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ゼロのしもべ第3部-10

10話

 女王アンリエッタが突如王宮から姿を消した。
 警護をしていた衛兵を蹴散らし馬で駆け去ったのだ。ただちに王宮内にはかん口令がしかれ、出入りの業者から陳情に来ていた
地方貴族に至るまですべて留め置かれた。進入した形跡が皆無なことから、内部に協力者がいることは確実であったからだ。
 結果、高等法院のリッシュモン長官が逮捕された。女王が消えてからわずか5分後の、超スピード逮捕だった。
「なにこれ?待ち構えてたよね?」
 女王誘拐の報が入るとほぼ同時に突入してきた憲兵隊に組み伏せられながら、リッシュモンが叫んだ言葉である。実際憲兵隊は
ドアの外から窓の外、たんすや机の下、ベッドの脇にまで隠れていた。これは気づかなかったリッシュモンの落ち度であろう。
 その後、あっという間に腕を切り落とされたリッシュモンはピーピー泣きながら今回の事件について告白をした。だが、憲兵隊が聞き
たかったのはトリステイン内部にいるアルビオンへの協力者、内通者であったため右目まで失うはめになった。酷い。
 リッシュモンの供述に基づき、ただちに強襲したのは新設された銃士隊であった。逃げる暇など当然存在せず、スパイ網は一夜に
して壊滅した。
 それらの報告を聞きながら生きたここちがしていなかったのはマザリーニ枢機卿である。孔明の、
「女王は本日、お忍びで外出されます。これを機会に敵間諜を一網打尽にしようではないですか。」
という進言を聞き入れた結果がこの逮捕劇である。最終的には貴族28名を含む107名が獄に繋がれるという語り継がれる事件となっ
た。
 最初はアンリエッタの外出とは何事だろうと思っていた。やがて誘拐騒ぎが起きた。孔明の手による狂言だと思っていたが、入って
くる情報はアンリエッタ女王は本当に誘拐されたらしい、ということばかり。
 なぜ孔明はこの事件が起こることを知っていたのだ。女王様を囮に使うとはなにごとか、と憤ると同時にそれ以上に恐怖を感じてい
た。なぜならば、知っていたということは防ごうと思えば防げたわけである。ところがそれを行わぬばかりか、あえて囮に使った。これ
はすなわち、孔明にとってアンリエッタ王女はその程度の価値しかない人間である、ということを意味する。
 ひょっとすると孔明は神聖アルビオン以外の国の回し者では?それならば神聖アルビオンのスパイ網をバラバラにした理由もわか
る。現実に孔明はアンリエッタ王女誘拐犯の追撃を出すこと、一切まかり通らぬときつく厳命している。疑わぬ理由はない。
 だがその孔明は今宮殿にはいない。今日は出仕する日ではないからだ。
 念のためリッシュモンに孔明との関係を詰問する。首を振って何もないと泣くリッシュモン。見るも哀れな姿に、正視に堪えずすぐに
牢獄から逃げ出すようにマザリーニは立ち去る。
 よく考えれば孔明ほどの人材をわざわざ他国にやる国はない気がする。これほどの人物、自国で使ったほうがよいに決まっている。
 考えれば考えるほど、孔明の正体がわからなくなるマザリーニであった。

