ウルトラマンゼロの使い魔
第百六十話「ガリアの叫び」
死神
破滅魔虫カイザードビシ
最強合体獣キングオブモンス
巨大顎海獣スキューラ
骨翼超獣バジリス 登場
第百六十話「ガリアの叫び」
死神
破滅魔虫カイザードビシ
最強合体獣キングオブモンス
巨大顎海獣スキューラ
骨翼超獣バジリス 登場
ロマリア対ガリア。人と人の戦争を食い止めるべく、アンリエッタは周囲の反対を振り切り、
アニエス一人だけを連れて“敵国”に交渉に赴くという無謀染みた冒険に出た。今のガリアは
何が起こるか分からない危険地帯。しかしアンリエッタたちは意外なほどに何の障害にも遭わず、
ジョゼフとの会談に臨むことが出来た。
そしてアンリエッタが一週間も掛けて纏め上げた、ガリアの停戦を引き出す切り札となる
書類の束を読み上げたジョゼフは、次のように唱えた。
「すごい提案だな。ハルケギニア列強の全ての王の上位として、ハルケギニア大王という
地位を築く。そして、他国の王はそれに臣従する……。ロマリアを除いて」
「ええ。ロマリア教皇聖下におかれては、我らにただ“権威”を与える象徴として君臨
していただきます」
「その初代大王に、余を推薦すると書かれているが、まことかね?」
その問い返しに、アンリエッタは即座に肯定した。
これがアンリエッタの導き出した交渉案。ジョゼフがエルフと手を組んだり怪獣を駆使
したりしているのは、究極的には世界の覇権を握りたいから。ならば実際に握らせてやろう
ではないか、とアンリエッタは考えたのだ。目的を達成させてしまえば、ジョゼフはエルフや
怪獣の力など必要としなくなるだろう。だからこの申し出の引き換えとして、エルフたちと
完璧に手を切らせる。そうすればロマリアの“聖戦”もストップだ。
またアンリエッタは、実際のジョゼフは“無能王”という蔑称とは程遠い頭脳の人間で
あることを悟っていた。せっかくの世界の頂点の座を失うような軽挙妄動には出るまい。
そこまで計算しての交渉であった。
この前例などある訳がない交渉案には国内の誰もが猛反対したものだが、聡いマザリーニだけは
称賛した。そして肝要のジョゼフもまた、素直に感心していた。成功だ、とアンリエッタは手ごたえを
感じていた。
の、だが……。
「んー、だがな。その提案にはのれぬのだよ。残念ながらね」
ジョゼフからの返答に、アンリエッタたちは衝撃を受けた。その衝撃は、続くジョゼフの
言葉で更に大きくなる。
「余がただの欲深い男なら……一も二もなくあなたの提案にのったであろうな。だがな、
そうではない。おれは別に世界など欲しくはないのだよ」
「どういう意味ですか?」
背筋に嫌な汗が垂れるのを感じながら、それでも不安に押し潰されてしまいそうな己を
鼓舞しながら聞き返すアンリエッタ。と、その時、
『ホッホッホッ! 実に愚かな小娘です。ジョゼフ陛下のお心を欠片も察しないで、見当
はずれも甚だしい交渉を携えてのこのことやってくるのですから!』
いきなり虚空から、罵倒の言葉がアンリエッタに浴びせられた。アンリエッタとアニエスが
反射的にそちらを見上げると、いつの間にか空中に怪しい人影が、あぐらをかいたような姿勢で
漂っていた。
右手が槍のように尖っている、人のようで明らかに人間ではない異形の身体に紫色の袈裟
一枚を纏っている。ハルケギニアにはない概念の、オリエント的な装いはアンリエッタたちの
目には新鮮であった。
あの怪人は何なのか。少なくともエルフではない。ではジョゼフと組んでいる宇宙人か何かか?
