ウルトラマンゼロの使い魔
第百四十七話「決闘!ウルトラマンゼロ対悪のウルトラ戦士」
ウルトラダークキラー
悪のウルトラ戦士軍団 登場
第百四十七話「決闘!ウルトラマンゼロ対悪のウルトラ戦士」
ウルトラダークキラー
悪のウルトラ戦士軍団 登場
六冊の本の旅を終えた才人とゼロだったが、ルイズの記憶は元に戻らなかった。更にはルイズが
ダンプリメなる謎の人物に、本の中にさらわれてしまった! 才人たちはダンプリメの正体を、
ガラQに説得されたリーヴルから知らされる。ダンプリメは長い年月を経て本に宿った魔力が成長して
誕生した存在であり、人間に関心を持った末に莫大な魔力を秘めているルイズを自分のものにしようと、
リーヴルを脅して今回の事件を仕組んだのであった! そんなことを許せる才人ではない。彼は
リーヴルの手を借りて、ダンプリメが待ち受ける七冊目の世界へと突入していった……!
ダンプリメなる謎の人物に、本の中にさらわれてしまった! 才人たちはダンプリメの正体を、
ガラQに説得されたリーヴルから知らされる。ダンプリメは長い年月を経て本に宿った魔力が成長して
誕生した存在であり、人間に関心を持った末に莫大な魔力を秘めているルイズを自分のものにしようと、
リーヴルを脅して今回の事件を仕組んだのであった! そんなことを許せる才人ではない。彼は
リーヴルの手を借りて、ダンプリメが待ち受ける七冊目の世界へと突入していった……!
「うッ……ここは……」
才人がうっすら目を開けると、そこはもう図書館ではない別の場所であった。本の中の
世界に入ったに違いない。
しかし七冊目の本の世界は、これまでの六冊の世界とは大きく異なっていた。それまでの
本の世界は、様々な宇宙の地球の光景そのままの街や自然で彩られた景観が広がっていたのに、
この世界は360度見渡す限り薄暗い荒野が続いていて、石ころとほこりしかないようであった。
「随分殺風景だな……。至るところに何もないぜ」
「それはそうさ。この本の物語はまだ一文字たりとも書かれていない。だからこの世界には
まだ何もないのさ」
才人の独白に対して、背後から返答があった。才人は即座にデルフリンガーを抜いて振り向いた。
「ダンプリメ!」
果たしてそこにいたのはダンプリメ。才人のことを警戒しているのか、デルフリンガーの刃が
届かない高さで浮遊している。
「物語はこれから綴られるんだ。ウルトラマンゼロ……君たちが敗北し、ボクとルイズの永遠の
本の王国が築かれるハッピーエンドの物語がね」
ダンプリメはすました態度でこちらを見下ろしながら、そんなことを言い放つ。対して才人は、
デルフリンガーの切っ先をダンプリメに向けて言い返した。
「残念だったな。これから書かれるのは、俺たちがルイズを救出して現実世界に帰るハッピー
エンドの物語だ!」
早速ダンプリメに斬りかかっていこうと身構える才人だが、それを察知したダンプリメは
才人から距離を取りつつ告げた。
「まぁ落ち着きなよ。そう勝負を急がずに、前書きでも楽しんでいったらどうだい? たとえば、
ボクがどうして六冊もの本の世界を君たちにさせたのか」
「何?」
自在に宙を舞うダンプリメが逃げに徹していると、才人も狙うのが難しい。相手の動きを
常に警戒しながら、ダンプリメの発言を気に掛ける。
「ルイズを手に入れる上で最大の障害である君たちを排除するため……おおまかに言って
しまえばそういうことだけど、それは旅のどこかで本の怪獣たちに倒されればいいな、
なんて希望的観測じゃないんだよ。ボクも、そんな不確実な方法に頼るほど馬鹿じゃない」
「じゃあ何のためって言うんだ」
才人が聞き返すと、ダンプリメは自分でも言っていたように、遠回りな説明を始める。
「ところでボクは本から生まれた存在なだけに、その知識量はこの世界の誰の追随も許さない
ものと自負している。何せ、トリステインの図書館の蔵書数がそのままボクの知識だからね。
それは世界の全てを知っているということに等しい。それこそあらゆることをボクは知っているし
