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ルイズと無重力巫女さん-91





―――…………………、………………?
――――…………、…………

(……ん…んぅ?)
 どこかで誰かが、誰かと何かを喋っている。
 瞼を閉じて眠りについてしまい、それから数時間が経った頃に自分はそれに気が付いた。
 どこでどう睡魔に負けてしまったのか定かではないが、何となくそう理解できているのは…つまりそういう事なのだろう。
 今のところ自力では開けられない程に重くなった瞼を開ける事は叶わず、唯一自由な耳でのみその会話を聞いている。
 いや、正確には耳で聞いているわけではない。―――耳の『内側』…つまり頭の中からその声は聞こえてくる。

――――……、…………
―――――…………、……………

 まるで遠くで―――…大体十一、二メイル程度の距離にいる誰かが然程大きくない声で話しているのだろうか。
 少なくとも自分の知っている言語で会話しているのだろうが、何を話しているのかまではうまく聞き取る事が出来ない。
 それをもどかしく思いつつも、ふと自分の頭の中から聞こえてくるというのに何故ここまで自分は冷静でいられるのだろうか?
 そんな疑問を覚えたものの…深く考えるよりも先に、一つの結論がポンと飛び出てくる。
(夢…なのかしらね?)
 安直すぎるかもしれないが、夢であるというのならば大体の事は説明がついてしまうのだ。
 現実では起こり得ない様な事がいとも簡単に起き、見る者を不思議な世界へと誘う。
 だとすれば、この聞こえてくる会話も全て夢の中の出来事…そう解釈すれば何てことも無くなってしまうのだから。

(夢なら…まぁ、このままでもいいかしら?)
 閉じられた瞼の内側…暗闇に包まれた視界の中で自分は落ち着いた態度で夢が覚めるのを待つことにした。
 少し遠くから聞こえていた会話はそれから一言二言と交えているが、相変わらず何を言っているのかまでは聞き取れない。
 しかし…聞こえ始めてから一分ほど経ったくらいであろうか、声の主たちが段々と近づいてくるのに気が付いた。
 それは六、五言目になるであろうか、その時の会話が聞き取れるようになってきたのである。

――――……それ……か?……怪……お………か?
―――――それ………法……わ、……子は…里……………る

(二人とも、女性…?)
 言葉が聞き取れるようになってから、話している二人が女性である事に気が付く。
 一人はやけに真剣な様子で、もう一人は何か胡散臭いながらも艶やか雰囲気が声色から感じ取れる。
 まだ言葉の一部だけしか聞き取れない状態だが、声色からして楽しげな話をしているワケではないらしい。
 少しもどかしいと思いかけた所で、次の会話ではようやく言葉の半分程度が分かるようになってきた。

――――しかし……後はどう……?………に育てられた……女なんて……、里の者が……………
―――――そ……見つけた内の一人………にも、勿論………力……て……貰うわよ

 声の主たちが近づき、聞き取れる言葉が増えていく。……それに気づいた直後である。
 ふと心の奥底…とでもいうべきなのだろうか、今は眠っているであろう体の中から一種の不安がこみ上げてきたのだ。
 まるで底の見えない湖の上に浮かんでいる最中にふと視線を下へ向けて、湖底からせり上がってくる黒く大きな影を見てしまったかのような…。
 そんな、自分の足元から逃げようのない恐怖に遭遇してしまった時のような急激な不安感が心の中で広がっていく。
 どうして急にそういう気持ちになってしまったのか一瞬だけ分からずにいた自分は、ふと一つの結論に至る。

(まさか…あの声が、原因なんじゃ…)
 この不安感を覚えて以降、全く聞こえてこないあの二人の女性の話し声。
 瞼を閉じて夢の中にいるのだが、現実的に考えればそれしか原因は考えられない…かもしれない。
 他に原因と思えるような要因は見当たらない以上、自ずとそういう考えに至ってしまうのは仕方ない事であろう。
 最も…ここが夢の中であるのならば、明確な原因など最初から存在しないという可能性も否定できないが。
 本当の原因を突きとめられない今、こみ上げる不安感にどうしようかと悩もうとしたその時、またしても話し声が聞こえてきた。

―――相変わらず………ってくれる。私がそれを……れない事を知って……癖に
――――ふふ、貴女の―――好しは今後の………において、最も重要な……

 今度はかなり近づいてきている。言葉と言葉の合間の息継ぎが、微かに聞こえてくる程に。
 声が近づいてきていると理解したと同時に、自分の心の中で芽生えた不安感がより一層膨らんでいく。
 身動き一つ出来ない今、その不安感にどうしようも出来ないという状況に自分は焦ってしまう。
 せめて手だけでも動くのならば、自分の頬を抓って夢から覚めようと頑張れるのに。
 そんな下らない事からできない今では、正体不明の不安感がただただこちらへやってくるのを見守る事しかできない。
(もしも…彼女たちの喋っている事が全部聞き取れるようになったら…一体どうなるのかしら?)

 もはや受け身を摂る事すらできず、受け入れるしかないという状況の中でそう思った時だ。
 今度はウンと近く、それこそ自分の真横にいるかのように彼女たちの声が聞こえてきたのである。
 頭の中で直接聞こえてくる二人の内、最初に口を開いたのは真剣そうに放している方であった。

―――…たくっ、これから寺小屋も忙しい時期だというのに…次から次に厄介な事件を持ってくるなお前は?

 ハッキリと聞こえる様になった今、いかにも苦労人と分かるばかりの声で女性は喋っている。
 そしてもう一人―――艶やかな雰囲気を漂わせる声の女性が言葉を返す。 

――――…良いじゃないの。跡継ぎがいる以上、探すという時間の掛かる工程を省けたのだから

 何故かこの声を聞いた時、ふと自分の脳裏に『誰か』―――女性の後姿が一瞬だけ過った。
 腰まで伸ばした金色の髪と一度見たら忘れない形をした奇妙な帽子に、これまた珍妙な形をした白色の日傘。
 その後ろ姿を見ただけでその『誰か』の正体が、あの胡散臭そうな声の主なのだと無意識に理解してしまう。
 どうして分かったのか自分でもイマイチよく分からず、一瞬だけだというの脳裏にあの後姿がこびりついてしまっている。
 彼女は自分の何なのだろうか?どうして夢の中に現れ、良く分からぬ誰かと会話しているのだろうか?

