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p1.平和的解決
 楽しかったことを記録してみたら、と勧められたのでやってみることにした。正直挫折する予感がしてならないのだが、まあノート一冊分くらい無駄遣いしてみよう。
 楽しいこと……まあ、ないとは言わない。楽しいことに関しては文句がないから引きずらないだけで。
 冒険者やってて楽しいというか嬉しい時っていうのは、事態が比較的平和的に解決した時、かな。ついでに何か撃つものがあって弾が当たってればもっと楽しいけど、そっちは支出が発生するし。話し合いで解決すればこれほど楽なことはない。争いなんて大抵ちょっとした行き違いで起こってたりするもので。それを解いていくのは、割と楽しいことだと思う。
 『平和的に解決しろ』っていうのは、自警団で刷り込まれた考えだ。平和的に、というのは、後に禍根を残さないように、ということでもある。何せあの街では色々な勢力がギシギシしてたので、自警団はどこにも肩入れできない、してはいけないというのがモットーだった。どこかでトラブルが起こった時、一方的な解決ではなく、せめて痛み分けで納得して解決できるように。まあ実際そこまでうまくやるのは難しいのだが、理念の話として、だ。

 ――どうしてもそこに恨みが残るとしたら、自分が恨まれろ。自警団が恨まれるならそれでいい。恨みや敵意、恐怖は、力となって組織を飾り立てる。街のどこにも属さないこの一団が一つの力になるためには、畏怖を集める事が必要なんだ――

 あれは、発展していくと、独立した「軍」のようになるんじゃないかと思う。それがいい事か悪い事かはおいといて、あの街で理念を貫くために、そういう在り方が一番効率が良かったんだろう。
 組織としての是非は置いといて、個人として自警団の理念には共感する。冒険者も、まあ、似たようなものだ。小さな力で大きな事件を解決しようと思うのなら、汚れ役になることを恐れてはいられない。無論、畏怖されるばかりでは仕事が来なくなるから、それなりの社会性は必要だけど。
 怖れられて、でも信用はされて。いつでも中立の立場にあって、正しく物事を観察し、状況を最善に導く。そして、常にそうあり続ける。それが、僕が個人として、どうありたいかという理想だ。
 まぁ、夢だ。人間、そうそう強くなれるものじゃない。まして僕なんか……っと。とりあえず後ろ向きなことは書かないようにしよう。それはあっちに書けばいい。
(p1.後に追記)
 中立に立つ、ってことは本当に難しい。何にも頼らない、ということは、自分自身の物差しを、しっかり持たなきゃいけないってことだ。今の僕は結局、何に対しても反発してばかりで、これが正しいと言い切れるような物差しは持っていない。でも、何より、そうやって、一つ一つのことについて、考え続けることが大事なんだと思う。何が最善かなんて、その時その場で考えるしかないんだから。
(p1.残りは空白)


p2.料理
 ちゃんと始めたのは最近だけど、料理、は、結構楽しいと思う。安い食材でも、手をうまく加えればおいしく食べられる。店で出してもらって食べるよりずっと安くすむし。
 旅に出ている時はどうしても保存食暮らしになる。あれは結構荒む。まあ、干し肉だって、スープにするとか、野草と一緒にするとか、余裕があればやりようはあるのだが、それにしたって飽きがくる。猟でもできると少しは楽しいんだろうけど、残念ながら、僕は母上からそちら方面の才能は受け継げなかったようだ。何か見つけて撃とうと思った時には、獲物はもうとっくにこちらに気付いていて、あっという間に逃げてしまう。
 まぁ、冒険中はそんな感じで仕方がないので、街に滞在している時は、なるべく自分で料理を作るようにしている。クズ野菜とか、かなり安いし、煮込めばちゃんとおいしくなる。
 自警団に居た頃は寮生活で食事付きだったけど、食事の量はどうしても少ないので、みんなで当番を決めて夜食を作ったりしていた。裕福な家の奴が持ってきたいい食材もあれば、魔術師の家の奴が持ってきた怪しい食材もあった。あれ、本当に何の……考えるのはやめよう。
 まぁ身について困るものでもないし、これからもちょっと料理は続けてみようと思う。母上の味を再現……するほどのものもないのだが(切る、焼く、あれば調味料加える、以上。が基本の人だ)。
 そのうち、またリヴァに食べさせてあげたいとも思う。材料費あちら持ちだし。でも義兄上に出す食事はない。
(p2.後に追記)
 作った料理を、誰かにおいしいって言ってもらえるのは、本当に、嬉しいと思う。
(後に追記)
 人に教えるほどの腕があるわけじゃないけど、役に立てるのなら、嬉しい。
(後に追記)
 あっという間に追い越されそうな気がする。一生懸命さの違いだろうか。僕のは、結局のところ生活の一部だし。まぁ、楽しそうにしているのを見ていると、こちらもなんだか嬉しい。
(後に追記)
 作って、食べてもらって、作ってもらって、食べて。なんだか、幸せ、な気がする。
(p2.残りは空白)