実際に行うことも出来る……剣術も間合いの取り方だって達人のレベルさ」
いつの間にか、ダンプリメが剣を手に才人の背後にいた! 間一髪察知した才人は振り向きざまに、
相手の斬撃をデルフリンガーで弾く。
「図に乗るな! いくら本の内容を全部知ってるからって、世界の全てを知った気でいるのは
自惚れだぜ!」
「そうだね。逆に言えば、本に書かれてないことをボクは知らない。そう、君の中の光の戦士、
ウルトラマンゼロ。それなんかがいい例だ」
単なる余興だったのか、剣を弾かれても平然としているダンプリメは、才人の胸の内を指差した。
「ハルケギニアの外の世界からやって来て、超常的な力であらゆる敵を粉砕する無敵の戦士。
その力の前では、どこまで行っても本の世界から外に出ることは出来ないボクは呆気なく
粉砕されてしまうだろう。そう考えたボクは、リーヴルを通じてある策を実行した。無敵の
ウルトラマンゼロを『本の中の登場人物』にしてしまうというね」
「何!?」
ここまでの説明で才人も、ダンプリメの狙いが薄々分かってきた。
「本の中に引き込んでしまえば、ボクは相手の能力を分析することが出来る。六冊分もの
旅をさせて、既にウルトラマンゼロの力は隅々まで把握してるよ。……だけど、狙いは
それだけじゃあないんだ」
「まだあるってのか!」
「旅の中で、君たちは度々その本の世界には本来存在しない怪獣と戦っただろう。あれらは
ボクの介入で出現したんだ。何でそんなことが出来たのかって? それはこの『古き本』の
力によるものさ!」
ダンプリメが自慢げに取り出して見せつけたのは一冊の本。それは……。
「怪獣図鑑!?」
どこで出版されたものか、古今東西の様々な怪獣の情報が記載されている図鑑であった。
そんなものまでトリステインに流れ着いていたのか。
「それだけじゃない。本の中の存在も生きてるんだよ。本の中の怪獣が君たちに倒されるごとに
生じた怨念のエネルギーも、ボクは集めてたんだ。そういうこともボクは出来るんだよ」
それは黒い影法師の力か。ダンプリメはそんな能力まで学習していたのだ。
そしてダンプリメの周囲に、六つの禍々しく青白い人魂が出現する。
「……それが真の狙いかよ!」
「さぁ、機は熟した。ウルトラマンゼロへの怨念が一つになり、今こそ誕生せよ! ゼロを
上回る最強の戦士よッ!」
ダンプリメの命令により人魂が一つになり、マイナスエネルギーも相乗効果によって膨れ上がる。
そして人魂が巨大化して戦士の形になっていった!
「あ、あれは……!」
新たに生まれた、邪悪な力をたぎらせる巨人の戦士を見上げて、才人は思わずおののいた。
あまりにもおぞましいオーラを湛えた異形の姿だが、胸の中心に発光体を持つその特徴は、
明らかにウルトラ戦士を模していた。頭部には四本ものウルトラホーン、腕にはスラッガーが
生えていて、様々なウルトラ戦士の特徴を有しているようである。
「目には目を。歯には歯を。古い言葉だが、ウルトラマンを葬るのにも闇のウルトラマンが
最もふさわしいだろう。君たちウルトラ戦士を抹殺する闇の戦士……ウルトラダークキラー
とでも呼ぼうかな」
「馬鹿な真似はよせ! 闇の力ってのは、手を出したら取り返しがつかないことになるぞッ!
今ならまだ間に合う!」
警告を飛ばす才人だが、ダンプリメは取り合わず冷笑を浮かべるだけだった。
「おやおや、ウルトラダークキラーを前にして臆病風に吹かれちゃったかな? 君が勇士と
いうのは、ボクの買い被りだったかな」
「……どんなことになっても知らねぇぞッ!」
才人はやむなくウルトラゼロアイを装着して変身を行う。
「デュワッ!」
才人の身体が光り輝き、この暗い世界を照らそうとするかのように閃光を発するウルトラマン
ゼロが立ち上がった。
「ふふ、いよいよ最後の決戦の始まりだ。さぁウルトラダークキラーよ、恨み重なるウルトラマン
ゼロをその手で闇に還すがいい!」
ダンプリメの命令によって、ウルトラダークキラーが低いうなり声を発しながら腕のスラッガーで
ゼロに斬りかかってきた!
