あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ
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あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ
ja
2024-02-08T13:17:55+09:00
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お絵描き掲示板/お絵かき掲示板ログ/89
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#ref(1221052975.png)
- 流血描写なんですけど、、、ジャンガさんの狡賢い計算高さが煌めいていました!しかも、、しかも!!ジョーカーさんまで!!一番好きなコンビです!!ジャンガさんを、ちゃん付けできるほどの猛者の彼まで物語に乱入してくるなんて、、、これからの物語が楽しみです!!そのうちガーレンさんまで来そうで怖いですね!!!! -- 支援! (2008-09-10 22:30:38)
- 本性出した時の喋りが結構怖いピエロボールさんですね! -- 名無しさん (2008-09-10 23:47:52)
- ↑ナムカプのあれはシリーズほぼ制覇の俺も納得の恐怖があったぜ・・・つぅかあのピエロがガディウス様以外のやつに心から従うのはないから打算で動いてるんだろうなwwwともあれ絵師さんGJ! -- 名無しさん (2008-09-11 09:34:03)
- これで -- 毒の爪の人 (2008-09-12 01:10:51)
- ↑すんません、間違えました。 また一枚絵が描かれ、嬉しい限りです。ナムカプのお前発言は俺も怖かったですが、あだ討ちを考える位なので、やっぱり根本的には仲がいいのでしょう。仲良く文字通りの悪夢を見せるでしょうね。 -- 毒の爪の人 (2008-09-12 01:14:08)
- 猫とピエロの二人で悪夢を届けるのか -- 名無しさん (2008-09-12 07:50:40)
- そういえばあのピエロもボスキャラレベルの分身(本人曰くちょっと力を入れただけ)持ってるよな。奇をてらわなくても普通に強いしワルド涙目www -- 名無しさん (2008-09-14 16:26:41)
- 続きはまだか -- 名無しさん (2008-09-15 02:09:45)
- ルーンの洗脳で飼い慣らされないか不安だ -- 名無しさん (2008-09-15 09:46:44)
- あのピエロが出てくるとはこれからは面白くなりそうだ。 -- 名無しさん (2008-09-15 23:32:35)
- 猛スピードでシエスタの所に飛んでゆく所にジャンガのツンデレっぷりを感じた! -- 名無しさん (2008-09-16 19:26:39)
- 早くジャンガのSS出してくれー -- 名無しさん (2008-09-19 01:49:42)
- なんだか怖いな -- 名無しさん (2008-09-20 01:34:55)
- ジャンガまじで最高殺しまくれー -- 名無しさん (2008-09-20 01:36:25)
- ルイズいい気味だぜ。ざまーみろだ。 -- 名無しさん (2008-09-20 01:37:22)
- それにしてもこの猫とピエロ。ノリノリである。 -- 名無しさん (2008-09-22 14:49:00)
- ジャンガはツンデレか否か…外道っていいね♪ -- : (2008-09-23 00:44:59)
- 猫ピエロコンビいいなぁ!スケベ親父ざまぁw -- 名無しさん (2008-09-23 10:50:52)
- いいですね~♪絵師も作者も天才です!! -- カイト (2008-09-23 11:34:41)
- この二人最高 -- 名無しさん (2008-09-24 14:24:17)
- ジャンガ最高早く続きのSSも頼むううううううううううう。 -- 名無しさん (2008-09-27 00:52:26)
- この勢いでどんどん殺しまくれーーーーーーー。 -- 名無しさん (2008-09-27 00:54:12)
- デルフは出るんですよね。 -- 名無しさん (2008-09-27 23:39:15)
- シエスタとジャンガの仲のいい設定できないですか? -- 名無しさん (2008-09-28 18:05:47)
- やっぱり怖いな。 -- 名無しさん (2008-09-29 17:48:33)
- ジャンガ一応使い手だからデルフを出してください。 -- 名無しさん (2008-09-29 23:04:08)
- 最凶コンビ参上!! -- 名無しさん (2008-10-01 02:25:21)
- 血みどろドロドロジャンガちゃん♪ -- 名無しさん (2008-10-01 02:52:56)
- ジャンガはまさに最凶次は誰を殺す? -- 名無しさん (2008-10-01 15:42:58)
- もしかしたらルイズが殺されるのかもしれない -- 名無しさん (2008-10-01 15:44:38)
- ルイズは死にません! -- 名無しさん (2008-10-01 23:37:07)
- せめて最後ぐらいにルイズ達とは和解してほしい・・。 -- 名無しさん (2008-10-01 23:54:39)
- ↑和解てどうやって?相手はあのジャンガだぞ? -- 名無しさん (2008-10-02 01:03:19)
- ジャンガこえええええええええええええええええ -- 名無しさん (2008-10-02 01:30:48)
- 和解っていうかルーンで徐々に洗脳? -- 773H (2008-10-02 07:16:26)
- ママ旅 -- 名無しさん (2008-10-02 20:21:13)
- まずマタタビと猫じゃらしとコタツで洗脳ry(↑マタタビをママ旅と打ち間違えたorz) -- 名無しさん (2008-10-02 20:23:45)
- もしかしたらタバサとまた戦うのかな? -- 名無しさん (2008-10-04 22:43:36)
- このピエロと猫はいったいどのような悪夢を届けるんだろう? -- 名無しさん (2008-10-04 23:48:58)
- 連中にこんなお前の姿を見せてやるのも~ってジャンガちゃんのエッチw -- 名無しさん (2008-10-06 19:25:54)
- 吸血鬼相手でもこの外道ぶりは感服 -- : (2008-10-06 20:06:33)
- 展開がwktkすぎて面白すぎです -- 名無しさん (2009-01-03 02:52:58)
- ジャンガさん・・・恐ろしい子・・・ -- 名無しさん (2009-03-26 15:32:47)
- 言動、行動、結果を冷静に判断すると、ジャンガよりもルイズの方が外道だと思うな。色々な意味で。 -- 名無しさん (2009-04-21 22:37:57)
- 確かに、昔のジャンガならともかくさ、今のジャンガだとねぇ……ま、昔のジャンガでも、見る人によってはそう思えるかも -- 名無しさん (2009-04-22 14:25:07)
- 確かにルイズは口ではアレコレ言うんだが、実際は自分一人では何も出来ないからな…。ルイズの言動が思い込みが多いのに対して、ジャンガのそれは言い方が悪くとも事実を述べているだけだしね。ルイズの場合は外道と言うより、道化って感じがする。あっ、ちなみに私はアンチルイズです(笑) -- 名無しさん (2009-04-23 00:21:19)
- 懐かしいあれから15年か -- 名無しさん (2024-02-08 13:17:55)
#comment
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2024-02-08T13:17:55+09:00
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Mr.0の使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/512.html
ジャンプコミックス 『ONE PIECE』のMr.0(クロコダイル)
Mr.0の使い魔
―エピソード・オブ・ハルケギニア―
[[Mr.0の使い魔 第一話]]
[[Mr.0の使い魔 第二話]]
[[Mr.0の使い魔 第三話]]
[[Mr.0の使い魔 第四話]]
[[Mr.0の使い魔 第五話]]
[[Mr.0の使い魔 第六話]]
[[Mr.0の使い魔 第七話]]
[[Mr.0の使い魔 第八話]]
[[Mr.0の使い魔 第九話]]
[[Mr.0の使い魔 第十話]]
[[Mr.0の使い魔 第十一話]]
[[Mr.0の使い魔 第十二話]]
[[Mr.0の使い魔 第十三話]]
[[Mr.0の使い魔 第十四話]]
[[Mr.0の使い魔 第十五話]]
[[Mr.0の使い魔 第十六話]]
[[Mr.0の使い魔 第十七話]]
[[Mr.0の使い魔 第十八話]]
[[Mr.0の使い魔 第十九話]]
[[Mr.0の使い魔 第二十話]]
[[Mr.0の使い魔 第二十一話]]
[[Mr.0の使い魔 第二十二話]]
[[Mr.0の使い魔 第二十三話]]
[[Mr.0の使い魔 第二十四話]]
[[Mr.0の使い魔 第二十五話]]
[[Mr.0の使い魔 第二十六話]]
[[Mr.0の使い魔 第二十七話]]
[[Mr.0の使い魔 第二十八話]]
[[Mr.0の使い魔 第二十九話]]
[[Mr.0の使い魔 第三十話]]
[[Mr.0の使い魔 第三十一話]]
[[Mr.0の使い魔 第三十二話]]
[[Mr.0の使い魔 第三十三話]]
[[Mr.0の使い魔 第三十四話]]
[[Mr.0の使い魔 第三十五話]]
[[Mr.0の使い魔 第三十六話]]
[[Mr.0の使い魔 第三十七話]]
2023-12-12T23:55:20+09:00
1702392920
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小ネタ-09
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9066.html
#mobile(){{{
短編・一発ネタなど。
※召喚される側の作品のあいうえお順となっています
[[あ行>小ネタ-01]]/[[か行>小ネタ-02]]/[[さ行>小ネタ-03]]/[[た行>小ネタ-04]]/[[な行>小ネタ-05]]
[[は行>小ネタ-06]]/[[ま行>小ネタ-07]]/[[や行>小ネタ-08]]/ら行/[[わ行>小ネタ-10]]/[[その他>小ネタ-11]]/[[???>小ネタ-12]]
}}}
*&aname(short-09,option=nolink){ら行}
|BGCOLOR(#E0FFFF): 作品タイトル|BGCOLOR(#E0FFFF): 元ネタ|BGCOLOR(#E0FFFF): 召喚されたキャラ|
|[[ゼロのたい焼き屋サン]]|LIVE A LIVE|アキラ|
|[[もってけ!水兵ふく]]|らき☆すた|泉こなた|
|[[もってけ!水兵ふく その後]]|らき☆すた|泉こなた|
|[[ゆるーい使い魔?]]|らき☆すた|泉こなた|
|[[超時空放浪の使い魔]]|ラングリッサー|ヘイン|
|[[リさん一家]]|つげ義春の『李さん一家』|李さん一家|
|[[ART OF FIGHTING ZERO]]|龍虎の拳|タクマ・サカザキがシエスタの祖父|
|[[(・||・)な使い魔]]|輪道|高虎校長|
|[[虚無の紳士録]]|リヴァイアサン|闇の紳士録|
|[[魔法の国、向日葵の少女]]|リトルマスター2|サンフラワー|
|[[ゼロのマリア]]|ルーンクエスト|『病の母』マリア|
|[[ルパン小ネタ]]|ルパン三世|銭型警部とルパン三世|
|[[Jackal00]]|redEyes|グラハルト・ミルズ|
|[[サイン・オブ・ゼロ]]|レジェンズ|シロンとランシーン|
|[[使い魔E]]|レベルE|バカ王子(本編終了後)|
|[[ゼロの使い魔竜]]|ロードス島戦記|『魔竜』シューティングスター|
|[[使い魔さま]]|ろくじょ~ひとまのねこがみさま|猫神さま|
|[[指輪を使わない使い魔]]|ロックマンシリーズ|Dr.ワイリー|
|[[小ネタ-伝承法]]|ロマンシング・サガ2|伝承法|
|[[ねんがんの 使い魔]]|ロマンシング・サガ2|アイスソード|
|[[溶けない氷]]|ロマンシング サガ3|ゆきだるま|
|[[ゼロと怪傑]]|ロマンシング サガ3|ライム|
|[[不幸を呼ぶ使い魔]]|ロマンシング サガ ミンストレルソング|シェリル|
&link_up(ページ最上部へ)
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2023-12-02T21:51:22+09:00
1701521482
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小ネタ-05
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9062.html
#mobile(){{{
短編・一発ネタなど。
※召喚される側の作品のあいうえお順となっています
[[あ行>小ネタ-01]]/[[か行>小ネタ-02]]/[[さ行>小ネタ-03]]/[[た行>小ネタ-04]]/な行
[[は行>小ネタ-06]]/[[ま行>小ネタ-07]]/[[や行>小ネタ-08]]/[[ら行>小ネタ-09]]/[[わ行>小ネタ-10]]/[[その他>小ネタ-11]]/[[???>小ネタ-12]]
}}}
*&aname(short-05,option=nolink){な行}
|BGCOLOR(#E0FFFF): 作品タイトル|BGCOLOR(#E0FFFF): 元ネタ|BGCOLOR(#E0FFFF): 召喚されたキャラ|
|[[虚無と夜闇の魔法使い]]|ナイトウィザード|柊蓮司|
|[[ウィザード・ルイズ]]|ナイトウィザード|アンゼロット|
|[[南波とルイズ]]|南波と海鈴|南波|
|[[サービス召喚]]|南国少年パプワくん|サービス|
|[[沈黙の使い魔]]|南国少年パプワくん|ちょうちんアンコウのマミヤくん|
|[[使い魔は神犬]]|南総里見八犬伝|八房|
|[[ドラゴンウォーター]]|女犯坊シリーズ||
|[[ばくれつな使い魔]]|ニンジャコマンドー|リューイーグル|
|[[ぜろめ~わく]]|ねこめ~わく|シマシマ・ハヤカワ 他|
|[[ツガイノツカイマ]] [[前編>ツガイノツカイマ-前編]] [[後編>ツガイノツカイマ-後編]]|鼠と竜のゲーム|竜|
|[[のんきな使い魔]]|のんきくん|のんきくん|
&link_up(ページ最上部へ)
----
2023-12-02T21:51:18+09:00
1701521478
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蒼い使い魔-13
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5009.html
#navi(蒼い使い魔)
『土くれのフーケ』
そう呼ばれトリステイン中の貴族を恐怖に陥れているメイジの盗賊がいる
その手口は『錬金』の魔法を使い。頑強な扉や壁を粘土や砂に変え、密やかに忍び込み、盗み出す
例え『固定化』の魔法で守られていようが、その強力な『錬金』で打ち破り、ただの土くれへと変えてしまう。
故に名付けられた『土くれ』の二つ名。
だがその様な大人しい盗みばかりでは無い、
時に身の丈およそ30メイルの巨大なるゴーレムを操り、貴族の屋敷を、別荘を粉々に破壊し粉砕し、大胆に盗み出す。
正体不明にして強力なトライアングルクラスの『土』系統のメイジ、
犯行現場に壁に己の犯行の旨であるサインを残していく事もあり、最もトリステインで有名な盗賊である。
その盗賊『土くれのフーケ』が次に目をつけた場所、それこそがトリステイン魔法学院であった。
夜、二つの月を眺めるのが半ばこの世界での趣味と化してきているバージル、
塔の一番上に登り静かに月を眺めていると、なにやら妙な音と震動がすることに気がついた。
―ズズゥゥゥゥン…ズズゥゥゥゥン…
という音が響いてくる。
怪訝な顔で音がした方向を眺めると、高さが30メイルはあろうかと言うゴーレムが本塔を殴りつけている。
学院内は丁度夕食の時間、どうやらパニックが起こっているのか食堂から悲鳴が巻き起こり
教師達が避難誘導を行っているらしい。
「なんだあれは?」
「なんだって…みりゃわかんだろう、ゴーレムだよ相棒」
「そんなものは見ればわかる、何をしているんだ?」
と呑気に会話を交わすバージルとデルフ
「どうやら、壁を壊そうとしてるみたいだねぇ、相棒、あのゴーレムを止めに行かないのかい?」
「何故俺が行く必要がある?あのゴーレムが何をしようが俺には関係がない。」
「それもそうだな、そんなこと聞いた俺が馬鹿だったよ…」
そんな会話をしながら、静かにゴーレムが本塔を殴り続けるのを見物していたバージル。
その時、ゴーレムの胴体部分がわずかに爆発したのが見えた。
「あれは…小娘か」
「あぁ、あの爆発はあの娘っ子だぁな。」
魔法をロクに使えもしないのにどこまでも身の程知らずである。
やがてゴーレムは目的を達成したのか大きな音と振動を立てながら学院から去って行った。
「行っちまったな…」
「らしいな…」
そう呟きながらバージルは静かに月へと視線を戻した。
バージルが部屋へと戻ろうと廊下を歩いていると顔を真っ赤に泣き腫らしたルイズが立っていた
それを平然と無視し目の前を通り過ぎる。
「待ちなさいよ!」
「…なんだ?」
すごく嫌そうな顔でバージルは振り向く。
「あんた…いままでどこに行っていたのよ!学院に賊が入ったのよ!?」
「知っている」
「じゃあなにを!」
「貴様に話して何になる」
「~~~~っ!!」
「貴様があのゴーレム相手に何をしようとしていたのかは知らんが、俺には関係がない」
「…っ!見てたの…?」
「あぁ」
「…」
その言葉を聞き押し黙るルイズ、
「私は…っ、あのゴーレムを止めようとしていたのよ!あのゴーレムを止めれば誰も私をゼロなんて呼ばない!
