ウルトラマンゼロの使い魔
第百五十五話「暗黒の化身」
超古代尖兵怪獣ゾイガー
超古代怪獣ゴルザ(強化)
邪神ガタノゾーア 登場
第百五十五話「暗黒の化身」
超古代尖兵怪獣ゾイガー
超古代怪獣ゴルザ(強化)
邪神ガタノゾーア 登場
「ピアァ――――ッ!」
ガリアから飛び立ち、今まさにアクイレイアを狙ってロマリア艦隊を壊滅せしめたゾイガーの
群れは、ロマリア側の虎街道上空にて侵攻を阻止しに出動したウルティメイトフォースゼロと
激しい交戦を繰り広げていた。
『ちっくしょう! こいつら、何てスピードだ! 攻撃が全然当たんねぇぜ!』
空中でファイヤースティックを振るうグレンファイヤーが毒づいた。先ほどからゾイガーへ
向けて如意棒を振り回しているのだが、一体にさえかすりもしない。
『こっちもだ! ジャンミサイルが振り切られるとは……!』
ジャンボットもまた搭載火器をフル使用しているが、ゾイガーの動きがあまりに速すぎて、
ロックオンすらも出来ないありさまであった。
それもそのはず。ゾイガーの飛行速度はネオフロンティアスペースの当時の主力戦闘機
ガッツウィングはもちろんのこと、高速型のブルートルネードも、果てはマキシマオーバー
ドライブ搭載のスノーホワイトでさえ追いつけないほどの常軌を逸した速さなのだ。生半可な
攻撃では、ゾイガーの影を捉えることすら出来ない。それが何体もいるという恐ろしさ!
「ピアァ――――ッ!」
それほどのスピードを出しながら縦横無尽に飛び回るゾイガーたちは、口から光弾を吐いて
ジャンボットとグレンファイヤーを一方的に攻撃する。
『ぐわぁぁッ!』
『うおあぁぁッ! くっそうッ……!』
光弾を肩に被弾し悲鳴を発する二人。歴戦の戦士たるこの二人が大いにてこずるこの怪獣たちに、
怪獣迎撃に出撃したロマリア軍の部隊はますます太刀打ちすることは出来なかった。
「速すぎて目で追うことすら出来ない……! これでは戦いにもならん……!」
ロマリアの聖堂騎士の一人が唖然とつぶやいた。艦隊はまだ残存しているが、ガッツウィングと
比べたらはるかに遅いハルケギニアのフネではゾイガーに対抗することなど到底出来ない。
オストラント号でも不可能である。人間たちは、何も出来ることがなく立ち尽くすばかり。
『はぁッ!』
グレンファイヤーやジャンボットも苦戦する中、ミラーナイトは鏡のトリック全開でゾイガーに
対抗している。空に張り巡らした鏡にミラーナイフを連続反射させることで、一体の羽を切り
飛ばしたのだ。
「ピアァ――――ッ!」
片側の羽を失ってバランスを崩したゾイガーが谷底へ向けて真っ逆さまに転落していった。
それを追いかけるのはグレンファイヤー。
『ようやく一体落としたか! とどめは俺に任せな!』
役割分担をして、グレンファイヤーは地上に落ちたゾイガーを叩く。そのつもりだったのだが……。
『うらぁッ!』
炎の拳を、ゾイガーが弾き返した!
『ん何!?』
「ピアァ――――ッ!」
更にグレンファイヤーを蹴り返すと、残った片側の羽を自ら引っこ抜いて身軽となる。
そして跳ねながらグレンファイヤーに猛然と反撃を行う。
『くッ、飛べなくなっても戦えんのか! 何て手強い奴らだ……!』
さしものグレンファイヤーも冷や汗を垂らした。一体だけでもこれほど隙がないのに、
まだまだ何体もいるのだ!