 その答えを知る前に――――自分の意識は網で掬い上げられた金魚のように現実世界へと引っ張られた。
 右の頬を冷やかに刺激する、冷たい『何か』を押し付けられたおかげで。




「―――――……ン、んぅ…?」
 まず目に入ってきたのは、小さくも中々の意匠が施されたシャンデリアであった。
 魔法で作動するよう作られているそれは、今は付ける必要なしとして消灯されている。
 未だ重い寝惚け眼を手で擦りながら自分こと彼女―――ハクレイはゆっくりと上半身を上げた。
 そこでふと、自身の背中を預けていたのが何なのかと気になった彼女は、スッと足元へと目をやる。 
 室内の灯りは消えていたが、窓越しの街灯のおかげで今まで自分がソファーの上で寝ていた事に気付く事ができた。
「…ふぅーん、ソファーねぇ?……はて、どうして?」
 まだ寝ぼけているのか右手でポフポフとソファーを軽く叩いていた彼女は怪訝な表情を浮かべ、寝る前の記憶を思い出してみる。
 未だ覚醒しきっていない頭の中で何とかして記憶を繋げようとして二分、ようやく寝る前にしていた出来事を思い返す事が出来た。

「確か、今日も財布を盗んだあの娘を捜して…それで夜遅くなったんだっけ…か。
 昼から探し回って、夕方頃に変な気配を感じたから見に行ってて、それから後も探し回って……って、」

 …そりゃー帰りが夜遅くになるのも仕方ないわよね。
 中々起きる事の出来ない自分に言い聞かせるように一人呟くと、再びその背中を程よく柔らかいソファーに委ねた。
 ボフン!と大きな音が出たものの、中に入ったバネの軋む音が聞こえないのは、中々に良い店から仕入れた事の証拠であろう。
 流石カトレア達貴族が街中の別荘地と呼ぶだけあって、家だけではなく家具にも気を使っているらしい。
 自分の体ではほんの少し狭いソファーで横になったまま、ハクレイは街灯の灯りが漏れる窓の外へと目を向ける。

 窓の外から見える先には、大きな歩道を挟んで程々に大きな家が建っている。
 こちらと同じく室内の灯りは全て消えていたが、街灯に照らされた庭だけを見てもすぐに立派だと分かった。
 恐らくあの家の主…もしくはここ一帯の管理人を務めている老貴族の趣味であろうか、動物のトピアリーがある。
 本物より大分大き目に作られた犬と猫の横には、場違い感が半端ないドラゴンのトピアリーが今にも羽ばたこうとしているポーズで飾られていた。
 他にもその家で夏季休暇を過ごす子供たちに作ったであろうブランコなどがあり、今が昼間ならばさぞ賑やかな光景が見れたに違いない。
「しかし…まさか大都市の中にこんな場所があったなんてねぇ…」
 ハクレイは一人呟いて、トリスタニアにある貴族向けの宿泊施設゙群゙『風竜の巣穴』の感想をポツリと漏らした。



 …『風竜の巣穴』。
 王都の西側、王宮を一望できる小高い丘の下にある幾つかの別荘を有するリゾート地だ。
 一見すれば上流貴族向けの住宅地に見えるが、実際にはそこら辺の住宅地よりも泥棒に襲われる心配はないだろう。
 何せ土地一帯を囲う強固な鉄柵と、数か所ある出入り口にはメイジの警備員達が二十四時間体制で守ってくれているのだから。
 土地の中にある住宅は全て貸し出し用の別荘であり、当然ながら値段も相当張るが、その値段分の豪勢さは当然持っている。
 朝昼夕の三食及びデザートも事前に申していれば手配され、何なら自前の食料を持ち込む事も一部可能らしい。
 他にも所有地内にはちょっとした池つきの森林公園もあり、釣りや水泳に屋外での食事会もできるのだという。

 前述の通り結構な値段が掛かるものの、王宮勤めの貴族たちには街中の避暑地として人気らしい。
 何せ王都の中にあるうえ、有事の際にはすぐに宮廷へはせ参じれる事が大きな理由なのだとか。
 折角のお休みだというのに一々仕事の事を気にしてしまうなど、王宮勤めの貴族とやらは随分忙しいようだ。
 本来ならこの時期の予約はとっくに埋まってしまっており、カトレア達が入れる別荘などとっくに無い…のであったが、
 幸い休暇として別荘を予約していた国軍の高官がキャンセルしてくれた為、偶然にもそこへ自分たちが入る事ができたのだ。
 最も、カトレア本人がここの支配人である老貴族と親しい仲であった事が大きくプラスしたのは間違いないだろう。
 何でも以前、ヴァリエール領へ赴いた際に道中で痛めた腰を癒してくれた事への礼だと言っていたのは覚えている。

 今更ではあるが、カトレア本人の献身さは一体あの体のどこに隠れているのだろうか。
 あれ程体が弱いというのに、自分やニナの様な謝礼も期待できない様な人間を助けてくれるなんて…。
 まぁその献身さが無ければ、今の自分がどうなっていたかなど…想像もつきはしないのだが。
 そこまで思った所でハクレイはふと真顔になった後、つい先日犯してしまった『失態』を思い出して呟いた。
「本人は気にしないでって言ったけど…、やっぱりちゃんと見つけてお金を取り戻さないと駄目よね」

 以前カトレアからお小遣いとして貰った八十エキューを、街中で出会った少女に奪われて早二日…いや日付ではもう三日前だろうか。
 もう少しで捕まえかけたところで前方から飛んできた『誰か』とぶつかった後、そのまま意識を失い川へと落ちてしまった事は辛うじて覚えていた。
 幸い仰向けの状態であった為溺れる事無く暫し川の水に流され、川沿いで飲んでいた浮浪者達に助けて貰ったのである。

――――おぉアンタ、大丈夫かい?
―――――え…えぇ大丈夫よ。後、有難う…ございます
――――オレら、この川で色んなモンが流れてくるのを見てきたが、アンタみたいな別嬪が流れてくるのは初めて見たよ

 すぐさま彼らの助けを借りて岸に上げてもらい、暫し焚火で暖をとった後で彼女は夜になっている事に気が付いた。
 その時にはもう陽は暮れてしまい、ひとまずどうしようかと迷った挙句に…ひとまずはカトレアの元へ帰る事を選んだ。
 水に濡れた状態で帰ってきた彼女を見て皆は驚き、一様に何があったのかと聞いてきた。

―――…というワケで、貴女がくれたお金は全部盗られちゃったの…ごめんなさい
―――――まぁ…!そんな事があったのね…  

 とりあえず持ってきてくれたタオルを頭から被った姿で、ハクレイはただただ頭を下げるしかなかった。
 彼女から詳しく話を聞き、相手が幼い少女で…しかもメイジだったという話にカトレアは目を丸くしていた。
 王都だからといって治安の保証がされているワケではないし、そこら辺の地方都市よりも窃盗が多いのは誰もが知っている事だ。
 しかしまさか…彼女、ハクレイよりも年が一桁どころか二桁離れているかもしれない少女がそんな事に手を染めているとは…。
 これまで生きてきて、色んな人たちから聞いたどの話よりも衝撃的な事実であったらしい。

―――――むー!なっさけないのー!わざわざ追っかけてたのに、そんな子に逃げられるなんてー!
――――…言い訳はしない…っていうか、思いつかないわ
――――――こら、ニナ!落ち込んでる人にそんな事を言ったらいけないわよ

 カトレアの傍で話を聞いていたニナにもダメ出しされてしまい、余計へこんでしまったのは言うまでもない。
 ひとまずその日の夜はそこでお開きとなったが、盗難届を出すかどうかについては言葉を濁されてしまった。
 周りのお手伝いさんたちからは衛士の詰所に届出を出した方が良いと言っていたが、カトレアは難しい表情を浮かべるだけであった。
 翌日から、ハクレイは自主的に街へ繰り出しては方々歩き回って少女の行方を追い続けている。
 しかしあまりにも広い王都が相手ではあまりにも人ひとりの力は小さく、そして無力であった。