そう思って必死に止めようと思ってたのよ!」
「それであのザマか」
「っ…!」
突き刺し抉るような言葉にぐうの音も出ない。
「で、その事に俺のあるなしが関係あるのか?」
「なっ!ないわよ!なにも!」
そう叫ぶように言うとルイズは自室へと戻って行った。
ルイズはベッドの中に潜り込み思う、
なんで来てくれなかったの?そう言いたかった、
でもバージルのことだ『関係ない』その一言で終わりだろう。
そもそもバージル一人に頼りたくないから一人ゴーレムに挑んだのだ。
途中、タバサやキュルケが援軍に駆けつけてくれたが、そのゴーレムに相手にもされなかった。
自分はあまりに無力だ、だが必ず見返してやる。そう決意を固めルイズは眠りへと落ちた。
翌日、トリステイン学院は噂の盗賊『土くれのフーケ』襲撃という前代未聞の大事件に大騒ぎになっていた。
厳重な『固定化』の魔法が掛けられており壊れるはずのない宝物庫の破壊。そこで守られていた秘宝『破壊の杖』の強奪。
そして犯行現場である宝物庫に落ちていた『秘蔵の破壊の杖、確かに領収いたしました』という犯行の旨を記したカード。
まさに学院創設以来初の大事件であり、同時に、過去に例を見ない大失態でもあった。
学院長室では教師達が集まり対策会議と称しての責任の所在の押し付け合いを行っていた。
それを一喝して黙らせたオスマンが口を開く。
「さて、みっともない所を見せてしまったが…
君たちに集まってもらったのは他でもない、『土くれのフーケ』による学院襲撃の件についてじゃ。
犯行の現場を見たのは君たちと言うわけでここに来てもらったと言うわけじゃ。」
オスマンはそう言うと学院長室に呼びつけた三人と一人の使い魔を見る。
そこにはキュルケに、相変わらず無表情のタバサ。
目を充血させ、目元に泣きはらした痕を残しているルイズの三人、
そしてルイズの使い魔であるバージルの姿があった。
「では犯行を見た時の事を説明してもらおうとするかの。」
ルイズとキュルケが昨日の夜あったことを詳しく説明する。
バージルはただそれを壁に寄りかかりながらつまらなそうに聞いていた。
「ふむ、報告の通りじゃな、皆が知っての通りあの宝物庫には強力な固定化がかかっていた、
ところが、一部の場所に原因不明の亀裂があっての、そこだけなぜか固定化がかかっていない状態になっていたそうじゃ。
そこをフーケにねらわれたんじゃろうのぉ。」
その言葉を聞きルイズがビクッ!と反応しバージルを見る。
そうだ…ギーシュと決闘騒ぎを起こした日、あいつは突然ヤマトを抜いて斬撃をとばして…そのぶつかった場所は確か…。
まさか、壊れた原因はこいつか!?
バージルもその言葉に少し反応したが無視を決め込んでいた。
そんなことを考えていると突然ドアから秘書のロングビルが現われた。
「ミス・ロングビル!どこ行ってたんですか!大事件ですぞ!」
「申し訳ありません、。昨晩から急いで調査しておりましたの」
ロングビルが言うには近くの森の廃屋がフーケの隠れ家ではないかということだ。
学院に起きた一大事、王宮への報告と王室衛士隊の手配を進言したが、その間にフーケに逃げられてしまう可能性と
自身の問題は自分たちで解決するというオスマンの意向で却下された。
そのためすぐに捜索隊を結成することになったが誰も自ら行こうとしない。
その中で静かにルイズが杖を掲げる。
「私が行きます!」
宝物庫の壁を抉ったのは自身の使い魔だ、その責任は必ず取る、
そしてフーケを捕まえて誰も彼も見返してやる!そう決意を固め凛々しく名乗りを上げた。
それを見て驚いたミセス・シュヴルーズが声を上げる。
「あなたは生徒ではありませんか!ここは教師に任せて……」
しかしその言葉を聞きながら続けて杖を掲げたのはキュルケであった。
「ヴァリエールには負けられませんわ。」
さらに続けてタバサも杖を掲げる。
「タバサ。あんたまで付き合わなくても」
「経験を積みたい」
そう言うとタバサはバージルを見た。
バージルは相変わらず壁に寄りかかっている。
「うむ、では彼女等に頼む事としよう」
その様子を見てオスマンが言った。
「何よりもミス・タバサは、若くしてシュヴァリエの称号を持つ騎士だと聞いている」
タバサは返事もせず黙ったままだ。教師達は驚いたようにタバサを見つめた。
「本当なの?タバサ」
キュルケも初耳だったらしく驚いている。
タバサは軽く頷くだけだった、シュヴァリエの称号も実力もこの男の前では無いに等しかった。
そう考えると称号など取るに足らない、そんなものよりもっと力が欲しい。
そのために志願したのだ。
次にオスマンはバージルを見つめる、
「ミス・ヴァリエールの使い魔、バージル君といったかな?」
「…」
「ギーシュ・ド・グラモンとの決闘は皆も知っておる筈じゃな、彼は――」
「俺がいつ行くと言った」
バージルが不機嫌そうにオスマンの言葉をさえぎる。
「いやっ、その、君の主人が行くのじゃぞ?」
その返答は想定外だったのかオスマンが驚いたように聞き返す。
「だからどうした、そもそも俺がここに呼ばれた事自体気に入らん。」
「それは君がミス・ヴァリエールの使い魔――」
「くだらん」
そう言うとさっさと踵を返し退室しようとした。
それを後ろからルイズが飛びかかり阻止する。
「なんだ…」
「(あんたも行くのよ!そもそも宝物庫が崩れたのはあんたの責任じゃない!)」
「それは奴らがそこから見ていたからだ、俺の責任ではない」
「だからって!あんたも行くの!これは命令よ!」
何かと言い訳をかこつけるルイズ。教師も教師なら、生徒も生徒である。
「そうよダーリン!私もダーリンの戦う所見てみたいなぁ」
「あなたも来て欲しい」
キュルケやタバサまで説得に加わる。
バージルもさすがに折れたのか
チッと軽く舌打ちすると
「くだらん…さっさと行って終わらせるぞ…」
と非常に気だるそうに了解した。
フーケの隠れ家のある森へは馬車を使い向かうことになり
御者は案内も兼ねてロングビルが務めることとなった。
馬車に揺られながらキュルケは手綱を握るロングビルに訪ねる
「ミス・ロングビル、なぜ御者を自分で?手綱なんて付き人にやらせばいいじゃないですか」
「いいのです。わたくしは貴族の名をなくした者ですから」
「だって、貴女はオールド・オスマンの秘書なのでしょ?」
「ええ、でも、オスマン氏は貴族や平民だということに、あまり拘らないお方です」
「差しつかえなかったら、事情をお聞かせ願いたいわ」
ロングビルは困ったような笑みを浮かべそれを返事とした
それを見たルイズが人の過去を根掘り葉掘り聞くものではないとキュルケを止めた。
「それもそうね、ごめんなさいね、ミス・ロングビル」
「いえ、いいのです、お気になさらないでください」
そう言うと優しい笑みを浮かべた。
森に入りそのまま進んでいくと、道幅が狭くなり馬車では通れないとのことで
ここから先は徒歩で進むとのことになった。
その場からは小道があり、うっそうと茂る木々が日の光を遮り昼でも薄暗く感じられる。
「目撃者の話しでは、この小道の先にある廃屋で、黒ずくめのローブを纏った人影を見たそうですわ」
風が吹き抜けると、不気味に木々がざわざわと枝葉が擦れる音を立てる。
―悪魔の気配は…ないな
そうバージルは考えると一人でさっさと進んでしまった
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!主人を置いてさっさと行くなーっ!」
そう叫んで急ぎ4人はバージルの後を追った。
しばらく進んで行くと、開けた場所に出た、そこには先程のミス・ロングビルの言葉通り、広場の中心に廃屋があった。
一行は、小屋の中から見えないように、森の茂みに身を隠したまま廃屋を見つめる。
「わたくしの聞いた情報だと、あの中にいると言う話しです」
ミス・ロングビルが廃屋を指差して言った。
どの様に攻めるか。4人はその相談を開始した。
「フーケがあの中で寝てくれてればいいんだけどね」
キュルケが茂みの隙間から廃屋を覗きこむ。
「寝てても起きてても奇襲かけるのが一番よね」
「小屋の中では土が無いのでゴーレムは作れない」
「だが、小屋に罠を張っている可能性も有るわ」
とロングビル含む4人が相談していると
―ズガッ!ズガッ!ズガッ!ズガッ!
