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第百五十一話「ブリミルの贈り物」


ウルトラマンゼロの使い魔
第百五十一話「ブリミルの贈り物」
地中鮫ゲオザーク 登場



 アンリエッタの密命により、ルイズとティファニアをロマリアへと連れてきたオンディーヌ。
そこで待っていたのは、教皇ヴィットーリオからのガリア王ジョゼフ廃位の計画の協力要請だった。
タバサを救うために才人は乗り気であったが、ルイズは彼がまた危険を背負い込むことになる故に
消極的だった。そして返答を保留したまま――間に才人がキリエル人から身に覚えのない復讐を
されるなんてこともあったが――一日が経過した。
 そして早朝、才人は昨晩誘われた通り、ジュリオに連れられ地下のカタコンベまで来ていた。
ひんやりと湿った空気が漂う狭い通路の中、才人がぼやく。
「辛気臭いとこだなぁ。こんなとこで見せたいものって何だよ。お墓とかじゃないだろうな」
「墓というのはある意味で合ってるかもね。でも、眠ってるのは人じゃない」
「はぁ?」
 才人とジュリオが行き着いた場所は、四方に鉄扉がついた円筒状の空間だった。ジュリオは
鉄扉の一つの前に立つと、錠と何重もの鎖を取っ手から外し、錆びついた扉を力ずくで開ける。
その途端に埃が舞い上がり、才人は思わずむせる。
 扉の奥は照明がなく、真っ暗であった。しかしジュリオが部屋中の魔法のランタンに明かりを
灯すことで、その暗闇の中に隠されていたものが才人の目に露わとなった。
「な、何だよこりゃ……」
「驚いたかい?」
 ジュリオが言った通り、才人は目の前に広がった光景に、一瞬にして圧倒されていた。
 手前の棚にところ狭しと並べられているのは、明らかな銃器。しかもハルケギニアの原始的な
ものとは全く違う……地球製のものばかりだった。イギリス製の小銃から始まり、ロシアのAK小銃。
サブマシンガンにアサルトライフル……スーパーガンやウルトラガンなど、歴代の防衛隊の銃器
までもあった。ほとんどは錆で覆われていて、完全に壊れているものもあるが、いくつかは新品
同様にピカピカと光を反射していた。
「見つけ次第、“固定化”で保存したんだが……中には既に壊れていたり、ボロボロだったり
したものもあったんでね」
 ジュリオの言葉が半分くらいしか頭に入ってこないほど、才人はこの部屋に収められている
ものを見回していた。近代の技術による銃火器以外にも、火縄銃やマスケット銃などの古典的な
ものや、日本刀やブーメランなど時代と地方を選ばずに、武器と呼べるものがこれでもかと鎮座
している。ちょっとした博物館のようであった。
「……何でここにこんなものがあるんだ?」
 才人の疑問に答えるジュリオ。
「東の地で……ぼくたちの密偵が何百年もの昔から集めてきた品々さ。向こうじゃ、こういう
ものがたまに見つかるんだ。エルフどもに知られないように、ここまで運ぶのは結構骨だった
らしいぜ」
 言いながら、部屋の一番奥にある、仕切りのカーテンに手を掛けるジュリオ。
「ほら、これなんかは一番大きいものさ。あまりにも大きいんでそのままじゃ運べないって
ことで、一旦解体されてからここで組み立てたそうだぜ。最初から壊れてて使えないのに、
そこまでする必要があったのかは甚だ疑問だけどね」
 カーテンが引かれ、その奥に隠されていたものを目の当たりにした才人が、思わず息を呑む。
 それは、全長五十メイルにまで届きそうな、巨大な足の生えたサメであった。……いや、
ビリビリに破けた皮膚の下から露出しているのは肉ではなく、鋼鉄の人工物。つまり、怪物
ザメに偽装したロボットなのだ。
「巨大生物に偽装したカラクリ。誰が、何のためにこんなけったいなデカブツを造ったんだろうね」
 肩をすくめるジュリオ。今は完全に破壊されていて物言わぬ巨大ロボットは、ネオフロンティア
スペースの地球人が巨人の石像を探し出すため、またその際に正体が露見しないように怪獣に見える
ように作り上げられた、ロボット怪獣ゲオザークである。才人たちのあずかり知るところではないが。
「けどこっちのデカブツはまだ動くみたいだ。動かし方が分からないんだけどね」
 ジュリオがゲオザークから離れ、油布に覆われた小山のようなものに近づき、その油布を