p3.命中
 銃撃が当たると嬉しい。当たらないと弾が無駄になるだけ、じゃなくて他の皆にも迷惑がかかるし。
 どうにも当たり目が極端だったので頑張って精度は上げた。それでも五割前後を行き来してるが、当たった時は結構いい所を貫通してたりするので、まあいいことにする。
 昔散々練習したけど、冒険者になるまでたいして腕は上がらなかった。やっぱり命がかかってるかかかってないかじゃ違うんだろうか。そのツケは払う羽目になったが……とりあえず置いておいて。
 それでも訓練の成果はあったと思う。動かない的にならまず当たるようにはなった。自慢にもならないが。昔はそれすらおぼつかなくて……そもそも何でガンナーになろうなんて思ったんだ。他に特技があるわけでもなし、母上の影響としか言いようがないが……でも母上は大きな猟銃とか撃ってたけど。
 最初に撃った獲物はなんだったか。あの時はまだ弾丸が作れなかったから、小さな弓か何か使ってたはずだが。それまで何度も外してたから、倒れたのを見ても信じられなかった……そうだ、確かウサギだ。シチューにして食べたっけ。いくつの時だったかな。姉上がいなかったから、12歳くらいの時だったと思うが。
 基本足手まといだったけど、母上にはちょくちょく猟に連れて行かれた。獲物を追いこんだり……考えてみれば荷物持ち兼猟犬扱いだったのかもしれない。猟犬ほどの役にも立たなかったが。それでもごくまれには自分で獲物を撃つこともあった。うまく当たるとやっぱり嬉しい。
 初めて動物以外を撃ったのは……あ、タビットだったな。撃ったというか、威嚇のつもりがなんか当たっちゃったというか。研究費に困って盗みに走った奴。自警団の巡回中にたまたま見つけて、撃った……当たったのは耳だ。気絶しちゃったけど、命に別条はなかったと思う。痛いよりも音に驚いたんじゃないだろうか。考えてみれば、のどかな話だ。その後散々ゴーレムだのアンデッドだの……やっぱりあんまり当たらなかったけど。あいつら結構避けるから。
 避けないのは、術師とか、僕と同じ射手とか……
(p2.残りは空白)


p4.黒字
 思い出したらいけない事を思い出しかけた。やっぱりこのノート無理があるんじゃないか。ま、もうちょっと続けるけど。
 いい事、いい事……ああ、黒字。わかりやすいな僕も。
 まぁ、冒険者のいい所は、なんだかんだ言ってまず赤字までにはならないことだ。……出た黒字を何に使うかっていったら、主に新しい装備を買うことだけど。余計なことに散財する趣味はないし。
 装備を揃えて強くなれれば、危ない冒険に出ても生きて帰って来られる。それを繰り返してたら報酬が増える。稼ぐために冒険してるんだか冒険するために稼いでるんだか。まぁ一応、稼ぐために冒険者やってるわけじゃないが。
 結局は繰り返しだけど、毎回黒字を出して行けば余裕はきっと出てくるはずだ。逆に赤字になったら赤字スパイラルだけど。
 借りた馬を死なせたりすると最悪で、それはすごく怖い。自分や仲間が死ぬよりはずっとマシだけど、出来る限り無事に返したい。ギルドで気まずいだろうし。
 ……でもライダーギルドってちょっとレンタル価格設定が高いと思う。育てて維持するコストとか考えると仕方ないんだろうけど。高い騎獣はなかなか借りられない。馬車とかもっと使いたいんだけどな。もっとも、馬車で事故ると一人じゃ済まないのでちょっとプレッシャーはかかる。
 空飛ぶ幻獣タイプとかはもっと怖い。当分乗る気はしない。ダニオさんとかよく乗ってられると思う。
 あと多分イルカには乗らない。
(p3.残りは空白)