小屋の方向から何かが突き刺さるような音がした。
驚いて4人が顔をあげるとバージルが小屋に向けて大量の幻影剣を放っていた。
あの中に人がいるとしたら間違いなく串刺しになっているだろう…
唖然とする4人を尻目にそのままバージルは居合の構えを取る。
「ちょ―」
ルイズが制止する間もなく閻魔刀を抜刀、10メイルは離れているにも関わらず小屋が空間ごと切り裂かれ崩れ落ちた。
「なななななにやってるのよ!!!!」
「どの道賞金首だろう?生きていても死んでいてもかまわん」
「だからって!あの中にある破壊の杖はどうするのよ!」
「しらん、この程度で壊れるものなど秘宝とは言わん」
「たしかに賞金首だけど…あんなことしたら肉片一つ残らないわよ!」
「生きていた方が報酬が多めにもらえる」
タバサがぽつりと呟く。
バージルも一時期便利屋稼業をやっていたため、金の重要さは知っている、
もらえる金が多くなるならそれに越したことはない。
「フン、まだ生きているなら生かしておくか、手足の二三本斬り落としても死にはしまい。」
しれっと言うバージルを青白い顔で見ながらロングビルは
「あ…も、もしかしたらあたりに潜んでいるのかも知れません、ち…ちょっと偵察にいってきます!!」
と逃げるように走り去ってしまった。
「さっさと破壊の杖とやらを回収するか」
「そ、そうね!いきなりあんなことするんだもん、忘れてたわ!」
バージルがもはや原形をとどめていない小屋へと進んでいく、
ルイズ達もその後を追って小屋へと足を踏み入れた、
キュルケが瓦礫の中から薄汚れたチェストを見つけるとそれを開ける。
「あったわ!破壊の杖よ!壊れてないわ!」
その声を聞きルイズとタバサが駆け寄る、
「これが破壊の杖?」
ルイズが『破壊の杖』と呼ばれる筒状のものを手に取る、
それをみたバージルの顔が険しくなった、
「(なぜこんなものがここにある?)」
そう考えつつルイズのもつ破壊の杖に触れる。すると左手のルーンが光り、使い方が頭の中に流れ込んで来た。
「なんだこれは…」
「あぁ相棒、思い出したぜ」
今まで黙っていたデルフが話しかける
「そのルーンの効果でな、相棒が持つ武器のことはなんでもわかるんだ、使い方とかな」
「あら?その剣インテリジェンス・ソードなの?」
その声を聞いたキュルケが話しかけてくる、
「そう言えばダーリンのルーンて、珍しいわよね、一体どういうものなのかしら?」
キュルケがバージルの左手を覗きこむ。
「話は後だ」
バージルが短く言い、閻魔刀に手をかける。
「フーケとやらのお出ましだ」
バージルの鋭い視線の先には30メイルはあろうかと言うゴーレムが音を立てて現れた。
そのゴーレムは全身を鋼鉄に覆われており、昨夜見た土でできたゴーレムとはまるで違う印象を持たせた。
「ちょっと!昨日のとは違うわ!」
「今回は本気ってとこかしらね!」
そう叫びつつキュルケは杖を取り出しゴーレムに向かい炎の塊を叩きつける。
同時にタバサも竜巻を巻き起こしゴーレムにぶつける、
だがそれはゴーレムに黒い跡をつくっただけでまるで効果がない。
「ルイズ!破壊の杖をもってはなれなさい!」
「いやよ!私も戦う!」
そう言うと、杖を構える、が
閻魔刀の鞘がルイズのマントを絡め取り、後ろへ放り投げる。
「ひゃうっ!」
という叫びと共に尻もちをつくルイズ、それをバージルが一瞥すると
「邪魔だ、失せろ」
と冷たく言い放つ。
その言葉に涙があふれてくる、
自分はここまできても足手まといのゼロなのか。嫌だ、そんなのは嫌だ。
バージルを見返したくてここまで来たのだ、足手まといにはなるものか!
そう決意し杖を構え詠唱する。
だがそれは爆発を起こし、ルイズの存在を気付かせ、挑発しただけとなってしまった。
ゴーレム振り向き、鋼に覆われた腕をルイズへと振り下ろさんとし、空高くかかげる。
チッとバージルは軽く舌打ちすると居合を放ちゴーレムの腕を斬り落とす。
振う腕を失くしたゴーレムはそのままバランスを崩し倒れてしまった。
倒れたゴーレムにキュルケやいつの間にか使い魔のシルフィードを呼んだタバサが追い打ちの魔法を放っている。
バージルはルイズに悠然と歩きながら近づく。
「聞こえなかったのか?俺は失せろと言ったんだ」
バージルのその言葉にルイズは唇を噛み締める。
「逃げるわけ無いじゃないっ!あいつを捕まえれば、誰ももうわたしを馬鹿にしないわ。ゼロのルイズなんて呼ばないでしょ!」
「無謀と勇気の違いすらもわからんのか?愚かな女だ…」
「違うわ!!」
そう叫ぶとルイズは立ち上がり、破壊の杖を構え、小走りにゴーレムに近づく
「バージル!わたしは貴族よ!魔法が使える者を、貴族と呼ぶんじゃないわ。
敵に後を見せない者を、真の貴族と呼ぶのよ!」
高らかに宣言し、ルイズはえいっと『破壊の杖』を振りぬいた。
しかし何も起こらない。沈黙したままである。
「えぇっ!?なんで!?なんでなにも起きないの?」
ゴーレムはゆっくり立ち上がりルイズへと振り向く
目算破れ、慌てるルイズへとゴーレムの鋼の腕が今一度振り下ろされんとかかげられた。
「え?あ……」
腕が大きな影を作りルイズの視界を覆う、慌てて逃げようとするが恐怖のため足がすくんで動けない
体も縮こまり金縛りにあったかのように動けなくなってしまった。
「ルイズ!!ルイズーーーー!!!」
キュルケが叫び届かぬと知りながら必死に手を伸ばす
タバサは、己の使い魔シルフィードを使い、助けに飛ばそうと足掻く。
だが到底間に合わない。
もうだめだ、そう思い目を瞑る、ルイズに向かい鋼鉄の腕が振り下ろされた、その時
―ガキィン!!!!ズゥォォォォン!!!!
金属と金属がぶつかり合う音、そして衝撃波が辺りを吹き飛ばす。
ルイズが恐る恐る目を開ける、すると目の前にはもはや見慣れた氷のように蒼いコートにオールバックにまとめた銀髪の青年
バージルが目の前に立ち、左手でデルフリンガーを持ち、その切っ先だけでゴーレムの拳を受け止めていた。
「ハァッ!」
という気合とともにデルフでゴーレムの拳を押し返す、そのままゴーレムは仰向けに倒れた。
目を点にさせルイズはバージルを見る、
「それが貴様の答えか…」
「えっ…?」
「真の貴族…か」
―あの時の俺は背を向け、結果母を失った…
バージルは昔の自分を思い返す…力無く、母を失った過去を。
「ルイズ、離れてろ…俺が片付ける」
「えっ…?」
―今名前…
ゴーレムが再び立ち上がる、それを見据えバージルがデルフを背中に納める
「おいおい相棒!俺っちつかわないのかよ!つか折れそうだったぞ!」
「黙れ」
そういうとバージルの手足が光り始める
彼の体内に僅かに残った光を司る悪魔の力、それを自身の魔力で補い形作る。
本体はテメンニグルでなくしてしまったが、バージルの魔力で再び彼の手足に装着される――
『閃光装具ベオウルフ』
バージルがゴーレムと同じ高さにまで飛び上がり、
そのまま上空へ両手をかざし魔力を爆発させ急加速、そのまま隕石の様な唸りを上げた蹴りが
ゴーレムの胸に…
―グゥオカァァァァァァン!!!!
すさまじい衝撃音とともにゴーレムが再び仰向けに倒れる。
ゴーレムの胸にはバージルの「流星脚」でできたのであろう惨たらしい窪みが出来上がっている。
そのまま地上におりるとそのまま加速して近づき倒れたゴーレムの脇腹に渾身のアッパーを入れる!
―ドッグゥォォォン!という凄まじい音、もはや見ているものは笑うしかない。
鋼鉄で構成されている超重量のゴーレムの身体が、浮いた。
空中に浮かび上がったゴーレムを追うようにバージルは自身の身体を縦に回転、凶悪な満月を描きながら
ゴーレムの腹に「月輪脚」を叩きこむ。そのまま地響きを伴って強烈に叩きつけられたゴーレムは、見るも無残に砕け散った。
「はっ…はは…」
それを見ていたキュルケはもはや乾いた笑いしか出てこない。
「……」
タバサにいたっては珍しく唖然としている。
「もう…なんでもアリね…」
ルイズはただただ、自分の呼び出した使い魔の底知れぬ実力にもはや呆れるしか出来なくなっていた。
「おでれーた!おでれーた!なんだ今のは!」
「黙れ、ただ殴っただけだ」
そう平然と剣と会話しながら帰ってくるバージルにルイズ達が駆け寄る。
「ちょっと!今の一体…」
「もうすごいわ!すごすぎるわダーリン!」
そうバージルを囲い騒ぎ立てる一行に
偵察から戻ってきたロングビルが話しかけて来た
「なっ…!なんですか!?今の音は!」
「ちょっとすごいのよ!ダーリンったら!」
とキュルケが興奮気味にロングビルに今あったことを説明していた。
「そ、そうなんですか…、それにしても」
ロングビルは破壊の杖を見る。
「その破壊の杖ってどういうものなんでしょうね?」
「フン、それは俺の世界の武器だ、使い方位なら教えてやってもいいだろう」
「え?世界?ダーリンの世界って?」
その言葉にキュルケとタバサが反応した。
「その説明は後!」
ルイズによって追及は中断され、バージルが破壊の杖はM72ロケットランチャーという名称であり、その使い方と破壊力を説明した。
「なるほど、そう言うものなんですね…」
その説明を聞いていたロングビルの雰囲気が変わった。
ルイズの手からをロケットランチャーを奪い取るとこちらに構えだした。
「ご苦労さま」
「えっ?ミス・ロングビル、なにを!?」
「全員杖を捨てな!こっちには破壊の杖があるんだ!妙な事をしたらこいつを使うよ!」
唖然としながら突然口調まで変わったロングビルを見ながらルイズが聞く。
「どういうこと…?まさかミス・ロングビルが…」
「そう。私が『土くれ』のフーケ。全く驚いたわよ。力の殆どを注いで気合入れて作ったゴーレムを、素手で粉砕しちゃうんだもの。
破壊の杖を使わせるのが目的だったんだけど、まさか使わないで倒しちゃうなんてね。ま、使い方教えてくれたんだし、結果オーライだわ。
さぁ!早く杖をすてな!そこのあんたもだ!早く剣を捨てるんだよ!」
そう言われ渋々杖をすてる三人、なげられた杖を確認しフーケはバージルへと視線をもどした…が。
バージルの姿が消えていた。
「どっ!どこだい!?どこに消え――」
「黙れ」
その言葉とともに天地が逆さまになる。
いつのまにか後ろに立っていたバージルによって閻魔刀の鞘で足元を払われる、空中で回転させられ、
そのまま返す鞘で腹部を打たれ地面にそのまま叩きつけられる。仰向けになって悶絶していると
トドメと言わんばかりに鳩尾に鞘が叩き込まれた、
そのまま胃の内容物をすべてぶちまけ、フーケは意識を手放した。
「バージル!」「ダーリン!」
「いつの間に回り込んだの!?早すぎてなにもみえなかったわよ?」
「こんな三流に流される方がどうかしている。」
「なっ!もとはと言えばあんたが使い方しゃべっちゃうからでしょ!?」
「フン、さっさと帰るぞ…」
そう言うとバージルはフーケの髪の毛を掴みそのまま引きずるように馬車へと向かう。
「ちょっと!一応フーケも女よ!もうちょっと丁寧に…」
そのまま馬車に乱暴に放り投げる、髪の毛がブチブチッ!と千切れる音が聞こえて来た
「何か言ったか?」
手についた髪を不愉快そうに叩き落とすバージルをみてルイズは呟いた
「いいわ…もう…本当にあんたは悪魔だわ…」
#navi(蒼い使い魔)
2023-09-28T02:33:24+09:00
1695836004
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ゼロの使い魔竜
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4462.html
この戦いは、彼の望んだものではなかった。
『魔竜』シューティングスター。
火竜山と呼ばれる活火山地帯に生息。四枚の剛翼に金色の瞳。紅の竜鱗が、火山の一部と見紛う巨大な体躯を覆う、畏怖の象徴とされてきた『五色竜』の赤。
ロードス島にまだ魔法王国が栄えていた古い時代、時の太守によって、秘宝『支配の王錫』を守護するため火竜山に呪縛された、古竜(エンシェントドラゴン)。その古竜が、今まさに、死の淵に足をかけていた。
(くそっ、こんな棒切れ、俺にはどうでもいいのだ!)
黒衣の騎士の、黒く禍々しい大剣に斬りつけられるたび、思考が千々に乱れる。
『魂砕き(ソウルクラッシュ)』。名の通り、精神を削り取り魂を砕く漆黒の魔剣。
傭兵の男の剣は、鋼をも拒む竜の鱗を、易々と斬り裂いてくる。
『ソリッドスラッシュ』。どんな強固な鎧をも羊皮紙のように切り裂く、物理防御を無視する魔剣。
相手の恐怖を増幅させ、魂と精神を萎縮させる竜の咆哮は、戦神神官の謡う『戦の歌』が。
岩盤をも溶かす灼熱のブレスの奔流は、慈愛神官の神聖魔術『ファイア・プロテクション』によって、ことごとく防がれた。
ならば神官どもを先にと、巨大なかぎ爪を振るうも、プロテクションやシールドなどの支援魔術により強化された前衛が、死に物狂いで守護。その間にも、二本の魔剣によって無視できないダメージが蓄積されていった。
駒を使った盤上ゲームでいう「詰んでいる」状態。もはや魔竜の敗北は必至だった。だが、太古にかけられたギアス(制約)の呪縛により、支配の王錫の守護を放棄しての逃走は許されない。過去に一度、火竜山からの移動を試みるも、ある程度離れると耐え難い苦痛が魔竜を襲ったのだ。
(死ぬのか? このままあの棒切れの為に俺は死ぬのか!?)