追いつめられるウルティメイトフォースゼロ。この戦いに、地上から入り込もうとする
人間がただ一人だけいた。
「ウルティメイトフォースゼロが危ないわ! 援護するわよ!」
ルイズだ。虎街道の入り口、戦場を一望できる崖の上で、杖を握り締めながら前に出ようと
するのを、彼女の護衛のギーシュたちが慌てて制止した。
「ルイズ! おい、馬鹿な真似はよせ! 無闇に身を乗り出そうなんて、いくら何でも
命知らずが過ぎる!」
「怪獣の速度を見ろ! 向こうがこっちに気づいたら、まず間違いなく死んだと悟る前に
消し飛ばされるぞ!」
ロマリアは聖女となったルイズの護衛に聖堂騎士隊や民兵の連隊をつけたが、今はどちらも
敵怪獣の強力さにすっかりと怖じ気づいていた。オンディーヌも、ルイズがいなければずっと
身を潜めていたい気分である。
「何言ってるのよ! 隠れてるだけで戦いに勝てる!? ウルティメイトフォースゼロは
勇敢に戦ってるのに、このハルケギニアの貴族のあんたたちはコソコソしようっていうの!?」
怒鳴り散らすルイズだが、ギーシュは反論。
「だからって、きみは無謀だよ! 呪文も唱えないでさ! 何だか昔のきみに戻ってしまった
みたいだよ。やはり、サイトを帰してしまって落ち着きをなくしてるんじゃないのかい?」
その言葉にドキリとするルイズ。
「て、適当なことを言わないでちょうだい! わたしはただ、自分の後ろにいる人々を守りたいだけよ!」
強がるルイズだが、実際は図星であった。才人がいない……彼の分まで戦わなくてはならない……
それを意識しすぎるあまり、つい功を焦ってしまうのだ。
虚勢を張るルイズに参るギーシュたちは、ふと彼女に尋ねかけた。
「ところで、サイトの代わりになるとか言ってた男はどこに行ったんだい? いつの間にか、
姿が見えないけれど」
「ランなら……先に戦いに行ったわ」
「ええ!? まさか、あの激戦に生身で飛び込んでいったのかい!? 無茶な!」
マリコルヌが叫んだその時、彼らの目の前を、崖の下から現れたウルトラマンゼロが猛然と
飛び上がっていった!
「シェアッ!」
「おおッ! ウルトラマンゼロだ!」
ゼロの登場には、ギーシュたちも一瞬心が沸き上がった。
ランから変身したゼロは全速力でミラーナイトたちを苦しめるゾイガーの群れに飛び込んで
いきながら、ルナミラクルゼロへと姿を変えた。
『この星にはこれ以上手出しはさせねぇ! ミラクルゼロスラッガー!』
ゼロは数を増やしたスラッガーを飛ばし、ゾイガーを纏めて三体滅多切りにして爆散させた。
ゾイガーの超スピードをも超える早業であった。
「ピアァ――――ッ!」
『レボリウムスマッシュ!』
ルナミラクルゼロの超能力でゾイガーと同等のスピードを出しながら、手の平から発する
衝撃で片っ端から弾き飛ばしていく。ゼロもまた才人の分まで戦おうとしているのだが、
ルイズとは違ってあくまで冷静に、それでいて闘志を燃やしていつも以上の力を発揮する
ことに成功していた。
『助かりました、ゼロ!』
『ここから盛り返すぞ!』
ゼロの加勢によってウルティメイトフォースゼロが徐々に押していく。それに合わせて、
人間たちの心にも希望が灯っていく。
「おお、すごい! さすがゼロ!」
「この調子ならいけるわ! 生き残りは、わたしの“爆発”で纏めて地上に叩き落とせば……」
意気込むルイズだったが……彼女たちは、すぐに思い知らされることとなる。
あれほど手強かったゾイガーが、真の戦いの『前座』でしかなかったことを。
「プオオォォォォ――――――――!!」
怒濤の勢いを見せていたゼロだったが、突如谷底から長く巨大な触手が伸びてきて、彼を
はたき落としたのだ。
『うおぉッ!?』
「あぁッ!? ゼロがッ!」
「何事だ!? 触手!?」
不意打ちを食らったゼロが谷底に落下。すぐに起き上がるものの、彼はそこで目の前に
現れた『もの』を目にして驚愕する。
『な、何だ! 闇!?』
ゼロの眼前に、広大な谷を埋め尽くそうとしているかのように、『闇』としか言いようない
もやのようなものが立ち込めているのだ。いや……その『闇』は凝縮されていき、ゼロをも
超える巨体の怪物を形作っていく。
「プオオォォォォ――――――――!!」
ルイズたちもその怪物の姿を目にして、一斉に絶句した。
「な、何だ、あの化け物の異常な姿は……! いくら何でもおかしいだろう……!」
「しかもでかい……! ゼロが子供みたいだ……!」
ギーシュが『異常』と称したその怪物の姿は、巻貝かアンモナイトから怪物の首と四肢、
触手が生えているかのようなもの。しかもその眼は、下顎についている。まるで顔の上下が
逆になっているようだ。顔の上下が逆の生物が他にいるだろうか?