p5.おいしいもの
 食事なんてまぁ栄養が取れればそれでいいわけだし、いい食材って値段が高いし、どうせ仕事の時はそんな豪華なもの食べられないわけだし、あんまり贅沢するのも良くないけど、まあたまにはおいしいもの食べてもいいと思う。自腹じゃなければもっといい。
 極端なゲテモノとか、腐った系の食べ物は苦手だけど、他はだいたい嫌いなものはない。好きなものは……果物とか。料理じゃないな。
 なんだかんだ言って料理は素材だ。調理ってのはそれを誤魔化す技術っていうか。料理が上手い人ほど、結局食材にもこだわるもので。……まぁ、だから僕は上達しないわけだ。
 その点で言うと……姉上は、料理が上手いんだと思う。宝の持ち腐れだけど。どうせ僕が食べさせてもらえることなんて滅多にないし。食べさせてもらえるとしても、おまけだし。だからあんまり嬉しくない。なんだかんだ言って料理は気分だ。
 季節のものとか、新鮮な肉とか、こだわった調味料のソースとか。おいしいものを食べてる時って、まあ、幸せなんじゃないかと思う。そんな細かい味がわかるようになったのは最近のことだけど。ここ数年は何食べてもあんまり食べてる気しなかったし。……ってことは、マシになってきたってことなんだろうか。少しは。
 まぁ、味がわかるのも良し悪しだ。おいしいものが食べられない時に、まずいもので凌ぐのが辛くなる。場合によって舌を付け変えられたらいいのに。食事がまずいと本気で死にたくなる。だいたい一週間もすれば慣れるんだけど、それまでが辛い。
 ……辛い話は置いといて。食べることはまぁ嫌いじゃない。誰かと一緒なら、もっといい。
(p5.残りは空白)


p6.友人
「人の縁だけには恵まれている」姉上に、よくそう言われる。
 とりあえず姉上との縁だけは周辺含めて全力で切りたいが、その他についてはだいたいその通りだと思う。なんだか、大事な友達に巡り合える運はあるんだろう。……その縁を守り切るだけの力がないだけで。
 ドゥエルといつの間に友達になってたのか、よく憶えてない。ただ、仲間の中で一番話しやすかった。僕は基本的には人見知りな方だったから他に親しい友人もいなくて……だから、自警団で同年代の連中にとって僕は『ドゥエルの友人』だっただろうし、僕にとっても彼らは『ドゥエルの友人』だった。そういう奴っているものだ。僕は到底そういう立場には立てないが、どうしてだかそういう奴と友達になることはできる。ずるい立ち位置だな。
 といって、別に、彼以外の連中と仲が悪かったわけでもない。あの時、僕たちは一応『友人』だったと思う。……シェリカさんや、セディも。
 "真実の羽根"亭にたむろしていた仲間たち。ドゥエルとセディだけじゃなく、あの事件の時に亡くなった仲間は多い。一対一で話すほどの仲じゃなかったけど、みんな楽しい連中だった。……本当に、なんでよりによって僕だけが……まぁ、置いとこう。
 あの事件の中で、多くの友人を失って。いわば、世界が壊れてしまったようなものだ。あれからずっと、自分がいつそちらに行くのかと考えていて……取り戻せるなんて、思いもしなかった。
 無論、顔ぶれは違う。亡くなった仲間が戻ってくるわけじゃない。ただ、今の僕にも、大事な友人がいる……あのころと同じ、友人と過ごせる時間がある。それは、本当に幸せなことだと思う。申し訳ないくらいに。
 今度こそは守りたい、なんて大それたことは言えないけど。でも、もう二度と失いたくない。それは本音だ。
(追記)
 それぞれの生き方とか、理解できないわけじゃないし、それを尊重してこその友情だと思う……けど……何か言えることはなかったんだろうか。止めることはできなかったんだろうか。……できなかっただろう。友人が信念を貫こうとしているなら、その邪魔をするなんてできっこない。
 ……ただ、戻ってきて欲しいと思う。
(追記)
 やっぱり戻ってきた。思ったよりは時間かかったけど。良かった、って言っていい……んだろうな。
 ……今度同じことがあったら、僕はどうするんだろう。やっぱり、止められやしないだろうけど。
(p6.残りはまだ空白)