しかし、今までに見てきた宇宙人とは雰囲気が異なる。宇宙人たちの、己の力を過信した傲慢さは
同じく存在しているが……こちらを見下ろしている目つきが違う。
あの眼差しに宿っているのは、傲慢さだけではない……こちらに対する侮蔑と、心の底からの
嫌悪の色がはっきりと見て取れるのだ。
「何者ッ!」
警戒したアニエスが剣を抜き放とうとしたが、その瞬間ミョズニトニルンのガーゴイルが
飛びかかってきて抑えつけられてしまった。
「くッ……!」
ジョゼフはその一連の流れがなかったかのように、宙に浮かぶ怪人に呼びかける。
「そう手厳しいことを言うな、死神よ。アンリエッタ殿の提示した条文は、普通ならば文句の
つけようのない正解だ。おれにもこれ以上は思いつかぬ。ただ……残念なことに前提が違っている。
それだけのことだ」
「前提……? あなたのおっしゃる前提とは何なのですか?」
恐る恐るアンリエッタが問いかけると、ジョゼフはきっぱりと答えた。
「おれが望むものは、地獄だ。地獄が見たいのだよ、おれは」
「お戯れを」
「戯れではない。おれは嘘偽りなく、この胸を蝕んでやまぬほどの地獄が見たいのだ」
アンリエッタの理解を超越するほどの内容を口にしながら、ジョゼフは部屋の端へと歩いていく。
「そういえばあなたはおれに、エルフと手を切らせたいようだが、実は向こうから既に見放されて
いるのだ。だからその点は達成している。だが……残念ながら、あなた方はおれがエルフと手を
組んでいるだけの方がまだ良かったと思うことだろう」
そしてジョゼフが手に取ったのは、歪なトゲがびっしりと生えた赤い球。アンリエッタは、
その球から身体の芯が凍りついてしまいそうなほどの悪寒を感じ取った。
「もう十分な頃合いだろう。おれはおれの望む地獄を作り始めることにする。どうせだから
見物していきたまえ、アンリエッタ殿」
歪な球を手にした、悲しいほどに空虚な表情の男はそのように唱えた。
アニエス一人だけを連れて“敵国”に交渉に赴くという無謀染みた冒険に出た。今のガリアは
何が起こるか分からない危険地帯。しかしアンリエッタたちは意外なほどに何の障害にも遭わず、
ジョゼフとの会談に臨むことが出来た。
そしてアンリエッタが一週間も掛けて纏め上げた、ガリアの停戦を引き出す切り札となる
書類の束を読み上げたジョゼフは、次のように唱えた。
「すごい提案だな。ハルケギニア列強の全ての王の上位として、ハルケギニア大王という
地位を築く。そして、他国の王はそれに臣従する……。ロマリアを除いて」
「ええ。ロマリア教皇聖下におかれては、我らにただ“権威”を与える象徴として君臨
していただきます」
「その初代大王に、余を推薦すると書かれているが、まことかね?」
その問い返しに、アンリエッタは即座に肯定した。
これがアンリエッタの導き出した交渉案。ジョゼフがエルフと手を組んだり怪獣を駆使
したりしているのは、究極的には世界の覇権を握りたいから。ならば実際に握らせてやろう
ではないか、とアンリエッタは考えたのだ。目的を達成させてしまえば、ジョゼフはエルフや
怪獣の力など必要としなくなるだろう。だからこの申し出の引き換えとして、エルフたちと
完璧に手を切らせる。そうすればロマリアの“聖戦”もストップだ。
またアンリエッタは、実際のジョゼフは“無能王”という蔑称とは程遠い頭脳の人間で
あることを悟っていた。せっかくの世界の頂点の座を失うような軽挙妄動には出るまい。
そこまで計算しての交渉であった。
この前例などある訳がない交渉案には国内の誰もが猛反対したものだが、聡いマザリーニだけは
称賛した。そして肝要のジョゼフもまた、素直に感心していた。成功だ、とアンリエッタは手ごたえを
感じていた。
の、だが……。
「んー、だがな。その提案にはのれぬのだよ。残念ながらね」
ジョゼフからの返答に、アンリエッタたちは衝撃を受けた。その衝撃は、続くジョゼフの
言葉で更に大きくなる。
「余がただの欲深い男なら……一も二もなくあなたの提案にのったであろうな。だがな、
そうではない。おれは別に世界など欲しくはないのだよ」
「どういう意味ですか?」
背筋に嫌な汗が垂れるのを感じながら、それでも不安に押し潰されてしまいそうな己を
鼓舞しながら聞き返すアンリエッタ。と、その時、
『ホッホッホッ! 実に愚かな小娘です。ジョゼフ陛下のお心を欠片も察しないで、見当
はずれも甚だしい交渉を携えてのこのことやってくるのですから!』
いきなり虚空から、罵倒の言葉がアンリエッタに浴びせられた。アンリエッタとアニエスが
反射的にそちらを見上げると、いつの間にか空中に怪しい人影が、あぐらをかいたような姿勢で
漂っていた。
右手が槍のように尖っている、人のようで明らかに人間ではない異形の身体に紫色の袈裟
一枚を纏っている。ハルケギニアにはない概念の、オリエント的な装いはアンリエッタたちの
目には新鮮であった。
あの怪人は何なのか。少なくともエルフではない。ではジョゼフと組んでいる宇宙人か何かか?