 一つの通りを曲がれば更に複数の道が現れ、うっかり進む道を間違えれば下水道へと続く下り道に入ってしまう。
 今日なんて曲がった先にいた野良犬たちにイチャモンをつけられ、追い回された事もあった。
 誰かに聞こうとしても誰に聞けばいいか分からず、結局声を掛けられぬまま街中をうろうろ彷徨うばかり…。 
 まるでゴールの無い迷路を彷徨い歩いているかのような虚無感を感じ始めた時に、今日の夕方にそれは起こった。
 今日もまた何の成果も得られなかったハクレイが、とぼとぼと返ろうとした最中の事であった。
 ふと何処か…王都の一角から感じた事の無い『力の爆発』を察知したのである。

 今まで見てきた魔法とは明らかに毛色が違う、何処か活き活きとして…危なっかしさを感じられる不可視の力。
 それが一塊となって爆発したかのような…そんな他人に説明するのが難しい気配を感じたのである。
 お金を盗んだ少女とは関係ないだろうと思いつつ、何故かハクレイは導かれるようにして気配が出た場所へと走った。
 夜の繁華街へと向かう人波をかき分け、人気のない路地裏に入ってからは一気に建物と建物の間を『蹴って』進む。
 そうして幾つかショートカットして辿り着いた場所は、数人の衛士が屯している寂れた広場であった。
 必要は無かったかもしれないが、彼らに気づかれぬよう共同住宅の上から彼らの話を盗み聞きした。

 ―――…何か奇妙な発光が起こった…ていうから来てみたが、驚くぐらい何にもないな
 ――――…いや、待て。あそこのグレーチングが外れてる…誰かが下水道へ逃げ込んだのか?
 ―――馬鹿言え!そんな狭い穴じゃあ子供でも途中でつっかえてママー!って泣き叫ぶほかないぜ

 支給品であろう槍を手に持ち、お揃いの薄い鎧を着込んだ衛士達はそんな話を大声でしながら広場に屯していた。
 どうやら話を聞くに街の人の通報で来たようだが、何が起こったのか…までは分からかった。
 結局その後は戻るついでに色々と探し回ってしまい、結果的に夜遅くに帰る羽目になってしまったのである。
 出り口を警備している守衛のメイジ達は、他の人々と明らかに違う彼女の姿で誰なのか分かったのだろう。
 今借りている別荘の番号とマジック・アイテムを使った指紋チェックを済ませて、こうして無事に戻る事ができた。

 そこまで自分の脳内で回想した所で、ハクレイは妙に寂しい自分のお腹を押さえながらため息をついた。
「それにしても、やっぱり早めに切り上げとけば良かったかしら?…そしたら夕飯も食べれただろうし…」
 名残惜しそうに呟きながら、空腹で寂しくなってきたお腹を押さえながら情けない表情を浮かべてしまう。
 無事に戻ってきた…とはいえ、帰ってきた時には既にカトレアの借り別荘は灯りが消えてしまっていた。
 幸い鍵はあらかじめ隠し場所を教えられていた合鍵で開けたが、当然既に夕食の時間は過ぎてしまっている。
 若いというのに就寝時間が早いカトレアに合わせているためか、暖かい食事はとっくの前に片付けられていた。

 リビングのテーブルに置かれたバスケットに一個だけ林檎が入っていたのは、不幸中の幸い…というやつだろうか。
 仕方なしにそれを食べた後でひとまずソファで横になったのだが、そのまま寝入ってしまったのは周知のとおり。
 しかも変な夢を見て途中で起きてしまったせいで、再び空腹が襲い掛かってきたようだ。
「はてさて…どうしたものかしら?わざわざ私の為だけに、カトレア達を起こす…ってのは、もってのほかだし」
 窓の外から暗いリビングへと視線を変えたハクレイは、この空腹をどうしようかとという悩みに直面してしまう。
 当然だがカトレアや彼女の付き人を達をわざわざ起こす…という事は、絶対にしてはいけない事だろう。
 遅れて帰ってきたのは自分なのであるし、それこそ腹が減ったという理由だけで起こすのは我儘に他ならない。

 お金の件で相当迷惑を掛けてしまっているのだ、これ以上無礼な真似を働くワケにはいかない。
 ならば台所を探し回って食べれる物を探そうか…と考えたが、暫し考えた後に首を横に振る。
 ここに来てまだ日が浅いし、何より台所のどの棚に食料が入っているのか何て彼女は全然知らないのだ。
 灯りがあれば話は別になるだろうが、ご丁寧にも用意されている燭台は結構な特別性であった。
 平民にも使えるらしいのだが、一々作動する際に指を鳴らす必要があり消す時も同様の事をしなければならない。
 そして恥ずかしい事に…ハクレイはそれができなかった。何回やっても何回やっても、指パッチンは決まらなかった。
 昨日の夜にニナと試しに鳴らして点けてみようという事になり、そこで見事に恥をかいたのは今でも忘れられない。

 ニナは十回鳴らして四回ほど成功し、ハクレイは三十回やって…三十回失敗した。当然ニナには笑われた。
 …なので、目の前にあるテーブルの上に置かれた燭台には苦い思い出しかないのである。
 灯りが無いと暗い台所は何も見えない手さぐりになるであろうし、そうなれば何が起こるか分からない。
 それで下手やって食器を割ったり、それ以上の大変な事をしでかしてしまえば本末転倒である。
 ならばどうしようかともう一度考えあぐねた後、彼女は朝まで我慢すればいいのでは…という結論に至った。

「朝になったら全員起きるだろうし、そしたらカトレアに頭下げて謝らないとね…」
 きっと自分が返ってくるのを待っていたであろう彼女の顔を思い浮かべて、ハクレイは天井へと視線を向き直す。
 玄関に置かれた柱時計から聞こえる振り子が規則正しく音を奏で、暗い部屋にリズムを漂わせている。
 横になったまま動かず、その音をじっと聞き続けていると自然に瞼が重くなってくるのが何となく感じられる。
(これくらい柔らかいソファならベッドの代わりにもなるだろうし…今日はここで寝ちゃおうかしら?)
 膝を置く所も柔らかいため、そこを枕代わりにしているハクレイはそのまま朝まで寝ようかと考えてしまう。
 本当ならばカトレアが宛がってくれた寝室に戻って寝るのがい良いのだろうが、ニナも同じ部屋を宛がわれている。


 だからこのまま部屋へ戻って、朝になったらなったで色々とちょっかいを掛けられる恐れがあった。
 彼女が一足先に起きてしまえば、良くて頬を抓られるか酷くて顔に水を掛けられて起こされてしまう。
 カトアレの前ではあんなに子供らしいのに、自分の前に立てば文字通りの小悪魔と化すのは何故なのだろうか?
 特に一昨日の件もあるのだろうか、今日の朝なんてまだ寝ている自分の顔のうえに布を被せてようとしたのだ。
 幸いその直前に目を覚ます事ができ、ニナはカトレアの怒っているのかいないのか良く分からないお叱りを受けるハメになった。
 そして今は…記憶喪失の最中にある彼女にとって親代わりに等しいカトレアとの夕食をすっぽかした自分へ怒りを募らせている事だろう。