「ようこそお越しくださいました。」
 誘拐されたアンリエッタを乗せた馬が走ること2時間あまり。たどり着いた先で彼女を出迎えたのは、年のころ30代半ばの聖職者の
格好をした男であった。快活な、澄んだ声をした男だ。
「…っ!あ、あなたは!?」
 そう、出迎えたのは紛れも泣く神聖アルビオン国皇帝、オリヴァー・クロムウェルその人であった。周囲には警護らしい大男と、数名
の護衛兵がいる。
「ウェールズさま、これは……いったい……」
 自分を抱きかかえた誘拐犯へ、何が起こっているのか信じられないといった視線を向けるアンリエッタ。そう、アンリエッタを誘拐した
犯人は、紛れもなくアルビオン国皇太子ウェールズ王子であった。
「昨晩言ったじゃないか。国内にいるぼくの協力者だよ。」
 にこにことアンリエッタに蕩けるような笑顔を向けるウェールズ。ついその笑顔に見とれてしまうアンリエッタ。
「ぼくはあの戦いで気づいたんだ。彼らレコン・キスタの思想こそ、われわれにふさわしいものだって。だからぼくと彼は友人になったん
だ。」
「でも……、でも、こんな……」
 横からクロムウェルが口を挟む
「驚き驚愕致し方ない汝姫君。私と彼は、あの戦いであらゆる垣根を超越千万、友人となったのです。皇太子は、私にハルケギニア
統一の手助けをしてくれると約束してくれました。」
 クロムウェルの言葉を受けてウェールズが頷く。
「その通りなんだ。だから、ぜひアンリエッタにも協力して欲しいんだ。」
「わたし、わからないわ。何がなんだか…。なにをしようとしているのか。」
 どこまでも優しい言葉でウェールズは告げた。
「わからなくていいよ。ただ、きみはあの誓いの言葉通り、行動すればいいんだ。覚えているだろう?水の精霊の前で、きみが口にし
た誓約の言葉を。」
「我はそのような誓約など知らぬぞ。」
 突然2人の間に割り込む冷たい声。何事か、と全員がそちらの方向へと振り向いた。
 声のした方向の木々がなぎ倒され、巨大な鉄のゴーレムが姿を現した。
 身の丈数十メイル。丸太のような太い腕、ドラム缶のような胴体。そして空に浮かぶ三日月のような頭部。
 そう、3つのしもべのひとつ、ポセイドンだ。
 右手に巨大なビンを持っている。声はそこからしたらしい。
「我はそのようなまがい物との誓約など聞き覚えはないぞ。なあ、命の鐘よ。」
 巨大なビンの中に人影が現れた。輝く宝石のような姿。すなわち水の精霊だ。ついてきたのかよ。
「否!?否否否否否否否ぁっ!?」
 命の鐘と呼ばれ、クロムウェルが激しく動揺する。目がぐるぐると動き回り、赤みを帯びている。
「あれが、命の鐘とやらを使いすぎた後遺症か。」
 ポセイドンの肩の上にバビル2世が現れた。風を受けて学生服と髪がたなびく。
「左様じゃ。あれはあらゆる生命を操る代わりに、使用者の魂を食らっていく魔性の鐘。やがてあの単なるものは心と身体を鐘に食い
尽くされ、その一部になる。命の鐘を扱えるは、同じく命の概念を持たぬ精霊か、あるいは命の鐘自身のみ。」
「曰く水精霊如何に参上!?貴様が如きは明鏡止水東方烈火!?思えば不戦は墨子が大儀!」
 すでに言語になっていない雄叫びを上げるクロムウェル。その顔はすでにクロムウェル自身のものから、別人へと変貌しつつある。
「もはやあの単なるものは限界。あとは命の鐘に食われるのを待つのみ。だが、あちらの単なるものの蘇生体は、命の鐘ある限り
存在し続ける。単なるものが食らい尽くされようとも、意思をもって動き続けるだろう。」
「つまり、あの偽者は、クロムウェルが死のうと消えぬということですか?」
 バビル2世の背後から、キセルを咥えた覆面男、白昼の残月が現れた。
 水の精霊が肯定の意を示す。
「どのようにすれば、消える?」