それに全高が百五十メイル辺りもある。ゼロの倍以上だ! そして全身から発せられる
プレッシャーは、並みの怪獣の比ではない。距離の離れている聖堂騎士隊や民兵が、一目散に
逃げ出してしまったほどだ。
ゼロはこの闇の怪物の名を、戦慄とともに口にした。
『邪神ガタノゾーア……! こんな奴までいやがったか……!』
それは広い宇宙でも特に恐れられる名前の一つだ。かつてネオフロンティアスペースの
地球の超古代文明を滅ぼし、現行文明もまた滅ぼしかけたほどの大怪物である! その力は
計り知れないものに違いない。
『だがッ! 俺は負けねぇぜッ!』
ゼロはストロングコロナゼロになって、超巨大なガタノゾーアにも恐れずに果敢に挑んでいく。
『おおおぉぉぉッ!』
「プオオォォォォ――――――――!!」
一瞬で距離を詰めて、鉄の拳を真正面からぶち込む! ……が、ガタノゾーアは全くびくとも
しなかった。
「プオオォォォォ――――――――!!」
ガタノゾーアは少しの身動きもしないまま、全身からエネルギーをほとばしらせてゼロを
弾き返す。
『ぐあッ!?』
吹っ飛ばされたゼロにガタノゾーアの触手が襲い掛かり、首に巻きついて締め上げる。
『ぐッ、ぐぅぅぅぅ……!』
必死に触手に抗うゼロだが、ストロングコロナのパワーを以てしてもなかなか引き千切る
ことが出来ない。延々と苦しめられるゼロ。
『何て野郎だ……! ゼロを簡単にあしらってやがるッ!』
おののくグレンファイヤー。しかし仲間たちはゾイガーに足止めされており、ゼロの救援に
向かうことが出来ないでいた。
『ぜあぁッ!』
ようやく触手を千切って拘束から逃れたゼロ。だがこれはガタノゾーアに無数にある触手の
一本でしかないのだ。
「プオオォォォォ――――――――!!」
ガタノゾーアは触手の数を増やし、更に巨大なハサミつきの触手を伸ばしてゼロを追撃。
ハサミはゼロの上半身ほどもあるサイズだ。
『うおぉッ! ぐあぁぁッ!』
大量の触手を叩きつけられて、さしものゼロもどんどんと追いつめられていく。カラー
タイマーも危険を報せ、このままでは極めてまずい。
『ぐッ……はぁぁぁぁぁぁぁッ!』
全身からエネルギーを発して触手を吹き飛ばした一瞬の隙に、ゼロは決死の反撃に転ずる。
『ガルネイトバスタァァァ―――――ッ!』
全力を込めた光線をガタノゾーアに叩き込む! 灼熱の光線はガタノゾーアの中央に炸裂し、
ガタノゾーアの動きが停止した。
「決まったッ!」
ぐっと手を握り締めるルイズたち。――しかし、
「プオオォォォォ――――――――!!」
ガタノゾーアが停止していたのはほんのわずかな時間だけであった! それ以外は、通用した
様子が見られない。
『なッ……!?』
動揺するゼロ。その隙が命取りとなり、触手のハサミに両肩を掴まれて動きを封じられてしまった。
『しまったッ! うおおぉぉ……!』
もがいて逃れようとするゼロだったが……既に遅かった。
「プオオォォォォ――――――――!!」
ガタノゾーアから暗黒の光線が照射され、ゼロのカラータイマーを貫いた!
『がッ……!?』
ゼロの視界から色が消える。そして……カラータイマーが瞬く間に石化し、ゼロの全身も
完全に石化してしまった……!
「ぜ、ゼロッ!?」
『ゼロぉッ!』
『ゼロぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!』
絶叫する仲間たち。しかし石化したゼロは物一つ言わず、ガタノゾーアの触手に突き
飛ばされて谷底に倒れる。
「ウルトラマンゼロが、負けた……」
「プオオォォォォ――――――――!!」
ゼロを石像に変えたガタノゾーアが、勝ち誇るように咆哮。ルイズはそれに、キッと怒りの
眼差しを向けた。
「よくもゼロを……! ありったけの“爆発”を食らわせてやるわ!!」
激しい怒りを燃やすルイズ。しかし相手はゼロを一蹴するほどの規格外の化け物。“爆発”も
通用するかどうか。
だがやらねばならない。ゼロの仇を取るのだ! とルイズは呪文を唱えるのだが……。
「グガアアアア! ギャアアアアアアアア!」
突然新たな怪獣の鳴き声が、下から起こった。直後、ルイズたちの立っている崖に亀裂が走る。
「あ、危ないッ!」
「ルイズ、下がるんだッ!」
「放してッ! あいつをぶっ飛ばさなきゃ!」
「その前にきみが転落死するぞ!?」
危険を察知したオンディーヌが慌てて、ルイズを抱えながら退避。それがぎりぎり間に合い、
崖の崩落から逃れることが出来た。
しかし崩れた崖の中から、一体の新たな怪獣が出現したのだった!