人間どもを追い詰めるとロクな目に遭わないという事は、ギアスをかけられた古代魔法時代の経験から、魔竜は身をもって学習していた。なので、火竜山とその周辺の平原、火竜の狩猟場と呼ばれるテリトリーを侵した者以外は襲うことなく、長い時間をおとなしく過ごしていたのだ。
秘宝『支配の王錫』をめぐる、ロードスの英雄達による争奪戦。ギアスのおかげで、それに巻き込まれただけ。
(動け! 動いてくれ翼よおおおお!! このままでは……このままでは……!!)
ギアス発動。全身の鱗の隙間に剣を突き立てられたが如く襲いくる鋭い痛みに、のたうち回る魔竜。
それを隙と見たハイエルフの娘は、大地の精霊王を召喚。ベヒモスの起こした地割れはシューティングスターを飲み込み、その動きを完全に封じた。
(下等生物がああああああああああああ!!)
怒りの咆哮が火竜山を揺らした。
トリステイン魔法学院屋外。進級試験の科目『召喚の儀式』。
周りを取り囲むギャラリーの中心に立ったルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、タクトを構えると小さく息を吐いた。
小柄で凹凸のない体躯。風に揺られる桃色の髪。度重なる魔術の失敗に、ついた二つ名は『ゼロのルイズ』。
面白半分どころではなく、面白3/4程度を含んだ期待の眼差しを360度から受け、その身を震わせた。
(緊張? ……違う。恐れ? ……違う)
今までバカにしてきた連中を見返してやる、チャンスの時が訪れたのだ。
今日この日までにたくさん勉強した。体調は良好。魔力も身体の全身に行き渡り、漲っている。
「召喚の儀式だけは自信がある!」
と見栄を張った以上、貴族の誇りにかけて成功させねばならない。
「さぁ、早く私のサラマンダーより凄い使い魔とやらを呼んで見せてよ?ルイズ」
ルイズとは対象的な、メリハリのあるボディをわざとらしくくねらせ、挑発をする長い赤髪の女。沸点が低く、からかいがいのあるルイズは、常日頃、彼女、キュルケの恰好の玩具と化していた。
「うるさいわね! 言われなくても呼んでやるわよ! そんなしょぼい火トカゲなんかメじゃない、すんごいのをね!」
「それはそれは楽しみだわ。うふふ♡」
(馬鹿にして! 馬鹿にしてぇ……!)
怒りをタクトに乗せ、詠唱を開始。
「宇宙の果てのどこかにいる私のシモベよ!」
ハァ?
聞いた事もない無茶苦茶な呪文の詠唱に、周りのギャラリーの顔が、一瞬ぽかーんとなる。そしてすぐに嘲笑へ。
「サラマンダーより早ーい! 強い! 大きく! 美しい! 強力な使い魔よ!」
周りを気にせず詠唱を続行。魔術にとって呪文など、自分を騙せて、魔術が扱いやすい身体に切り替えれればなんでもいい。無詠唱で魔術を行使できる者もいる事から、それは証明されている。要は気持ちなのだ。そしてルイズの込めた気持ちは、怒り。
「私が心より求め訴えるわ! 我が導きに答えなさい!」
静寂。
震える空気。
そして閃光。
大爆発。
会心の手応えをルイズは感じる。
(私は間違いなく、キュルケの使い魔を上回るモノを呼び寄せた!)
「な、な、な……なんなのこれ……た、タバサ!?」
片時も本を手放さない水色ショートヘアのメガネ少女に、キュルケは後ずさりながら意見を求める。教師であるコルベールですら、目の前に呼び出されたモノを理解する事ができずに硬直していた。
「……どう見ても火竜。大きさからしてかなり上位。……手負いみたい」
タバサと呼ばれた、ルイズと似たような体躯の文学少女は、キュルケを一瞥すると、自らの使い魔である風韻竜のシルフィードに飛び乗った。
「……いざとなったら全力で逃げて。幼竜のあなたじゃ何もできない」
いつでも魔術を行使できるよう、険しい顔つきでロッドを握り締める。他のルイズを囲んでいた生徒達は、動く事はおろか、声をあげる事すらできなかった。
ただ一人、ルイズだけが、歓喜に瞳を輝かせる。
学院の外壁を、完膚なきまでに押し潰して横たわる赤い山。その赤い山が、ゆっくり、ゆっくりと、隆起した。
シューティングスターは、起こった出来事を理解することができなかった。
意識を失う寸前に見た最後の光景は、心臓を目掛けて魔剣を突き出す男の姿。遠のく意識に死をも覚悟した。しかしどうだ。意識が戻ってみると、火竜山とは全く異なる場所。
(俺は……生きているのか? ここは何処だ? 空間移動の魔術かなにかをかけられた? ギアスは?)
人間どもに囲まれているという状況は変わらないが、魔剣の騎士や傭兵、ハイエルフの娘や神官どもなど、彼を死に追いやるほどのツワモノは消え失せていた。代わりに存在するは、怯えきった目で彼を見上げる小さな人の子ばかり。
(格好から見るに、この集団は魔術師か? 子供とはいえ警戒を解く理由にはならん)
過去に、人間を快楽のため虐殺し、追い詰め、魔術師にギアスという手痛い土産を貰ったことを思い出す。
(こやつ等の目的が何かは知らんが、身体は……動かんか。状況はまったく変わってないな……)
金色の瞳の片方は無残にも潰れ、四枚の大翼はズタズタに裂けていた。紅の竜鱗は傷ついていないものを捜す方が難しい状態。今は現状把握と回復に努める他はない。その現状把握に努めた結果、ある事に気付いた。
今まで忌々しく響き渡っていた、戦神神官の『戦の歌』が聞こえない。ということに。
戦の歌とは、戦神の加護により、闘う者達を恐れ知らずの兵へと変え、肉体の限界を引き出し、精神に対する状態異常を無効化する神官スキルだ。
せめてもの悪足掻きと、首をもたげた魔竜は迷わず肺胞に酸素をとりこんだ。
「……危ない!」
火竜の動作からファイアブレスを予測したタバサは、雪風の二つ名に恥じない吹雪を、生徒達と魔竜の間に発生させた。轟音と共に吹き荒れる凍気。
結果から言えば、タバサは判断を誤った。だが、咄嗟にとった行動は、僅かながらに成果を上げた。
火竜が放ったのは、ファイアブレスなどではなく咆哮。
緊急事態と判断した学院長が発動させた、秘宝『眠りの鐘』の音はかき消され、学院の窓ガラスという窓ガラスを全て砕き、衝撃で学び舎は大きく震える。
ドラゴンズ・フィアー。音の衝撃に加え、敵対者の精神を挫く竜の雄叫び。
巻き起こった吹雪のあげる轟音が、幾分かは軽減したが、間近にいた生徒は無事ではすまなかった。鼓膜の破裂。身体の麻痺、昏倒。恐怖で発狂した生徒もいれば、魂魄を砕かれ即死した生徒もいた。各々の精神力に応じて様々な状態異常に襲われた生徒達は、一瞬にして恐慌状態へと陥り、もはや魔竜をどうこうできるという状態ではなくなっていた。
(これでしばし時間稼ぎができるか)
再びうなだれうずくまる魔竜。
ドラゴンズ・フィアーにからめとられたシルフィードは落下し、中空へ放り出されたタバサは、なんとか受身を取るも、それ以上は身体が痺れて動けず、転がるに任せる。何かにぶつかって止まったので、なんとかギリギリと首を横にめぐらせると、それは意識を失いぐったりと横たわっていたキュルケだった。
「すごい……! すごいすごいすごい! あはははははははは!」
咆哮の直前に抱いていた歓喜の感情が、恐怖による精神攻撃を緩和したのか。笑いながら吹き飛ばされて転がったルイズは、すぐさま起き上がると、猛然と魔竜の足元まで走り抜けた。
思うはただ一つ。
「こんな大物を逃がしてなるものですか!」
前足にとりついたルイズは素早く爪先に口付けると、コントラクトサーヴァントの魔術を詠唱。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール!五つの力を司るペンタゴン、この者に祝福を与え、我の使い魔と成せ!」
口付けをした前足に、あっさりとルーンが刻まれ契約完了。
傷による苦痛で動くことかなわぬシューティングスターは、これ以上の抵抗をあきらめた。
「……わたしルイズ。ルイズ・ド・ラ・ヴァリエール。あなた、言葉はわかる?」
恐る恐る尋ねるルイズに、獣の唸り声のような低い音で、シューティングスターは答える。
(俺をここへ呼んだのは貴様か? 何が目的だ?)
「!? ……わかる! あなたの言葉がわかるわ! えぇ、えぇ、使い魔として確かにわたしが召喚したわ!」
竜言語(ドラゴンロアー)。相手の精神に直接意思を伝える高等言語。咆哮はこれを応用したものだ。
(使い魔? 貴様この俺を使役しようというのか?)
「とくに不自由させるつもりはないわ。あなたに炊事洗濯とかできるとは思ってないしね」
(ではどうするつもりだ?)
「それよりもあなた名前は? さっきのやつの他にどんなことができるのかしら!? サラマンダーより強い!?」
熱に浮かされたかの様に紅潮し、一気にまくしたてるルイズ。
あっけにとられたシューティングスターは、とにかく今は回復に努めたかったので、時間稼ぎを兼ねて質問に順番に答えてあしらうことにする。
(人間どもにはシューティングスターと呼ばれていた。俺にできることは、焼き尽くし破壊することだけだ。今は手負いだが、それでもサラマンダーごときに後れはとるまい)
「ホント!? ホントホント!?」
(あぁ)
再び輝くルイズの瞳。キョロキョロと凄惨な現場と化した学院の周囲を見渡し、気絶し倒れているキュルケを発見。
「あはははは! 聞いた? どうやらわたしの使い魔は、アンタのしょぼい火トカゲなんか問題にもならないそうよ? ちょっと聞いてるのキュルケ!」
横たわるキュルケの脇腹に、振りかぶった脚の爪先を食い込ませるルイズ。キュルケは抵抗することなく、身体がくの字に折れ曲がって転がった。
「ルイ……ズ?」
隣で麻痺から抜け出せずにいたタバサが、信じられないといった目でルイズを見上げる。
「よくも!」蹴る。「今まで!」蹴る。「散々!」蹴る。「馬鹿に!」蹴る。「してくれた!」蹴る。「わよねぇ!」蹴る。
「ゲホッ! ゲホッ!」
「あはははははははは!!」
気の済むまでキュルケを痛めつけたルイズは、血の混じった咳を吐くキュルケを一瞥すると、今度はタバサに向き直った。
「……うぅっ」
敵意を持つ者を前に、身構えたくても身構えることのできない恐怖。必死に身体を動かそうと努力をしたが、どうやら身じろぎ一つが限界。観念したタバサは、きつく目を閉じた。だが、いつまで経っても暴力という嵐はやってこない。
恐る恐る目を開けたタバサは、そこで軽い眩暈に襲われる。
「あなたはこの学園の生徒でただ一人、わたしを馬鹿にしなかったわ。だから許してあげる」
足元に立つルイズ。その混濁とした瞳を垣間見たタバサは、悟ってしまったのだった。
あぁ、ルイズはあの時の咆哮で、既に狂ってしまっていたのだと。
召喚の儀式によって死者まで出してしまったこの事故は「魔物を呼び寄せる以上、このような事故は想定済み」という学院長の言により不問とされた。
キュルケも何本かの肋骨の骨折で済んだが「咆哮により吹き飛ばされた際に怪我を負った」と証言し、タバサとともに、それ以上は口を閉ざした。彼女なりに思うところがあったらしい。
ルイズの気持ちを考えない自分の軽薄な態度が、あそこまで彼女を追い詰めていたなんて思いも寄らなかったのだ。
当のシューティングスターは、古竜のもつ超再生能力により、一晩で翼膜が生成され、二晩で鱗が生え変わり、三日で潰れた片目が治癒。四日目で折れた角も治り、すっかり完治したが、この四日間で、以前の気性の荒さは失せ、おとなしくルイズに従っていた。
使い魔の儀式による、主人にある程度友好的となる効果もあるが、曰く、死にかけていたところを救ってくれた命の恩人であり、数百年にわたって身を苛ませていたギアスから解放してくれたことは、何事にも勝る喜びらしい。
それからさらに数日後。
学院に訪れたアンリエッタ王女に、古竜を従えた実力を買われて密命を下されたルイズだったが、平然とこう言い放った。
「大丈夫です姫さま。如何にトリステインが小国といえども、わたしとシューティングスターがいます」
「……え?」
「望まぬ政略結婚などせずとも、姫さまを悩ますアルビオンの反乱軍は、シューティングスターが皆殺しにしてみせます」
「え……? え? え……?」
「反乱軍を一晩で焼き払い、全滅させれば、他国とてトリステインを侮る事もなくなるでしょう。シューティングスターにはその力があります。そうすれば姫様も政略結婚などせずにすみますし、笑顔でいてくれますよね?」
「ルイ……ズ?」
王女に背を向け、部屋の扉を開け放つルイズ。
「お待ちなさいルイズ!」
振り返るルイズ。その混濁とした瞳を垣間見たアンリエッタは、かつてその瞳を覗いたタバサと同じく、言葉を失った。
「では行ってまいります!」
サイズが大きすぎる為、学院寮の外で待機を命じられ寝そべっていたシューティングスターは、しきりに話しかけてくるタバサの使い魔、幼竜のシルフィードの愚痴に相槌を打っていた。
「で、タバサお姉さまは人前で喋るなって言うのよ! シルフィ、もっといろんな人とお話したいのに!」
(いつだって竜は、人にとって畏怖の象徴なんだよ。お前の主人は、そんな目でお前が人間どもから見られ、迫害されることを恐れているのだろう)
「迫害……? そういえばここに来た時ボロボロだったけど、アレも人間がやったの?」
(あぁ。俺が嫌々守らされてた棒切れ欲しさに、集団で押しかけてきたのだ。……っと、御主人様のお出ましだ)
ルイズの接近を感知したシューティングスターは、横たえていた身体を起こした。小山ほどの大きさの体躯が、起き上がることで山となる。
「お出かけよ、シューティングスター。翼はもう大丈夫?」
(問題ない。ということでお出かけだそうだ。またな嬢ちゃん)
「うん! またシルフィとお話してねー!」
ルイズのマントの端をひょいと咥えたシューティングスターは、首を持ち上げて上へ放り投げた。
器用に魔竜の頭の上へ着地したルイズは、角を掴んで伏せる。
「これからアルビオンというところへ行って貰うわ。方角は大体あちらの方よ」
(心得た)
巨大な四枚の翼を展開すると、辺り一面が日陰に覆われ、凄まじい風圧が発生する。軽く羽ばたき、翼に風をはらませた瞬間、一気に垂直に飛び上がった。
ある程度の高度に達したのを確認すると、ぎりぎりまで引き絞られた弓から放たれた矢の如く、ルイズの指し示した方向へ加速。
「あはははは! すごいすごい! 名の通り、まるで流星ね! あはははははははは!!」
王女がルイズに同行させようと連れてきた、グリフォンを使い魔とする騎士は、無視して置いてきた。
シューティングスターに脅えきったグリフォンが、使い物にならなかったのだ。
もとよりグリフォンとシューティングスターとでは、飛行速度が這い這いの赤ん坊と全力疾走の大人以上に開きがあるので、足手纏いにしかならない。
(黙ってろ。舌を噛むぞ)
「あはははははははははははははははは!!」
ギアスを気にせず大空を自由に舞えることが、シューティングスターの全身を喜びで満たす。主人の御機嫌も良好だ。最短距離を一気に飛翔し、一日とかからず浮遊大陸アルビオンに到着してしまった。
(何か出てきたが、あれはなんだ?)