p7.いい銃
 やっと銃を一丁魔法の武器に改造してもらうことができた。あー散財した。
 結局は自分の動体視力が問題になるんだけど、やっぱり道具が良いと違ってくる。多分。生死を分けるのなんて紙一重だし、紙一枚でも厚く重ねていくのは重要だ。その一枚ごとに費用が嵩むわけだが。
 金と手間がかかったから思うだけかもしれないが、この拳銃はなかなか恰好いいと思う。向いてないんじゃないかと思いつつ拳銃と付き合ってきたのは、それだけ拳銃が好きだからかもしれない。まぁ、武器は武器なんだけど。
 ……撃つのが好き、当てるのが好き、銃が好きだというのは、殺すのが好きだということだろうか。いや……そうじゃないと思いたい。バランスを保つために力が必要なことがあるってことだ。
 これが姉上ならむしろ、力が全てじゃないって言うのかもしれない。でも、姉上じゃないんだから知恵とか勇気とか足りないんだから力を持つしかないじゃないか。どこかでカバーしないと。
 拳銃はこの手に収まる最小にして最大の力。この右手と左手が何かを掴むための力。持つことできっと平和な日常は遠くなるけど、どうせ僕にとって平和な日常なんて絶望の繰り返しでしかない。だったら強く、もっと強く砥ぎすまして……そうしたら、いつか。何か変わるかもしれないし。変わらないかもしれないけど。変わらないと思うけど。
(追記)
 もう一丁の拳銃も改造することができた。あーほんとに散在した。
 結局、力を持つってことは、出来ることが広がるってことだ。それはきっと、悪いことじゃない。自分で制御できるなら、だけど。
 ……自分でどうにかできなくたって、きっと誰かが止めてくれると思うし。それも、甘えだけど。
 こんな風に心のどこかでいつも迷って後ろを見てる。でも、それだってきっと、悪いことじゃない。
(p7.残りは空白)


p8.対等な関係
 いつも誰かに頼って、甘えて、愚痴って。そうしてのうのうと生きている程度には恥知らずだが、世話になった分を返せるなら、もちろんその方が嬉しい。
 誰かに助けてもらったなら、こっちだって助けるのが対等な関係だろう。って、言うのは簡単だけど、実行するのはそう簡単じゃない。
 でも、役に立てたのかもしれない……と思った。自分が具体的に何をしたのかって言うと、実はよくわからないけど。
 どんなにしっかりして、どんなに強く見える人でも。一人じゃ、どこにも進めなくなることがある。そんな時に、背中を押すことができたとしたら……。
 対等、と言うにはまだ遠い。やっぱり僕は後ろ向きで情けない僕のままで。でも、そういう僕でも、人が立ち上がるきっかけになることが、できたのかもしれない。
 それは、実際のところは僕の力じゃなくて。ただ、ちょっと手伝っただけ、なんだと思う。元々パワーを持っている人が、そのパワーをどう使っていくのか決めるために。
 ……そうして、人を助けることで、僕もちょっと救われる。生きていても、いいんだと思う。あの時死ねなかった僕が、今ここに生きていて、そうして人の役に立つことができたのだとしたら、きっと……ここにいることに、意味があるって思える。
 結局、助けられてるのは僕のほうだ……でも、きっと、これまでとは違う。ほんの少しだけど、確かに違う。
(追記)
 やっぱり僕は自分が嫌いだ。理由は山ほどあるので今さら振り返らないけど。
 でも、そんな風にずっと諦めていることこそ、一番の裏切りなのかもしれない。
 強くならなきゃいけない。前に進まなきゃいけない。自分のためだけじゃなくて……いや、結局は自分のためだけど。
 今、ここにいる資格を、失いたくない。だから、今よりもっとましな自分になりたい。ならなきゃいけない。
(追記)
 少しだけわかってきた気がする。大事な人を助けようとするなら、その人より強くならなきゃいけないってわけじゃないんだ。
 僕は僕のままでいい。それ以外になれやしないんだから。頼るのも甘えるのも悪いことじゃない。一人じゃ生きていけないんだから。
 お互いにそうやって、弱い部分を補って、そうしてちゃんと、前に進むことを忘れなければ、それでいい。
 ……もっと頼れる男になりたいとは思うけど。まぁ、身の丈ってものがある。
(p8.残りは空白)