「グガアアアア! ギャアアアアアアアア!」
ガタノゾーアのしもべの怪獣ゴルザ! それもマグマのエネルギーを吸収することで肉体を
強化した個体だ! 戦いの騒乱に紛れて、地中を掘り進んできたのだ。
「わッ、わああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――――!!」
一斉に悲鳴を発するオンディーヌ。何せ怪獣は目と鼻の先だ!
『彼らが危ないッ!』
焦るミラーナイトたちだが、未だにゾイガーの群れに苦戦していて救援に回ることは
出来なかった。ルイズたちを助けられる者が、この場には誰もいない!
「くぅッ……!」
目の前にそびえ立つゴルザを憎々しげに見上げるルイズ。しかし山のような怪獣に対して、
彼女はあまりにちっぽけであった。
ガリアから飛び立ち、今まさにアクイレイアを狙ってロマリア艦隊を壊滅せしめたゾイガーの
群れは、ロマリア側の虎街道上空にて侵攻を阻止しに出動したウルティメイトフォースゼロと
激しい交戦を繰り広げていた。
『ちっくしょう! こいつら、何てスピードだ! 攻撃が全然当たんねぇぜ!』
空中でファイヤースティックを振るうグレンファイヤーが毒づいた。先ほどからゾイガーへ
向けて如意棒を振り回しているのだが、一体にさえかすりもしない。
『こっちもだ! ジャンミサイルが振り切られるとは……!』
ジャンボットもまた搭載火器をフル使用しているが、ゾイガーの動きがあまりに速すぎて、
ロックオンすらも出来ないありさまであった。
それもそのはず。ゾイガーの飛行速度はネオフロンティアスペースの当時の主力戦闘機
ガッツウィングはもちろんのこと、高速型のブルートルネードも、果てはマキシマオーバー
ドライブ搭載のスノーホワイトでさえ追いつけないほどの常軌を逸した速さなのだ。生半可な
攻撃では、ゾイガーの影を捉えることすら出来ない。それが何体もいるという恐ろしさ!
「ピアァ――――ッ!」
それほどのスピードを出しながら縦横無尽に飛び回るゾイガーたちは、口から光弾を吐いて
ジャンボットとグレンファイヤーを一方的に攻撃する。
『ぐわぁぁッ!』
『うおあぁぁッ! くっそうッ……!』
光弾を肩に被弾し悲鳴を発する二人。歴戦の戦士たるこの二人が大いにてこずるこの怪獣たちに、
怪獣迎撃に出撃したロマリア軍の部隊はますます太刀打ちすることは出来なかった。
「速すぎて目で追うことすら出来ない……! これでは戦いにもならん……!」
ロマリアの聖堂騎士の一人が唖然とつぶやいた。艦隊はまだ残存しているが、ガッツウィングと
比べたらはるかに遅いハルケギニアのフネではゾイガーに対抗することなど到底出来ない。
オストラント号でも不可能である。人間たちは、何も出来ることがなく立ち尽くすばかり。
『はぁッ!』
グレンファイヤーやジャンボットも苦戦する中、ミラーナイトは鏡のトリック全開でゾイガーに
対抗している。空に張り巡らした鏡にミラーナイフを連続反射させることで、一体の羽を切り
飛ばしたのだ。
「ピアァ――――ッ!」
片側の羽を失ってバランスを崩したゾイガーが谷底へ向けて真っ逆さまに転落していった。
それを追いかけるのはグレンファイヤー。
『ようやく一体落としたか! とどめは俺に任せな!』
役割分担をして、グレンファイヤーは地上に落ちたゾイガーを叩く。そのつもりだったのだが……。
『うらぁッ!』
炎の拳を、ゾイガーが弾き返した!
『ん何!?』
「ピアァ――――ッ!」
更にグレンファイヤーを蹴り返すと、残った片側の羽を自ら引っこ抜いて身軽となる。
そして跳ねながらグレンファイヤーに猛然と反撃を行う。
『くッ、飛べなくなっても戦えんのか! 何て手強い奴らだ……!』
さしものグレンファイヤーも冷や汗を垂らした。一体だけでもこれほど隙がないのに、
まだまだ何体もいるのだ!
