時刻は夜。
「はぁ。どうしよう」
ルイズ・フランソワーズは気落ちしていた。
自分は使い魔の儀に失敗した。
おそらく、学園の歴史上、初である。
自分は使い魔の儀に失敗した。
おそらく、学園の歴史上、初である。
膝を抱えて三角座りをしたまま、彼女は自分が召喚した二つの物体に眼を向けた。
札が40枚詰まった円盤のような物体。
そして……
そして……
「これ、首にかけるような紐がついてる」
コルベールがこの二つを預かろうか、と提案したときにルイズはそれを断った。何故かは分からない。
だが、ルイズにとってこの二つの物体が、自分にとって必要だと感じたのだ。
彼女はおそるおそるそれを首にかけてみる。
だが、ルイズにとってこの二つの物体が、自分にとって必要だと感じたのだ。
彼女はおそるおそるそれを首にかけてみる。
「アクセサリーに……見えなくも無いわね」
鏡の前で、くるっと一回り。
意外なことにルイズはその三角錐が気に入った。
どこが良いのか…といわれると分からない。
ただ、これを身につけると落ち着く感じがする。
意外なことにルイズはその三角錐が気に入った。
どこが良いのか…といわれると分からない。
ただ、これを身につけると落ち着く感じがする。
「明日はこれをつけて授業に出ようかな…ピアスや指輪も授業中につけてて平気みたいだし」
そして、ルイズは円盤に差し込まれた札の一枚一枚を手に取った。
そこには剣を持った騎士や雄々しい獣。その他、よく分からない絵柄が印刷されている。
そこには剣を持った騎士や雄々しい獣。その他、よく分からない絵柄が印刷されている。
「……あら、いけない。もうこんな時間じゃない」
時計を見たルイズはすでに夜もふけていることに気がつき寝巻きに着替えるとベッドに潜り込む。
使い間の召喚に失敗したにもかかわらず、ルイズはなぜか気分が落ち着き、わだかまりが晴れてゆくのを感じた。
使い間の召喚に失敗したにもかかわらず、ルイズはなぜか気分が落ち着き、わだかまりが晴れてゆくのを感じた。
其の夜 ルイズは夢を見る。
遠い、こことは別の世界。
盗賊王バクラ 邪神ゾーク
古代の石版 現世のカード
名も無き王 もう一人の自分
自分と同じ、黄金の三角錐を身につけたその『王』が自分に向かって何かを叫んでいる。
「……だ……戦うんだ!!」
「うひゃぁ!」
「うひゃぁ!」
意味不明の叫びを上げて、ルイズは飛び起きた。
寝巻きが汗でぐしょぐしょになり気持ちが悪い。
寝巻きが汗でぐしょぐしょになり気持ちが悪い。
鏡を見る。慣れ親しんだ自分の顔。
寝癖で額から触覚のように生えてる髪を無意識に撫でつけながらルイズは一人つぶやいた。
寝癖で額から触覚のように生えてる髪を無意識に撫でつけながらルイズは一人つぶやいた。
「なんだったのかしら? あの夢」
自分に戦いを強要する夢。
おとぎ話に出てくるような怪物、それを倒す王と神官たち……。
おとぎ話に出てくるような怪物、それを倒す王と神官たち……。
「気のせいかしら………? それにしても……まだ、朝日が昇ったばかりじゃない……どうすんのよ。こんな時間に起きちゃって」
元来、どちらかというと寝坊すけなルイズは、朝日とともに起きる、などということはほとんどない。
だが、ルイズの眼は完璧に覚めきっていた。
とてもではないが、今から眠ることなど出来ない。
とてもではないが、今から眠ることなど出来ない。
そのときであった。
(まあ、そう文句を言うな。相棒)
「ふぇ?」
「ふぇ?」
あたりをきょろきょろと見回す。
ルイズの周りには誰もいない。
だが、自分をいさめる声が聞こえたような……?
ルイズの周りには誰もいない。
だが、自分をいさめる声が聞こえたような……?