「セアッ!」
こちらもゼロスラッガーを手にして対抗するゼロだが、ダークキラーの膂力は尋常ではなく、
押し飛ばされて後ろに滑った。
『くそッ、とんでもねぇパワーだな……!』
ダークキラーは倒した本の怪獣全ての怨念の結集体というだけあり、力が途轍もないレベル
だということが一度の衝突だけでゼロには感じられた。
『こいつは全力で行かねぇと駄目なようだな! デルフ!』
そこでゼロはゼロスラッガーとデルフリンガーを一つにして、ゼロツインソードDSを作り出した。
本の世界では一度も使用していないこれならば、ダンプリメも対策はしていまい。
『こりゃまた歯ごたえのありそうな奴じゃねぇか。相棒、遠慮はいらねぇ。かっ飛ばしな!』
『もちろんだぜ! はぁぁぁぁぁッ!』
ゼロはツインソードを両手に握り締めて、一気呵成にダークキラーへと斬りかかっていった。
ゼロツインソードとダークキラーのスラッガーが激しく火花を散らしながら交差する。
ダークキラーはその内にゼロを突き飛ばすと、スラッガーを腕から切り離して飛ばしゼロへ
攻撃してきた。
「セェェアッ!」
ゼロは一回転して迫るスラッガーをツインソードで弾き返す。スラッガーがダークキラーの
腕に戻った。
『なかなかやるじゃねぇか……』
一旦体勢を整えて、ひと言つぶやくゼロ。ダークキラーの戦闘力はかなりのもので、
ゼロツインソードを武器にしてもやや押されるほどであった。しかし、ゼロは決して戦いを
あきらめたりはしない。どんな相手だろうとも最後まで立ち向かい、勝利をもぎ取る覚悟だ。
だが、この時にダンプリメが次のように言い放った。
「そっちもさすがにやるものだね。このダークキラーに食い下がるなんて。……だけど、
ボクはより確実に君を倒す手段を用意してるんだよ」
『何!?』
「さぁ、ここからが本番だッ!」
パチンと指を鳴らすダンプリメ。それを合図にしてダークキラーの身体から怨念のパワーが
次々と切り離されて飛び散り、それぞれ実体と化してゼロを取り囲む。
それらは全て、ダークキラーと同じように暗黒のウルトラ戦士の形を成した!
『な、何だと……!?』
カオスロイドU、カオスロイドS、カオスロイドT、ダークキラーゾフィー、ダークキラージャック、
ダークキラーエース、ウルトラマンシャドー、イーヴィルティガ、ゼルガノイド、カオスウルトラマン、
カオスウルトラマンカラミティ、ダークメフィスト……ウルトラダークキラーも含めたら何と十三人にも
及ぶ悪のウルトラ戦士軍団! ゼロはすっかり囲まれてしまった!