 カトレアは何があっても基本的に笑顔であり、持病が一時的に悪化でもしない限りそれを崩す事は滅多に無い。
 だから自分が夕食時に返ってこなかったのに対しては、仕方ないと苦笑いを浮かべた事は容易に想像できる。 
 けれど、そうした繕った表情の下にある感情を悟れぬ程ニナは鈍い子供ではない。むしろ子供はそういうものに敏感なはずだ。
 今夜も三人で食べる夕食を楽しみにしていたカトレアの気持ちを事実上踏みにじった自分をニナは怒っているに違いない。
 無論カトレアからお叱りがあるのならば最後まで耳に入れるし、ニナが自分の足を蹴ってきてもそれを受けるつもりだ。
 だがしかし、寝込みの最中に襲われるという事だけは洒落にならないのである。

 かくして寝室にも戻れず、腹をも満たせぬハクレイは一人リビングのソファーで夜を過ごすことにした。
 彼女は金を盗んだ少女も見つけられず、夕食まで無下にしてしまった罪悪感で今にも押しつぶされそうである。
「あーぁ…何か、ここへ来てから碌な事が続かないわね…金は盗まれるわ、変な夢は見るわで…――――って、夢…?」
 自分の身に続く不幸を呪いつつ目をつぶろうとしたとき――ふと彼女は何か思い出したかのようにハッとした表情を浮かべた。
 彼女は知らないが、ふと眠ってしまった際に見た奇妙な夢―――二人組の女性の会話を聞くだけどというあの夢。
 あれを見て目を覚ましてから既に五分が経過し、再び寝ようとしたところでハクレイはその夢の事を思い出したのである。

 体が動かぬ、目を開けられないという状況の中で、頭の中から聞こえてきたあの会話…。
 一体あれは何なのだったのかとそう訝しんだハクレイの頭から、睡魔という誘惑が一瞬で消し飛んでいく。
(そういえば…あの夢は何だったのかしら?…会話は会話なんでしょうけど…)
 上半身を越こし、考え込み始めた彼女はあの夢の中で聞いた声の事を思い出そうとする。
 最初に思い出したのは…もう一人の女性と比べて明らかに厳格な声色が特徴であった女性の声。
 いかにも人格者…という雰囲気を聞き取れる彼女の声と言葉の一部を、脳内で再生し直そうとししてみる。

―――――…次から次に厄介な事件を持ってくるな、お前は?

 夢の中で聞いたのにも関わらず、内容自体はしっかりと覚えていた。
 それから脳内で何回かリピートさせた後、ハクレイはその声に聞き覚えがあったかどうか思い出そうとする。
 しかし…ニナと同じく記憶喪失の身である彼女の穴だらけの記憶では、思い出すことは出来なかった。
 精々思い出せるのはカトレアと初めて出会った所からであり、自分の生まれ故郷すら分からないのである。 
 だから夢の中で喋っていた女性の声など、最初から分かるワケが無かったのだ。
「んぅ~…やっぱり、駄目ね。全然分からないわ…」


 残念そうとも無念そうとも言える様な表情を浮かべて、ハクレイは自分の黒髪を右手でクシャクシャと掻き毟る。
 自分の夢の中で喋っていたのだから、きっと記憶喪失に陥った自分に何かを思い出させてくれるのでは…と思っていた。
 しかし実際には何も思い出すことは出来ず、結局『謎の女性A』という扱いになってしまったのである。
 折角意味ありげに出てキレたというのに…博麗は胸中で謝りつつ、次にもう一人いた女性の事を思い出す。

―――…跡継ぎがいる以上、探すという時間の掛かる工程を省けたのだから

 『謎の女性A』とは違い、艶やかな大人の雰囲気がこれでもかと声色から漂い…そして妙に胡散臭い。
 どこが胡散臭いのか…と言われればどう答えて良いか分からないが、あえて言えば言葉…と言えばよいのだろうか?
 女性Aとは違いややゆっくりめのスピードに、何か隠し事をしているかのような低く抑えた声。
 そして喋り方からでもはっきりと分かる落ち着き払ったあの態度は、まるで色んな事を知り尽くした老人のようであった。
 恐らく俗にいう『人生経験が豊富な人』…というヤツなのであろうか。自分とはまるで違う性格の持ち主に違いない。

 そこまで思った所で…彼女はその夢が覚める直前、脳裏に過ったあの女性の姿を思い出す。
 金色の長髪にここでは見慣れないであろう白い服に白い帽子を被った、日傘を差したあの女性。
 もしかすれば、その落ち着き払った声の主は…彼女なのかもしれない。
 どうしてそう思ったのかは分からないが、あの言葉を聞いた直後に彼女の姿が過ったのだ。
 女性と声が関係しているのならば、そう思っても別に不思議ではないだろう。
「…とはいえ、彼女は何者だったのかしら…良く分からない事が多すぎるけど…けれど…―――アイツ、」
 「アイツ」のところで一旦言葉を止めた後、頭の中でその言葉が浮かび上がってくる。

―――人間じゃない様な気がするわ

 そう思った直後、唐突に浮かんできたその言葉に彼女は思わず目を丸くしてしまう。
 一体何を考えているのかと自分の頭を疑いつつも、呟こうとしたその一言を心の中で反芻させる。
(人間じゃない…人間じゃない…何考えてるのよ私?だってアレは…どう見ても人間…そう人間じゃない)
 馬鹿な事を考えている自分を叱咤しつつも、ハクレイはもう一度頭の中で彼女の姿を思い出す。
 服装などは確かにハルケギニアでは珍しいかもしれないが、それは自分にも当てはまる事だ。
 何より彼女の事は後姿でしか見ていないのだ。それでどうして人間じゃないと思ってしまったのだろうか?

 唐突に思ってしまった事で、バカ正直に悩もうとした直前に…ふと誰かの気配を後ろから感じた。
 ハクレイはそこで考えるのを一旦止めて、何気なく後ろを振り返ったが…案の定人影は見えない。
 玄関へ繋がる通路と、カトレアと自分たちの寝室がある二階へと続く階段が暗闇の中でぼんやりと見える。
 それ以外には誰かの気配とも言える様な物は見えず、彼女は気のせいかと自分の勘を疑ってしまう。
「疲れてるのかしら?変な時間に目ェ覚ましちゃったし…」
 一人呟き、再び視線を元に戻したハクレイがもう一眠りしようとソファーに背中を預けようとした時―――
 背後から聞こえてきたのだ。確実に人の足音だと確信できる音と、

「あっ…」
 という聞きなれた少女の声を。

「!」
 今度こそ気のせいではないと確信した彼女は瞑ろうとした目を開けて、バッと後ろを振り返る。
 そこにいたのは、廊下から少し身を乗り出し、忍び足でこちらに近づこうとて失敗したニナの姿があった。
「に…ニナ?なにしてるのよ、こんな時間に…」
「え?…えっと…その…帰ってきてたんだ…」
 まさか本当にいたとは思えず、見つけた本人も多少戸惑いながらも腰を上げて彼女の傍へと近づいていく。
 ニナ本人はまさかバレるとは思っていなかったのか、唖然としたまま近づいてくるハクレイを見上げている。
 そして近づいたところで、こんな真夜中に自分と同じく起きていたニナが何をしようとしたのか何となく理解してしまった。