しかし、今までに見てきた宇宙人とは雰囲気が異なる。宇宙人たちの、己の力を過信した傲慢さは
同じく存在しているが……こちらを見下ろしている目つきが違う。
あの眼差しに宿っているのは、傲慢さだけではない……こちらに対する侮蔑と、心の底からの
嫌悪の色がはっきりと見て取れるのだ。
「何者ッ!」
警戒したアニエスが剣を抜き放とうとしたが、その瞬間ミョズニトニルンのガーゴイルが
飛びかかってきて抑えつけられてしまった。
「くッ……!」
ジョゼフはその一連の流れがなかったかのように、宙に浮かぶ怪人に呼びかける。
「そう手厳しいことを言うな、死神よ。アンリエッタ殿の提示した条文は、普通ならば文句の
つけようのない正解だ。おれにもこれ以上は思いつかぬ。ただ……残念なことに前提が違っている。
それだけのことだ」
「前提……? あなたのおっしゃる前提とは何なのですか?」
恐る恐るアンリエッタが問いかけると、ジョゼフはきっぱりと答えた。
「おれが望むものは、地獄だ。地獄が見たいのだよ、おれは」
「お戯れを」
「戯れではない。おれは嘘偽りなく、この胸を蝕んでやまぬほどの地獄が見たいのだ」
アンリエッタの理解を超越するほどの内容を口にしながら、ジョゼフは部屋の端へと歩いていく。
「そういえばあなたはおれに、エルフと手を切らせたいようだが、実は向こうから既に見放されて
いるのだ。だからその点は達成している。だが……残念ながら、あなた方はおれがエルフと手を
組んでいるだけの方がまだ良かったと思うことだろう」
そしてジョゼフが手に取ったのは、歪なトゲがびっしりと生えた赤い球。アンリエッタは、
その球から身体の芯が凍りついてしまいそうなほどの悪寒を感じ取った。
「もう十分な頃合いだろう。おれはおれの望む地獄を作り始めることにする。どうせだから
見物していきたまえ、アンリエッタ殿」
歪な球を手にした、悲しいほどに空虚な表情の男はそのように唱えた。
そうして起こったのが、ガリアの空を覆い尽くさんとばかりに広がった、いや今も広がり
続けているドビシの群れ。それから生まれたカイザードビシの軍団の、カルカソンヌへの襲撃である。
「グギャアーッ! グギャアーッ!」
カルカソンヌに現れたカイザードビシは一度に三体! 単眼と膝に備わった眼球から怪光線を
放ち、街を攻撃して人々を追い立て回す。
「うわあああぁぁぁぁぁッ!」
カイザードビシの攻撃から必死に逃げ惑う人間たち。そこにはロマリア軍やガリア軍の
区別はない。怪獣、いやジョゼフにとって、人間の所属など最早意味を成していないのだ。
「くッ、何てことになっちまったんだ……」
地獄に塗り替えられていくカルカソンヌの光景を、才人たちはシルフィードの背中の上で
歯ぎしりしながら目の当たりにしていた。才人はウルトラゼロアイを装着しようとウルティメイト
ブレスレットに手を伸ばしかけたが、それをゼロが制止する。
『待て才人! あの怪獣どもは使い走りに過ぎねぇ。ジョゼフを叩かないことには意味ねぇぜ!』
「けど、今襲われてる人たちはどうするんだ!?」
『そちらは私たちにお任せを!』
『俺たちがいることを忘れたのかよ、サイト!』
才人の叫び声に応じるように、ミラーナイト、グレンファイヤー、ジャンボットの三人が
カルカソンヌの地に集結! すぐにカイザードビシに立ち向かっていく。
『行くぞ! ジャンファイト!』
『うらぁぁぁーッ!』
三人はカイザードビシの一体ずつに肉薄し、打撃を加えて人間たちへの攻撃を食い止めた。
幸いなことにカイザードビシのパワーはそれほど高くなく、ミラーナイトたちならば容易に
押し切れる程度のレベルであった。
しかしカイザードビシの腹部が開いたかと思うと、牙の生えた不気味な触手が伸びてきて
ジャンボットとグレンファイヤーの首に巻きついた!
