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エデンの林檎 九話

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 九話 『いいからとっとと林檎喰えやゴルァ』


 ルイズの日常はあまり代わり映えしない。
 実を観察したりカツ丼の取ってきた草などで秘薬を作ったり壊れたものを治したり銃を改良して暴発させてみたり。
 だが日課として行っている魔法の練習は、どれだけやっても上達はしなかった。
 正確には爆発の規模と精度ばかりが上達していく。
 腹立ち紛れに丸太を爆散させながら、自分の爆発魔法を記帳していた。
 一度見たことのあるコルベールの爆発魔法の記録を引っ張り出し、何度も何度も頭をかしげる。

 爆発とはエネルギーの暴走である。
 コルベールの説明を読み直しながらルイズは頭をかしげる。

 コルベールの爆発魔法『爆炎』は難易度は高いがその構造はいたって簡単だ。
 一定範囲内の空間の水分をそっくり燃焼用の油に変換し着火、その爆発をもう一つの火球を核に発現するというもの。
 トライアングル以上のメイジでなくてはできないものだが、火種と揮発性の高い油を一定空間にとどめることができればできなくもない。
 だがルイズの爆発はまるっきり違っていた。

 例えば『錬金』や『レビテーション』などによる爆発は、対象を中心に爆発が発生する。
 『フレイムボール』は目測が外れるとはいえ遠方で突如爆発が起こる。

 つまり自分は“爆発という現象そのもの”を発生させているのではないか?

 そう考えれば説明は付くのだ。
 錬金などは錬金現象の代わりに爆発が発生し、フレイムボールは爆発を撃ち出していると考える。
 それならば本来魔法力が霧散するだけのはずの失敗魔法が爆発することもうなずける。

 これはすなわち“自分は爆発という魔法の行使に成功していた”ということ。
 爆発そのものになるというボムボムの実を食べて以来、ルイズはフレイムボールなど発射魔法から起こる爆発を、ほぼ正確に着弾させられるようになっていた。
 己の感覚が爆発という現象そのものを認識しているということ。

 ならば自分は爆発する魔法しか使えないのか? だからボムボムの実なんて召喚しちゃったの?
 ちょっとブルーになった。

「ルイズ様~また変な実ができてますよ~」

 シエスタの声が聞こえる。
 これがこの後の少し変な事態を巻き起こすとは。


 シエスタにとって日常とは幸福のうちにあった。
 そんなことをルイズの服を洗いながら考える。
 家族のために奉公に出て早数年、今が自分の最も幸せな時期ではなかろうか?
 洗濯を終え、最近の日課にしている素振りを始める。何故か武器を持っていると体が軽い。

 『ワシのひいひいばあさんは森のお姫様だったのよ』とうそぶく野性味あふれる祖父に教え込まれた“生き残る術”
 毒草薬草の見分け方から簡単の治療の方法、罠の張り方や臨時の棲家の確保方法、果ては傷の縫い方や動物の正しい捌き方まで、祖父にありとあらゆる生存技術を叩き込まれた毎日を思い出す。
 両親や兄弟と一緒にサバイバルな訓練をしながら、祖父の顔を思い浮かべた。

 軍人だったといっていた祖父は、自分の国がどういう状況かをある程度理解していたのかもしれない。
 ルイズと一緒にゲルマニアの話を聞きながら、自分のいるトリステインの危うさを知り、いまさらながら祖父に感謝する。
 寿命で旅立った祖父母を思い浮かべ、シエスタは黙々とルイズの作った鋼の棒を振る。

 ところで服の背中に羽飾りを縫い付けるのが趣味だったかぼちゃ料理の得意な祖母の変な挨拶は何だったのだろう?
 お上に逆らって“雲流し”にされたとか言ってたけど島流しの間違いじゃないのかしら?

 ちりちりと、左手の甲が熱を放つ。うっすら浮き出る蚯蚓腫れのようなもの。

 昼休みに悪魔の木の下でランチを、そう考えて見上げると四個実った悪魔の実。

「ルイズ様~また変な実ができてますよ~」

 この発見が騒動を巻き起こし、同時に騒動を解決する。


 キュルケにとってルイズといることはライフワークの一つだった。
 常に刺激を求めているキュルケにとって、その刺激を与えてくれるルイズとの交流はあらゆることに優先した。
 ルイズに依頼して作らせた長い杖の頭に埋め込まれた蓄炎鉱石を撫でながら、キュルケはフレイムを従えてルイズの小屋へ向かう。

「フレイムのうろこ五枚でこの杖はお買い得だったわ~」

 今現在の悩みは、この好奇心を上回る魅力を持つ男がいないということのみ。
 スキップでもしそうな雰囲気で歩を進めるキュルケに、フレイムはかすかに呆れたような鼻息代わりの炎を吹く。

(主よ、もう少し慎みを持たれてはどうか?)