「単純だ、乳房を好む単なるものよ。ふたたび命を奪えばよい。」
「なにかいま余計な修飾語がついていたような気がしますが、了承しました!」
 残月が針を雨霰と放った。何百本もの針が、ウェールズを貫く。だが、ウェールズは倒れない。それどころか傷痕があっという間に
塞がっていくではないか。
「なにっ!?」
「無駄だよ。きみたちの攻撃では、ぼくを傷つけることはできない。」
 その攻撃を見て、アンリエッタの表情が変わった。
「見たでしょう!それは王子ではないわ!別の何かなのよ、姫様さま」
 ルイズたちがバビル2世とは逆の肩の上に現れた。
「お願いよ、ルイズ。杖を収めてちょうだい。わたしたちを行かせてちょうだい。」
「姫様!?」
 アンリエッタはにっこりと笑った。
「そんなことは知ってるわ。でも、それでもかまわない。わたしにとってウェールズさまは最愛の人。全てなの。たとえ人でなくなろう
とも、そんなことは関係ないわ。愛しているのよ!だから行かせてルイズ。」
 ぐはぁ、と残月が大きく仰け反った。
「ぅう……まるで胸を剣で突き刺されたような痛み。おそるべき魔法!」
「魔法じゃないだろう。」
 バビル2世が呆れたような声で言う。どう考えても引け目や懺悔の気持ちです。少しは悔い改めなさい。
「しかし、アンリエッタも胸が大きくなりましたな。うーむ……早まったでしょうか。」
 ブツブツと査定をおこなう残月に、もはや突っ込む気力すらないバビル2世。
「ところで、アンリエッタが愛しているのがあちらのウェールズならば、ここでそれを眺めている私は、一体全体何者なのでしょうか?」
「乳房好きの単なるものよ。誰が粗忽長屋をしろと言ったのだ。」
 さすがに水の精霊があきれ果てて言う。
「あの蘇生した単なるものは、命の鐘を扱っている単なるものが食われるか、死ぬまでは存在するはずだ。」
 水の精霊の言葉を受けて、バビル2世はクロムウェルと偽ウェールズを交互に見やる。
「なるほど。では優先すべきは命の鐘、ということだな。残月、本物の皇太子なら、偽者から姫を救い出してやっちゃあどうだい?」
「心得ました!たしかにあの乳は魅力!私に奪還はお任せください!」
 バビル2世と残月がポセイドンから飛び降りた。そのとき――
「うわあ!」
 突如襲い掛かってきた赤い突風をまともに食らって、バビル2世がポセイドンに叩きつけられた。ポセイドンも身体をよろめかせる。
「何者だ!?」
 突風のやってきた方向を見る残月。その目に飛び込んできたのは…
「ふん。アンリエッタを見張っていた甲斐があったというものだ。」
 ハートマークの髪形をした、モノクルの男だ。
「アンリエッタが何者かに連れられて出て行くので、もしやと思い後をつけたかいがあったな。」
 恰幅のいい老人が後ろから続いて現れる。
 バビル2世がくるくると回転しながら地面に降りたった。
「むう。あやつらは…」
 残月がうなり声をあげる。
「知っているのか、残月。」
 バビル2世の言葉に残月が頷いた。
「タルブの村の戦いにいた、アルビオン側の傭兵です。お気をつけください。あのモノクルの男、奇妙な魔法を使いますぞ!」
「ではアルビオンの味方か?」
 バビル2世の問いに、モノクルの男が首を横に振って答えた。
「否。断じて、否。我々はバビル2世、貴様に用があって来たのだ。」
「左様。我々の中に生じたエラーの原因を知るためにな。」
「バビル2世だと?」
 むっと、バビル2世が二人を睨みつける。
「ではヨミの部下か?」
 モノクル男が咥えていたなにかを地面にはき捨てた。
「それも違うな。」
「我らは地球監視者」
「「危険な人類を宇宙から抹消するために送り込まれたものだ!」」
 1人は大地を蹴り、1人は大きく飛び上がり、バビル2世に襲い掛かった。