「あれは敵よ! 思いっ切りやっちゃって!」
(耳をふさいでろ)
出迎えにきた飛空挺部隊を咆哮で一蹴。後から続々と出てきた小型艇は、シューティングスターの飛行により発生する竜風圧によって、乱気流に巻き込まれて叩き落とされた。続けて現れた迎撃艇には、灼熱のブレスを浴びせて沈黙させる。
ほんの僅か。お茶も飲めないほどの僅かな時間で、反乱軍は壊滅的な打撃を受けていた。
「脆い! 脆いわ! あはははは! 死ね死ねー! 姫さまの笑顔を曇らせる輩はみんな死んでしまえ! あはははははははは!!」
魔竜の勢いは止まらない。そしてルイズの中で加速する狂気も。
流星を従えし狂える王は、大きく手を振りかざし、眼下の豆粒に向かってその手を振り下ろしながら、臣下に似た咆哮をあげた。
「なぎはらえー!」
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なぎはらえー |:|\\:::::||.:.||::::://| /イ
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ト、 ,.  ̄ ̄Τ 弋tァ― `ー / l从 |メ|_l l_.l斗l |ヽ V |:| ̄ ̄ ̄ ̄ フ  ̄ ̄ | イ
ヽ \__∠ -――く __ .Z¨¨\ N ヒj ∨ ヒソj .l ヽ\| / / | / !
ヽ ∠____vvV____ヽ < ≧__/ ゝ、t‐┐ ノ .|┐ . \ / / \ / l
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\! | / 入_.V/| >-ヘ \:::∨::∧ ∨ ∠二 -‐ .二二 -‐ ' ´ / / / l. l
__ |\ l/V _{_____/x| (_|::::__ノ }ィ介ーヘ / ,.-‐ ' ´ / ____  ̄ ̄フ ∧ l
)-ヘ j ̄} /| /___/xx| _Σ___/| | |V::::ノ/ ∠___ { / `< / \|
{ V /`7. /___./xXハ ( |:::::::::::::::::ハ >' ____ 二二二二二二> / __ 〈
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ノ } l ̄ ̄ ̄.|Ⅹ >' ,. '  ̄ / .// :/ V' \ ヽ `丶\/ /
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入ノ. ヽ く ヽ______7 ー―∠__ 〃 l :/ :l l \V ヽ \ ,. '´
`ー′ \ `< | { / | /〃 :|/ __V/ ̄| ̄ ̄{_ \_ ` <
\ `' ┴ヘ { .レ__r‐|ィ‐┬、lレ' | / ノ`y‐一' >、_/ / ̄ 7丶、_ 丶
\ ヽ /`ー「と_し^´ | | } ム-‐' / / \_/ / / ヘ \
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終
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2023-09-04T14:17:33+09:00
1693804653
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瀟洒な使い魔‐09
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7840.html
#navi(瀟洒な使い魔)
「待ちたまえ。私に害意はない。住処の近所で騒いでいたようだから様子を見に来ただけだ」
タバサと白蓮の前には、1匹のミノタウロスが居た。
先程の人攫いの変装したものではなく、堂々たる2メイル半がある巨体に、
分厚い鉄板のような刃の付いたごつい、と言う言葉では表しきれないような斧を持った本物のミノタウロスだ。
だが、ただのミノタウロスではないようだ。人語を解するとはいえオーク鬼やオグル鬼よりはまし、
というレベルでしかないはずなのがミノタウロスの知能であるはずだが、
このミノタウロスは丁寧な人語を使い、その目には理性の輝きを宿している。
「やはりこんな外見では警戒されてしまうな……む? そちらの少女は怪我をしているな。
かすり傷のようだが痕が残ってはいけない。少しじっとして居たまえ」
ミノタウロスはそう言ってタバサに斧の先を向けると、野太い声でルーンを呟き始める。
タバサの頬にはさっきのメイジの放った魔法で一筋傷が付いていたが、
斧が淡く輝くと同時に傷は薄れ、やがて消えた。
「……『治癒』」
タバサは目を見開いた。ミノタウロスが魔法、しかも系統魔法を扱ったのだ。
本来、メイジの才能とは血によって受け継がれるもので、
メイジの血が流れていない限りは亜人や平民が呪文を唱えても何も起こらない。
亜人には先住魔法と言う系統魔法とは別種の大系を持つ魔法を使うものも居るが、
ミノタウロスが先住魔法を使ったという話は聞いたこともない。
「確かにこのなりで信用してくれ、というのは難しい話か。だが、重ねて言うが私に害意はない。
なんであれば杖に誓おう。私は君達に危害を加えるつもりは無い。
女性に立ち話を強いるのも酷だ、私の住処に着たまえ。茶でも出そう」
そういって、ミノタウロスは片膝を立てて跪く。
その様子に2人は顔を見合わせると、白蓮がこくりと頷いた。
「分かりました。ですが、少し時間を頂いても良いですか?
この者たちを村へと連行しなければいけませんし、エズレ村の方々に説明もしなければなりません」
「……分かった。ならば私は住処で待とう。すぐそこの洞窟が今の私の住処だ。
事が済んだなら入り口の前で呼んでくれ」
瀟洒な使い魔 第8話「牛頭親父とハイカラ住職」
拘束した犯人達を村へ連行しエズレ村の村民に事情を説明した後、
白蓮たちは先程の洞窟の前に立っていた。奥に向けて声をかけると、
内部の空気が押し出されるような風が吹いた後、のっそりとミノタウロスが顔を出した。
「ご足労をかけてしまってすまないな。こんな外見だと満足に街にも出れないのでね」
『着火』で火をつけたたいまつを手渡しながら、ミノタウロスは頭を掻いた。
たいまつを手にその後を追いながら、2人は顔を見合わせる。
なぜこのミノタウロスは系統魔法を使えるのか? 何故こうも紳士的なのか?
10代と言う若年でトライアングルにまで駆け上がったタバサにも理解がしがたく、
この世界の事情に明るくない白蓮に分かるはずもない。
共に首を捻りながら洞窟を歩む事しばし、壁の近くに、石英の結晶がいくつも固まって輝いている箇所があった。
たいまつの放つ光が反射して、きらきらと幻想的に輝いている。
ふと、白蓮はその場所に何かを感じた。思わずそちらに足を向けそうになるが、
ミノタウロスがその行く手を塞ぐ。
「そちらは土がむき出しになっている。足を滑らせてはいらぬ怪我をするぞ」
この洞窟は岩が水の浸食によって形作られた天然の洞窟で、周囲には鋭利に尖った石筍などが列を成している。
確かにここで足を滑らせれば、勢いによっては串刺しになる可能性も高い。
更に奥に進むと開けた場所に出た。ミノタウロス用に作られているのか随分と大きな椅子や机。
部屋の奥には煮えたぎる鍋が載ったかまどや幾つものガラス瓶、秘薬が収まっているであろう袋。
その様はミノタウロスの住処と言うには余りにも文明的で、まるでメイジの研究室のようだった。
驚いた顔で周囲を見回す2人に、ミノタウロスはごふりと一つ笑って話し始める。
「驚いたかね? まるでメイジの研究室のようだろう。
こういっても信じぬだろうが、私はメイジ、すなわち貴族なのだよ」
そうしてミノタウロスは自分の素性を語りだす。
名はラルカス。10年前にこの洞窟に住み着いたミノタウロスを退治したメイジ本人である。
かつで不治の病に冒され、その残る命での最後の旅の途中に依頼を受け、ミノタウロスを退治した。
そして、その時ラルカスは気付いたのだ。ミノタウロスの体の頑健さに。
元々優れた水系統のメイジであったラルカスは、己の病を治す方法を探した。
旅の目的も、半分ほどは自分の病の治療法を探す旅でも合ったのだ。
そして、ある意味でラルカスの悲願を叶える技術は存在した。ただし、それは禁忌とされるものであった。
脳移植。高度な水の魔法を持ってして、ラルカスの脳を他者の肉体に移植する。それが、彼の見出した病を退ける術。
そして旅の途上で退治したミノタウロスの肉体は、ラルカスの新たな肉体となるに相応しい強靭さを持っていたのだ。
「そして、私はミノタウロスの肉体を持ったメイジとなった。
この身体は素晴らしい。暗闇は見通せるようになったし、なにより非常に頑強かつ健康だ。
それに、魔力は脳に由来する為に魔法を使うに当たってはさしたる問題はない。
頑健な肉体を得た為だろうか、精神もまた成長を遂げたようでね。
今の私はスクウェアクラスと言っても過言ではないほどの魔力を持っているのだよ。
生半可な魔法程度なら意に介さない強靭な肉体に、スクウェアクラスの強力な魔法。
まみえた事はないが、今ならあのトリステインの生ける伝説、烈風カリンにすら引けは取らないと自負している」
自信満々にそう語るラルカスであったが、白蓮にはなぜだかその姿がとても哀しそうに見えた。
死を恐れる気持ちは分かる。白蓮もまた、弟の死から死を恐れ、不老の肉体を持つ『魔法使い』となったからだ。
だからこそ、人を外れた事による苦痛もまた理解できる。
自分はまだ魔法により若返っただけであるから人の世界に溶け込むことはできる。だが、ラルカスは違う。
人と言う肉体を脱ぎ捨て、怪物としての肉体を得た彼にはそれは不可能だ。
いかに人語を解しても、いかに貴族としての誇りを持っていても、彼は人として暮らす事はできない。
だからだろう、ミノタウロスの表情など分からないが、その姿は白蓮にはとても哀しく、辛いものに見えた。
「寂しくない?」
「元より一人身だ。洞窟だろうと城だろうと、大して変わらんよ。
召使達が病の身を気遣うのも煩わしくてね。かえって一人のほうが気が楽だ」
タバサの呟きにそう答えるラルカスであったが、不意に頭を抱えると蹲る。
何事かと駆け寄る白蓮たちを荒々しく突き放すと、ラルカスは頭を振りながら立ち上がった。
「気にするな、たまにこうして頭痛がするだけだ。本来収まるべきでない脳が収まっている副作用だろう。