 人間並みの知性を持つフレイムは、ニュアンスはともかく細かい言葉が伝わらないことにため息をついた。

「ルイズ様~また変な実ができてますよ~」
「久しぶりに新種の実? これは見に行かなくちゃ!」
(ああ主よ、そういうことばかりしておられるから厄介ごとに巻き込まれるというのに……)

 伝わらないもどかしさに、フレイムは大量の黒い煙を噴出した。

 タバサにとってルイズに関わるということは己の目的の上でも必要なことであった。
 触れるだけですべての魔法を解析する『ミョスニトニルン』の能力、それは彼女の母の回復の助けになるかもしれないからだ。
 今日も今日とてタバサは、シルフィードで集めてくる珍しい薬草やキノコ、鉱物を手にルイズの元を訪れる。

「ルイズ様~また変な実ができてますよ~」

 悪魔の実、それを食べたものに一つだけ力を与える奇跡の植物。
 病人を治す可能性を求め、タバサはシルフィードの首を叩いた。

 ギーシュにとってかの食堂での決闘は彼を成長させる大きな一歩になった。
 どんなものでも使い方次第、それを教えられた一戦だった。

 決闘から戻ったとき、一番初めに感じたのは後悔の念だった。
 グラモンの男子ともあろうものが二人のレディを傷つけ、さらにその鬱憤をもう一人のレディに八つ当たりするとは!
 目の前にそのときの自分がいれば問答無用でワルキューレを叩き込んだだろう心持ちで、ギーシュは沈み込むしかなかった。
 その後すぐに二人に謝罪しシエスタにも深々と頭を下げた。その際食事に誘ってモンモランシーにフルボッコにされたのは君と僕だけの秘密だ!

 それからのギーシュはまるで人が変わったようだった。
 女癖の悪さこそ治りはしなかったが、魔法の研鑽に徹底的に没頭した。
 青銅とは何か、どういうものか、そう使うのが一番正しいのか。ワルキューレはまだまだ改良の余地があるはずだ。
 あれはどうだこれはどうだと試行錯誤を繰り返し、あるときはコルベールと、あるときはルイズたちと試行錯誤を繰り返しながら己を磨く日々。

 これでモンモランシーへのフォローを忘れないあたりがギーシュらしいというか何と言うか……
 モンモランシーの膝枕で午睡を楽しんだ後、ギーシュは自分でまとめた青銅に関するレポートを手直ししながらルイズの小屋へ向かう。
 立派な錬金炉がすえつけられており、土のメイジのギーシュとしては修練に最適だからだ。

「ルイズ様~また変な実ができてますよ~」

 メイドの声の方向に、ギーシュは歩を進めた。
 ヴェルダンデを後ろに従えて。

 新しく実ったその実は、あまりにも役に立たないものだった。
 もっとも流石にもう一度内臓バーンをする気はないルイズにとって、複数の実が手に入ることは研究材料になる、程度のものだったが。

「これは?」
「“ヒトヒトの実”よ」
「……名前から察するに“人間の能力”を得る実になるのかな?」
「その通り」
「……まったく持って使い道がないね」
「無意味」

 ため息をつきながらその実を棚に収める。

「ロギア系、ロギア系が欲しいのに……」
「おお、これはなかなかに効くね。肩こりが和らぐよ」
「そこっ! いきなり関係ないことをするな!」
「いたっ!」

 勝手に『しびれる蛇君試作五号・発展型』と書かれた機械を使い始めるギーシュに羽ペンがヒットする。
 ちなみのこの『しびれる蛇君試作五号・発展型』は、肩こりに悩むコルベールがコリを解消するためだけに改造したもので、肩や腰に貼り付けるパッドが付いている。

「痛いなまったく。まあそれはいいとしてルイズ、僕の新型をお披露目したい!」
「新型!?」
「ああ。見たまえ、これが新型のゴーレムさ」

 レイピアに手を掛けマントの裏に納めた短い、それでもしっかりグラモン家の家紋とバラの彫刻がされた青銅製のナイフを抜く。
 バラのときと同じように物理法則を無視してナイフが膨れ上がる。
 魔法が完成したとき、そこには無骨なゴーレムがあった。
 筋肉質のボディ、腰から下を覆うようにデザインされたズボン状の飾り、右手には重そうな鉈のような蛮刀、顔を覆うのは罪人の仮面。
 異様なまでの威圧感を放って、それはそこにあった。

「すごい……」
「視覚効果も考えてデザインしたんだ。名前はジークフリート、強そうだろう?」
「いつもみたいに鎧は着てないのね」
「よく考えたら全部青銅製なんだから鎧とか意味がないんだよね。見た目の怖さだけ気をつけて、後は中に詰めて頑丈さを上げたのさ」
「確かに怖いですねぇ」
「まあ他にも仕掛けはあるけどそれはそれ、ワルキューレと違って実戦向けにしたのさ」
「……この剣、ああなるほど、よくできてるわね」
「やっぱり君にはばれたか。まあいい、ミス・ロングビルはまだかな?」

 ざざっと音を立ててギーシュから引く。

「あ、あんた、あれだけ痛い目にあってまだ浮気するつもり? そりゃミス・ロングビルはお綺麗だけど……」
「今度はマダムキラーでも気取る気? いい加減になさいよ」
「最低です……」
「腐れ外道」
「何かひどくない!?」

 結局、同じ土のメイジで実力がはるか上の彼女に魔法を習うだけだと一時間かけて誠心誠意説明し、その間にキュルケに呼ばれたモンモランシーにフルボッコにされながらもギーシュはロングビルに魔法を教わっていた。

「ううむ、そういう使い方もありか。思いつかなかったなぁ」
「傭兵メイジにも知り合いがおりまして、こういう創意工夫においてはメイジは平民や実地の方には勝てませんわ」
「なるほどねぇ」
「……ところでミスタ・グラモン、ごまかせているおつもりか存じ上げませんが位置をずらしつつ胸を覗き込むのはおやめください」
「ギィィィィィイイイイイシュゥゥゥゥゥウウウウウ!」
「モ、モンモランシー、少し落ち着こう、君は笑ったほうがずっとチャーミンぐっはぁ!」


 いつもと変わりない毎日、いつもと変わりない。
 でもその次の朝、シエスタはルイズを起こしには来なかった。


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