「ビッグ・ファイアさま!」
 残月が叫び声をあげ、救援に向かおうとした。
「待て、残月!」
 同時に襲い掛かってきた地球監視者の攻撃を何とか避けて叫ぶバビル2世。
「いまはクロムウェル優先だ!ぼくがこの2人を抑えている間に、はやくクロムウェルを倒すんだ。」
 急ブレーキをかける残月。バビル2世とクロムウェルを何度か交互に見返し、覚悟を決めてクロムウェルに襲い掛かった。
「クロムウェルはすぐに始末します!それまで持ちこたえてください、ビッグ・ファイア様!」
 だが、水の壁が行く手を阻む。慌てて水を駆け上がり着地する残月。
「あの男が死ねば、ウェールズ様も死ぬというのならば……指一本触れさせません。」
 杖を握ったアンリエッタが、震えながら立ちすくんでいた。
 自業自得、という言葉が残月の脳裏をよぎった。

「ぐわあ!」
 モノクルの男、No.3と呼ばれている男の腕から放たれた赤い旋風・衝撃波をまともに食らって地面に転がるバビル2世。
 転がった先の地面が地割れを起こし、バビル2世を飲み込もうとする。
 腕の力で跳ね起き、それをかわすバビル2世。だがかわした先に即座に衝撃波が飛んでくる。
「なんて威力だ。吸収しきれない。」
 衝撃波を2つ3つまともに食らいながら、なんとか木の上に飛び乗ったバビル2世が呟く。その言葉を聞いてNo.3が不敵に笑う。
「どうした。それでも最強の超能力者か。」
「わしの念動力と、No.3の衝撃波能力。ともに貴様をはるかに凌駕しておる。」
 No.1が腕組みをして、バビル2世の横の木に飛び乗る。
「「そして2対1。今の貴様に勝ち目はないぞ!」」
 高らかにハモる二人の地球監視者。そしてNo.3が両腕を突き出した。
「最大パワーの衝撃波で、この世界から完全に消えうせろ、エラー原因よ!」
「――だが、それは少し卑怯じゃないかね?」
 No.3の耳元で何者かが囁く。穏やかで、優しい声だ。
「なにやつ!?」
 振り返らんとするNo.3の腕をマントが包みこむ。狙いを外された衝撃波が、空の彼方へと消え去った。
「この幻惑のセルバンテス、ビッグ・ファイア様に助太刀しようではないか。」
 セルバンテスは、マントを引き裂き飛び退いたNo.3へと、優雅に会釈をして言った。

「変態仮面さん。そっちをひきつけておいてね」
 タバサとキュルケが呪文を詠唱しながらアルビオン側の裏手から飛び出した。
 アンリエッタが残月に気をとられた間隙をついたのだ。目的はもちろんクロムウェルだ。
「あれを倒せばいいんだから、楽なものよね」
 そんなキュルケを横目に、残月は
「あの乳も捨てがたい。が、やはり清純に反比例する魅力の固まり、というものがベストだな!」
 などというあほなことを一瞬考えた。
「ワルキューレ!」
 ギーシュがワルキューレを召喚した。ワルドを葬った灼熱のワルキューレだ。
 たとえ水の壁がきても、これを盾に強行突破する腹積もりだ。上手く行けばクロムウェルに飛び掛ることもできるだろう。
「しまった!」
 ウェールズが叫び、杖を振り上げた。だがもう間に合わない。この距離では飛び掛るほうが先だ。
 そう、誰も判断したとき、クロムウェルに異変が起きた。
 目が完全に真っ赤になり、全身が膨れ上がった。そして鐘を取り出し、意味不明の呪文を唱える。
 その途端、ワルキューレが光の粒子となってボロボロと崩れ落ちていくではないか。あっというまに全てのワルキューレは、虚空へ
と消えてしまう。
「命の鐘を英雄本職!玩具で遊ぶは笑止千万! 我に楯突く向かうが者共!所業を背負えば現世に還る!聞けぃ!盛者必衰!!
命の鐘の響きあり!!」
 巨人が、現れたのだった。

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