 子供向けのパジャマとナイトキャップを被った彼女の右手には何故か雑巾が握られており、ご丁寧に水で濡らしている。
 その雑巾を見て一瞬怪訝な表情を浮かべたハクレイであったが、ふと夢から覚める直前の事を思い出した。
(そういえば、覚める直前に何か頬に……そう、確か…冷たいモノが当たって…って、冷たいモノ?)
 そして…本人が思い出したのを見計らうかのようにして右の頬から冷気を感じた彼女は、そっと右手で頬に触れた。
 まず最初に指が感じたのは頬を刺激する冷気に、僅かに付着していた水が付着する感触。
 水のある何かに触れた指を頬から離した彼女は顔の前に右手の指を持っていき、おもむろに顔元へと近づける。

 指に付着した水から漂う臭いは、紛う事なく使い古した雑巾の臭いであった。
 この富裕層向けの別荘の中で平民も見知った掃除道具の一つであり、水で濡らされ様々な場所を拭かれてきた布の集まり。
 何時ごろからこの別荘に置かれていたがは知らないが、きっと色々なモノを拭いてきたのであろう。
 床や壁に、家具の上に溜まった埃はもちろん、窓の汚れだって綺麗にしてきたのは間違いないだろう。

 ――――しかし…この指から微かに漂う匂いから察するに、それだけを拭いてきたというワケではないようだ。

 それを想像して考えるのは簡単であったが、ハクレイは敢えて想像する事は控えようとする。
 とはいえ鼻腔から嗅ぎ取れる臭いが否応なく頭の中にイメージ映像を作り上げ、見せようとして来るのだ。

 それを振り払うように慌てて頭を横にふった所で、ニナがこちらに背中を向けているのに気が付いた。
 背中を縮め、雑巾を足元に置き捨てている彼女の姿は、まるで盗みがバレて逃げようとする泥棒そのものである。 
 あわよくば二階へと続く階段まで一気にダッシュ!…と考えたのか、駆け出そうとした彼女の襟首をハクレイは掴んだ。
 ちょっと勢いが強すぎた為か、ニナの口から小さくない悲鳴が漏れたがそれに構わず逃げようとしたニナを自分の目線まで持ち上げる。
「キャッ!ちょっ…ちょっとなにするの!?」
「それはこっちのセリフよ、人の顔に雑巾当てといて何も言わずに逃げるとはね」
 雑巾の事がバレてウッと呻きそうな表情を浮かべたニナは暫し黙った後、目線を逸らしつつ弁明を述べた。
「だ…だって、夕食にまで帰ってこなかったハクレイが悪いんだよ?カトレアおねちゃん、悲しそうにしてたのに…」
 ニナの言葉から奇しくも自分の想像が当たっていた事にハクレイは苦しそうな表情を浮かべた後に言った。

「だったら、今度から似た様な事をする時は綺麗な雑巾を使いなさい。良いわね?」
「あれ?やっぱり臭かったの?あの雑巾確か―――」
「そっから先は言わなくて良いッ!」
 聞きたくも無い雑巾の出所を言いそうになったニナに対して大声を出してしまった事により、
 二人を除いて就寝していた別荘の者たちを驚かしてしまい、結果的に起こしてしまう羽目となってしまった。


 その日の朝から、ルイズは何とも気まずい一日を過ごすことになっていた。
 任務用に受け取ったお金を丸ごと盗られた事を除けば、これといってヘマをやらかしたワケではない。
 気まずさの原因は、自分の周囲を行き来する人々よりもずっと近くにいる霊夢の鋭いジト目であった。

 子供たちの楽しい声と、陽気なトランペッタが主役の路上演奏のお蔭で自分たちが今いる通りには明るい雰囲気が漂っている。
 こんな真夏日だというのに人々は日陰や木陰で足を止めて演奏に耳を傾け、その内何人かがポケットから銅貨や銀貨を取り出し始める。
 少々気が早いと思うが、そんな人々の気持ちが分かる程ルイズの耳にもその演奏は心地よかった。
 フルートと木琴がサブに回り、暑くとも活気に満ちた夏の街中に相応しい音色は貴族であっても満足するに違いない。
 ルイズはそんな事を考えながら、自分と霊夢よりも前にいるシエスタと魔理沙の方へと視線を向けた。
 二人も路上演奏を聞いているのか、日影が出来ている建物の壁に背中を預けて聞き入っている。

 シエスタはともかく、あの何かしら騒がしい魔理沙でさえ大人しくなって聞いているのだ。
 それだけでも、名も知らぬ演奏者たちの腕前がいかにスゴイか分かるというものである。
「…だっていうのに、アンタは今朝からずっと私を睨んでばかりね?」
「何よ?何か文句あるワケ?」
 演奏に耳を傾けつつもさりげなく呟いたルイズの文句を、霊夢は聞き逃さなかった。
 霊夢の言葉に対しルイズは無言で返そうとおもったが数秒置いて溜め息をつき、そこから小声で返事をする。

「いい加減、アンタもシエスタとの休日を楽しんだらどうよ?魔理沙なんかもうとっくに楽しんでるわよ?」
 今朝からずっとこの調子である霊夢に呆れた言いたげなルイズの文句に、霊夢はムッとした表情を浮かべた。
 流石に魔理沙と一緒くたにされたのが応えたのか、彼女は腰に手を当てながら抗議の言葉を述べていく。
「あんな能天気な黒白と一緒にしないでくれる?私はアイツと違ってちゃんと危機管理はできてるつもりよ」
『お金をちゃっかり盗まれてるのも、ちゃんと危機管理してた結果ってヤツかねぇ?』
 そこへ間髪入れぬかのように、霊夢の背中で暇を持て余していたデルフが会話に乱入してくる。
 流石の彼もこの路上演奏を邪魔してはいけないと思っているのか、珍しく声を抑えて喋りかけてきた。

『金盗られてあんなに取り乱してたんじゃあ、黒白と一緒にされるのも仕方ない気が―――』
 最後まで言う前に、特徴的な音を周囲に響かせつつインテリジェンスソードは口を閉ざされてしまう。
 どうやら聞きたくない事まで言ったせいで、後ろ手で柄を握った霊夢によって無理矢理鞘の中へと戻されてしまったようだ。
「アンタは黙ってなさい…ッ余計な事まで言うんじゃないの!」
 納剣時の音か、はたまた霊夢の必死な声がどうかはしらないが、何人かが彼女たちへ視線を向けてくる。
 だがそれも一瞬で、すぐにまた陽気な路上演奏を聞き入ろうと視線を戻していく。

「…んぅ…とりあえず、まだ私の上げ足を取るような事したら暫く喋れないようしてやるわよ、いいわね?」
『ハハハ、オーケーオーケー分かったよ。…ったく、一々喋るのに言葉を選ばなきゃいかんとはねぇ』
 一瞬だけだが、周囲の視線を一心に受けてしまった霊夢は顔を微かに赤くしてデルフを脅しつける。
 それに対してデルフは鞘越しの刀身を震わせて笑いつつ、ひとまず了承することにした。
 彼女と一本のそんなやり取りを見てルイズは小さな溜め息をつきつつ、チラリとシエスタの方へ視線を向ける。