さ、今日のところは帰りたまえ。ご婦人方がこんな獣臭い場には長居するべきではない」
「ええ。研究のお邪魔をしてもいけませんから、お暇させていただきますね。
それではラルカスさんお元気で。またお会いしましょう」
笑みを絶やさぬまま、白蓮はタバサを連れてその場を後にする。
ただ、その心に引っかかるものがあった。先程、ラルカスに制止された時のことだ。
白蓮があそこに近づいたのは、石英の結晶の輝きが綺麗だったからではない。
あの場所から嫌な気配を感じたのだ。まるで、そう――――――
――――――死体が埋まっているかのような嫌な気配。骸が放つ、死の臭いを。
そして2人は洞窟を出、エズレ村への帰途に付く。
村では村人が総出で出迎え、2人に歓声を浴びせ、逆に人攫いの一団には罵声を浴びせた。
人攫い達は物置小屋に纏めて放り込まれ、主犯格のメイジだけが村長の家へと連行されていた。
尋問をするためだ。白蓮たちが事前に集めた情報では、エズレ村以外の村々でも子供の誘拐が多発している。
その全てがこの人攫いの仕業とするのは早計だが、何らかの手がかりはつかめるかもしれない。
そう思って始められた尋問であったが、結果は芳しくなかった。
この人攫いは10年前エズレ村を襲ったミノタウロスのことを知っており、
それで今回の犯行を思いついたのだという。
「ほんとだ、嘘じゃない。確かに誘拐が多発していると言う噂も知ってるが、
人攫いの仕業だとしても同業の連中の仕業だろう。それとも、あの―――」
最後まで言い終えることなく、メイジは昏倒した。タバサによって延髄を打ち据えられ、意識を刈り取られたのだ。
「言い逃れは醜い」
そう言って白蓮に目配せをする。口ではそう言っているが、本心はラルカスの存在を秘匿する為だろう。
『ミノタウロスなどいなかった』と言うことにしておいた方が都合がいいし、
何より無駄にエズレ村の住人を怖がらせる必要は無い。
タバサは完全に気絶したのを確認すると、『自害を防ぐ為』として猿轡をし、おもむろに椅子に座る。
そして成り行きを見守らざるを得なかった村長に首を向けると、ぽつりと呟く。
「お腹すいた」
その言葉に真面目な顔をしていた白蓮は思わず吹き出し、村長が妻に食事の支度をするよう部屋の外へ駆け出す。
白蓮が見たタバサの顔は相変わらず感情と言うものが読み切れない無表情であったが、
先程の一言は緊迫した場の空気を弛緩させるための、彼女なりのユーモアであったのかもしれない。
夕食の後、白蓮たちは客間にて一休みしていた。タバサは相変わらず読書に耽り、
地下水は白蓮によって手入れをされ、チェストの上で上機嫌で鼻歌などを歌っている。
だが、当の白蓮の表情は暗い。地下水の手入れをしている時も、そして今も。
俯いて深く考え込むように瞑目し、時折手を組んで何事か呪文のようなものを呟いている。
タバサも地下水も、その呪文は「お経」という祈りの際に唱える呪文だという事は分かっている。
故に訝しがることは無かったが、普段から笑みを絶やさない彼女の沈んだ顔だけは気になっていた。
「よぉ、姐さん」
「ひゃあっ!? な、なんですか、地下水さん」
思案に耽っていたところに声をかけられ、白蓮はびくりと体を震わせた。
地下水は問う。何故そんなに沈んだ顔をしているのかと、もう任務は終わったんだろう? と。
その言葉に白蓮は押し黙り、少しした後、首を横に振った。
確かに任務は終わった。だが、白蓮はそれで安心する事はできなかった。
人攫いのメイジが言っていた『自分たちの犯行ではない子供の誘拐』。
ラルカスの洞窟で感じた『嫌な気配』。それらは白蓮に最悪の展開を予想させる。
しかし、白蓮は動けなかった。彼が人を捨ててまであの肉体を得た理由を、誰よりも理解しているから。
「嫌な予感がするんです。早く手を打たないと、取り返しの付かないことが起きかねない。
でも、一歩踏み出す事ができない。彼があのような姿になった理由……詳しくは話せませんが、
死を恐れ、それから逃れようと外法に縋ってしまった気持ちは、私も同じですから」
「だから、彼に彼が犯しているであろう罪を問うことが出来ない」
いつの間にか本を閉じ、こちらを見ているタバサが静かに言う。
「……ええ。だから、迷っています。行くべきか、行かざるべきか。
誰かに任せてしまうべきか、自分で相対すべきかを」
それきり、部屋を沈黙が包む。白蓮は沈んだ顔で、タバサはいつもの無表情で。
暫く続いた沈黙を破ったのは、チェストの上に置かれたインテリジェンスナイフの一言だった。
「あー、姐さん、あれだよ。俺としてはここで考えてるよりは、動いた方がいいと思うんだ。
俺は所詮ナイフだ。人間の身体を操った事はあるが、ハナから人間じゃねえ。
だから所詮人斬り包丁の戯言と思ってくれてもいいけどよ……
やっぱあれだ、動かないで後悔するよりゃ、動いて後悔する方がいいんじゃねえの?
こういう言い方は卑怯だと思うけど、動かなかった場合、被害を被るのはこの村だぜ」
その言葉に、白蓮がはっと顔を上げる。タバサもまた僅かに眉を動かし、視線を向ける。
2人の視線が集まっている事を改めて確認すると、地下水は言葉を続けた。
「続けるぜ。こいつは俺の傭兵としてのカンだが、このまま動かなければやべえよ。
今日姐さんが守ったこの村が、恐らくは真っ先に血の海になる。
ドミニク婆さんも、ジジも、その親父さんたちも皆死ぬね。
王都が迅速に動けば少なくともこの村だけで被害は抑えられるかもしれないが、
まず確実にこの村は滅ぶ」
そこで地下水は一度言葉を置き、「だが」と言って言葉を繋ぐ。
「だが、姐さんが動くとなりゃあ話は別だ。姐さんの経歴はよくしらねえが、
俺なしでもスクウェアクラス、いやそれ以上の実力を持ってる。
だから、姐さんがその気になりゃあ、そんな事は起きねえ。
それにだ、何も殺すの殺さないのって話に発展するとは限らねえさ。
あの大将だって分かってくれる可能性はないではねえ。
それにあれだ、姐さん、こういうの得意だろ? 人外相手の説得とかよ。
エルザんときだってそうだし、俺んときだってそうだ。
結局よ、俺もエルザもアンタが好きなんだ。お人好しのあんたがな。
こんな俺達でも人間扱いしてくれるあんただから、俺も力を貸してるんだぜ」
地下水のその言葉に白蓮は一瞬きょとんとした後、顔を赤くしてうろたえ始めた。
タバサと地下水が生暖かく見守る中ひとしきり悶えた後、咳払いを一つして口を開く。
「あ、有難うございます、地下水さん。どういう結果になるにせよ、
確かにまず私が動かねばいけませんね……では、善は急げです。
今すぐ行きましょうか」
白蓮は立ち上がると、地下水に手を伸ばす。しかし、ふとその手が杖でさえぎられた。
その杖の主は勿論タバサ。相も変わらずの無表情で白蓮を見つめている。
「タバサちゃん?」
「私も行く」
そう言って杖を退けるタバサ。その表情と言うものが抜け落ちたような、
イザベラに言わせれば『人形のような』表情には、どこか安堵したような色があった。
ともすれば、見落としてしまいそうなほどに僅かなものであったが。
「相手はスクウェアメイジ、そしてミノタウロスの身体を持っている。
戦闘を考慮する場合、数が多くて困る事は無い」
「……成程、少し気が逸っていたみたいですね。
お願いできますか? タバサちゃん」
「当然。それに、これは元々私の受けた任務。最後まで付き合うのは当然の事」
そしてタバサは白蓮に先立って客間を出る。
その頬が僅かに緩んでいた事に気付いたのは地下水だけだったが、
とりあえずは見なかった振りを決め込んだ。
長い間人の間で生き、様々なものを見てきた経験が、何となくそうした方が良いと告げたからだ。
ありていに言ってしまえば、藪をつついて蛇を出す真似が嫌だっただけであるのだが。
「―――今日はもう帰れと、そう言った筈だが」
洞窟の奥の研究室で、ラルカスは鍋をかき回しながら静かに言った。
背を向けているため表情は見えない。もっとも、たとえこちらを向いていたとしても、
ミノタウロスの表情の変化などよく見なければ分かるものではないが。
「少し、お話したいことが出来まして」
白蓮は手に持っていた白い塊をテーブルの上に置く。少々歪な半球を描くそれは、人の頭蓋骨であった。
それも歳若い子供のもので、骨となってからそれほど立っていない。
ラルカスからの返事は無い。先程と同じく、無言で鍋をかき回している。
「このしゃれこうべは、貴方が私を止めた『土がむき出しになって居る場所』で見つけました。
このほかにも幾つもの骨が見つかっています……それも、子供のものばかりが。
ラルカスさん、今エズレ村近辺の村で起こっている誘拐事件の犯人は、あなたですね?」
「何故そう思う? 私が他の場で拾ってきたものを埋めていたとは考えないのか?」
背を向けたままで、手を止めずに言うラルカス。その背を見つめたままで、白蓮は言葉を続ける。
「気配が……このしゃれこうべやこの子が埋まっていた場の気配が、貴方からも漂ってきているのです。
どんな秘薬を使おうとも拭えない、罪と死の気配が」
ラルカスの手が止まり、こちらに身体を向ける。
その巨体が動くだけで洞窟内部の空気がかき回され、2人に獣臭を伴った風が吹く。
「ミノタウロスの意識が残っていたのか、肉体をミノタウロスに変えた為に、
貴方の心がミノタウロスに近づいていったのか、それは私には分かりません。
ですが、これだけは分かります。貴方がそうなる可能性を全く考慮していなかった訳ではない事。
そして……そうまでして生に縋り付く、あなたの死への恐れだけは」
直後、風が渦を巻いた。ラルカスが傍らに置いてあった斧を掴み、白蓮へと突きつけたのだ。
タバサの杖が動きかけるが、それを白蓮は制し、地下水をもテーブルの上に置く。
突きつけられた斧の切先は細かく震えている。恐らくは怒りで。
「貴様に……貴様に何が分かる! 病に冒され、ただ死への秒読みだけを早められた私の、何が!
分かるまいよ、貴様には! 同情などうんざりだ! 人を捨ててでも生き延びたいなどと、
貴様は一度でも思った事があるのか! その美しく健康な肉体を持つお前が!」
怒りに染まったラルカスの脳裏で何かが囁く。
――――そうだ、やってしまえ。知ったようなことを言うこの綺麗な女を。
――――叩き殺して、ばらばらにして、その肉を食ってしまえ。遠慮する事はない。
――――『俺達』はミノタウロスだ。ミノタウロスが人を食って何が悪い?
――――何より、お前だってそうしてきただろう?