引っ張って取り外した。
 積もった埃がずり落ちた油布によって舞い上がる中、才人は再度目を見張った。
「こ、こんなものまで……」
 武骨ながらもそれが逆に芸術性を感じさせるような黒塗りの車体。下部には四輪と、その後方に
キャタピラが備わっている。そして一番目立つのが、機首より突き出た太く鋭いドリル。側面には、
歴史の教科書で目にしたウルトラ警備隊の紋章がランプの灯りに照らされ燦然と輝いていた。
 地球防衛軍開発の、ウルトラ警備隊に配備された地底戦車であり、史上最大の侵略を仕掛けてきた
ゴース星人の基地を爆破するための特攻で全機失われてしまったはずのマグマライザー。紛れもない
本物だった。
 才人は思わずマグマライザーに手を触れた。その途端、左手のガンダールヴのルーンが
仄かに光った。それが、マグマライザーがまだ生きていることの証明だった。
 マグマライザーに圧倒されている才人の様子を見て、ジュリオが口を開く。
「ぼくたちはね、このような“場違いな工芸品”だけじゃなく、過去に何度も、きみのような
人間と接触している。そう、何百年も昔からね。だから、きみが何者だか、ぼくはよく知っているよ」
「お前……」
「そしてきみは、この“武器”たちの所有者になれる権利を持っている。だから、この“場違いな
工芸品”はきみに進呈しよう」
「権利だと? どういう意味だ?」
「これは元々きみのものなんだよ、ガンダールヴ。きみの“槍”として贈られたものなのさ」
 言いながら、ジュリオは“虚無”の使い魔の歌を唱えた。その中では、神の左手ガンダールヴは、
左手に大剣、右手に長槍を握っていたとある。
「ぼくはヴィンダールヴ。ありとあらゆる獣を手懐けることができる。怪獣は大きすぎて
難しいんだけどね。それでも、既に何匹かはロマリアから遠ざけることに成功してるよ」
 才人はロマリアが、空中大陸のアルビオンと違って地上の国なのに怪獣被害が少ないという
話を聞いた覚えがあるのを思い出した。神官らは始祖ブリミルの威光と喧伝しているそうだが、
ジュリオがそのタネだったという訳だ。
「ミョズニトニルンは、ガリアの怪しい女。マジックアイテムを使いこなす。普通の戦いだったら
最強だろうね。最後の一人は、ぼくもよく知らない。まぁそれは今は関係ない。きみだ、きみ! 
左手の大剣はデルフリンガーのことだよ。でもって、右の長槍……」
「どう見たってこいつらは槍には見えないぜ」
 マグマライザーを指差す才人に、ジュリオは説く。
「槍ってのはそのままの意味じゃない。“間合いが遠い”武器って意味さ。強いってことは、
“間合い”が遠いってことだ。怪獣が何故強いか分かるかい? 尋常じゃないタフさもあるけど、
単純に人間よりずっとでかいからさ。おまけに火や光線も吐く。ただの人間じゃ、鉄砲の弾が
届く範囲にすら近づく前にお陀仏だよ。対してウルトラマンゼロたち巨人は、怪獣と同等の
間合いに、それ以上の破壊光線を発射することで怪獣以上の最強として君臨してる。六千年前の
最強の武器は“槍”だった。それだけの話さ」
 マグマライザーの装甲を叩くジュリオ。
「始祖ブリミルの魔法は未だに聖地にゲートを開き、たまにこういうプレゼントを贈ってくれる。
考えられうる最強の武器……ガンダールヴの“槍”をね。だからこれはきみのものだ。兄弟(ガンダールヴ)」
 才人は胸が震えるのを感じた。スパイダーも、佐々木の乗っていたゼロ戦も……始祖ブリミルの
魔法によって導かれたものだったのだろう。そして、多分自分も……ひょっとしたら、ウルトラマン
ゼロすらも……。
 ゼロは時空の移動中に遭遇した次元嵐を抜ける最中、何かの力に引っ張られて自分と衝突
したと言っていた。
「まぁ、そんな訳できみに進呈するよ。ぼくたちが持っていても、さっき言ったように使い方が
分からないし……作れないし直せない。どんなに強い“槍”だろうが、量産できなきゃ意味はない。
きみたちの世界は、いやはや! とんでもない技術を持っているね。ウチュウ人にだって負けないんじゃ
ないか?」
「聖地にゲート?」
「そうさ。他に考えられるかい? 多分、何らかの“虚無魔法”が開けた穴だ。きっとね」
 才人はここに来て次々知らされた内容に、めまいを覚えそうな気分にすらなった。