「ピィ――――――ッ!」
『ぬぅッ!?』
『うげぇッ!』
首を締めつけられて悶絶する二人だったが、触手は放たれたミラーナイフによって断ち切られる。
『大丈夫ですか!?』
『助かった、すまない……!』
『もう油断しねぇぜ! とっとと決めてやらぁッ!』
これ以上戦いは長引かせないと、ミラーナイトたちは必殺技を一斉に繰り出す。
『シルバークロス!』
『ジャンミサイル!』
『グレンスパーク!』
三人の攻撃がカイザードビシ一体ずつに入り、瞬時に木端微塵にした!
『はッ、どんなもんだい!』
と勝ち誇るグレンファイヤーであったが……彼らが敵を撃破した直後に、空のドビシの
群れからいくつかの塊が降ってきて、それらが新しいカイザードビシを三体形成した!
「グギャアーッ! グギャアーッ!」
『ん何ぃ!? 追加とかアリかよ!』
『こんな調子では、いくら倒してもキリがないぞ!』
焦りを見せるジャンボット。カイザードビシ一体が出来上がるのにドビシが数百体も必要
なのだが、群れは少なく見積もってもその百倍以上で形成されているのだ。
『くっそ!』
グレンファイヤーが先に群れから倒してしまおうと空にグレンスパークを飛ばしたが、
群れの一部に一瞬穴を開けただけだった。数が多すぎて、彼の炎でも焼き尽くすことが
出来ないのだ。
これではどう考えても、ミラーナイトたちが力尽きる方が先である。
『……ですが、やる他はありません!』
それでもミラーナイトたちは戦意をかき立てて、カイザードビシを食い止める。
「みんな……!」
仲間たちの苦闘ぶりを目の当たりにして胸を痛める才人。これをどうにかするには、やはり
事態の根源たるジョゼフを止める以外にない。
シルフィードにジョゼフの元へ急行してもらおうとしていたのだが、意外にも向こうから
才人たちの方にやってきた。
『あのフネ! あそこにアンリエッタ姫さんの気配があるぜ! ジョゼフもそこだ!』
ゼロが告げたのだ。見れば、空の彼方よりガリア軍の小型フリゲート艦がカルカソンヌへと
飛んできていた。
「よし! シルフィード、頼んだぜ!」
すぐにフネへと接近していこうとした才人たちだったが……フリゲート艦から禍々しい
赤い閃光が瞬いたかと思うと、カルカソンヌにカイザードビシではない新手の怪獣が三体、
どこからともなく出現した!
「キイイィィッ!」
「キ――――――――!」
「ヴォオオオオオオオオオオ!」
深海魚に四足が生えたような怪獣と、骨の翼を生やしたカマキリ型の怪獣。そしてこの二者の
特徴を腹部と背面に持った、最も巨躯の大怪獣。かつて破壊衝動に取り憑かれた悪童たちが想像し、
願望実現機の力で創造してしまった凶悪な怪獣たち、スキューラとバジリス、そしてキングオブモンスである!
「何!? 新手かッ!」
目を見張る才人たち。新たに出現した怪獣三体は、早速カルカソンヌの人間たちに対して
猛威を振るい出す。
「キイイィィッ!」
「キ――――――――!」
「ヴォオオオオオオオオオオ!」
スキューラが突進して立ち並ぶ建物を薙ぎ倒し、バジリスが光球を吐いて街の一部を破壊。
そしてキングオブモンスが地面をなぞるようにクレメイトビームを吐き、これが当たったものを
等しく粉砕していく。
「うわあああぁぁぁぁぁぁぁ―――――――!」
怪獣たちの猛攻に、全滅の危機に瀕する人間たち。しかしミラーナイトたちはカイザードビシに
足止めされているので、彼らを救うことは出来ない。
「くッ……! 好き勝手な真似しやがって……!」
『才人! ここは俺が行くぜ!』
奥歯を噛み締める才人にゼロがそう申し出た。
『お前はジョゼフの方を倒してくれ! なるべく早くな!』
「分かった! 頼んだぜ、ゼロ!」
『そっちもな!』
才人の腕からウルティメイトブレスレットが光となって離れ、光から変じたウルトラマンゼロが
キングオブモンスの軍団に飛び掛かっていく!