「気のせいかしら? ………とりあえず、シャワーでも浴びましょ」
ゆっくりと時間をかけいつもより念入りに身支度をする。それでも朝食にはまだかなりの時間があった。
「たまには、朝の散歩でもしようかしらね」
ドアを開け、廊下に出る。
朝の空気は澄んでいて冷たい。
ルイズが廊下を抜け、外へ出ようとした時。
自分の方に洗濯かごが歩いてくるのが見えた。
朝の空気は澄んでいて冷たい。
ルイズが廊下を抜け、外へ出ようとした時。
自分の方に洗濯かごが歩いてくるのが見えた。
いや、洗濯かごではなく、洗濯かごを前に抱えた一人のメイドだ。
「おはようございます」
「おはよう。私の洗濯物も後でやっておいてもらえるかしら?部屋に鍵はかかってないから」
「かしこまりました。ミス・ヴァリエール」
「おはよう。私の洗濯物も後でやっておいてもらえるかしら?部屋に鍵はかかってないから」
「かしこまりました。ミス・ヴァリエール」
用は済んだ。とばかりに外へ出向こうとするルイズ。
だが、用事を頼んだそのメイドの手に火傷があるのをルイズは見つけた。
だが、用事を頼んだそのメイドの手に火傷があるのをルイズは見つけた。
「アンタ……その手、どうしたの?」
「ああ、これですか? 昨日、料理を作るときにちょっと失敗してしまって」
「ふうん。 ちょっと待ってなさい」
「え? あのミス……」
「ああ、これですか? 昨日、料理を作るときにちょっと失敗してしまって」
「ふうん。 ちょっと待ってなさい」
「え? あのミス……」
来た道を引き返し、自らの洗濯物と包帯、消毒薬を持ってルイズはシエスタの前に現れた。
「傷口見せなさい。巻いてあげるから」
「いえ、そんな……」
「けが人が遠慮しないの」
「いえ、そんな……」
「けが人が遠慮しないの」
少しぎこちない手つきでルイズは包帯を巻く。
一方のメイドも初めは恐縮していたが断るのも失礼と思ったらしい。おとなしくルイズの治療を受けた。
一方のメイドも初めは恐縮していたが断るのも失礼と思ったらしい。おとなしくルイズの治療を受けた。
「これで……よし!」
きゅっと包帯を結び、ルイズは笑みを見せる。
そのルイズにはにかみながら礼を言うメイド。
そのルイズにはにかみながら礼を言うメイド。
「ありがとうございます。ミス・ヴァリエール」
「どういたしまして。えっと……」
「シエスタと申します。あの、たいしたものは出せませんがよろしければ厨房にでも……」
「お礼はいらないわ。貴族の気まぐれよ」
「どういたしまして。えっと……」
「シエスタと申します。あの、たいしたものは出せませんがよろしければ厨房にでも……」
「お礼はいらないわ。貴族の気まぐれよ」
手を振って去ってゆこうとするルイズ。
正直、なぜシエスタの傷を治療したのか自分でも分からない。
それに、貴族の自分がこんなことをするのも少し気恥ずかしい、という思いもあった。
正直、なぜシエスタの傷を治療したのか自分でも分からない。
それに、貴族の自分がこんなことをするのも少し気恥ずかしい、という思いもあった。
「そうですか。ちょうど、親方が特製のクックベリーパイを作っているのですが……」
「う」
「う」
かっこよく決まったルイズだが、その一言が決心をぐらつかせる。
畳み掛けるようにシエスタが言った。
畳み掛けるようにシエスタが言った。
「もしよろしければ、あとで焼きたてをお持ちいたします」
「あ、じゃあお願いするわ」
「あ、じゃあお願いするわ」
(早起きは銅貨3枚の得か……あながち間違いじゃないわね)
ルイズはささやかな幸福を手に入れた。
彼女の胸で、召喚した黄金錐が輝く。
彼女の胸で、召喚した黄金錐が輝く。
この後、朝に一波乱巻き起こるとは誰も予想していなかった。