「……そんな訳で、こいつをもらってきた」
 昼食後、才人は客室で、姿見からこの場に来てもらったミラーとグレンに、カタコンベから
持ってきた銃器を見せていた。
 レベルスリーバースの地球の一つからゲートを潜り、ハルケギニアへとやってきたその武器の
名は、ディバイトランチャー。ナイトレイダーという組織の標準兵装である、可変光線砲だ。
武器に勘の働くデルフリンガーが、こいつが一番汎用性に優れると勧めたのだ。本来ならば
生体認証で登録者以外は取り扱うことは出来ないのだが、そこはガンダールヴの力でクリアした。
「へぇ~。しっかしすげぇ話だなぁおい。何か色々と地球の人や物品がここに来てるみてぇ
だとは思ってたけどよ、まさかそんな仕掛けがあったとは!」
 ジュリオから伝えられ、才人が話したガンダールヴの“槍”と聖地のゲートの話に、グレンは
感心し切っていた。ミラーもまた、圧倒されたように顎に手をやる。
「その聖地のゲートというのは、要するにスターゲートのようなものなのでしょうね。しかし、
一個人がそれを作り上げようとは……」
『ああ。俺も話だけだったら、多分信じなかった。それだけとんでもねぇ内容だぜ』
 ミラーに同意を示すゼロ。スターゲートとは、多次元宇宙を股に掛けて存在する怪獣墓場の
唯一の恒常的な出入り口であるグレイブゲートのような、宇宙と宇宙をつなぐ扉である。しかし
もちろん、そんな大それたものがそうそう簡単に設置できるものではない。グレイブゲートも、
誰が作ったものなのかは未だ解明されていない。
 それなのに、ブリミルは六千年も機能するほぼ完璧な形のゲートを作り上げたようだ……。
“虚無”の魔法の強力さは、自分たちの想像以上だとゼロたちは感じた。
「けど今はそれよりガリアのことだぜ。ルイズの奴は、作戦に未だに反対してるってか?」
 話題を変更するグレン。才人はうなずく。
「そうみたいだ。どうも不機嫌でな……。せっかくのガリアの王様をやっつける絶好の機会
だってのに、どうして分かってくれないんだ? ルイズの奴」
 ぼやく才人に、ミラーが告げる。
「恐らくルイズは、あなたに危険が及んでほしくないのですよ。サイト、あなたが一番危険な
立場ですからね」
「でも、危険なら今までいくらでもあったじゃないか。どうして今頃……」
 納得できていない才人に、グレンもうんうんうなずいていた。そんな二人にミラーは肩を
すくめる。
「自ら危険を呼び入れようとするのに反対なのでしょう。女性とは、親密な男性相手には
そうするものです」
「うーん……俺にゃあそういう心理はいまいち分かんねぇぜ」
 全く女心に疎いグレンがポリポリ頭をかいた。
「で、そのルイズは今どうしてんだ?」
「ああ、あいつなら教皇聖下に呼ばれてたぜ。“始祖の祈祷書”も持っていって、向こうで
何やってるんだろ……」
 才人がつぶやいたその時、不意にこの部屋の中に、ピコン、と軽快な電子音が鳴り渡った。
「ん? 今の何だ? 何かの着信か?」
「あッ、ごめん俺だ。……えッ!?」
 つい反射的にグレンに答えた才人が、目を見張った。
「着信!? そんな馬鹿な!」
 まさかと思いながら通信端末を引っ張り出すのだが……その画面には確かに、メールの
着信を知らせる表示があった。
 ハルケギニアに来てから、一度も出てくることのなかった表示だ。
『お、おい才人、これって……』
「そんな……どうして、今になって……」
 ゼロも才人も、唖然としていた。様々な機能を持つ端末ではあるが、宇宙を隔てているの
だから、通信の類だけは絶対に出来ないはずなのだ。