 幸いかどうかは分からないが、霊夢の不機嫌さにはまだ気づいていないらしい。
 丁度演奏も終わり、道端で聞いていた人たちや魔理沙に混じって笑顔で拍手している。
 そして取り出した財布から銀貨を銅貨を数枚出すと、演奏者たちの足元に置かれた鍋の中へと放り込んでいく。
 他の人々も同じように銅貨や銀貨が鍋の中へと投げ込まれ、その中に混じって金貨まで投げ入れられている。
 一方の魔理沙はというと、何故かポケットから包み紙に入った飴玉を数個取り出して鍋の中へと放り込んでいた。

 彼女の隣にいたシエスタはいちはやくそれに気づいたか、少し驚いた様な表情を浮かべている。
「え?あの、マリサさん…今投げたのって飴玉じゃあ…」
「いやー悪いね、なにぶん今は金が心許なくて…あ、シエスタも一個どうだ?」
 シエスタからの言葉に対してあっさりと返した黒白は、ついで彼女にも同じものを差し出す。
 目の前に差し出されたそれに一瞬戸惑いつつも、シエスタは何となくその飴玉を受け取った。
 その光景を少し離れた所から見つめていたルイズは、魔理沙がいてくれて本当に良かったと実感する事が出来た。
 今の霊夢や自分だけでは、下手すれば彼女の貴重な休日を丸ごと潰していた可能性があるからだ。


 全ての始まりは昨夜の事、自分たちが寝泊まりしている屋根裏部屋にシエスタが入ってきてからであった。
 半ば無理やりと言っていいほど夕食の席に混ざってきた彼女は、食事が始まるや否や早速誘いをかけてきたのである。
―――あの、レイムさんとマリサさんのお二人って…ここから遠い所からやってきたんだしたよね?
 色々と三人で話し合いたかった夕食に割り込んできたシエスタは、その言葉を皮切りに二人へと話しかけ始めた。
 一体どれほど話したい事があったのだろうか、何処か気まずい雰囲気が流れる食卓で彼女は色んな事を喋った。
 二人の故郷の事やどんな所で暮らしていたか、ここの住み心地はどうとかという他愛ない話だ。
 彼女の質問に対して魔理沙は快く応じ、その時は霊夢も仕方なしと諦めたのか適度に言葉を返していた。

 暫しそんな話をした後に、シエスタはいよいよ話を本筋へと移してきた。
 食事を半分ほど片付けた彼女はチラリとルイズを一瞥した後で、霊夢達を誘ったのである。
―――あの、もしお二人がよろしければ…明日、王都の面白い所を案内したいのですが…良いでしょうか?
 その誘いに対して、二人して別々の反応を見せることになった。
―――おぉ何だ何だと疑っていたが、まさか遊びの誘いとな?まぁいいぜ、別に急ぐ用事なんてないしな
 魔理沙は面白い物を見る様な目でシエスタを見た後、心地よい笑顔で頷いて見せた。
――誘いは嬉しいけど、今は色々と忙しいの。悪いけど、明日は魔理沙とルイズたちを連れて言ってちょうだい
 たいして霊夢はというと…、魔理沙と比べて少し考えた後目を細めながら首を横に振ってそう言った。
 まぁそうだろう。本人の言葉通り、今の霊夢が色々と忙しいのは魔理沙とルイズも十分周知の事であった。
 お金を盗んだ窃盗犯の少年探しに加えて、その日の夕方に魔理沙が遭遇したというキメラの事も調べ慣れればいけないのだ。
 少なくともルイズや魔理沙たちと比べれば、ハードワークと言っても差し支えない程の仕事が溜まっている状態だ。
 本人には絶対に言えないだろうが、シエスタからの遊びの誘いに乗るのは不可能なはずである。


 勿論誘っているシエスタはそんな事全く知らずして、ただ純粋な善意の元霊夢を誘おうとする。
 この時期はドコソコが見どころとか、少ない平民のお金でも甘味を満喫できるケーキ屋さん等々…。
 一体その頭の何処にため込んでいたと言えるほどの膨大な情報は、流石年頃の女の子といったところか。
 魔理沙はともかく年が近く貴族であるルイズでさえも、シエスタの語る王都の情報に舌を巻いてしまっている。
 それでも断る気持ちは揺るがない霊夢であったが、彼女の口から出る話には耳を傾けていた。

―――アンタ、そういうのを良く知ってるのね?あのルイズも黙って聞いてるわよ

――――こう見えても学院で奉仕してる時も非番の日には王都で遊び出ていますし、
        何より同僚には同年代の娘も沢山いますから。…で、どうです?レイムさんも一緒に行きましょうよ

――――私、今色々と忙しいって言ったばかりよね?

 成程、異世界にいってもそういう人と人との繋がりは色々な情報を手に入れる手段の一つらしい。
 ともあれそれがどうしたというワケで、さりげなく誘ってくるシエスタに対し冷たい断りをいれるしかなかった。
 そう、断ったのである。しっかりと断った筈だったのであるが…


「ホント、参るわよねぇ…純粋な善意って」
 魔理沙とルイズ相手に楽しそうに会話しながら通りを歩くシエスタの後ろ姿を見て、霊夢は一人呟く。
 結局あの後、ややしつこさのシエスタの誘いに彼女は渋々とその誘いに乗ってしまったのである。
 原因…というか、強いて敗因と言うのならば…シエスタ本人が純然たる善意でのみさそってきたからであろうか。
 多少の強引さはあったものの、それもその善意が働いた結果だ。

 例えば普通に誘われたり、何か考えあっての事であるならば霊夢は乗らなかっただろう。
 彼女自身そういう誘いには普段はあまり乗らないし、どちらかというと一人でいる方が気楽なタイプの人間である。
 しかし、シエスタのように自分たちをかなり信頼し尊敬してくれている人間からの善意というものには慣れていなかった。
 まるで汚れを知らずに育った温室の花のように、対価を求めず接してくれる彼女に好意を持ってしまったというべきか…。
 そんな彼女からの誘いの言葉には他意など全く見受けられず、ただただ自分たちと一緒に休日を過ごしたいという思いだけが伝わってくる。

 召喚される前、幻想郷でせっせと妖怪退治をしていた時も人里の人達たちからそういう善意を受け取っていた。
 時折人に冷たいと評される霊夢であっても、そういう善意を受け取ること自体は決して嫌いではなかった。
 そして、そういう善意が巡り巡って物となって自分に返ってくるという事も巫女として生きていくうちにしっかりと学んでいた。

