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ゼロのアトリエ-25


トリステインの王宮は、物々しい雰囲気に包まれていた。
隣国アルビオンを制圧した貴族派『レコン・キスタ』がトリステインに侵攻してくる、
という噂がまことしやかに流れていたからだ。
よって王宮の上空は幻獣、船を問わず飛行禁止令が出され、衛士隊の警戒は最高潮であった。
そんな時だったから、王宮の上に一体の風竜が現れた時、蜂の巣をつついたような大騒ぎになった。
当直のマンティコア隊衛士が一斉に飛び上がり、警告を発する。
しかし、風竜はその警告を無視して中庭に降り立ち、
さらに風竜の影から板、そしてホウキに乗ったメイジが姿を現した。
風竜に乗っているのは金髪の少年と燃えるような赤毛の女、そしてメガネをかけた小さな女の子。
ホウキに乗っていたのは桃色の髪の美少女であり、
少し気まずそうに板を小脇に抱えているのは茶色の髪をした妙齢の女性。
ラ・ロシェールから直接王宮に向かった、ヴィオラートたちご一行であった。


ゼロのアトリエ ~ハルケギニアの錬金術師25~


マンティコアに跨った隊員たちが、5人を取り囲んだ。
腰からレイピアのような形状をした杖を引き抜き、一斉に掲げる。
いつでも呪文が詠唱できるような姿勢をとると、髭面の隊長が大声で怪しい侵入者達に命令した。
「杖を捨てろ!」
一瞬、侵入者達はむっとした表情を浮かべたが、青い髪の小柄な少女が首を振って言う。
「宮廷」
一向は仕方なくといった面持ちでその言葉に頷き、命令されたとおりに杖を地面に捨てる。
「今現在、王宮の上空は飛行禁止だ。ふれを知らんのか?」
その問いに、ホウキを持った桃色の髪の少女が進み出て、毅然とした声で名乗りをあげた。
「私はラ・ヴァリエール公爵が三女、ルイズ・フランソワーズです。姫殿下にお取次ぎ願いたいわ」
隊長は口ひげをひねって少女を見た。ラ・ヴァリエール公爵夫妻なら知っている。高名な貴族だ。
「ラ・ヴァリエール公爵さまの三女とな」
「いかにも」
ルイズは、胸を張って隊長の目を真っ直ぐに見据える。
「なるほど、見れば目元が母君そっくりだ。して、用件を伺おうか」
「それは言えません。密命なのです」
「では取り次ぐわけにはゆかぬ。用件もなしに取り次いではこちらの首が飛ぶ」
困った声で、隊長が言う。
ルイズも困って、思わずヴィオラートのほうに視線を泳がす。
ヴィオラートは少し考えて、良さそうな回答をひねり出した。
「ルイズちゃん、『水のルビー』があるじゃない」
「あ、そうね」
ルイズは懐を探り、預かりものの『水のルビー』を取り出す。
「姫殿下より、身の証にとお預かりした『水のルビー』です」
そう言って水のルビーを指に嵌め、輝きを見せ付けた。
沈黙して水のルビーを見つめる衛士たちに、
ようやく納得してもらえたかと一息ついたヴィオラートたちだったが、事態は予想外の展開を見せる。
「…失礼かと思いますが、我々の中にその真贋を見分けられる者がおりませぬ」
そう言った隊長の言葉に、とぼけた顔で頷きあう隊員たち。
ルイズ達は思わずあっけに取られ、ヴィオラートの笑顔が笑顔のまま、動きを止める。
「…真贋の見分けがつかないなら、とりあえず『ルイズ・フランソワーズが来た』と伝えて頂ければ…」
「そのような連絡は受けておりませんし、曖昧な用件で取り次ぐわけにはまいりません」
隊長に直接提案したヴィオラートに、衛士たちが一斉に警戒の視線を向ける。
そして隊長はヴィオラートをあえて避け、ルイズに言い放った。
「素性のわからないお連れがいらっしゃるなら、尚更です」
ヴィオラートの笑顔が、『敵意のないことを表現する』微笑へと進化を遂げた。
それを見たルイズはヴィオラート本人以上に焦り、言わなくて良い事を口に出してしまう。
「わ、ワルドの裏切りについて、至急報告しないといけないの!だから、はやく姫殿下にお取次ぎを…」
その言葉を聞いて、隊長は目を丸くした。
ワルド?ワルドというのは、あのグリフォン隊のワルド子爵のことだろうか?
そのワルドが、裏切り?どういう意味だ?
隊長は、ワルドとルイズたちを天秤にかけ…隊長なりに、結論を下す。
同じ場所で働き、知己もあったワルドと、実際に会うのは初めてのルイズ。
隊長がその決断、間違った決断を下したのも、まさに当然と言ったところであったのだろう。
「貴様ら何者だ?とにかく、殿下に取り次ぐわけにはいかぬ」
隊長は杖を構えなおし、硬い調子で言った。話がややこしくなりそうだった。
「あの、あたしたちは杖を捨てたわけですし、お姫様もそんな少しの手間を惜しむような人じゃ…」
最後まで和解の道を探ろうとするヴィオラートの言葉に、しかし隊長は目配せを交わす。
一行を取り囲んだ魔法衛士隊が、再び杖を構えた。
「連中を捕縛せよ!」
隊長の命令で、隊員たちが一斉に呪文を唱え始める。
「ヴィ…ヴィオラート?」
「大丈夫…お城は、傷つけないから」
不安げなルイズの視線にヴィオラートが素早く答え、バッグから…青く冷たく光る何かを取り出そうとした時。
「お待ちなさい」
けして大きくはなく、しかし良く通る声が中庭を通り抜ける。
ルイズの帰りを今か今かと待ちわびる、アンリエッタその人であった。


