、またここに来てしまったという、異様な屈辱感を味わってしまう。 明るい妹達の笑い声も、懐かしさを誘うカレーの匂いも、心が遮断してしまったように染みてこない。 崩壊を待つだけの、世界。 俺は預言者でありながら、どこまでも無力だった。 ●シーン013 ▼絵、音リスト 『』内は必要というわけではなく、あれば欲しい シーン001:放課後の教室  チャイム音 『放課後の曲/002の終わりまで』 シーン002:放課後のゲタ箱  カラス音 シーン003:放課後の帰り道、沢井が優勝の旗を持っているスチル(写真っぽく)  帰り道っぽい曲 シーン004:放課後の主人公宅前、沢井のパンチラスチル  こけるSE、沢井のテーマ シーン005:夕暮れのキッチン  家族のテーマ シーン006:夕暮れの玄関  美羽のテーマ シーン007:洗面所  ギャグ系の曲(009の頭まで) シーン008:隣家の窓から顔だけ見えている沢井のスチル シーン009:洗面所 シーン010:人が消えたり街が壊れていたりするスチル  最後らへんからユリアのテーマ(切なめリミックス) シーン011:洗面所 シーン012:夕暮れの自室  最後らへんからSetting sunのテーマ シーン013:Setting sunオープニング(最後に「大丈夫、逃げ場は、ここにあるから」という文字) ▼補足 モノローグはテキトーに書いただけなんで、変更があれば勿論自由にどうぞ。 もしかしたらシーン003の◆Q.02のAから、  俺はなぜかイライラした。どっちも俺にとっては大事な友人なのに、そこの二人でくっつかれると、俺が気まずい思いをするのは目に見えている。でも冷静に考えると、そうでもないような気もする。なんかむずがゆいというか、とにかくこの二人が恋人になるという姿を想像したくないというか。  …これはもしかして嫉妬というやつだろうか。俺は、どっちに嫉妬しているんだ?    A.沢井   B.黒須川 で、A選択で悪友うほっフラグを立てるかもしれない。全部書き終えてから考える。 A〜Dのフラグを3つ立てると、そのキャラがヒロインになる ----
*モノローグ 俺達の世界は、それなりに謎はあるけれど、それなりに問題はあるけれど、でも安泰だと思っている。 いきなり性別が変わったり、いきなり空が緑になったり、なんてことは起こらない。 そんなことすら起こらないのに、もし、こんなことを言われたら。 「あなたが居るこの世界は、あと一年で崩壊します」    ◆二周目から追加 もし本当にこの世界が崩壊してしまうとしたら、俺は A.戦ってでもそれを止めるだろう B.どこかに逃げてしまうかもしれない    ◆Aで通常編、Bで「setting sun」移行 *プロローグ ●シーン001 「…でさ、その時アイツ言ったのよ。『違うから、違うから、下心は消したから!』って」 「あはははは!! 消せるもんじゃねーし!」 「マジ有り得ねぇな、それ!」 ゲラゲラと友人が笑っている。俺も笑っている。黒須川は声こそ出していないが、口元は緩んでいた。 放課後の教室でなぜかトランプをしていた俺達は、ゲームが終わったにも関わらず下らない話をしていた。 学校に居ると三年の間に最低でも一回は大富豪が大流行するのはなんでなんだろうか。中学校の時も流行った気がする。 チャイムの音にふと時計を見ると、午後四時半を指していた。 「やっべ、俺もう帰るわ」 「じゃ俺らも帰るか」 ぞろぞろと連なって下駄箱まで帰る。こういう時の足取りは、なぜか妙に重い。帰りたくないからだろうか。階段を一段下りるのにも時間をかける。ただの牛歩だが、ちっとも気にならない。 ●シーン002 下駄箱に向かうと、ジャージ姿で靴ひもを結んでいる沢井を見つけた。俺達の話し声にこちらを向いた沢井は、立ち上がって手を振る。 「沢井、部活か?」 言いながら、眩しさに目を細めた。逆光のせいで沢井の顔がほとんど見られない。 「うん、もうクッタクター。