p9.誰かの役に立てること
 誰かの役に立てるのは嬉しい。それは世界にプラスをもたらす行為だから。例え相手に感謝なんかされなくても。
 いろんな立場があって、それぞれに守るものがある。だから、冒険者みたいにその境界を踏み越えていく仕事してると、時として恨みだって買う。でも、それでいい。恨みを集めてそのまま立ち去るなら、後に禍根は残らない。
 怒りを抱くってことは幾分前向きな……でもないな、後ろ向きだけど、どこかへ進む力にはなる。その原動力になるんなら、人の役に立ってるって言えるんじゃないだろうか。多少は。
 まぁ、できればもうちょっと普通に助けたいけど。その辺りは行き違いとか色々あるからしょうがない。ただでさえ、どこに行ったって余所者なんだから。ようするに解決すればいいんだ。
 ……どうも思考が力任せになっちゃうな。まあ、それくらいわかりやすくてもいいと思う。姉上とか義兄上とか見てると。
 そもそも、姉上の暴走を止めようと思ってるはずなのに、どうも気が付くと僕の方が諌められてるような。でも多分あっちの方がタチが悪いのは間違いない。でもまあ、やり方の違い……なんだろうか。いや、もうちょっと根本的な問題があるような。ないような。
 とりあえず、姉上は他人のためなんて微塵も考えてないだろう。姉上はとにかく自分を高みに置きたいだけだ。姉上に言わせれば、それは『単なる手段の一つ』だそうだが。基本的に何言ってるかわからない。
 僕にはその種の顕示欲もないし、手段っていうのもよくわからない。ただ、目の前に、命の危険に晒されている人がいれば、助けたいと思う。というか、助けるのが当然だと思う。でも、そのために例えば、その相手に怖れられたり、憎まれたりするとしたら……
 別に、それでも構わない。僕はその人を助けたいだけで、その人と仲良くなりたいわけじゃないし。僕が誰かを助けようと思うとしたら、その人のためであり、僕自身のためでもあり、そのどちらでもない。それが一般常識で、常識を貫くことは社会のプラスに繋がるから……
 ……どうも、きっぱりくる言葉が浮かばない。ただ、なんだろう。僕は、そういう生き方がしたい、んだと思う。
(追記)
 それでも、やっぱり。「ありがとう」って言ってもらえるのは、嬉しい。……ぐらぐらしてるな、まったく。
(p9.残りは空白)


p10.プレゼント
 物を贈ったり、贈られたり、そういう機会が増えた。昔はこういうの、あまり好きじゃなかったと思う。欲しいものは自分で選びたいし、人の好みなんてわからないから、あげたって無駄になるかもしれないし。
 でも、最近はそういうのも、まあいいかなと思うようになってきた。陳腐な言葉だけど、ようするに気持ちなんだ。問題は、そういう曖昧な定義しかないものはあっと言う間に形骸化するってことだけど、そういう形骸化した礼儀みたいなもので、人の和っていうのが守られてる部分もあるわけだし。
 親しい人に贈るプレゼントを考える時は、いつもものすごく悩む。でも、相手もやっぱりそれくらい悩んでるのかな。そう考えると、まあ悪くない、ような。……なんて、不純だな。
(追記)
 気持ちを表すのって難しい。でも、悩む過程が大事、というか……。なんか言い訳っぽいな。
 その人に何か、大事なものを贈りたい、って気持ちは、多分、突き詰めれば支配欲になってしまう。……なんて、いかにも義兄上が言いそうなセリフで嫌なんだけど。
 義兄上は悪びれもせずに姉上に==(愛情、という言葉の上に打ち消し線が引かれている)と厭味の籠ったプレゼントを贈りつけてくる。それを見る度に姉上は義兄上とリヴァのことを考えるだろうから。ほんっと性格悪い。
 ……まあ、あっちのことはどうでもいいんだ。僕はまさか自分が純粋だなんて勘違いはする気はないけど、出来る限り純粋でいたい。
 でも、それって難しい。今、僕は身に余るほど幸せなはずなのに。これ以上、何が欲しいって言うんだ。
(p10.残りは空白)