「セェェェアッ!」
「ヴォオオオオオオオオオオ!」
燃え盛るウルトラゼロキックが引き起こした爆炎が、三体の怪獣を纏めて吹っ飛ばした。
しかしキングオブモンスたちはすぐに身を起こし、狙いをゼロへと移す。
「ヴォオオオオオオオオオオ!」
「キイイィィッ!」
「キ――――――――!」
キングオブモンスはスキューラとバジリスを引き連れてゼロに襲い掛かっていく。対する
ゼロもゼロスラッガーを両手に握り、怪獣たちの間に飛び込んで同時に三体の相手を開始した。
続けているドビシの群れ。それから生まれたカイザードビシの軍団の、カルカソンヌへの襲撃である。
「グギャアーッ! グギャアーッ!」
カルカソンヌに現れたカイザードビシは一度に三体! 単眼と膝に備わった眼球から怪光線を
放ち、街を攻撃して人々を追い立て回す。
「うわあああぁぁぁぁぁッ!」
カイザードビシの攻撃から必死に逃げ惑う人間たち。そこにはロマリア軍やガリア軍の
区別はない。怪獣、いやジョゼフにとって、人間の所属など最早意味を成していないのだ。
「くッ、何てことになっちまったんだ……」
地獄に塗り替えられていくカルカソンヌの光景を、才人たちはシルフィードの背中の上で
歯ぎしりしながら目の当たりにしていた。才人はウルトラゼロアイを装着しようとウルティメイト
ブレスレットに手を伸ばしかけたが、それをゼロが制止する。
『待て才人! あの怪獣どもは使い走りに過ぎねぇ。ジョゼフを叩かないことには意味ねぇぜ!』
「けど、今襲われてる人たちはどうするんだ!?」
『そちらは私たちにお任せを!』
『俺たちがいることを忘れたのかよ、サイト!』
才人の叫び声に応じるように、ミラーナイト、グレンファイヤー、ジャンボットの三人が
カルカソンヌの地に集結! すぐにカイザードビシに立ち向かっていく。
『行くぞ! ジャンファイト!』
『うらぁぁぁーッ!』
三人はカイザードビシの一体ずつに肉薄し、打撃を加えて人間たちへの攻撃を食い止めた。
幸いなことにカイザードビシのパワーはそれほど高くなく、ミラーナイトたちならば容易に
押し切れる程度のレベルであった。
しかしカイザードビシの腹部が開いたかと思うと、牙の生えた不気味な触手が伸びてきて
ジャンボットとグレンファイヤーの首に巻きついた!
「ピィ――――――ッ!」
『ぬぅッ!?』
『うげぇッ!』
首を締めつけられて悶絶する二人だったが、触手は放たれたミラーナイフによって断ち切られる。
『大丈夫ですか!?』
『助かった、すまない……!』
『もう油断しねぇぜ! とっとと決めてやらぁッ!』
これ以上戦いは長引かせないと、ミラーナイトたちは必殺技を一斉に繰り出す。
『シルバークロス!』
『ジャンミサイル!』
『グレンスパーク!』
三人の攻撃がカイザードビシ一体ずつに入り、瞬時に木端微塵にした!
『はッ、どんなもんだい!』
と勝ち誇るグレンファイヤーであったが……彼らが敵を撃破した直後に、空のドビシの
群れからいくつかの塊が降ってきて、それらが新しいカイザードビシを三体形成した!
「グギャアーッ! グギャアーッ!」
『ん何ぃ!? 追加とかアリかよ!』
『こんな調子では、いくら倒してもキリがないぞ!』
焦りを見せるジャンボット。カイザードビシ一体が出来上がるのにドビシが数百体も必要
なのだが、群れは少なく見積もってもその百倍以上で形成されているのだ。
『くっそ!』
グレンファイヤーが先に群れから倒してしまおうと空にグレンスパークを飛ばしたが、
群れの一部に一瞬穴を開けただけだった。数が多すぎて、彼の炎でも焼き尽くすことが
出来ないのだ。
これではどう考えても、ミラーナイトたちが力尽きる方が先である。
『……ですが、やる他はありません!』
それでもミラーナイトたちは戦意をかき立てて、カイザードビシを食い止める。
「みんな……!」
仲間たちの苦闘ぶりを目の当たりにして胸を痛める才人。これをどうにかするには、やはり
事態の根源たるジョゼフを止める以外にない。
シルフィードにジョゼフの元へ急行してもらおうとしていたのだが、意外にも向こうから
才人たちの方にやってきた。
『あのフネ! あそこにアンリエッタ姫さんの気配があるぜ! ジョゼフもそこだ!』
ゼロが告げたのだ。見れば、空の彼方よりガリア軍の小型フリゲート艦がカルカソンヌへと
飛んできていた。
「よし! シルフィード、頼んだぜ!」
すぐにフネへと接近していこうとした才人たちだったが……フリゲート艦から禍々しい
赤い閃光が瞬いたかと思うと、カルカソンヌにカイザードビシではない新手の怪獣が三体、
どこからともなく出現した!