さすがに四ゲームもスタメンで出ると疲れるね」 「四ゲーム? お前は本当にタフだなぁ」 黒須川が呆れたように言った。なんでもないと思った俺は問題があるんだろう。沢井は子供の時から元気で、俺と一緒にそこらへんを走り回っていたもんだから、それが普通な気がしていた。 沢井が照れたように笑う。この笑顔も見慣れている。底抜けに明るい笑顔で、俺がしょげた時はいつも癒されていた。 「一緒に帰ろうか」 「そうだな」 ぽんと肩を叩かれた。友人が軽快な足取りで走って行く。 「じゃ、大翔、また明日な」 「おう、また明日ー」 そういえばあいつはバイトがあるんだっけか。遊んでるように見えて、案外真面目な奴なんだなぁ。 沈みかける夕日に急かされたような気になって、俺は少し早足で校門を出た。 ●シーン003 「俺、そういや沢井のこと知ったの、入学して結構すぐだったな」 帰り道に黒須川がぽつりと言った。俺が夏休みに黒須川と沢井を会わせたから、沢井にとってはそこが黒須側との初対面なんだろう。 「え、そうだったの? なんで?」 「あれだよ、部活争奪戦」 あぁ、と俺は納得した。部活争奪戦は、うちの高校の名物で、新入生の親睦を深める球技大会の後に行われるものだ。あそこで活躍をすると、もれなく運動部の先輩方からの猛烈アタックを受けることになる。そこで沢井は女子とは思えぬ活躍をして、ほぼ全競技に出た挙げ句、軽く優勝をさらっていったのだ。 翌日から、陸上部、バレー部、水泳部、サッカー部、テニス部、等の様々な運動部から追い回された沢井は、最終的にバスケ部に入部した。決めるまでの一週間は、まさに沢井にとっての戦時だっただろう。校門にずらりと待ち構える部長達の姿は、本当に圧巻だった。 「さんっざん話題になったからなぁ、あれは」 「どの部に入るかって賭けしてた奴も居たな」 「えー、何それ!」 笑っているが、実はこれには俺も一枚噛んでいる。沢井は中学の時に何部に入っていたか教えてくれないか、と、ちょっと仲良くなった奴から訊かれたのだ。  ◆Q.01   A.俺は本当のことを言った。   B.俺は冗談を言った。    →A  俺は本当のことを言った。バスケ部で元気にやってたけど、大会の実績なんかはないよ、と。そいつはニヤニヤしながら教室から出ていったが、今思えばあいつは賭けの為に情報を手に入れたんだろう。  その後だ、黒須川が俺に話しかけてきたのは。  『沢井陽菜の件では世話になったよ』  最初俺はよく分からなかったが、すぐにこいつも賭けをしていたんだと思いついた。損をしていたら最悪いじめられるんじゃないかと思ったものの、そんなこともなく三年経った今ではいい友人だ。  「あ、その賭けのディーラー俺」  まぁ、沢井の運動神経がいいのも、一概になんとも言い切れないような……って、なんだって?  「えぇーっ、本当!?」  「あぁ、なんかできそうだなって思って」  それは聞いていなかった。俺はてっきりただ賭けをしただけの奴かと思っていた。新入生にしてそんなことをするとは、こいつ本当にバイタリティがあるな。  「得したの?」  「いや、多分どっかで情報がリークしてなぁ、結構損したよ」  黒須川はちらりと俺を見た。なんだ、今更そんなこと責められたって、明日アイスの一本を奢る程度しかできないぞ。  黙ってアイコンタクトをとっている俺とは逆に、沢井は心配そうに言った。  「可哀想かもしんないけど、…でも自業自得だよね、それって」  「ま、趣味だから気にするな」    →B  俺は冗談を言った。実はああ見えて中学時代は根暗で、文芸部に所属してたよ、と。そいつは目を丸くしていたが、少し考えながら教室から出ていった。今思えばあいつは賭けの為に情報を手に入れたんだろう。  その後だ、黒須川が俺に話しかけてきたのは。  『沢井陽菜の件では世話になったよ』  最初俺はよく分からなかったが、すぐにこいつも賭けをしていたんだと思いついた。結構得をしたようで、その時に感謝の礼をされて以来、俺は黒須川と仲が良くなった。  