『おいおいおい……こいつぁ絶体絶命って奴じゃねえか?』
口調はおちゃらけているようだが、その実かなり本気でデルフリンガーが言った。
「行くがいい、ボクの暗黒の軍勢よ! 恨み重なるウルトラマンゼロを葬り去れッ!」
ダンプリメの号令により、悪のウルトラ戦士たちが一斉にゼロへと襲いかかる! ゼロは
ツインソードを握り直して身構える。
『くぅッ!?』
カオスロイドやダークキラーたちが飛びかかってくるのを必死でかわし、ツインソードを振り抜いて
ウルトラマンシャドーやゼルガノイドを牽制するゼロ。だが悪のウルトラ戦士は入れ替わり立ち代わりで
攻撃してくるので、反撃の糸口を掴むことが出来ない。
そうして手をこまねいている内に、カオスロイドSのスラッガー、ウルトラマンシャドーの
メリケンパンチにツインソードが弾き飛ばされてしまった。
『し、しまった!』
回収しようにも、カオスウルトラマンたちやダークメフィストが立ちはだかって妨害してきた。
立ち往生するゼロをイーヴィルティガ、ゼルガノイドが光線で狙い撃ってくる。
『うおぉッ!』
懸命に回避するゼロだったが、十三人もの数から狙われてそうそう逃げ切れるものではない。
ウルトラダークキラーを始めとした悪のウルトラ戦士たちの光線の集中砲火を食らい、大きく
吹っ飛ばされた。
『ぐはあぁぁぁッ!』
悪のウルトラ戦士はどれも本当のウルトラ戦士に迫るほどの恐るべき戦闘能力を持っている。
しかもゼロがたった一人なのに対し、二桁に及ぶ人数だ。多勢に無勢とはこのことで、ゼロはもう
なす術なくリンチにされている状態であった。
完全に追いつめられているゼロのありさまに、ダンプリメが愉快そうに高笑いした。
「ははは……! 実質一人で乗り込んでくるからこんなことになるのさ。仲間を危険な罠から
守りたかったのかもしれないけど、一緒に本の世界の中に入る方が正解だったのさ」
今もなお袋叩きにされているゼロを見やりつつ、勝ち誇って語るダンプリメ。
「君はこれまで、一人の力だけで勝ってきた訳じゃないようだね。仲間の助けを受けることも
あった。……だけど、この本の世界では君の仲間なんてどこにもいない。君は独りなのさ、
ヒラガ・サイト……ウルトラマンゼロッ!」
最早エネルギーもごくわずかで、息も絶え絶えの状態のゼロにウルトラダークキラーが
カラータイマーからの光線でとどめを刺そうとする……!
その時であった。
「それは違うわ!」
突然、ダンプリメのものではない甲高い声……才人たちにとって非常に慣れ親しんだ声音が
響き渡り、ダークキラーがどこからともなく発生した爆発を受けてよろめいた。
恐るべき暗黒の戦士のウルトラダークキラーの体勢を崩すほどの爆撃……それも才人たちは
よく覚えがあった。
『ま、まさか……!』
ゼロが振り向くと、その視線の先に……桃色のウェーブが掛かった髪の少女が腰に手を当て、
無い胸を張っているではないか!
『ルイズッ!!』
才人は歓喜や驚愕、疑問など様々な感情が入り混じった叫び声を発した。また驚き、動揺
しているのはダンプリメも同じだった。
「そ、そんな馬鹿な! ルイズの意識は確かに眠らせていたはず……それがどうしてこの場に
いるんだ!?」
ルイズはダンプリメの疑問の声が聞こえなかったかのように、ゼロに向かって叫んだ。
「ゼロ、しゃんとしなさい! あなたは独りなんかじゃない。……本の世界でも、あなたは
たくさんの人を助けて、絆を紡いでいったんでしょう? わたし、覚えてるわよ!」
そして空の一角を指し示す。
「ほら、みんなが駆けつけてくれたわよ!」
ルイズの指差した方向から、ロケット弾や光弾が雨あられと飛んできて、ゼロに光線を
発射しようとしていたカオスロイドU、S、カオスウルトラマン、カラミティの動きを阻止した。
『あれは……!』
ゼロの目に、この場に猛然と駆けつけてくるいくつもの航空機の機影が映った。
ジェットビートル、ウルトラホーク、テックライガー、ダッシュバード! どれも各本の世界で
共闘した防衛チームの航空マシンだ!
「何だって……!?」
またまた絶句するダンプリメ。だがそれだけではなかった。
「彼らだけじゃないわ。ほら見て! みんなやって来たわよ!」
各種航空機の編隊に続いて飛んでくるのは……あれはウルトラマン! ウルトラセブン!
ゾフィー! ジャック! エース! タロウ! コスモスにジャスティス! マックス!