 その理由は、ルイズの側の行いにあった。
 ルイズとティファニアはヴィットーリオに、新たな呪文の発見の場に招待されていた。
紆余曲折あってコルベールから“火のルビー”を返却されたことを契機に、新しい“虚無”を
祈祷書の中から見つけ出そうとしたのだった。
 最初に祈祷書を見たティファニアは何も見つけられなかったが、ヴィットーリオは新たな
呪文を得た。
 それは“世界扉(ワールド・ドア)”。その名の通り、ハルケギニアと別の世界を一時的に
つなぐ扉を作り出す呪文。
 その扉を通った電波を端末が受信し……地球からのメールが、才人の元に届いたのだった。

 才人の端末には、何通ものメールが受信された。単なるダイレクトメールもあれば、友人からの
メールもあった。しかし一番多かったのは……母からのメールだった。
 才人は最後のメールを開いて、読んだ。

 才人へ。
 あなたがいなくなってから一年以上が過ぎました。
 今、どこにいるのですか?
 高凪春奈さんがよく元気づけに来てくれます。私は平賀くんに会った、いつか無事に帰って
くるから心配しないでくださいといつも言ってくれます。
 でも、いつかじゃなく今すぐにあなたの無事な姿を見たいのです。
 もしかしたら、メールを受け取れるかもしれないと思い、料金を払い続けています。
 今日はあなたの好きなハンバーグを作りました。
 タマネギを刻んでいるうちに、なんだか泣けてしまいました。
 あなたが何をしていようが、かまいません。
 ただ、顔を見せてください。

 その内に接続は切れたが、受信したメールはそのまま端末にある。
 ぽたりと、画面に涙が垂れる。
「お、おいサイト……」
 グレンが青ざめた顔で言いかけたが、ミラーが静かに首を振りながら止めた。
『……』
 ゼロもまた、何も言葉を発さなかった。

 ルイズは教皇の執務室から客室へと帰ってくる途中だった。
 ヴィットーリオやジュリオは、ルイズが“ワールド・ドア”を用いて才人を元の世界に
帰すようにと言い出すのではないかと考えていたようだが、才人は最早帰ろうと思えば
帰れる身。その上で自分からハルケギニアにいることを選んだのだから、そんなことを
切り出すつもりはなかった。
 けれども、いつか帰還する時のために自分を極力大切にするようにと再度説得するつもりで
戻ってきたのだが……客室の扉の前に、ミラーとグレンが難しい顔で並んでいるのに面食らった。
「二人とも、どうしたの? サイトは……」
 尋ねると、ミラーは口の前に指を立ててルイズに口を閉ざさせてから、ドアを少しだけ
開いて中の様子を見せてくれた。
 才人は、机の前で身体をかがめ、肩を微妙に上下させていた。泣いているのだ、とすぐに分かった。
「ミラー、一体何が……?」
 小声で尋ねると、ミラーが腕組みしながら説明した。
「どうしてなのかは分からないのですが……サイトの端末にメール……手紙が届いたのです」
「手紙……? 誰からの?」
「故郷……母君からです」
「……かわいそうにな……」
 グレンも、ポツリとそれだけつぶやいた。
 ルイズは、頭を殴られたようなショックを感じた。
 自分は、才人がハルケギニアに留まると宣言した時、喜びと幸せを感じていた。
 才人の親がどんな思いでいるのか、そして才人がそれを知った時、どんな思いになるのか……
考えもしなかった。

 翌日。泣き疲れていつの間にか眠ってしまっていた才人は、無理矢理にでも気分を切り換える
ことに決めた。明日は、いよいよ教皇の即位三周年記念式典。ガリアが必ず何らかの動きをする
だろう。その時に、今のような気分のままでいたらいけない。
 それと、昨日のことはルイズには秘密にしておこう。また、自分のせいにして落ち込む
だろうし。……そう考えて、努めていつも通りの調子でルイズに朝の挨拶をしたのだが……。
「おはよう」
 ルイズは昨日までの不機嫌さはどこへ行ったのか、にっこりと笑って挨拶を返した。しかも
いつもの魔法学院の制服ではなく、やけにおめかしした姿だった。その上、こんな時にも関わらず
才人を街のお祭りへ……デートへと連れ出したのだ。才人は訳が分からず、目を白黒させた。
 しかもルイズのおかしさはそれだけに留まらなかった。デート中、ルイズはずっと笑顔を
崩さなかった。才人が何を言っても。パンツを見せろだの、胸を触らせろだの、普段なら烈火の
如く怒り出すような無茶な注文をしても、嫌がるどころか進んでその通りにしたのだった。
ずっと反対していた作戦にも受け入れていた。
 才人は、もしかして寝ている間にアンバランスゾーンに入り込んでしまったのではないかと
変なことまで考えてしまった。
「なぁゼロ、さっきからずっとルイズが変だ。何か知らないか?」
『……』
「ゼロ……?」
 ゼロに尋ねかけても、ゼロも何故か一切口を利かなかった。しかし存在は確かに感じられる。
以前のように、長い眠りに就いている訳でもないようだった。
 どういうことはさっぱり呑み込めない才人を、ルイズはぐいぐい引っ張って祭りを堪能したのであった。