「あ、その賭けのディーラー俺」  まぁ沢井の運動神経がいいのも一概になんとも言い切れないような……って、なんだって?  「えぇーっ、本当!?」  「あぁ、なんかできそうだなって思って」  それは聞いていなかった。俺はてっきりただ賭けをしただけの奴かと思っていた。新入生にしてそんなことをするとは、こいつ本当にバイタリティがあるな。  「得したの?」  「かなり得したなぁ、なんでか文芸部に賭けた奴がいっぱい居てな」  黒須川は俺を見て少し笑った。こいつは本当に嘘を吐くのが上手だと思う。将来は詐欺師にでもなるんじゃないだろうか。  黙っている俺とは逆に、沢井は少し怒ったように言った。  「ずるーい、陽菜にもちょっとちょうだいよ!」  「何言ってんだ、今更すぎるだろ」 軽く言って髪をかきあげる黒須川は、沢井を見て笑っている。もしかしたら、黒須川は沢井のことが好きなのかもしれない。なんとなく前々からそんな感じがしていた。女子とあまり親しく接することがない黒須川が、沢井にだけは特別によく話をしている。 前に好みの女のタイプを訊かれて「俺とは違ったタイプの奴かな」と言っていたし。ちょうどいいからとたまに頭に手を置いている。今も俺を置いて少し先を歩く二人は、なんだかんだでお似合いかもしれないと思う。 そう思うと、俺は  ◆Q.02-1   A.なぜかイライラした。   B.応援したいと思った。    →A  俺はなぜかイライラした。どっちも俺にとっては大事な友人なのに、そこの二人でくっつかれると、俺が気まずい思いをするのは目に見えている。でも冷静に考えると、そうでもないような気もする。なんかむずがゆいというか、とにかくこの二人が恋人になるという姿を想像したくないというか。  もしかしてこれは嫉妬…なのか? いやいや、そんなわけない。そうだとしたら俺は、どっちに嫉妬してるっていうんだ。   ◆Q.02-2   A.沢井   B.黒須川     →A(フラグE1発生)   沢井に嫉妬をしているんだろうか。…ん? どういうことだ? 友人をとられて悲しいということか?   よもや黒須川に俺が惚れて…なんてことはあるわけない。冗談でも恐ろしい。そんなわけがない。有り得ない。たまに軽いノリで「好きだぜ」とか言われるけど、あれは親愛としての意味であって、そういう意味ではない。   『どうだかなぁ?』   ええい、うるさい、脳内黒須川! そんなわけがあるか、あってたまるか!     →B(フラグA1発生)   黒須川に嫉妬、しているんだろうか。でも俺と沢井はただの幼なじみだぞ? …うん、嫉妬というのは間違いだ。   まぁ、恋愛ごとは俺が決められることではないし、俺が制限することではないから、もしそうなったとしても…   …いやいや、でもよくよく考えると、沢井が黒須川を相手にするか? 黒須川なんかと遊んでいたら、いつの間にかなんか胸とか大きくなっちゃって、露出度の高い服なんか着ちゃったりするんじゃないだろうか。なんか、そんな沢井になるのは、とても嬉しくない。普通に嬉しくない。むしろ腹立たしい。   沢井は俺にとっては姉というか妹というか、そういった存在だ。家族同然の大事な存在が、そんなチャラチャラした奴になるのは許せない。   ………いやまぁ、結局そうなったら俺はどうにもできなくて、黒須川に文句をつけるだけになるんだけどな。俺は沢井の家族でもなんでもないわけだから。   どうも俺は腑に落ちない気分になって、なぜか色々とその時になったらどうするかを思案していた。    →B  俺は応援したいと思った。黒須川はチャラチャラした奴だが、そんなに悪い奴じゃない。ちゃんと自分を持っていて男前の黒須川だったら、俺も胸を張って沢井を預けることができるというものだ。  問題は沢井が黒須川に釣り合うかということだが…まぁ、沢井もいい奴だ。元気だし、決して可愛くないわけじゃない。だが黒須川と違って子供っぽすぎる。