ティガにダイナにガイアも! 計十二人ものウルトラ戦士がマッハの速度で飛んできて、
ゼロを守るようにその前に着地してずらりと並んだ。さすがの悪のウルトラ戦士たちも、
この事態にはどよめいてひるんでいる。
『み、みんな……!』
声を絞り出す才人。最早言うまでもないだろう。彼らは六冊の本の世界の旅の中、才人と
ゼロが出会い、助け、助けられた者たちである。
才人は最後の旅の終わり際にティガ=ダイゴが言っていた言葉を思い出した。「この恩は
必ず返す」……その約束を果たしに来てくれたのだ!
『みんな、本の世界の枠を超えて、助けに来てくれたのか……!』
強く胸を打たれるゼロ。彼はコスモスとジャスティスからエネルギーを分け与えてもらって、
力がよみがえった。
そしてルイズが救援のウルトラ戦士たちに告げるように、高々と宣言した。
「さぁ、行きましょう! このウルトラマンゼロの物語をハッピーエンドにするために!!」
才人がうっすら目を開けると、そこはもう図書館ではない別の場所であった。本の中の
世界に入ったに違いない。
しかし七冊目の本の世界は、これまでの六冊の世界とは大きく異なっていた。それまでの
本の世界は、様々な宇宙の地球の光景そのままの街や自然で彩られた景観が広がっていたのに、
この世界は360度見渡す限り薄暗い荒野が続いていて、石ころとほこりしかないようであった。
「随分殺風景だな……。至るところに何もないぜ」
「それはそうさ。この本の物語はまだ一文字たりとも書かれていない。だからこの世界には
まだ何もないのさ」
才人の独白に対して、背後から返答があった。才人は即座にデルフリンガーを抜いて振り向いた。
「ダンプリメ!」
果たしてそこにいたのはダンプリメ。才人のことを警戒しているのか、デルフリンガーの刃が
届かない高さで浮遊している。
「物語はこれから綴られるんだ。ウルトラマンゼロ……君たちが敗北し、ボクとルイズの永遠の
本の王国が築かれるハッピーエンドの物語がね」
ダンプリメはすました態度でこちらを見下ろしながら、そんなことを言い放つ。対して才人は、
デルフリンガーの切っ先をダンプリメに向けて言い返した。
「残念だったな。これから書かれるのは、俺たちがルイズを救出して現実世界に帰るハッピー
エンドの物語だ!」
早速ダンプリメに斬りかかっていこうと身構える才人だが、それを察知したダンプリメは
才人から距離を取りつつ告げた。
「まぁ落ち着きなよ。そう勝負を急がずに、前書きでも楽しんでいったらどうだい? たとえば、
ボクがどうして六冊もの本の世界を君たちにさせたのか」
「何?」
自在に宙を舞うダンプリメが逃げに徹していると、才人も狙うのが難しい。相手の動きを
常に警戒しながら、ダンプリメの発言を気に掛ける。
「ルイズを手に入れる上で最大の障害である君たちを排除するため……おおまかに言って
しまえばそういうことだけど、それは旅のどこかで本の怪獣たちに倒されればいいな、
なんて希望的観測じゃないんだよ。ボクも、そんな不確実な方法に頼るほど馬鹿じゃない」
「じゃあ何のためって言うんだ」
才人が聞き返すと、ダンプリメは自分でも言っていたように、遠回りな説明を始める。
「ところでボクは本から生まれた存在なだけに、その知識量はこの世界の誰の追随も許さない
ものと自負している。何せ、トリステインの図書館の蔵書数がそのままボクの知識だからね。
それは世界の全てを知っているということに等しい。それこそあらゆることをボクは知っているし
実際に行うことも出来る……剣術も間合いの取り方だって達人のレベルさ」
いつの間にか、ダンプリメが剣を手に才人の背後にいた! 間一髪察知した才人は振り向きざまに、
相手の斬撃をデルフリンガーで弾く。