キュルケとタバサ、そしてギーシュを謁見待合室に残し、
アンリエッタはヴィオラートとルイズを自分の部屋に入れた。
小さいながらも精巧なレリーフがかたどられた椅子に座り、アンリエッタは机にひじをつく。
ルイズは、アンリエッタに事の次第を報告した。
道中、キュルケたちが合流した事。
フーケに襲われた事。
アルビオンに向かう船に乗ったら、空賊に遭遇した事。
その空賊が、ウェールズ皇太子だった事。
ウェールズ皇太子に亡命を勧めたが、断られた事。
そして…ワルドと結婚式を挙げるために、脱出船に乗らなかった事。
結婚式の直前、ヴィオラートがワルドの裏切りを暴き、追い払った事。
しかし、無事手紙は取り返してきた。ゲルマニアとの同盟は、守られたのだ…
そこまで聞いたアンリエッタは、深い悲しみを滲ませて、思わず呟きを漏らす。
「あの子爵が…まさか、魔法衛士隊に裏切り者がいるなんて…」
姫はすっと立ち上がり、ヴィオラートの手をとって…泣いた。
「本当に…本当にありがとうございます、ヴィオラートさん。貴女は裏切り者を使者に選んだわたくしを、
 この愚かなわたくしを、ウェールズ様の殺害という罪から救ってくださいました…」
はらはらと涙を落とすアンリエッタに、ヴィオラートは首を振る。
「王子様は…元から死ぬつもりでした。もう、今頃は…」
「それでも…それでも、何回感謝してもし足りるという事がありません…」
しばし、王女のすすり泣く声だけが部屋に響く。
熱い湯が冷水になるほどの時間が経ち、ようやくアンリエッタは落ち着きを取り戻した。
「皇太子は…ウェールズ様は、何と仰っていましたか?」
ヴィオラートは一字一句違えることなく、淀みなくウェールズからの伝言を伝える。
「ウェールズは最後まで勇敢に戦って死んだと。そう伝えてくれと」
寂しそうに、アンリエッタは微笑んだ。薔薇のように綺麗な王女がそうしていると、
空気まで沈鬱に沈むようだった。ルイズは哀しくなった。
「…姫様、これ、お返しします。」
ルイズはポケットから、いったんしまった水のルビーを取り出す。
「それは貴女が持っていなさいな。せめてものお礼です」
「こんな高価な品をいただくわけにはいきませんわ」
「…ルイズ・フランソワーズ」
アンリエッタは哀しそうに、小さな声を絞り出して言葉を放つ。
「それは、ウェールズ殿下との約束の証なのです」
ルイズはもう、それ以上何も言えなかったので。
だから無言で、貰った水のルビーを、ポケットに戻した。


王宮から魔法学院に向かう空の上、ルイズは黙りっぱなしだった。
キュルケが何やかや話しかけてきたが、ヴィオラートも喋らない。
「なあに、教えてくれないの?あの子爵が裏切り者とか、わけわかんないじゃない?」
そう言って、ヴィオラートに気だるい視線を送る。
「でも、ヴィオラートがやっつけたのよね?」
「うん。でも、逃げられたし…」
「それでも凄いわ!ねえ、一体どんな任務だったの?」
「うーん…」
ヴィオラートはにんじんを頭に当てて考える。ルイズが黙っている以上、話すわけにはいかない。
その様子を見たキュルケは、つまらなそうに嘆息し、挑発した。
「ルイズ、ゼロのルイズ!なんであたしには教えてくれないの!ねえタバサ、バカにされてると思わない?」
キュルケは、本を読んでいるタバサを揺さぶった。タバサの首が、がくがくと揺れる。
ルイズはそれを見て、ようやく求める答えを少しキュルケたちに与えた。
「…大体予想はついてるんでしょ?」
それだけで、キュルケと…タバサは大方の事情を悟る。
「まあ予想はつくけど。じゃあやっぱりその手紙ってのは、アレね」
「うん、そのアレかな」
ヴィオラートの肯定に満足したキュルケは、「そっか」と呟いただけで、静かになった。

その静寂に取り残されたギーシュは、急に静かになった女性陣をきょろきょろ見渡した後、
今がチャンスとばかりに自らの疑問を口に出す。
「その…ミス・プラターネ?」
あらたまった口調で…とりあえず、一番話しやすそうなヴィオラートに問いかける。
「姫殿下は、その、何か僕のことを噂しなかったかね?」
ヴィオラートはちょっとギーシュがかわいそうになった。
今の暗黙の了解を一人だけ理解できていないというのもそうだが、
アンリエッタはギーシュの『ギ』の字も話題に上らせなかったからだ。
「頼もしいとか、やるではないですかとか、追って恩賞の沙汰があるとか…」
「ギーシュくんは、頑張ったよね」
それだけ答えると、ヴィオラートはいつもの笑顔に戻って、黙り込んだ。
「その、何か噂しなかったかね?」
「…」
「その、姫殿下は、ぼくのことをなんと評価してたかね?」
ヴィオラートは笑顔のままわずかに首を傾げ、答礼を返す。
「もしかして密会の約束をことづかってある、とか…」
今度は逆側に、首を傾げた。

ぽかぽかと太陽が照らす中、二人のやりとりは魔法学院にたどりつくまで続いたという。


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