そのささやき声はラルカスの心にするりと入り込み、ある欲望を活性化させる。
人としては不自然な欲望だが、その肉体としては日常的に湧き上がる極普通の欲求。
すなわち、目の前の女を殺してその肉を貪り食いたいという、強烈な食欲を。
それに呼応するかのように、ラルカスの瞳が鈍く、赤く輝き始める。
「オオォォォォォォォッ!」
ラルカスは雄叫びを上げると大きく斧を振りかぶり、白蓮めがけて叩き付ける。
だがその一撃が白蓮を捕らえる事は無く、巻き起こった風が髪や服をばたばたとはためかせるに留まる。
「ビャクレン」
「姐さん!」
タバサが杖を構え、地下水が悲痛な声を上げる。だが白蓮はそれをまたも制し、
文字通り身一つでラルカスに相対する。強い視線でラルカスを見つめる白蓮を、
ラルカスの赤く輝く目が見下ろす。口からは粘性の高い涎をたらし、
その瞳を殺意と食欲でぎらつかせ、ラルカスはまたも斧を振り上げた。
「手出しは無用です。先程も言った様に、私は彼の気持ちが痛いほどに良く分かります。
ですが、それを形にすることが出来ません。私の外見は人と変わらず、深い傷を負えば死にます。
だから、この身一つで彼を止める。そうすれば分かってもらえると思うんです。
私もまた、彼と同じ『人でなし』なのだということを」
「……できるの?」
多分に疑問の色を込めたタバサの問いかけを断ち切る用に、ラルカスの斧がまたも振り下ろされる。
その一撃はやはり白蓮を捕らえることなく、地面に打ち込まれ辺りに石片を撒き散らした。
「出来なければやるなどとは言いません。だから、地下水さんを持って下がっていてください。
今のところ、ラルカスさんの獲物は私のようですから」
何度目かの斧が白蓮の横を通り過ぎた時、斧は再び振り上げられることなく動きを止める。
ラルカスが戸惑ったような声を上げるが、地面に食い込んだのか斧は微動だにしない。
だが『暗視』の魔法をかけてそれを覗いていたタバサは、違う、と呟いた。
白蓮が、その細腕で斧の柄を掴んでいたのだ。
その身体からは、湯気のように可視可能なほどの魔力が立ち上っており、
地下水とタバサは、白蓮が本気でラルカスと相対する気なのだと知る。
聖白蓮は魔法使いである。
幻想郷の魔法使いというものは各々がオリジナルの魔法を操る為、決まった系統と言うものがほとんど存在しない。
人形を操る、属性を操るなど、魔法使いごとに固有の方式で魔法を行使するのが普通なのだ。
白蓮は元々自分の若返りや延命の為に魔法を学んだ為か、身体能力を強化する魔法に長ける。
スペルカードルールを用いた弾幕戦においては魔力の弾を生み出し操るが、
本来はこういった、己の肉体に直接作用する魔法の方が得意なのである。
ラルカスの斧を押さえた剛力も、そういった魔法の恩恵によるものなのだ。
斧の柄を握り合い、白蓮とラルカスは至近距離で対峙する。
ミノタウロスの膨らんだ筋肉がミチミチと音をたて、白蓮の細腕から発せられる魔力がゆらめく。
双方の額からじっとりと汗がしたたり、生暖かい鼻息が白蓮の肌をくすぐり、髪を揺らす。
数分か、数秒か、どちらとも判然としない時が過ぎた後、ラルカスが動いた。
その口が動き、ルーンを紡ぎだしたのだ。
―――ラグーズ・ウォータル・イス・イーサ・ウィンデ―――
呪文の完成と同時に、白蓮の周囲に何十本もの氷の矢が生み出される。
呪文自体はタバサの十八番であるウィンディ・アイシクルだが、その数が半端ではない。
スクウェアとトライアングル、その魔力の差が垣間見える一幕である。
だが白蓮は自分を包囲する氷の矢にもひるむことなく、空いているほうの手を一振りする。
すると白蓮を守るように数十を超える光の弾が生み出され、殺到する氷の矢とぶつかり合い、相殺される。
「……まだ、やりますか?」
斧を押さえたまま、白蓮はラルカスを見上げる。
「貴様などに……何が分カる……殺す、コロしテ、オマエヲ、クウ……」
ラルカスの瞳から怒りの色が消えていく。それと同時に、怒りの奥に見え隠れしていた食欲で目がぎらついた。
それを見て、白蓮は悲しげに眉をひそめる。鼻息が荒くなり、口からは粘性の高い涎が垂れ、
斧を押さえる手に、ラルカスが更に力を込めたのを感じる。
「―――――」
その瞳によぎったのは、覚悟か、諦めか。
白蓮は己の肉体を強化している魔法の出力を更に上げ、ラルカスを上回る腕力で斧の柄を思い切り引いた。
ミノタウロスの巨体が大きく前に傾ぎ、白蓮の頭を叩き割らんといった勢いで迫って来る。
それを冷静に見つめ、白蓮は拳を硬く握りこんだ。
直後、タバサと地下水は信じられないものを見る。
どごん、という轟音と共にミノタウロスの巨体が宙を舞い、半回転して背中から床に落ちた。
自分に向かって倒れこんできたラルカスに、白蓮がアッパーカット気味にカウンターを決めたのだ。
顎から突き抜ける衝撃によってラルカスの脳は揺さぶられ、意識が遠のき、
地面に激突したと同時にラルカスの意識は暗転した。
―――人間業じゃなかったね、あれは。つくづく敵に回さなくて良かったって思うぜ。
とは、暫く後に、地下水が後に出会う終生の友との会話の際に言ったセリフである。
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#navi(瀟洒な使い魔)
2023-08-16T01:23:29+09:00
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バハムート『ゼロ』式
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1888.html
少女ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは唖然として目の前の存在を見ていた。
目の前の存在は……途轍もなく巨大で……神秘的で荒々しい竜だったからだ。
事の発端は、春の使い魔召喚の儀式。
学年進級がかかったこの行事は、非常に大切な行事だった。
学年進級もそうなのだが、召喚した使い魔により己の基本属性の固定に加え自分の進む道の道標となるからである。
そして儀式当日……次々と召喚され使い魔として契約される光景を見てルイズは、
自分も素晴らしい使い魔を召喚できるに違いないとその小さく綺麗な手で握り拳をつくる。
とうとうルイズが使い魔を召喚する番になる。
ルイズは、呼吸を整え心を落ち着かせ使い魔を召喚する呪『サモン・サーヴァント』をゆっくりと唱える。
そしてサモン・サーヴァントの呪が完成し発動させた。
それは、盛大で強烈で激しすぎる爆発。
それと伴って盛大に巻き上がる砂埃。
失敗したのか? 成功したのか? 余りにも砂埃が酷く視界を塞ぎそれすらもわからない。
ルイズは、祈った。どうか成功しているようにと。
(蛙でも鼠でも犬でも猫でも、それが例え植物だろうとなんでもいい成功して欲しい!)
結果的にその願いは、叶う事となる。
ただ前例が無いと言う形で。
砂埃が風に流され晴れた時其処に存在したのは白に近い灰色のローブを着込んだ
男性とも女性とも分からない人間が悠然と立っている。
右手には、一番先に漆黒の石が埋め込まれた1.5メイルほどあるロッドを持っていた。
パッとみて、ルイズは自分はもしかして高名なメイジを呼んでしまったんじゃないか?
何て事をしてしまっただろう……と、ルイズは泣きたくなってくるのだが……
今し方ルイズが召喚した存在が、口を開き言葉を紡いだ。
しかし、それは口からと言うよりも丸で空間全体が言葉を紡いでいる様。
『我を呼びし者よ……我に何用か……』
淡々として威厳ある声が、ルイズの目頭に涙を薄らと浮かべさせる。
怒られるだけならまだいい……もしかしたら、消されるかもしれない。
と、目の前のメイジ(?)を見てそう思うルイズ。
何も声を出せず、口から小さな嗚咽が漏れるルイズに変わり引率として着いてきた教師
コルベールが、ルイズの召喚してしまったメイジ(?)に対し謝罪の言葉を述べるのだが……
『使い魔……其処の小さき者がか?』
その言葉に、コクンと小さく頷くルイズ。
その様子を見てさらに目の前のメイジ(?)に謝罪の言葉を述べようとコルベールが口を開く前に……
『ならば、我を見事使い魔にしてみせよ!』
その言葉と同時に、メイジ(?)の体はメキメキメキと鈍い音を立てて変化する。
そして冒頭で紹介した巨大な竜がルイズの目の前に存在するという訳である。
『さぁ我に、己が力を示せ! 己が信念を貫け! 己が魂の輝きを見せ、我を屈服させよ!!!』
竜は、言葉を紡ぎ咆哮を上げる。
その咆哮は空気を震わせ大地を揺るがす! 大半のクラスメイトがソレにより吹き飛び使い魔達も混乱に陥る。
逃げ惑うクラスメイト達、引率のコルベールは、失神していたりする。
しかし、その中で二名のクラスメイトがルイズの横に立つ。
「やっかいなの召喚しちゃったわねぇ? ルイズ?」
そう告げるのは、紅の髪を持ち褐色肌の女性キュルケ。
「……手伝う」
目の前の竜を見て、淡々とした表情を浮かべてそう告げるのは、蒼の髪に翡翠の瞳を持つ少女タバサ。
そんな二人を見てルイズは、何故と言う表情を浮かべるとそれをみたキュルケは笑いながらにこう告げる。
「友人と書いてライバルと読む。それが私と貴女の関係よ。ならば……共闘してもいいじゃない?」
キュルケは、愉快そうにそう告げ
「……友人の手伝いをする事に理由などない」
そう告げ杖を構えるタバサ。
二人の言葉を聞いた後でルイズは、目の前に存在する巨大な竜を見る。
どう考えても勝てる要因はない。
キュルケが召喚した使い魔サラマンダーの炎だってあの巨大な竜に効くだろうか?
タバサが召喚した使い魔ウィンドドラゴンの攻撃だってあの巨大な竜に効くだろうか?
そして、最大の要因は私が魔法を使えないと言う事だ。
「なぁに湿気た表情してるのよ。まったく私のライバルなら覚悟決めなさいよ」
「……物事には逃げて良い時と逃げてはいけない時がある。私は逃げない」
二人は、杖を構え凛として前を見てそう言い放つ。
……そうだ、私は貴族だ。いや……貴族とかそんなの今は関係ない。
私は、そう……敵に背中を見せない! それが! 私の信条!
例え勝てなくとも! 例え負けようとも! 絶対に敵に背中は見せない!
それが私だ!
ルイズは、杖を構え凛とした表情を浮かべ竜を見た。
『さぁ……来い! 人の子よ!』
三人と二匹は、その巨大な竜と戦いを始め、その戦いは日が沈み二つの月が昇り沈みまた日が昇る頃に終わりを迎えた。
結果的に、三人と二匹はその巨大な竜を倒す事は出来なかった。
魔力が尽きても体がボロボロになり凄まじい疲労があっても三人は、しっかりと己の足で大地にたち竜を見据えていた。
其処には、覚悟があった。
其処には、信念があった。
其処には、絆があった。
其処には、砕けない魂があった。
酷く大きな音を立てて依然立ち続けるルイズたちに歩み寄る竜。
三人にはもう魔法を撃つ為の魔力は無い。キュルケとタバサの使い魔も当の昔に地に伏して気絶している。
また一歩、竜は近づいてくる。
そんな竜を三人は、まけちゃぁいない! とばかりに睨む。
すると竜は、淡い光を放ちその巨体をまるでガラスが砕ける様にして消えて行き……
その光が終えれば、其処にはあの白に近いは灰色のローブを着た存在が居た。
『その力みせてもらった。その信念みせてもらった。その魂の輝きをみせてもらった……
だが、我を屈服させるには至らん……しかし、人の子よ。お前が何処まで成長するか見届けたくなった。
お前が死に果てるまでの時間など、我にとっては短き時間。
さぁ、契約しようではないか我を呼びし者』
足音無くルイズに近づく者。
わけのわからない展開に、安堵しつつルイズは言葉に従う事にした。
魔力が空っぽなのはわかってる。でも、大丈夫。出来る。
何故か、確信めいた思いが脳裏を駆け巡った。
そして、ルイズは契約の呪を紡ぎ……
『今此処に、お前と我の契約は成った……我が名はバハムート。
幻獣にして無が竜の王なり! お前の生き様見届けようぞ!』
「もうルイズと共闘したくないわぁ~」
「……時と場合による」
かくして、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、竜の王と契約した。
竜の王は、ルイズの成長を見守り時には助言し、時には力を貸しルイズの生き様を見守った。
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールが、天寿を真っ当するまで……
ルイズは、数多くの伝説を生み出し……人々から尊敬の意を込めてこう呼ばれ後世に語られる。
『無(ゼロ)と竜の魔法使い』
と………
そして、何処か別の世界にて
「おっゼロと竜の使い魔の新刊か買って置こうっと」
ノートパソコンを抱えた少年が、一冊の小説を手にとりそんな事を呟いたとか呟いて無いとか……
2023-06-24T20:48:43+09:00
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使い魔の逆襲 1
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/86.html
どこかの水の中、辺りに空気の泡が浮かんでは消えてゆく。
どうやらこれは『彼』が見ている夢の様だ。
―― ここはどこだ? 私は誰だ? ――
『彼』が静かにそう呟いた。
―― 私は記憶に無いこの世界をいつも夢見ていた ――
辺りを水草が揺らめいている。
ふと、その間を誰かが通り抜けていった。
―― ん?お前は誰だ? 待ってくれ! ――
『彼』は急いてその誰かを追いかけ、水の中から飛び出した。
その誰かは一直線に山の向こうへ飛んで行き、『彼』の視界から消えていった。
―― 私は あの誰かが飛び立って行ったあの世界を 忘れない ――
再び泡が辺りを覆い、『彼』は夢から目覚めた。
『彼』は何かの液体に満たされた試験管の様なガラスケースの中で、身体中を何かのケーブルで繋がれ、赤ん坊の様に浮かんでいた。
―― ここはどこだ? 私は誰だ? 誰が私をここへ連れてきた? ――
そう呟くと、『彼』は再び瞳を閉じた。
―― 私は誰だ? 何故ここにいる? いや 私はまだここにいるだけだ 私はまだ 世界に産まれてすらいない ――
『彼』の脳裏に、あの記憶に無い水辺の景色が浮かんだ。
そして、あの誰かの姿も脳裏に浮かんだ。
―― 私は誰だっ!! ――
『彼』の瞳に光が宿り、『彼』のいる試験管の様なガラスケースにヒビが生じた。
ヒビは一瞬でガラス全体に行き渡り、今にも砕け散ろうとしていた。
だが砕け散る瞬間、『彼』は突如現れた鏡のような何かに吸い込まれる様にして消え去った。
『彼』が消えた後、ガラスは耐えきれなくなり、粉々に破壊された。
その音を聞いた研究員達はケースのあった場所へ視線を向けた。
だが、そこには何もなかった。
無論、彼らが長年に渡り研究を重ねてきた『彼』の姿も、忽然と消えていた。
「おぉ、成功したようですな」
「ルイズが召喚に成功したのか?」
「そんなバナナ!?」
彼らは口々にそう叫んでいた。
ゼロのルイズの事だ、どうせ失敗する。
ほとんどの者がそう考えていたからだ。
「こ、これが・・・私の使い魔なのね!」
「・・・使い魔?」
先ほどまで試験管の中にいたはずの『彼』は、なぜか芝生の上に座っていた。
突然の事に多少の動揺はあったが、冷静に自分の置かれている立場を分析し始めた。
そして、視線を自分を使い魔と呼んだ彼女に向けた。
ルイズはこれ以上ない喜びを味わっていた。
召喚された『彼』はまさに、彼女が望む神聖で、美しく、そして強力な使い魔であった。
強大な力を秘めていそうな瞳、薄く紫かかった白い肌、とがった角のような耳のようなもの、細くも頑強そうな長い手足、そして紫色の腹部と長い尻尾。
彼女は喜びを全身で表しながら『彼』の問いに答えた。
自分の名前と、サモン・サーヴァントについてだ。
ここは著者よりも皆様の方がわかっていらっしゃるであろうから省略させていただく。
「・・・そして、あなたが召喚されたのよ!」
「お前が・・・人間がこの私を?」
召喚された『彼』の力を知らないルイズであったが、その力の強大さは離れた所から見ていた者にもわかるほどであった。
(これで、私の凄さが照明されたのよ!)