「図に乗るな! いくら本の内容を全部知ってるからって、世界の全てを知った気でいるのは
自惚れだぜ!」
「そうだね。逆に言えば、本に書かれてないことをボクは知らない。そう、君の中の光の戦士、
ウルトラマンゼロ。それなんかがいい例だ」
単なる余興だったのか、剣を弾かれても平然としているダンプリメは、才人の胸の内を指差した。
「ハルケギニアの外の世界からやって来て、超常的な力であらゆる敵を粉砕する無敵の戦士。
その力の前では、どこまで行っても本の世界から外に出ることは出来ないボクは呆気なく
粉砕されてしまうだろう。そう考えたボクは、リーヴルを通じてある策を実行した。無敵の
ウルトラマンゼロを『本の中の登場人物』にしてしまうというね」
「何!?」
ここまでの説明で才人も、ダンプリメの狙いが薄々分かってきた。
「本の中に引き込んでしまえば、ボクは相手の能力を分析することが出来る。六冊分もの
旅をさせて、既にウルトラマンゼロの力は隅々まで把握してるよ。……だけど、狙いは
それだけじゃあないんだ」
「まだあるってのか!」
「旅の中で、君たちは度々その本の世界には本来存在しない怪獣と戦っただろう。あれらは
ボクの介入で出現したんだ。何でそんなことが出来たのかって? それはこの『古き本』の
力によるものさ!」
ダンプリメが自慢げに取り出して見せつけたのは一冊の本。それは……。
「怪獣図鑑!?」
どこで出版されたものか、古今東西の様々な怪獣の情報が記載されている図鑑であった。
そんなものまでトリステインに流れ着いていたのか。
「それだけじゃない。本の中の存在も生きてるんだよ。本の中の怪獣が君たちに倒されるごとに
生じた怨念のエネルギーも、ボクは集めてたんだ。そういうこともボクは出来るんだよ」
それは黒い影法師の力か。ダンプリメはそんな能力まで学習していたのだ。
そしてダンプリメの周囲に、六つの禍々しく青白い人魂が出現する。
「……それが真の狙いかよ!」
「さぁ、機は熟した。ウルトラマンゼロへの怨念が一つになり、今こそ誕生せよ! ゼロを
上回る最強の戦士よッ!」
ダンプリメの命令により人魂が一つになり、マイナスエネルギーも相乗効果によって膨れ上がる。
そして人魂が巨大化して戦士の形になっていった!
「あ、あれは……!」
新たに生まれた、邪悪な力をたぎらせる巨人の戦士を見上げて、才人は思わずおののいた。
あまりにもおぞましいオーラを湛えた異形の姿だが、胸の中心に発光体を持つその特徴は、
明らかにウルトラ戦士を模していた。頭部には四本ものウルトラホーン、腕にはスラッガーが
生えていて、様々なウルトラ戦士の特徴を有しているようである。
「目には目を。歯には歯を。古い言葉だが、ウルトラマンを葬るのにも闇のウルトラマンが
最もふさわしいだろう。君たちウルトラ戦士を抹殺する闇の戦士……ウルトラダークキラー
とでも呼ぼうかな」
「馬鹿な真似はよせ! 闇の力ってのは、手を出したら取り返しがつかないことになるぞッ!
今ならまだ間に合う!」
警告を飛ばす才人だが、ダンプリメは取り合わず冷笑を浮かべるだけだった。
「おやおや、ウルトラダークキラーを前にして臆病風に吹かれちゃったかな? 君が勇士と
いうのは、ボクの買い被りだったかな」
「……どんなことになっても知らねぇぞッ!」
才人はやむなくウルトラゼロアイを装着して変身を行う。
「デュワッ!」
才人の身体が光り輝き、この暗い世界を照らそうとするかのように閃光を発するウルトラマン
ゼロが立ち上がった。
「ふふ、いよいよ最後の決戦の始まりだ。さぁウルトラダークキラーよ、恨み重なるウルトラマン
ゼロをその手で闇に還すがいい!」
ダンプリメの命令によって、ウルトラダークキラーが低いうなり声を発しながら腕のスラッガーで
ゼロに斬りかかってきた!