地域の野球大会には十年以上の連続出場経験を持っているし、未だに化粧をしたことがない。この間なんか公園で子供と砂遊びに興じていた。花の十八の女子高校生がそれでいいのかと、俺はたまに心配になる。  でもそういったところも黒須川がちょっとずつ直してくれればいい、とも思う。黒須川なら沢井の魅力を引き出してくれるだろう。  思えば色々あったなぁ。ままごとで泥団子を本当に食べなければいけなかったり、一緒に木登りをしてうっかりパンツ見ちゃったり、山に遊びに行って迷子になっちゃったり…  俺は娘を渡すような心境に陥り、少しジーンとしていた。 ●シーン004 「ちょっと、ヒロ君」 「え?」 「どこまで行くの? ここヒロ君家でしょ?」 はっと我に返ると、そこは確かに我が家だった。いつの間にか黒須川も居なくなっている。 「ぼんやりしすぎじゃないの?」 「沢井に言われたくねぇよ、何もない所でこけるくせに」 「いっ、いいじゃんそれぐらい! 最近は昔みたいにそんなこけないもん!」 「どうだかなぁ〜」 頬を膨らませながら、沢井は隣の家の門を通っていった。俺の家とは隣同士で、だから昔からの幼なじみなのだ。 ぽんやりと香るカレーの匂いは、きっと沢井の家からしているんだろう。沢井の母親はカレーが得意で、よく俺達家族にもその腕を振る舞ってくれた。 「じゃ、また明日ね」 「おう」 「ヒロ君、帰ったらちゃんと顔洗うんだよ?」 ニヤニヤしながら言われた。何を考えているんだ? 沢井は機嫌が良さそうにドアを開けたが、 「ふぎゃっ」 次の瞬間には転んでいた。 だから気をつけろって言ったのに…いや言ってないが。だけど心の中ではちゃんと思っていたんだ。 「ばーか」 「うぅ…み、見てないよね!?」  ◆Q.03(フラグA1で発生、ない場合はAを自動で選択)   A.「くまさん」   B.「赤の水玉」    →A  「くまさん」  「んなっ、そんな子供じゃないよ!」  沢井は子供扱いされたことに怒りながらも、見られてなかったことには安心してるようだった。  まぁ本当のことを言うと見えていたんだが、それは黙っているのが優しさってものだろう。    →B  「赤の水玉」  バッとスカートを押さえた。うーん、うっかり言ってしまった。黙っていれば良かったかもしれない。  「…えっち」  「今更沢井のパンツなんか見ても何も思わねーよ」  思わない、わけでもないが…まぁ、思わないということにしておこう。 沢井は照れつつ立ち上がり、スカートの裾をはらった。いや、そこで見えるかもしれないから注意しろよ。 「顔擦りむいてるから、バンソウコウ貼っとけよ」 「うん、分かった。じゃあね!」 こけたくせに元気がいい。立ち直りが早いのはあいつのいいところだ。 俺はポケットから鍵を取り出すと、ドアを開けて中へ入った。 ●シーン005 「ただいまー」 家に帰ってまず気付いたのは、カレーの匂いだった。沢井の家からかと思ったが、これは我が家でやっていたのか。 キッチンを覗くと、レンがユリアと美優に料理を教えていた。 「おかえりなさい、ヒロトさん」 「お疲れ、ヒロト殿」 「お兄ちゃん、おかえりなさい」 女三人から一斉におかえりコールをされるというのは、中々悪い気分ではない。その内一人が妹だったとしてもだ。 「レン、料理を教えていたのか?」 「そうだ。ミユは覚えがいいのだが、作業効率が悪いのが問題だな」 恥ずかしそうに美優は笑う。 「でも、レンさんのおかげで上手になったのよ」  ◆Q.04   A.「そうか、偉いな」   B.「ありがとう、レン」    →A(フラグB1発生)  「そうか、偉いな」  そう言って俺は美優の頭を撫でた。美優はにこにこしている。  美優は俺の妹ではないが、両親が健在の時に連れてきた子だ。父親の友人の子で、俺も何度か遊んだことがある。美優の親が事故死をしてからは、父親が引き取ってずっと暮らしている。ちょっと気弱だが性格の優しいいい子だ。    →B  「ありがとう、レン」  そう言って俺はレンに軽く頭を下げた。  「やめてくれ、そんなに大したことはしていないんだ」  レンは少し照れたようだ。普段キリッとしているだけに珍しい。  レンはユリアのお付きのメイドだ。最初見た時は美少年だと思っていたが、本当は女だった。黙っていると少し怖い雰囲気があるので、美優とは折り合いがあまり良くなかったのだが、どうやら仲良くなったらしい。 「ユリアは姫様なのに料理するんだなー」 「レンはいいって言うんですけどね、でも料理ぐらいできるようになりたいじゃないですか」 ふわりとレンは言った。漂う気品と似つかわしくないカレーの匂いが、俺の心を優しくする。 ユリアは諸事情があって俺の家に住んでいる、本当は異世界のお姫様だ。雰囲気や物腰が柔らかく、見る人をほんわかさせる。ただ意志の強さは半端ではなく、わりと頑固なところもあったりする。 「…あれ、お兄ちゃん、それ…」 美優が俺の顔を指差した。 「ん?」 そういえば、さっきも沢井が何か言ってたな… ●シーン006 俺が気になって洗面所へ向かおうと廊下へ出た時、玄関のドアが開いた。 「ただいま、兄貴」 髪をなびかせて美羽が帰ってきた。匂いにつられるようにキッチンへ視線が向かっている。 「美羽、おかえり。今日の夕飯はカレーだぞ」 「匂いで分かってるわよ。レンさんが作ったの?」 口が悪いが、美羽は俺の実の妹だ。元気といえば元気だが、沢井と違い生意気という方向へ集約されている。頭もいいし運動神経も抜群で、学校では生徒会長も務めているほどだ。 「レンと美優とユリアの特製だ。お前も作れればいいんだけどなぁ」 俺がそう言うと、美羽はムッとした顔をした。 「じゃあ今度アタシがご飯作るわよ!」 こいつは結構負けず嫌いなせいか、こういうことを言うとすぐに怒る。どうしたものか…  ◆Q.05   A.「じゃあレンに教わらないとな」   B.「忙しいんだろ、無理するなよ」    →A  「じゃあレンに教わらないとな」  俺としては普通に受け答えをしたつもりだったが、美羽はますますムッとした。あれ? なんでだろうか。  「一人でできるわよ!」  あ、そうか。どうやら美羽は一人で作りたかったようだ。ぷんぷんという擬音語が似合う状態になりながら、美羽は靴を脱いでキッチンへ向かった。    →B(フラグC1発生)  「忙しいんだろ、無理するなよ」  「え…」  美羽は部活や生徒会で忙しい。優等生であろうと頑張る美羽の姿は、誇らしくもあり心配でもある。だから俺はたまにこうやって美羽の肩の力を抜いてやるのだ。  「暇な時でいいよ、兄ちゃんいくらでも味見してやるからさ」  「あ、う、うん…」  こうやってたまに照れると、まだまだ子供だなぁと俺は思う。美羽はどこかぎこちない仕草で、靴を脱いでキッチンへ向かった。 「あれ?」 ふと美羽が足を止めてまじまじと俺の顔を見た。そういえばさっき、美優に… 「あははははっ!! 何兄貴、その顔っ、有り得ない!」 また言われた。しかも笑われた。俺は美羽の笑い声を背中に受けながら洗面所へ向かった。 ●シーン007 鏡を見る。俺はどうなっているんだ? ……一瞬、気付けなかった。それからハッと気付いた。鼻の穴の淵がペンで黒く塗られている。 ●シーン008 俺は走って階段まで行き、窓を開けて叫んだ。 「沢井ーっ!!」 「あはははっ、今気付いたんだ? ごめんね」 沢井が窓を開けて返事をした。 「何だこれっ!」 「黒須川くんがさぁ、ぼーっとしてるからって書いたの」 「…あ、い、つ〜!!」 けらけらと沢井は笑っている。本当に子供のようだ。美優なんかよりよっぽど子供なんじゃないか、こいつ。 「いやー面白かったよ、あれ、今日カレーなの?」 「あぁ。でもお前には食べさせないからな!」 「えぇ〜っ」 沢井のブーイングを無視して窓を閉めると、美羽が堪えきれない様子で廊下の壁を叩いていた。ユリアと美優もくすくす笑っている。畜生、お前ら、許さんぞ。 ●シーン009 顔を洗った。