「まぁシエスタにそういうのを望んでるワケじゃないけど…無下にするのも何か酷なのよねぇ~」
『成程ねぇ。普段は冷たいレイムさんも、他人からの優しさには敵わないって事かー』
「…そういう事よ、でもアンタは黙ってなさい」
 独り言のように呟く霊夢の言葉に対し、彼女の背中に担がれているデルフが鞘から刀身を微かに出して相槌を打つ。
 丁度彼女の横を通り過ぎようとした平民と下級貴族が突然喋り出した剣に驚いたのか、身を軽く竦ませてしまう。
 そんな事など露も知らない霊夢は急に喋ってきたデルフを鞘に戻しつつ、ルイズ達の後を追う。
 一人ここに至るまでの事を思い出している内に、足が遅くなっていた事に気が付かなかったらしい。
 地元の人々らしい平民たちの憩いの場となっている公園の横の通りを早足で歩き、ルイズ達の元へと寄る。


 遅れている事に気が付いていたルイズが、近づいてくる霊夢に声を掛けた。
「ちょっとー、何してるのよレイム」
「別に、ただ…自分って結構甘いなーって思ってただけ」
「?」
 自分独自など知らないルイズが首を傾げるのを余所に、事の張本人であるシエスタが話しかけてきた。
「どうですかレイムさん?ここの公園横の通り、ちょうど敷地内の植木が木陰になってて夏場の散歩に快適でしょう?」
「…確かに。夏季休暇中だっていうのに人通りは比較的少ないし、こっちのほうが気を楽にして歩けるわ」
 平民向けの女性服に薄緑色のロングスカートに、木靴というスタイルの彼女の言葉に霊夢は周囲を見回しつつ言葉を返す。
 シエスタが三人を連れて訪れている場所は勿論王都内であったが、観光客と思しき人々の姿はあまり見えない。
 どちらかといえば近辺に住んでいる平民や下級貴族といった、俗に地元であろう人々の姿が目立つ。
 これまで大通りや繁華街、市場での混雑っぷりを見てきた霊夢達にとっては見慣れぬ風景であった。

「それにしても、まさか市場から少し離れた所にこんな静かな通りがあるなんてね」
「やっぱり市場と大通りには人が集まりますからね、その分ここら辺は静かになっちゃうんですよ」
 ルイズは昨日の混雑っぷりが嘘の様に平穏なその通りを歩きながら、シエスタとの会話を続けていく。
 確かに彼女の言うとおり人の混雑が多いのは市場と大通りに、その近辺を囲うようにして人が集まっているという話はよく耳にする。
 だからなのだろう。その日の買い物を終えて暇になった地元の人々が、背中を自由に伸ばして休める場所がここにできたのは。

 公園の規模は小さいが子供たちが笑い声を上げて楽しそうに駆け回り、良い汗を沢山かいている。
 シーソーやブランコ、小さな回転遊具にも少年少女たちが集まり、喜色に満ちた嬌声を上げて遊びまわっている。
 その子供たちを見守るようにして大人たちがベンチに腰を下ろして、会話を楽しんでいたり一人静かに休んでいる。
 ベンチで気ままに寝ている下級貴族もいれば、近場の店で買ったであろうパンを食べていたりする平民がいる。
 既に四人が通り過ぎた公園の入り口で不審者がいなかいか見張っている衛士たちも、暢気に談笑していた。 

 ルイズ自身、今まで何度も王都へは足を運んだことはあったものの、この様な場所を訪れたことは無かった。
 いつも足の先が向くのは賑やかだがいつも混雑しており、けれど目を引くモノが数多ある大通りや市場等々…。
 だからこそ…シエスタが連れてきてくれたこの場所は酷く目新しく映り、そして新鮮味があった。
 そんなルイズと同じ気持ちを抱いていたのか、あたりを見回していた魔理沙も嬉しそうな様子を見せるシエスタに話しかけてくる。

「へぇ~、こいつは意外だぜ。よもやこの騒がしい街で、こうして気楽に歩ける場所があったなんてね」
「でしょ?私も良く、用はないけど外を歩きたいって時にはいつもここへ来ちゃうんですよ」
 魔理沙の反応を褒め言葉と受け取ったのか、シエスタは笑顔を浮かべて嬉しそうな様子を見せている。
 まぁあの霧雨魔理沙がそういう言葉を口にするのだから、褒め言葉と受け取ってもおかしくはないだろう。

 それから後も、シエスタはルイズ達を連れて一平民としての彼女がお薦めする王都のあちこちを案内してくれた。
 丁度大通りの裏手にある隠れ家的なベーカリーショップに大衆食堂や、中々の年代物を扱っている骨董品の店。
 マニアックな品物を取り揃えている雑貨屋など、通りから眺めるだけでも中々面白い物を見て回っていった。
 きっとメイドとして魔法学院で奉仕する傍ら、非番の日に足繁くこういった場所へ自ら足を運んでいたのだろう。
 通り過ぎていく人たちも彼女と気軽に挨拶をし、時には一言二言楽しそうな会話を交えて去っていく。
 人々の雰囲気は皆穏やかであり、見慣れぬ者たちを警戒する素振りなど毛ほども感じられない。

 最初は渋々であった霊夢も、穏やかな空気が流れる通りを歩いていくうちに態度が軟化していったのだろうか。
 今では自分がやるべき事を一時頭の隅へ置いて、興味深そうに辺りを見回しながらルイズ達についていっている。
『なんでぇ、さっきまであんなに゙仕方なじって感じだったのに…今じゃすっかり楽しんじまってるじゃないか』
 そして相棒の態度の変化に気が付いたのか、今まで黙っていたデルフが再び彼女へと話しかけてきた。
 急に喧しい濁声で喋り出した剣に顔を顰めつつも、霊夢は後ろに目をやりながら彼と話し始める。
「デルフ?…まぁ、私としてはまだ納得いかないけど…まぁ今更抗っても仕方ない…ってヤツよ」
『ふ~ん、そういうモンかい?けれどそれが違ったとしても、オレっちはお前さんに指図はしないさ、何せ――――』
「…剣だから?」
「…………まぁ剣だから、だな」
 まさか自分の言いたい事を先読みされた事に軽く驚きつつ、デルフは彼女とのやりとりを続ける。

『それにしても、世の中にはお前さんみたいなのにも好意を向けてくれる変わり者がいるものだねぇ』
「シエスタの事?別にそんなんじゃないでしょうし、アンタの言い方だと私まで馬鹿にしてるでしょ?」
 ついているかどうかすら分からない目でルイズと楽しそうに前で会話している休暇中のメイドを見ているであろうデルフの言葉に、
 霊夢がジト目で睨みつけながらそう言い返すと、シエスタから少し離れた魔理沙が呼んでもいないのに会話へ割り込んできた。
「そうだぜデルフ、シエスタはただ優しいだけの人間さ。…まぁ確かに、霊夢に必要以上に構うのは変わってるかもしれんがな」
『おー、言うねぇマリサ。お前さんもあのメイドの嬢ちゃんは気に入ってるクチか?』
「そりゃー学院では色々良く接してくれたし、肩を持ってやるのは当然の義理ってヤツだよ」
「ちょい待ち、アンタが私の事悪く言うのはおかしくない?」
 シエスタの事を擁護しつつも、ちゃっかりと自分の悪口は言い逃さない魔理沙に霊夢が待ったを掛けていく。
 さすがの霊夢であっても、自分以上に人間失格な性格をしているであろう魔理沙にとやかく言われるのは許せなかったようだ。