「キイイィィッ!」
「キ――――――――!」
「ヴォオオオオオオオオオオ!」
深海魚に四足が生えたような怪獣と、骨の翼を生やしたカマキリ型の怪獣。そしてこの二者の
特徴を腹部と背面に持った、最も巨躯の大怪獣。かつて破壊衝動に取り憑かれた悪童たちが想像し、
願望実現機の力で創造してしまった凶悪な怪獣たち、スキューラとバジリス、そしてキングオブモンスである!
「何!? 新手かッ!」
目を見張る才人たち。新たに出現した怪獣三体は、早速カルカソンヌの人間たちに対して
猛威を振るい出す。
「キイイィィッ!」
「キ――――――――!」
「ヴォオオオオオオオオオオ!」
スキューラが突進して立ち並ぶ建物を薙ぎ倒し、バジリスが光球を吐いて街の一部を破壊。
そしてキングオブモンスが地面をなぞるようにクレメイトビームを吐き、これが当たったものを
等しく粉砕していく。
「うわあああぁぁぁぁぁぁぁ―――――――!」
怪獣たちの猛攻に、全滅の危機に瀕する人間たち。しかしミラーナイトたちはカイザードビシに
足止めされているので、彼らを救うことは出来ない。
「くッ……! 好き勝手な真似しやがって……!」
『才人! ここは俺が行くぜ!』
奥歯を噛み締める才人にゼロがそう申し出た。
『お前はジョゼフの方を倒してくれ! なるべく早くな!』
「分かった! 頼んだぜ、ゼロ!」
『そっちもな!』
才人の腕からウルティメイトブレスレットが光となって離れ、光から変じたウルトラマンゼロが
キングオブモンスの軍団に飛び掛かっていく!
「セェェェアッ!」
「ヴォオオオオオオオオオオ!」
燃え盛るウルトラゼロキックが引き起こした爆炎が、三体の怪獣を纏めて吹っ飛ばした。
しかしキングオブモンスたちはすぐに身を起こし、狙いをゼロへと移す。
「ヴォオオオオオオオオオオ!」
「キイイィィッ!」
「キ――――――――!」
キングオブモンスはスキューラとバジリスを引き連れてゼロに襲い掛かっていく。対する
ゼロもゼロスラッガーを両手に握り、怪獣たちの間に飛び込んで同時に三体の相手を開始した。
フリゲート艦の甲板では、ジョゼフが赤い球を手の平の上にして、ガーゴイルに抑えつけ
られているアンリエッタを相手に自慢するように語っていた。
「素晴らしいものだろう、この赤い球の能力は。これはどんなものであろうと、望むものを
自由に出してくれるのだ――残念ながら、死人はよみがえらなかったがな――。死神が与えて
くれた摩訶不思議なアイテムでな、これでおれは怪獣の軍団を次々と呼び出して利用していた、
という訳なのだよ」
しかしアンリエッタは、内容が半分ほども耳に入っていなかった。天と地に広がる、
シティオブサウスゴータの惨劇を再現しているかのような怪獣地獄を眼下にして、唇を
わななかせながらジョゼフに問いかける。
「あなたは、同じ人間の命をこうも簡単に蹂躙しようとして……心が痛まないのですか?」
ジョゼフは呆気なく答えた。
「それが困ったことに、父に買ってもらったおもちゃのフネを池で失くした時の方が、よほど
心が痛んだわ。そうそう、シャルルと何度競争させたか知らんが、ついぞおれは一度も勝てなかったな」
人命をおもちゃに喩える。その心理は、アンリエッタの理解の範疇をはるかに超えていた。
そしてそれを語るジョゼフの空虚な表情と瞳に、絶望を通り越して哀しさすら覚えた。
一方で虚空では、姿を隠している死神がジョゼフを見下ろしながらほくそ笑んでいた。
『あの赤い球を使いこなし、なおかつ正気を保っているとは、やはり見込み通りの男だ。
奴を上手く利用すれば、我々の望みを達成することも容易い……!』
死神はジョゼフを正気と形容したが、果たしてどこまでも虚ろな眼をした男が、正気と
呼べるのか否か……。
と、その時である。フリゲート艦の上空を、防護のガーゴイルの軍団を突っ切って
飛んできたシルフィードが横切り、そこから才人が甲板へと躍り出たのである!