黒須川の奴は油性で書いていたらしく、落とすのに随分手間がかかった。また鼻の穴だから粘液に染みること染みること。明日会ったら、購買の乱戦必至の限定クリームパンを買ってきてもらおうと決めた。 ふと、目の前の鏡が気になった。もう、あれをしなくなって一ヶ月ぐらいは経つだろうか。もしかしたら、変わっているかもしれない。 もしかしたら。俺はそう思って鏡に手を触れた。 ●シーン010 …変わっているはずがなかった。やはり、そうなのだ。世界は崩壊する。よく分かっていたはずなのに、どうして今、希望を持ったりなんかしたのだろう。 悲鳴を上げる人々、蒸発していくビルや樹。押し寄せる、崩壊という名の波だ。 ●シーン011 鏡から手を離すと、後ろにユリアが立っているのが見えた。悲しそうな顔だ。  ◆Q.06   A.「…カレー、いつできあがる?」   B.「…未来は、変わらないんだな」    →A  「…カレー、いつできあがる?」  できるだけ明るい声で言ってみた。ユリアも少し表情を悩ませてから、多分作ったんだろう笑顔で言った。  「もうすぐできると思います。でもミユさんが、あと三十分は寝かせろって」  「はは、美優らしいな」  俺は乾いた嘘くさい笑いをして、自分の部屋へ戻る。    →B(フラグD1発生)  「…未来は、変わらないんだな」  「……すいません…」  「ユリアが謝ることじゃないよ」  そう言ったが、ユリアは本当に申し訳なさそうな顔をしていた。俺はどうしようもない気持ちになる。  だけど、本当にどうしようもないのだ。誰が悪いわけでもない、来たらどうにかなったのか、来なかったらどうにかなったのか、そんなことは誰にも分からない。  「まだなんか作ってくれるんだろ?」  「え?」  「俺、海藻サラダ好きなんだよね」  「あ、ミユさんから聞いてます。だから買ってきました」  さすが美優だ。俺の好みはきちんと把握しているらしい。  「美味いの期待してるよ」  「…はい!」  俺はさっきから空腹を訴える腹を押さえながら、自分の部屋へ戻る。 ●シーン012 ……自分の部屋に来ると、妙に暗い気持ちになるのは、俺だけなんだろうか。 またここに来たという安心と共に、またここに来てしまったという、異様な屈辱感を味わってしまう。 明るい妹達の笑い声も、懐かしさを誘うカレーの匂いも、心が遮断してしまったように染みてこない。 崩壊を待つだけの、世界。 俺は預言者でありながら、どこまでも無力だった。 ●シーン013 ▼絵、音リスト 『』内は必要というわけではなく、あれば欲しい シーン001:放課後の教室  チャイム音 『放課後の曲/002の終わりまで』 シーン002:放課後のゲタ箱  カラス音 シーン003:放課後の帰り道、沢井が優勝の旗を持っているスチル(写真っぽく)  帰り道っぽい曲 シーン004:放課後の主人公宅前、沢井のパンチラスチル  こけるSE、沢井のテーマ シーン005:夕暮れのキッチン  家族のテーマ シーン006:夕暮れの玄関  美羽のテーマ シーン007:洗面所  ギャグ系の曲(009の頭まで) シーン008:隣家の窓から顔だけ見えている沢井のスチル シーン009:洗面所 シーン010:人が消えたり街が壊れていたりするスチル  最後らへんからユリアのテーマ(切なめリミックス) シーン011:洗面所 シーン012:夕暮れの自室  最後らへんからSetting sunのテーマ シーン013:Setting sunオープニング(最後に「大丈夫、逃げ場は、ここにあるから」という文字) ▼補足 モノローグはテキトーに書いただけなんで、変更があれば勿論自由にどうぞ。 A〜Dのフラグを3つ立てると、そのキャラがヒロインになる。どれも立ってないでEフラグを2つ立てると友人がヒロイン(?)になる。 ----

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