追いつめられるウルティメイトフォースゼロ。この戦いに、地上から入り込もうとする
人間がただ一人だけいた。
「ウルティメイトフォースゼロが危ないわ! 援護するわよ!」
ルイズだ。虎街道の入り口、戦場を一望できる崖の上で、杖を握り締めながら前に出ようと
するのを、彼女の護衛のギーシュたちが慌てて制止した。
「ルイズ! おい、馬鹿な真似はよせ! 無闇に身を乗り出そうなんて、いくら何でも
命知らずが過ぎる!」
「怪獣の速度を見ろ! 向こうがこっちに気づいたら、まず間違いなく死んだと悟る前に
消し飛ばされるぞ!」
ロマリアは聖女となったルイズの護衛に聖堂騎士隊や民兵の連隊をつけたが、今はどちらも
敵怪獣の強力さにすっかりと怖じ気づいていた。オンディーヌも、ルイズがいなければずっと
身を潜めていたい気分である。
「何言ってるのよ! 隠れてるだけで戦いに勝てる!? ウルティメイトフォースゼロは
勇敢に戦ってるのに、このハルケギニアの貴族のあんたたちはコソコソしようっていうの!?」
怒鳴り散らすルイズだが、ギーシュは反論。
「だからって、きみは無謀だよ! 呪文も唱えないでさ! 何だか昔のきみに戻ってしまった
みたいだよ。やはり、サイトを帰してしまって落ち着きをなくしてるんじゃないのかい?」
その言葉にドキリとするルイズ。
「て、適当なことを言わないでちょうだい! わたしはただ、自分の後ろにいる人々を守りたいだけよ!」
強がるルイズだが、実際は図星であった。才人がいない……彼の分まで戦わなくてはならない……
それを意識しすぎるあまり、つい功を焦ってしまうのだ。
虚勢を張るルイズに参るギーシュたちは、ふと彼女に尋ねかけた。
「ところで、サイトの代わりになるとか言ってた男はどこに行ったんだい? いつの間にか、
姿が見えないけれど」
「ランなら……先に戦いに行ったわ」
「ええ!? まさか、あの激戦に生身で飛び込んでいったのかい!? 無茶な!」
マリコルヌが叫んだその時、彼らの目の前を、崖の下から現れたウルトラマンゼロが猛然と
飛び上がっていった!
「シェアッ!」
「おおッ! ウルトラマンゼロだ!」
ゼロの登場には、ギーシュたちも一瞬心が沸き上がった。
ランから変身したゼロは全速力でミラーナイトたちを苦しめるゾイガーの群れに飛び込んで
いきながら、ルナミラクルゼロへと姿を変えた。
『この星にはこれ以上手出しはさせねぇ! ミラクルゼロスラッガー!』
ゼロは数を増やしたスラッガーを飛ばし、ゾイガーを纏めて三体滅多切りにして爆散させた。
ゾイガーの超スピードをも超える早業であった。
「ピアァ――――ッ!」
『レボリウムスマッシュ!』
ルナミラクルゼロの超能力でゾイガーと同等のスピードを出しながら、手の平から発する
衝撃で片っ端から弾き飛ばしていく。ゼロもまた才人の分まで戦おうとしているのだが、
ルイズとは違ってあくまで冷静に、それでいて闘志を燃やしていつも以上の力を発揮する
ことに成功していた。
『助かりました、ゼロ!』
『ここから盛り返すぞ!』
ゼロの加勢によってウルティメイトフォースゼロが徐々に押していく。それに合わせて、
人間たちの心にも希望が灯っていく。
「おお、すごい! さすがゼロ!」
「この調子ならいけるわ! 生き残りは、わたしの“爆発”で纏めて地上に叩き落とせば……」
意気込むルイズだったが……彼女たちは、すぐに思い知らされることとなる。
あれほど手強かったゾイガーが、真の戦いの『前座』でしかなかったことを。
「プオオォォォォ――――――――!!」
怒濤の勢いを見せていたゼロだったが、突如谷底から長く巨大な触手が伸びてきて、彼を
はたき落としたのだ。
『うおぉッ!?』
「あぁッ!? ゼロがッ!」
「何事だ!? 触手!?」
不意打ちを食らったゼロが谷底に落下。すぐに起き上がるものの、彼はそこで目の前に
現れた『もの』を目にして驚愕する。
『な、何だ! 闇!?』
ゼロの眼前に、広大な谷を埋め尽くそうとしているかのように、『闇』としか言いようない
もやのようなものが立ち込めているのだ。いや……その『闇』は凝縮されていき、ゼロをも
超える巨体の怪物を形作っていく。
「プオオォォォォ――――――――!!」
ルイズたちもその怪物の姿を目にして、一斉に絶句した。
「な、何だ、あの化け物の異常な姿は……! いくら何でもおかしいだろう……!」
「しかもでかい……! ゼロが子供みたいだ……!」
ギーシュが『異常』と称したその怪物の姿は、巻貝かアンモナイトから怪物の首と四肢、
触手が生えているかのようなもの。しかもその眼は、下顎についている。まるで顔の上下が
逆になっているようだ。顔の上下が逆の生物が他にいるだろうか?