「セアッ!」
こちらもゼロスラッガーを手にして対抗するゼロだが、ダークキラーの膂力は尋常ではなく、
押し飛ばされて後ろに滑った。
『くそッ、とんでもねぇパワーだな……!』
ダークキラーは倒した本の怪獣全ての怨念の結集体というだけあり、力が途轍もないレベル
だということが一度の衝突だけでゼロには感じられた。
『こいつは全力で行かねぇと駄目なようだな! デルフ!』
そこでゼロはゼロスラッガーとデルフリンガーを一つにして、ゼロツインソードDSを作り出した。
本の世界では一度も使用していないこれならば、ダンプリメも対策はしていまい。
『こりゃまた歯ごたえのありそうな奴じゃねぇか。相棒、遠慮はいらねぇ。かっ飛ばしな!』
『もちろんだぜ! はぁぁぁぁぁッ!』
ゼロはツインソードを両手に握り締めて、一気呵成にダークキラーへと斬りかかっていった。
ゼロツインソードとダークキラーのスラッガーが激しく火花を散らしながら交差する。
ダークキラーはその内にゼロを突き飛ばすと、スラッガーを腕から切り離して飛ばしゼロへ
攻撃してきた。
「セェェアッ!」
ゼロは一回転して迫るスラッガーをツインソードで弾き返す。スラッガーがダークキラーの
腕に戻った。
『なかなかやるじゃねぇか……』
一旦体勢を整えて、ひと言つぶやくゼロ。ダークキラーの戦闘力はかなりのもので、
ゼロツインソードを武器にしてもやや押されるほどであった。しかし、ゼロは決して戦いを
あきらめたりはしない。どんな相手だろうとも最後まで立ち向かい、勝利をもぎ取る覚悟だ。
だが、この時にダンプリメが次のように言い放った。
「そっちもさすがにやるものだね。このダークキラーに食い下がるなんて。……だけど、
ボクはより確実に君を倒す手段を用意してるんだよ」
『何!?』
「さぁ、ここからが本番だッ!」
パチンと指を鳴らすダンプリメ。それを合図にしてダークキラーの身体から怨念のパワーが
次々と切り離されて飛び散り、それぞれ実体と化してゼロを取り囲む。
それらは全て、ダークキラーと同じように暗黒のウルトラ戦士の形を成した!
『な、何だと……!?』
カオスロイドU、カオスロイドS、カオスロイドT、ダークキラーゾフィー、ダークキラージャック、
ダークキラーエース、ウルトラマンシャドー、イーヴィルティガ、ゼルガノイド、カオスウルトラマン、
カオスウルトラマンカラミティ、ダークメフィスト……ウルトラダークキラーも含めたら何と十三人にも
及ぶ悪のウルトラ戦士軍団! ゼロはすっかり囲まれてしまった!
『おいおいおい……こいつぁ絶体絶命って奴じゃねえか?』
口調はおちゃらけているようだが、その実かなり本気でデルフリンガーが言った。
「行くがいい、ボクの暗黒の軍勢よ! 恨み重なるウルトラマンゼロを葬り去れッ!」
ダンプリメの号令により、悪のウルトラ戦士たちが一斉にゼロへと襲いかかる! ゼロは
ツインソードを握り直して身構える。
『くぅッ!?』
カオスロイドやダークキラーたちが飛びかかってくるのを必死でかわし、ツインソードを振り抜いて
ウルトラマンシャドーやゼルガノイドを牽制するゼロ。だが悪のウルトラ戦士は入れ替わり立ち代わりで
攻撃してくるので、反撃の糸口を掴むことが出来ない。
そうして手をこまねいている内に、カオスロイドSのスラッガー、ウルトラマンシャドーの
メリケンパンチにツインソードが弾き飛ばされてしまった。
『し、しまった!』
回収しようにも、カオスウルトラマンたちやダークメフィストが立ちはだかって妨害してきた。
立ち往生するゼロをイーヴィルティガ、ゼルガノイドが光線で狙い撃ってくる。
『うおぉッ!』
懸命に回避するゼロだったが、十三人もの数から狙われてそうそう逃げ切れるものではない。
ウルトラダークキラーを始めとした悪のウルトラ戦士たちの光線の集中砲火を食らい、大きく
吹っ飛ばされた。
『ぐはあぁぁぁッ!』
悪のウルトラ戦士はどれも本当のウルトラ戦士に迫るほどの恐るべき戦闘能力を持っている。
しかもゼロがたった一人なのに対し、二桁に及ぶ人数だ。多勢に無勢とはこのことで、ゼロはもう
なす術なくリンチにされている状態であった。
完全に追いつめられているゼロのありさまに、ダンプリメが愉快そうに高笑いした。
「ははは……! 実質一人で乗り込んでくるからこんなことになるのさ。仲間を危険な罠から
守りたかったのかもしれないけど、一緒に本の世界の中に入る方が正解だったのさ」
今もなお袋叩きにされているゼロを見やりつつ、勝ち誇って語るダンプリメ。
「君はこれまで、一人の力だけで勝ってきた訳じゃないようだね。仲間の助けを受けることも
あった。……だけど、この本の世界では君の仲間なんてどこにもいない。君は独りなのさ、
ヒラガ・サイト……ウルトラマンゼロッ!」
最早エネルギーもごくわずかで、息も絶え絶えの状態のゼロにウルトラダークキラーが
カラータイマーからの光線でとどめを刺そうとする……!