ルイズは有頂天になっていた。
他の者達もルイズが成功させたことに動揺していた。
そのため、『彼』の異変に誰一人気づかなかったのだ。
自分の置かれている立場を聞いた後も、ルイズや他の人間達は何かを頻りに話していたが、『彼』の耳には入ってなかった。
―― 私は誰だ? ここはどこなんだ? ――
『彼』は、ルイズとはまったく逆に、これ以上ない怒りに満ちていた。
―― 私 は 何 の 為 に 産 ま れ た ん だ っ ! ! ――
辺りに亀裂が生じ始め、ようやく彼らは異変に気づいた。
「な、何だよコレ!?」
「み、皆さん落ち着きなさい!」
「・・・逃げるわよタバサ」
「きゅいきゅい」
だが、全てが手遅れであった。
『彼』の眼が光った瞬間、亀裂は割れ、『彼』の周りにいたルイズ以外の生徒達は、衝撃波の様な何かで吹き飛ばされた。
地割れからは爆発まで起こり始めていた。
衝撃波に巻き込まれなかった生徒達とコルベールは慌てていくつかの魔法を唱えたが、全て『彼』の周りに生じたバリアによって掻き消されていた。
『彼』が視線を向けた先は、ルイズの失敗魔法の如く爆発が生じ、近くにいた生徒を吹き飛ばした。
最早逃げることさえ難しかった。
そんな中、タバサとキュルケだけはシルフィードに乗り危機を免れたようだ。
辺りは黒煙と炎に包まれていた。
最初にいた場合から、恐怖で身動きが取れなくなっていたルイズは呆然としながら呟いていた。
「・・・神聖で、美しく、そして強力な使い魔を召喚する・・・」
ふと、ルイズの視線の先にあった炎と黒煙が割れ、バリアを纏った『彼』が現れた。
「私の夢が・・・」
ルイズは死を覚悟した。
しかし、『彼』はバリアを解き、視線を彼女へ向けた。
「これが私の力・・・私がこの世で一番強い使い魔」
そして『彼』は、こう聞いてきた。
「・・・ルイズ、お前よりも強いのか?」
「あ、アナタは確かに世界一強い使い魔かもしれないわ!」
『彼』の思わぬ問いにルイズは震えながらも答えた。
「だけどこの世界にはもう一つ、強い者が存在するのよ!」
「・・・メイジ?」
『彼』はルイズの心を覗きながら尋ねた。
ふと、『彼』はルイズの顔をどこかで見たことがあるような気がした。
(・・・似ている?いや、そんなはずはない)
『彼』の脳裏には、藍色の髪の少女の姿が浮かんでいた。
自らの命で、生きることの、命の大切さを教えてくれた、あの少女の姿を。
「アナタと私が力を合わせれば、何でもできるわ」
勿論嘘である。が、『彼』が何かをする前に契約をしなければいけない。
そう考えながらルイズは語り続ける。
「ただし、アナタのその力を野放しにしたら、世界が滅びちゃう。アナタは力を制御しないといけないの」
「・・・制御?」
その言葉を聞いて『彼』はルイズの話に耳を傾けることにした。
「力に任せて、世界中をこんな風にしてもいいの?」
「・・・どうすればいいのだ?」
ルイズはよし!と心の中でガッツポーズをとった。
無論、『彼』に心を覗かれているとも知らずに。
「私と契約をすればいいのよ!」
コントラクト・サーヴァントさえすればどんな凶暴な怪物も大人しくなる。
ルイズはあの爆発でも手放さなかった杖を握り直した。
「アナタはそこで大人しくしてればいいからね!」
『彼』の前まで歩み寄る。
とてつもないプレッシャーに襲われるが、それでもなんとか呪文を唱える。
「わ、我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール!五つの力を司るペンタゴン!この者に祝福を与え、我の使い魔となせ!」
詠唱が終わり、ルイズは『彼』と唇を合わせようとした。
・・・が、ここで思わぬ問題が発生した。
「何してるの!躊躇ってる場合じゃないわよ!」
タバサや無事だった生徒達と負傷した生徒達の救助活動をしていたキュルケは叫んだが、何故かルイズは動かなかった。
「・・・と」
「と?」
と、何だろ?
キュルケの疑問はすぐに判明した。
「・・・とどかない」
はいジャンガジャンガジャンg(ry
キュルケの脳裏には何故か細長い二人組の男がポースをとっている図が浮かび、すぐに消えた。
「と、とどかないってアンタ――」
「これでいいのか?」
キュルケがツッコミを入れる前に『彼』が膝を折りルイズに顔を近づけてた。
今こそ大事な大事なアタックチャンスである。
ルイズはすぐに唇を合わせ、そして慌てて離れた。
「・・・これが『使い魔のルーン』というものか」
『彼』は自分の左手の甲に文字が刻まれてゆくのを見つめていた。
『彼』の左手にルーンが刻まれてゆくのを確認したルイズは一気に疲労感に襲われ、そのまま気を失ってしまった。
こうして、ルイズは『彼』と使い魔の契約を結んだのであった。
全ての『ポケットモンスター――縮めて、ポケモン――』の先祖と呼ばれている幻のポケモン、『ミュウ』の遺伝子を基礎に、
『彼』の世界のありとあらゆるポケモン達の遺伝子情報を組み込み産み出された、
世界の全てを破壊することさえ可能であると言われる、最強のポケモンが
『彼――ミュウツー』だとも知らずに。
[[使い魔の逆襲 2]]
2023-03-25T03:14:32+09:00
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ワイルドの使い魔-1
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/138.html
気がつくと、僕は青い部屋に居た。
「おやおや、このように火急のお客人とは珍しい」
目の前にはやけに鼻の長い奇妙な人物がいて、やわらかそうなソファーに座ってる。
丁度テーブルを挟んで向かい合っている形だ。
・・・誰だろう? それに此処は・・・?
確か僕は自分の部屋で寝ていたはずだった。
一週間後の引越しの為に、先の寮に送る荷物を纏めて・・・疲れたから着替えるのも面倒でそのままにベッドに入り込んで。
じゃぁ、此処は夢の中だろうか?
だとすれば、こんな奇妙な部屋に居るのも不思議じゃない気がする。
「然様、確かに貴方様は今眠っておいでだ。ここはベルベッドルーム。意識と無意識の狭間にたゆう部屋。夢と言われれば、確かにそれに近いかもしれませんな。
とは言え、貴方様がただ夢を見ているかといわれれば・・・何しろ、このような形でこの部屋に来られる方は初めてでして」
そうか、やっぱり夢なのか。
・・・それにしても、妙にはっきりとした夢だ。僕の考えてる事に律儀に答えをくれるなんて。・・・そもそも、この鼻親父は何者なんだろう?
「これは申し遅れましたな。私の名はイゴール。このベルベットルームの主ですな。そしてこちらがエリザベス」
「エリザベスで御座います。エレベーターガールを勤めております」
いわれてみて初めて気がついた。イゴールと名乗った鼻親父の隣に、部屋の色に溶け込むような真っ青の服を着た女の人が居る。
なんだか、古い洋画に出てくるような服だ。不思議なほど整った顔立ちとあわせて、まるで女優か何かのような印象を受ける。
?・・・エレベーター? いわれてみれば、周囲の壁がどんどん下に流れていく。壊れた時計みたいにぐるぐる回る表示板も、良く見れば階層を表すそれだ。
「さて、貴方様は今世にも珍しい状況・・・世界を飛び越えておいでだ」
夢だけに会話の内容も突き抜けてるな~。世界を飛び越えるって。まぁ、どうでもいいけど。
「おや、覚えておいでではありませんかな?眠りに堕ちる寸前、貴方様は銀色の光を見たはずです。
それこそが世界を飛び越え、此方の者を彼方へと導く術に御座います。貴方様は何者かに別の世界へと導かれたのです」
言われて見れば確かにそんな事があった気がする。電気を消し忘れたかと思って咄嗟に手を伸ばして・・・そういえばその後の記憶が無いな。
・・・これが夢だからだろう。何だか突き抜け過ぎてる言葉を聞いても妙に冷静な自分が居る。そして、今のイゴールの言った言葉が真実だと確信する自分も。
「・・・ほう、流石はこの部屋のお客人となられる資格を持つ方ですな。私の言葉を受け入れて、それに動じられないとは。
ともかく、貴方様はこれからいくつかの選択を迫られる事となるでしょう。私どもの役目は、そんな貴方様の助力となる事。
今は理解できないかも知れませんが、ゆめゆめお忘れないように・・・」
そう言うと、急にイゴールの姿が遠ざかっていく。いや、意識が遠くなっているのかな?
最後に聞こえたのは
「では、遠くないその時に、またお会いしましょう・・・」
静かに告げられるそんな言葉だった。そして・・・
気がつくと、青空が見えた。
あの部屋とは、同じ青でも突き抜けたような青だ。少し周囲が煙っぽいのが難点だけど。
そこまで思って、ようやく自分が何か草場に寝転がっていると気付く。
「・・・?」
やけに周りが騒がしい。身体を起こすと、何やら仰々しいマントか何かを身に付けた奇妙な一団が遠巻きにこちらを見て何か話してる。
直ぐ傍には、何だか顔を真っ赤にしてる女の子が居る。頭の寂しい中年の叔父さんに激しく何か言ってるけど・・・何語なんだろう?
日本語じゃないみたいだけど・・・これも夢なら自動翻訳機能くらいあってもよさそうな物なのに。
「くぁwせdrftぎゅい!?!?!?」
あれ?何だかこっちに来る。すっごい顔が真っ赤だ。怒ってるみたいだ。
いやだなぁ、どうでもいいけどそんなに睨まないでよ。
何、その棒?・・・何か呟いてるけど・・・って何々!?
「ん~~~~~~~!?」
お、女の子にキス・・・された。
・・・は、初めてだったのに・・・
っていうか、何だか変だ。夢にしては明らかにリアリティというか、感覚がはっきりしすぎてる。
「azxcv・・mnbghj・・・の魔法、成功したのかしら・・・そこの平民、私のいってる事がわかる?」
え?何だか急にこの子の言ってる事が判るようになったぞ?
「う、うん・・・判るよ。それよりも此処は・・・?」
「コントラクト・サーヴァントは成功かぁ・・・失敗して儀式のやり直しが出来たら良かったのに・・・いやでも・・・」
・・・僕の話聞いてないね?何だか自分の世界に入り込んでるけど。
「ミス・ヴァリエール、儀式も終わりましたし帰りますよ!」
僕以外の話も聞いてないね?向こうの頭の寂しい人が何か言ってるよ?聞いてないね?
はぁ・・・どうでもいいや。
って、何だ!?急に左手が・・・熱いっ!ちっ違う!!痛いっ!!!
「あっあぐっ!!!」
痛い!痛くて何も考えられない!うわぁぁぁぁっっっ!!!
叫ぼうとして、次の瞬間、痛みが嘘のように消える。
な、何だったんだろう?今の痛み・・・確かめようとして左手を見ると、奇妙な模様が左手に浮かび上がってる。
「ルーンが浮かび上がったって事は、本当に成功したのね」
見れば、さっきの女の子が意識的なワープから現世に戻ってきてた。
僕の手に浮かんだ『ルーン』とかいう模様を、嬉しくも無さそうに見つめている。
「これでもうアンタは私の使い魔よ。アンタ、名前は?」
「・・・せめて、もう少し事情を説明してよ。何だかよく判んない。使い魔って?あと、名前を聞くときは先に名乗るのが普通じゃないの?」
僕の言葉に、女の子は面白くも無さそうに鼻を鳴らす。
どうでもいいけど、どうしてこんなに偉そうなんだろう?
「いいわ、どうやら学のない平民みたいだし色々教えてあげるわよ。まず始めに、アンタの主である私の名前をよく心に刻むのよ、いい?
私の名前はルイズ。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ!」
長い名前だなぁ。・・・音の響きからすると、フランスっぽいけど・・・ここはフランスなのかな?月光館学園は日本のはずだけど。
分校がフランスにあって、そこに眠ってる間に・・・いや、それは無いか。
そこでふと目の端に空を飛ぶ一団が目に入った。さっきの遠巻きに見てた人たちだ。
・・・?・・・・・・飛んでる?
目を凝らしても、宙を舞う一団は消えない。消えそうに無い。
・・・どうでもいいけど。
「さ、まずは私の名前を良く覚えなさい!ほら、アンタの名前言いなさいよ!」
まずはこの女の子の用事を済ます方が先かな?判らない事は多いけど、目の前の事から一つづつ片付けていけばいいし。
「墓場野 鬼太郎。キタローって呼ばれてる。それで、ここは・・・どこ?」
こうして、僕の召喚生活は幕を開けた。
2023-01-26T17:48:15+09:00
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