 そして夕方、二人は大聖堂の客室へと帰ってきた。才人はいよいよ我慢ならなくなって、
背を向けているルイズに問いかけた。
「なぁルイズ、お前何で今日はあんなに俺に笑顔を見せたんだ? そろそろ教えてくれよ。
何か理由あってのことなんだろ?」
 するとルイズは、やはり笑顔のまま振りかえって……答えた。
「サイト、これが今までたくさん助けてくれたあなたへの、わたしからの精一杯のお礼の
持ちよ」
「今まで……?」
 ルイズの物言いに、才人は何だか不穏なものを感じた。
 そして、ルイズは続けて言った。
「それに……あなたには、笑顔のわたしを憶えて、故郷に帰ってほしいの。これがわたしの、
最後のわがまま」
 才人は固まった。
「お、俺が、故郷に帰る? 最後のわがまま? お前、何言って……」
「手紙が届いたんですってね。お母さまから」
 一瞬、才人は絶句した。
「聞いたのか……!」
 ルイズはやはり笑顔のままだが、鬼気迫る様子で才人に言いつけた。
「サイト、あなたは帰らなくちゃいけないのよ。今すぐにでも」
「ま、待てルイズ! それは……!」
 才人が取り成そうと言いかけたが、その時に左腕に妙な熱さを感じた。
 思わず左腕を持ち上げると……それまで一時も腕から外れたことのなかったウルティメイト
ブレスレットが、夢の世界の中でさえ消えなかったゼロとのつながりが……そこから消えていた。
「なッ……!?」
 そして気がつけば、自分の目の前に見知らぬ顔立ちの青年が立っていた。しかし顔に覚えは
なくとも、その雰囲気を自分はよく知っていた。
 その青年の左腕に、ウルティメイトブレスレットがあった。
「ゼロッ!?」
「才人……あまりに急になっちまったが、これでお別れだ。勝手かもしれねぇが……お前と
いた時間、とても楽しかったぜ」
 ゼロが自分に、手の平をかざす。
「待って! 待ってくれッ!」
 才人の呼びかけも聞かず、手の平からフラッシュが焚かれた。
 それを最後に、才人の意識が途切れた。

 才人の身体が、ぐらりと傾く。強制的に眠りに就かされた彼をルイズが抱きしめ、その顔を
優しく両手で包んで唇を重ねた。
「さよなら……わたしの優しい人。さよなら、わたしの騎士」
 ひっく、と嗚咽を漏らしたルイズが、ゆっくりと才人をベッドに横たえた。そしてゼロへと
振り返る。
「……いいわ。ゼロ、お願い」
「ああ……」
 ゼロが才人を地球に送り届けるために、ウルトラゼロアイを手に取った。――その寸前に、
鏡からミラーナイトの報せが飛び込んできた。
『ゼロ! ガリアに異様な気配が何十も感じられました! 恐らく、怪獣の大軍団が用意
されています!』
 それに、ルイズは大きく舌打ちする。
「こんな時に……!」
 ゼロは申し訳なさそうに告げる。
「……すまねぇな。ちょいと延期になっちまう。けど才人も一日二日は目を覚まさないだろう。
それまでに、何としてでも片をつけてやるぜ」
「お願い……。わたしも、出来る限りのことをするわ」
 ゼロとともに部屋を出る時に、ルイズは一度だけ振り返った。涙がとめどなく溢れ、頬を伝う。
涙を拭うこともせずに、ルイズはつぶやいた。
「さよなら。わたしの世界で一番大事な人」


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