その時であった。
「それは違うわ!」
突然、ダンプリメのものではない甲高い声……才人たちにとって非常に慣れ親しんだ声音が
響き渡り、ダークキラーがどこからともなく発生した爆発を受けてよろめいた。
恐るべき暗黒の戦士のウルトラダークキラーの体勢を崩すほどの爆撃……それも才人たちは
よく覚えがあった。
『ま、まさか……!』
ゼロが振り向くと、その視線の先に……桃色のウェーブが掛かった髪の少女が腰に手を当て、
無い胸を張っているではないか!
『ルイズッ!!』
才人は歓喜や驚愕、疑問など様々な感情が入り混じった叫び声を発した。また驚き、動揺
しているのはダンプリメも同じだった。
「そ、そんな馬鹿な! ルイズの意識は確かに眠らせていたはず……それがどうしてこの場に
いるんだ!?」
ルイズはダンプリメの疑問の声が聞こえなかったかのように、ゼロに向かって叫んだ。
「ゼロ、しゃんとしなさい! あなたは独りなんかじゃない。……本の世界でも、あなたは
たくさんの人を助けて、絆を紡いでいったんでしょう? わたし、覚えてるわよ!」
そして空の一角を指し示す。
「ほら、みんなが駆けつけてくれたわよ!」
ルイズの指差した方向から、ロケット弾や光弾が雨あられと飛んできて、ゼロに光線を
発射しようとしていたカオスロイドU、S、カオスウルトラマン、カラミティの動きを阻止した。
『あれは……!』
ゼロの目に、この場に猛然と駆けつけてくるいくつもの航空機の機影が映った。
ジェットビートル、ウルトラホーク、テックライガー、ダッシュバード! どれも各本の世界で
共闘した防衛チームの航空マシンだ!
「何だって……!?」
またまた絶句するダンプリメ。だがそれだけではなかった。
「彼らだけじゃないわ。ほら見て! みんなやって来たわよ!」
各種航空機の編隊に続いて飛んでくるのは……あれはウルトラマン! ウルトラセブン!
ゾフィー! ジャック! エース! タロウ! コスモスにジャスティス! マックス!
ティガにダイナにガイアも! 計十二人ものウルトラ戦士がマッハの速度で飛んできて、
ゼロを守るようにその前に着地してずらりと並んだ。さすがの悪のウルトラ戦士たちも、
この事態にはどよめいてひるんでいる。
『み、みんな……!』
声を絞り出す才人。最早言うまでもないだろう。彼らは六冊の本の世界の旅の中、才人と
ゼロが出会い、助け、助けられた者たちである。
才人は最後の旅の終わり際にティガ=ダイゴが言っていた言葉を思い出した。「この恩は
必ず返す」……その約束を果たしに来てくれたのだ!
『みんな、本の世界の枠を超えて、助けに来てくれたのか……!』
強く胸を打たれるゼロ。彼はコスモスとジャスティスからエネルギーを分け与えてもらって、
力がよみがえった。
そしてルイズが救援のウルトラ戦士たちに告げるように、高々と宣言した。
「さぁ、行きましょう! このウルトラマンゼロの物語をハッピーエンドにするために!!」