それに全高が百五十メイル辺りもある。ゼロの倍以上だ! そして全身から発せられる
プレッシャーは、並みの怪獣の比ではない。距離の離れている聖堂騎士隊や民兵が、一目散に
逃げ出してしまったほどだ。
ゼロはこの闇の怪物の名を、戦慄とともに口にした。
『邪神ガタノゾーア……! こんな奴までいやがったか……!』
それは広い宇宙でも特に恐れられる名前の一つだ。かつてネオフロンティアスペースの
地球の超古代文明を滅ぼし、現行文明もまた滅ぼしかけたほどの大怪物である! その力は
計り知れないものに違いない。
『だがッ! 俺は負けねぇぜッ!』
ゼロはストロングコロナゼロになって、超巨大なガタノゾーアにも恐れずに果敢に挑んでいく。
『おおおぉぉぉッ!』
「プオオォォォォ――――――――!!」
一瞬で距離を詰めて、鉄の拳を真正面からぶち込む! ……が、ガタノゾーアは全くびくとも
しなかった。
「プオオォォォォ――――――――!!」
ガタノゾーアは少しの身動きもしないまま、全身からエネルギーをほとばしらせてゼロを
弾き返す。
『ぐあッ!?』
吹っ飛ばされたゼロにガタノゾーアの触手が襲い掛かり、首に巻きついて締め上げる。
『ぐッ、ぐぅぅぅぅ……!』
必死に触手に抗うゼロだが、ストロングコロナのパワーを以てしてもなかなか引き千切る
ことが出来ない。延々と苦しめられるゼロ。
『何て野郎だ……! ゼロを簡単にあしらってやがるッ!』
おののくグレンファイヤー。しかし仲間たちはゾイガーに足止めされており、ゼロの救援に
向かうことが出来ないでいた。
『ぜあぁッ!』
ようやく触手を千切って拘束から逃れたゼロ。だがこれはガタノゾーアに無数にある触手の
一本でしかないのだ。
「プオオォォォォ――――――――!!」
ガタノゾーアは触手の数を増やし、更に巨大なハサミつきの触手を伸ばしてゼロを追撃。
ハサミはゼロの上半身ほどもあるサイズだ。
『うおぉッ! ぐあぁぁッ!』
大量の触手を叩きつけられて、さしものゼロもどんどんと追いつめられていく。カラー
タイマーも危険を報せ、このままでは極めてまずい。
『ぐッ……はぁぁぁぁぁぁぁッ!』
全身からエネルギーを発して触手を吹き飛ばした一瞬の隙に、ゼロは決死の反撃に転ずる。
『ガルネイトバスタァァァ―――――ッ!』
全力を込めた光線をガタノゾーアに叩き込む! 灼熱の光線はガタノゾーアの中央に炸裂し、
ガタノゾーアの動きが停止した。
「決まったッ!」
ぐっと手を握り締めるルイズたち。――しかし、
「プオオォォォォ――――――――!!」
ガタノゾーアが停止していたのはほんのわずかな時間だけであった! それ以外は、通用した
様子が見られない。
『なッ……!?』
動揺するゼロ。その隙が命取りとなり、触手のハサミに両肩を掴まれて動きを封じられてしまった。
『しまったッ! うおおぉぉ……!』
もがいて逃れようとするゼロだったが……既に遅かった。
「プオオォォォォ――――――――!!」
ガタノゾーアから暗黒の光線が照射され、ゼロのカラータイマーを貫いた!
『がッ……!?』
ゼロの視界から色が消える。そして……カラータイマーが瞬く間に石化し、ゼロの全身も
完全に石化してしまった……!