p11.居心地のいい場所


p12.冬支度
 季節の変わり目っていうのは基本的に出費が嵩む。特に冬支度は入念にしないと死ぬからあまり節約できない。
 冬着って難しい。安くて暖かくて軽くて、デザインも選ぶとなると大変だ。
 多分一番手っ取り早いのはサーマルマントとかなんだろうけど、さすがに余裕がない。いや、無理すれば買えなくもないのか……? でも、他に優先すべきものはいくらでもあるし……。
 最近収入が増えて来たせいで、つい気が緩んで出費が増えがちだ。いけない。普段から着てる服だって、暑くても寒くてもなんとか過ごせる服を選んでるし、その上に普通のマントでも着てれば、それだけで冬だって充分越せる……というか前の冬はそうしてたんだけど……まぁ、体が資本だ。余裕が出て来たのに変に無理するのも良くないか。
 実は服を選ぶのは嫌いじゃない。行くのは大抵古着屋だけど。見てるだけでもそこそこ楽しい。デザインと縫製がしっかりしてる服は、古くても格好いいものだ。僕に似合うかどうかは置いといて。
 まぁでも男物なんて楽なもので。女の子の服選び見てると色々大変そうだ。着てみたいけど似合わないからとか……似合うと思うんだけどな。合うサイズを探すのは難しいかもしれないけど。
 冬支度が必要なのは衣類に限らない。冬越しの食料なんかも、早いうちに買っておかないと、どんどん入手しづらくなって高くなる。まぁ、冒険者なんてやってると食糧支給されることも多いし、そこまで気は遣わなくていいけど。
 実家にいた時はよく保存肉作りとか手伝ったっけ。腸詰にして煙で燻したり。塩とか香辛料とかいっぱい使わないといけないからとにかく出費が……まぁ、家にいる場合は父上の金だが。
 肉や野菜は新鮮な方がそりゃおいしいけど、塩気が効いた燻製肉とかも、なかなか悪くないものだ。特に母上の料理は基本的に塩気が薄いから……。今となっては懐かしくもあるが。母の味、か。
 ……総じて、多分、冬も冬支度も嫌いじゃない。誕生日が来ると思うと憂鬱になるが。
(p12.残りは空白)


p13.アイリーン
 色々書いてきたけど、振り返ってみると……あれ、ほとんどアイリ関係じゃないか。アイリの自覚のなさに戸惑ってきたけど、その辺り僕も相当だったかもしれない。
 ……違うな。気付いてた。考えないようにしてた。期待しちゃいけないと思ったし、そもそも僕にそんな資格ないって思ってた。
 でも、なんだかだんだん……お互い、これは本当なのかもしれないっていうか。
 甘えてるのは確かだと思う。だから、もっとちゃんとしなきゃいけないと思う。逃げるんじゃなくて。
 僕がどれだけ駄目でも後ろ向きでも、それでもアイリはきっと僕の側にいてくれる。だから、だからこそ、僕はアイリに相応しい僕にならなきゃいけない。二人で溺れてしまわないように。
 初めて会った時は、伝説で言う天使みたいだと思った。もう少しして、もっと普通の子なんだと気がついた。それから、とても可愛い子だと思うようになった。
 まっすぐで、一生懸命で、少しとぼけてて、側に居るとほっとして、楽しくて……幸せっていうことなんだろうか?
 誰かを好きになったことはあっても、両想いになったのは初めてだ。こういうのってまだ、よくわからない。色々初めてのことばかりだ。
 不安になろうと思えばいくらだってなれるけど、今はとりあえず考えない。というより、考えられない。僕らしくないな。
(追記)
 すごく幸せだったり、すごく恥ずかしかったり……僕が僕じゃないみたいだ。気持ちのほうが先に動いて、気がつくととんでもないこと口走ってたり……いや、とんでもないってわけじゃなくて……本当の気持ちなんだけど……ああ恥ずかしい!
(p13.残りはまだ空白)


p14.日曜大工

p15.木彫り
 木彫りは割と好きだ。まあ齧った程度だけど、ちょっとした小物なんかなら作れる。彫っているときは、完成の形をイメージするだけで、あとは無心で彫っていくから、余計なこと考えなくていいし。……たとえばカッパーをモデルに馬を彫った時は、馬のことだけ考えていられた。乗ったら気持ちがいいとか、カッパーの優しい目とか、アイリと一緒に遠乗りした時の風の匂いとか……色々。ちょっと気が逸れて小刀が滑りかけたけど……。まぁ、出来はどうでも、そうやって没頭している時間って、楽しい。
(追記)
 ザイアの聖印を彫ってみた。やっぱり、色々なことを考えた。盾に剣。騎士の印だけど、僕はもっと……お守りみたいな気持ちで彫ってたかもしれない。盾と剣が、アイリを守るように。……聖印の形式としてはいいのかわからないけど、裏面に菊花と逆三日月を小さく彫った。盾が白菊を守るように。二十六夜の月が、白菊を見ていられるように。これは、祈りなんだろうか。ザイアへの……? そういうことに、しておこうか。
(p15.残りは空白)

p16.冬の一日
 姉上は冬が好きだって言っていた。それは……まあ察するに冬にいろいろあったんだと思う。あんまり考えたくない。
 僕も冬は嫌いじゃない。それは今だから、だろうけど。寒いけど、その分、心がすっきりする。
 ……幸せって温度なんだと思う。それがわかるから、冬は嫌いじゃない。
(p16.残りはまだ空白)