「おおおおおおッ!」
才人は甲板へ飛び移りながらディバイドランチャーを乱射し、アンリエッタを囲むガーゴイルを
撃ち砕いた。助け出されたアンリエッタはすぐに着地した才人の後ろに回って、ジョゼフたちから
距離を取る。
「姫さま、大丈夫ですか!?」
「わたくしのことは構わずに、早くあの男を止めて下さい!」
ルイズたちは応援のロマリアのペガサス騎兵とともに、空中のガーゴイルたちを相手取って
才人の頭上を守っている。今ジョゼフを討ち取れるのは才人だけだが、ジョゼフはまだ数多くいる
ガーゴイルによって守られている。
しかし才人は数の差などにひるみはしない。
「了解しました!」
ディバイドランチャーからデルフリンガーに持ち替えた才人に対し、ミョズニトニルンは
甲板のガーゴイルを全て向かわせる。
「行け! 奴を仕留めろッ!」
だが才人の剣さばきの速度はガーゴイルをはるかに上回り、瞬く間にガーゴイルを両断して
全滅させた。
「お前の武器はなくなったみたいだな」
これ以上ジョゼフの援護をされないようにと、ミョズニトニルンから倒そうとする才人。
だがしかし、
「なッ!」
才人は今しがた切り裂いたガーゴイルたちが、粘土細工のように切断面がくっついて
立ち上がっていく光景を目の当たりにする。
ミョズニトニルンが勝ち誇るように告げた。
「このガーゴイルはただのガーゴイルじゃない。水の力に特化させたんだよ。どれだけ切り
裂こうが砕こうが、無駄というもんさ」
いくら破壊しても復活してしまうのなら、ディバイドランチャーも弾の無駄である。才人は
デルフリンガーを盾に、ガーゴイルの攻撃を耐えるしかなくなる。
「くッ……!」
「どうした! それがガンダールヴの限界か!?」
と叫ぶミョズニトニルンの語気には、才人に対する憎悪と嫉妬の色が織り交ぜられていた。
彼女は、固い絆で結ばれている才人とルイズの関係を強く妬んでいた。自分とジョゼフの
間には、奇怪な死神などという邪魔者がいて、ジョゼフはより強い力をくれるそちらの方に
構ってばかり。そうでなくとも……ジョゼフは自分のことを……。
「武器を扱う程度した能のないお前如きがジョゼフさまに楯突こうなど片腹痛い! ここで
無様な姿を晒せぇッ!」
絶叫しながらガーゴイルを操るミョズニトニルンだったが――その瞬間、軽やかな銃声と
ともに腕に痛みが走った。
才人が隠し持っていた、ウルトラ警備隊の麻酔銃であるパラライザーで撃ったのだ。防戦に
なっていたのは、ミョズニトニルンの油断を誘うのが目的だったのだ。
「お生憎さま。こっちの世界の武器には、こんなものもあるのさ」
「うッ……」
たちまちミョズニトニルンの身体から力が抜け、その場に崩れ落ちた。それと連動して、
ガーゴイルたちが倒れていく。ミョズニトニルンの操作がなければ動かないようだ。
ミョズニトニルンを無力化した才人は、今度こそジョゼフと相対する。
「やあ。ガンダールヴ」
「あんたがジョゼフか。怪獣どもを止めてもらうぞ」
今まで散々苦しめられながら、実際に顔を拝むのは初めてとなる、ガリアの黒幕。タバサと
同じ髪の色であり、容貌も芸術品のような美丈夫であるが、その顔つきは底が見えないほどの
空虚さに支配された男を、遂に才人は前にした。
られているアンリエッタを相手に自慢するように語っていた。
「素晴らしいものだろう、この赤い球の能力は。これはどんなものであろうと、望むものを
自由に出してくれるのだ――残念ながら、死人はよみがえらなかったがな――。死神が与えて
くれた摩訶不思議なアイテムでな、これでおれは怪獣の軍団を次々と呼び出して利用していた、
という訳なのだよ」
しかしアンリエッタは、内容が半分ほども耳に入っていなかった。天と地に広がる、
シティオブサウスゴータの惨劇を再現しているかのような怪獣地獄を眼下にして、唇を
わななかせながらジョゼフに問いかける。
「あなたは、同じ人間の命をこうも簡単に蹂躙しようとして……心が痛まないのですか?」
ジョゼフは呆気なく答えた。
「それが困ったことに、父に買ってもらったおもちゃのフネを池で失くした時の方が、よほど
心が痛んだわ。そうそう、シャルルと何度競争させたか知らんが、ついぞおれは一度も勝てなかったな」
人命をおもちゃに喩える。その心理は、アンリエッタの理解の範疇をはるかに超えていた。
そしてそれを語るジョゼフの空虚な表情と瞳に、絶望を通り越して哀しさすら覚えた。
一方で虚空では、姿を隠している死神がジョゼフを見下ろしながらほくそ笑んでいた。
『あの赤い球を使いこなし、なおかつ正気を保っているとは、やはり見込み通りの男だ。
奴を上手く利用すれば、我々の望みを達成することも容易い……!』
死神はジョゼフを正気と形容したが、果たしてどこまでも虚ろな眼をした男が、正気と
呼べるのか否か……。
と、その時である。フリゲート艦の上空を、防護のガーゴイルの軍団を突っ切って
飛んできたシルフィードが横切り、そこから才人が甲板へと躍り出たのである!