「ぜ、ゼロッ!?」
『ゼロぉッ!』
『ゼロぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!』
絶叫する仲間たち。しかし石化したゼロは物一つ言わず、ガタノゾーアの触手に突き
飛ばされて谷底に倒れる。
「ウルトラマンゼロが、負けた……」
「プオオォォォォ――――――――!!」
ゼロを石像に変えたガタノゾーアが、勝ち誇るように咆哮。ルイズはそれに、キッと怒りの
眼差しを向けた。
「よくもゼロを……! ありったけの“爆発”を食らわせてやるわ!!」
激しい怒りを燃やすルイズ。しかし相手はゼロを一蹴するほどの規格外の化け物。“爆発”も
通用するかどうか。
だがやらねばならない。ゼロの仇を取るのだ! とルイズは呪文を唱えるのだが……。
「グガアアアア! ギャアアアアアアアア!」
突然新たな怪獣の鳴き声が、下から起こった。直後、ルイズたちの立っている崖に亀裂が走る。
「あ、危ないッ!」
「ルイズ、下がるんだッ!」
「放してッ! あいつをぶっ飛ばさなきゃ!」
「その前にきみが転落死するぞ!?」
危険を察知したオンディーヌが慌てて、ルイズを抱えながら退避。それがぎりぎり間に合い、
崖の崩落から逃れることが出来た。
しかし崩れた崖の中から、一体の新たな怪獣が出現したのだった!
「グガアアアア! ギャアアアアアアアア!」
ガタノゾーアのしもべの怪獣ゴルザ! それもマグマのエネルギーを吸収することで肉体を
強化した個体だ! 戦いの騒乱に紛れて、地中を掘り進んできたのだ。
「わッ、わああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――――!!」
一斉に悲鳴を発するオンディーヌ。何せ怪獣は目と鼻の先だ!
『彼らが危ないッ!』
焦るミラーナイトたちだが、未だにゾイガーの群れに苦戦していて救援に回ることは
出来なかった。ルイズたちを助けられる者が、この場には誰もいない!
「くぅッ……!」
目の前にそびえ立つゴルザを憎々しげに見上げるルイズ。しかし山のような怪獣に対して、
彼女はあまりにちっぽけであった。
「ウアァッ!」
キリエロイドを撃退してブリミルたちの村を救ったかに見えたティガ=才人だったが……
その後すぐに現れた新たな脅威に、まるで太刀打ちできずに叩きのめされていた。
「プオオォォォォ――――――――!!」
その相手とは、邪神ガタノゾーア! 六千年前にも現れていたのだ。そして今まさに才人を
追い詰め、殺そうとしている!
『つ、強すぎる……! こんな奴が現れるなんて……!』
ガタノゾーアはティガのあらゆる攻撃を受けつけない。パワータイプとなって筋力を底上げし、
ハンドスラッシュやデラシウム光流など様々な光線を次々繰り出しているのだが、ガタノゾーアには
少しのダメージも与えられている様子がなかった。
「プオオォォォォ――――――――!!」
「ウワァァァッ!」
ガタノゾーアの触手がティガを殴りつける。ティガはパワータイプになっても力負けし、
ねじり伏せられる。
『だ、駄目だ……! ブリミルさんたちを、守らなきゃなんないのに……!』
もしブリミルが死んでしまったら、現代のルイズたちは全員タイムパラドックスで消滅して
しまうかもしれない。これまでの出逢いが、全てなくなってしまうのだ……。だがエネルギーは
もう残りわずか。ここからどうやったら逆転が出来るのだろうか。
最早打つ手なし。才人は己の無力さを噛み締めるしかない。そう思われた時だった。
「負けるな、ウルトラマン!」
誰もが絶望している中、それでも応援を続ける者が一人。そう、ブリミルである。
「ぼくはそれでも、きみたちが見せてくれる光を信じる! ぼくに何が出来るか分からない
けれど……ぼくも戦うよ! きみたちの、力となるッ!」
懸命な思いをとともに、ブリミルは杖を掲げる。そして才人にとっては聞き慣れた、“爆発”の
呪文を唱え始めた。当たり前と言えば当たり前だが、ルイズのものと同一だ。
しかしその杖先に灯った光は、“爆発”の輝きとは異なるものだと才人には分かった。
『あれは……?』
「こ、この輝きは……? いつもの光り方じゃない……」
「ブリミル、どういうこと?」
呪文を唱えたブリミル本人も何事か分かっていないようだ。問いかけたサーシャが、
あることに気づく。
「ブリミル、杖だけじゃなくあなた自身も光ってるわ!」
「えッ!? うわッ、本当だ!」
ブリミルの身体全体がほのかに光り、その光が杖に集まっていく。杖に灯る輝きはまばゆい
ほどになり、サーシャたちは思わず顔をそらした。
「おぉッ!?」
最高潮に高まった光が勢いよく飛び、ティガのカラータイマーに入り込んでいった。その瞬間、
色が青に戻る。
それだけではない。ティガの肉体にも大きな変化が発生し、黄金色の光に包まれていく!