「全く、少し目を離したかと思えば…何やってるのよアイツらは」
「ま、まぁこの暑い中ああして元気でいられるのは、まぁ…良いと思いますよ?」
 魔理沙が入ってきたせいで、ちょっとした言い争いに発展しかけてる二人と一本の会話をルイズ達は少し離れた所で見ていた。
 呆れたと言いたげな表情を浮かべるルイズは人通りが少ないとはいえ、注目を集め出している彼女たちの言い争いにため息をつき、
 一方のシエスタはどんな言葉を口にしたら良いかわからず、無難な言葉を口に出しつつ苦笑いする他ない。
「ホント、呆れるわねアイツラには。折角シエスタが自分の休日潰して案内してくれてるっていうのに」
「でもミス・ヴァリエール。元はと言えば私の我儘なんですし…レイムさんたちを責めるのはどうかと思いますが…」
 ルイズがレイムたちに対する文句を言うと、咄嗟にシエスタは彼女たちを擁護してくる。
 その態度に妙な違和感を感じたのか、ルイズは少し怪訝な表情を浮かべて彼女へ尋ねてみる。


「シエスタ…アンタ、何かアイツラの肩を持ち過ぎてないかしら?」
「え、あの…アイツラって、レイムさんたちの事ですか?」
 突然そんな事を尋ねてくる彼女にシエスタがそう聞くと、ルイズは「えぇ」と頷きつつ話を続けていく。

「まぁあの二人には色々と助けられた恩はあるでしょうけど、だからと言って変に持ち上げすぎてるわよ?
 そりゃー助けてもらった時は輝いて見えたろうけど…控えめにいっても、普段の二人は結構酷い性格してるから」

 最後の一言はシエスタの耳元で囁き、まだ言い争っている彼女たちに聞こえない様に配慮する。
 自分の言葉に暫し困惑の様子を見せるシエスタに、ルイズは尚も言葉を続けていく。
「いくら親しいからって、優しさだけ振りまいても意味がないものなのよ。…特にアイツラを相手にする時はね」
「確かにそうだと思いますが、ミス・ヴァリエールは常日頃から厳しすぎるかと…」
「厳しい位で丁度良いのよ。飼っている犬や猫が粗相したら躾するでしょう?それと同じだわ」
「ぺ、ペットと同程度ですか?」
 あの二人をさりげなく犬猫扱いしたルイズに驚きつつ、シエスタはハッと霊夢達の方へと視線を向ける。
 幸いルイズの言葉は彼女らの耳に届いていなかったのか、まだ言い争いを続けていた。

 例え聞かれていたとしてなんら自分には関係ないものの、シエスタは無意識の内に安堵のため息をついてしまう。
 そんな彼女に対し全く慌て素振りを見せないルイズは、霊夢たちを指さしながら尚も話を続けていく。
「あぁいう状態になったら、こっちがよっぽどの騒ぎを起こさない限り聞こえないから大丈夫よ」
「そ、そうなんですか…?でもこの距離だと確実に聞こえてたような気もしますが…」
「大丈夫よ大丈夫!仮に聞こえてたとしても、向こうが悪いんだからこっちは胸を張ってればいいの」
「ちょっとー!アンタ達の会話は丸聞こえだったわよぉー!」
 いかにも楽観視的な事をルイズが言った途端、こちらに顔を向けてきた霊夢が怒鳴ってきた。
 その怒声にルイズとシエスタは思わず彼女の方へと一瞬視線を向け、そして互いの顔を見あいながら言った。

「どうやら聞こえてたみたいね。御免なさい」
「多分私は怒られないと思いますので、レイムさん達に誤った方が良いかと思います」
「えぇー?私はホントの事をちゃんと言っただけなんですけど」
「だからって、人を犬猫に例える奴がいるか!」
 最初からある程度苛ついていた所為もあってか、謝る気ゼロなルイズに霊夢は突っかかっていく。
 突然発生した口げんかに対し、シエスタは何も出ぎずただただ見守る事しかできない。

 そうしてアワアワと驚きつつ、観戦者になるしかないシエスタの背後から魔理沙が声を掛けてきた。
「おぉシエスタか?さっきからルイズが誰かと話してるなーって思ったら…まさかお前だったとはなぁ」
「マリサさん…い、いえ!とんでもありませんよ!」
「まぁそう簡単に謙遜はしてくれるなよ。お前さんのお蔭で、アイツとの゙お喋り゙が終われたんだしな」
 意図的にしたワケではないという事をシエスタは伝えたかったが、それがちゃんと出来たかどうか分からない。
 魔理沙は理解したのかしてないのかただ笑顔を浮かべつつ、シエスタの横に立ってルイズと霊夢のやり取りを見つめていた。


 それから少しして、数分の言い争いは…結局、両者が疲れてしまった事で幕を閉じた。
 数多の人妖と顔を合わせ、一癖二癖どころか五癖もありそうな連中と話してあってきた霊夢。
 それに対して、入学当初の問題から生まれた生徒達との揉め事で鍛え上げられたルイズ。
 お互い別々の経験から来る言葉選びと、相手が何であれ怯まないという精神が衝突すればそれはもう引き分けになるしかないであろう。
 実質霊夢を相手に怒鳴り続けたルイズは、体の中にドッと溜まってしまった疲れを取るようにため息をついた。
「はぁ~…参ったわねぇ。私自身、こんなに口喧嘩したのは初めて…かもしれないわ」
『娘っ子も中々口が悪いが、生憎ながらレイムの方はその三倍…いや四倍増しで酷かった気がするぜ』
「何で言い直す必要があるのよ。…っていうか増えてるし」
「………ふふ」
 お互い本気で言い争うつもりは無かったのだろう、そのまま喧嘩に移行する事無く自然と仲が戻っていく。
 デルフの余計な一言に少し疲れた様子を見せる霊夢が言葉を返したところで、ふとシエスタがクスリと笑った。

 彼女の真横にいて、それにすぐさま気が付いた魔理沙は首を小さく傾げつつ彼女に話しかける。
「?…どうしたんだシエスタ?」
「いえ、貴女達三人とデルフさんのやりとりを見ていてふと…曽祖父から教えてもらった諺を思い出しまして…」
 諺?魔理沙が再び首を傾げた所で彼女は「はい」と頷いてから、その諺とやらを口にする。
 それはルイズ達は勿論、デルフさえも知っているありふれたものであり、彼女らにピッタリな諺であった。

「喧嘩する程仲が良い…って諺なんですけど――――ミス・ヴァリエールとレイムさん達の関係に、ピッタリと思いません」
「………あー成程な。確かに私達の関係にピッタリ嵌る諺だな?二人もそう思うだろう」
 魔理沙からの問いにルイズと霊夢は互いの顔を見合った後、ほぼ同時に首を横に振りながら言った。
「いやいや、それは無いわね」
「そうよ、それだけは絶ッ対に無いわね」
「ホラ?二人して似たような答えを出してくれる辺りに、仲の良さを感じるぜ」
 見事なほど息の合った首振りを見せてくれた二人を指さした魔理沙の言葉に、シエスタはつい笑ってしまう。
 大通りと建物一つ隔てた場所にある静かな通りのど真ん中で、青春真っ只中な少女の笑い声が響き渡った。




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