「おおおおおおッ!」
才人は甲板へ飛び移りながらディバイドランチャーを乱射し、アンリエッタを囲むガーゴイルを
撃ち砕いた。助け出されたアンリエッタはすぐに着地した才人の後ろに回って、ジョゼフたちから
距離を取る。
「姫さま、大丈夫ですか!?」
「わたくしのことは構わずに、早くあの男を止めて下さい!」
ルイズたちは応援のロマリアのペガサス騎兵とともに、空中のガーゴイルたちを相手取って
才人の頭上を守っている。今ジョゼフを討ち取れるのは才人だけだが、ジョゼフはまだ数多くいる
ガーゴイルによって守られている。
しかし才人は数の差などにひるみはしない。
「了解しました!」
ディバイドランチャーからデルフリンガーに持ち替えた才人に対し、ミョズニトニルンは
甲板のガーゴイルを全て向かわせる。
「行け! 奴を仕留めろッ!」
だが才人の剣さばきの速度はガーゴイルをはるかに上回り、瞬く間にガーゴイルを両断して
全滅させた。
「お前の武器はなくなったみたいだな」
これ以上ジョゼフの援護をされないようにと、ミョズニトニルンから倒そうとする才人。
だがしかし、
「なッ!」
才人は今しがた切り裂いたガーゴイルたちが、粘土細工のように切断面がくっついて
立ち上がっていく光景を目の当たりにする。
ミョズニトニルンが勝ち誇るように告げた。
「このガーゴイルはただのガーゴイルじゃない。水の力に特化させたんだよ。どれだけ切り
裂こうが砕こうが、無駄というもんさ」
いくら破壊しても復活してしまうのなら、ディバイドランチャーも弾の無駄である。才人は
デルフリンガーを盾に、ガーゴイルの攻撃を耐えるしかなくなる。
「くッ……!」
「どうした! それがガンダールヴの限界か!?」
と叫ぶミョズニトニルンの語気には、才人に対する憎悪と嫉妬の色が織り交ぜられていた。
彼女は、固い絆で結ばれている才人とルイズの関係を強く妬んでいた。自分とジョゼフの
間には、奇怪な死神などという邪魔者がいて、ジョゼフはより強い力をくれるそちらの方に
構ってばかり。そうでなくとも……ジョゼフは自分のことを……。
「武器を扱う程度した能のないお前如きがジョゼフさまに楯突こうなど片腹痛い! ここで
無様な姿を晒せぇッ!」
絶叫しながらガーゴイルを操るミョズニトニルンだったが――その瞬間、軽やかな銃声と
ともに腕に痛みが走った。
才人が隠し持っていた、ウルトラ警備隊の麻酔銃であるパラライザーで撃ったのだ。防戦に
なっていたのは、ミョズニトニルンの油断を誘うのが目的だったのだ。
「お生憎さま。こっちの世界の武器には、こんなものもあるのさ」
「うッ……」
たちまちミョズニトニルンの身体から力が抜け、その場に崩れ落ちた。それと連動して、
ガーゴイルたちが倒れていく。ミョズニトニルンの操作がなければ動かないようだ。
ミョズニトニルンを無力化した才人は、今度こそジョゼフと相対する。
「やあ。ガンダールヴ」
「あんたがジョゼフか。怪獣どもを止めてもらうぞ」
今まで散々苦しめられながら、実際に顔を拝むのは初めてとなる、ガリアの黒幕。タバサと
同じ髪の色であり、容貌も芸術品のような美丈夫であるが、その顔つきは底が見えないほどの
空虚さに支配された男を、遂に才人は前にした。