『こ、この光は!? 身体中に……力がみなぎってくる!!』
思わず興奮する才人。ルイズの虚無魔法で何故か力が回復することは何度かあったが、
今のこれはその比ではない。限界以上に力が湧き上がってくるのだ!
「ハァッ!」
立ち上がったティガの身体が、そのままぐんぐんと巨大化。自分と同等の体躯になっていく
ティガに、ガタノゾーアが初めて狼狽えたように見えた。
ウルトラマンティガは、黄金の光に覆われた最強の形態……グリッターティガとなったのである!
キリエロイドを撃退してブリミルたちの村を救ったかに見えたティガ=才人だったが……
その後すぐに現れた新たな脅威に、まるで太刀打ちできずに叩きのめされていた。
「プオオォォォォ――――――――!!」
その相手とは、邪神ガタノゾーア! 六千年前にも現れていたのだ。そして今まさに才人を
追い詰め、殺そうとしている!
『つ、強すぎる……! こんな奴が現れるなんて……!』
ガタノゾーアはティガのあらゆる攻撃を受けつけない。パワータイプとなって筋力を底上げし、
ハンドスラッシュやデラシウム光流など様々な光線を次々繰り出しているのだが、ガタノゾーアには
少しのダメージも与えられている様子がなかった。
「プオオォォォォ――――――――!!」
「ウワァァァッ!」
ガタノゾーアの触手がティガを殴りつける。ティガはパワータイプになっても力負けし、
ねじり伏せられる。
『だ、駄目だ……! ブリミルさんたちを、守らなきゃなんないのに……!』
もしブリミルが死んでしまったら、現代のルイズたちは全員タイムパラドックスで消滅して
しまうかもしれない。これまでの出逢いが、全てなくなってしまうのだ……。だがエネルギーは
もう残りわずか。ここからどうやったら逆転が出来るのだろうか。
最早打つ手なし。才人は己の無力さを噛み締めるしかない。そう思われた時だった。
「負けるな、ウルトラマン!」
誰もが絶望している中、それでも応援を続ける者が一人。そう、ブリミルである。
「ぼくはそれでも、きみたちが見せてくれる光を信じる! ぼくに何が出来るか分からない
けれど……ぼくも戦うよ! きみたちの、力となるッ!」
懸命な思いをとともに、ブリミルは杖を掲げる。そして才人にとっては聞き慣れた、“爆発”の
呪文を唱え始めた。当たり前と言えば当たり前だが、ルイズのものと同一だ。
しかしその杖先に灯った光は、“爆発”の輝きとは異なるものだと才人には分かった。
『あれは……?』
「こ、この輝きは……? いつもの光り方じゃない……」
「ブリミル、どういうこと?」
呪文を唱えたブリミル本人も何事か分かっていないようだ。問いかけたサーシャが、
あることに気づく。
「ブリミル、杖だけじゃなくあなた自身も光ってるわ!」
「えッ!? うわッ、本当だ!」
ブリミルの身体全体がほのかに光り、その光が杖に集まっていく。杖に灯る輝きはまばゆい
ほどになり、サーシャたちは思わず顔をそらした。
「おぉッ!?」
最高潮に高まった光が勢いよく飛び、ティガのカラータイマーに入り込んでいった。その瞬間、
色が青に戻る。
それだけではない。ティガの肉体にも大きな変化が発生し、黄金色の光に包まれていく!
『こ、この光は!? 身体中に……力がみなぎってくる!!』
思わず興奮する才人。ルイズの虚無魔法で何故か力が回復することは何度かあったが、
今のこれはその比ではない。限界以上に力が湧き上がってくるのだ!
「ハァッ!」
立ち上がったティガの身体が、そのままぐんぐんと巨大化。自分と同等の体躯になっていく
ティガに、ガタノゾーアが初めて狼狽えたように見えた。
ウルトラマンティガは、黄金の光に覆われた最強の形態……グリッターティガとなったのである!