ウルトラマンゼロの使い魔
第百四十四話「六冊目『大決戦!超ウルトラ8兄弟』(その2)」
双頭怪獣キングパンドン
地獄星人スーパーヒッポリト星人
剛力怪獣キングシルバゴン
超力怪獣キングゴルドラス
風ノ魔王獣マガバッサー
土ノ魔王獣マガグランドキング
水ノ魔王獣マガジャッパ
火ノ魔王獣マガパンドン 登場
第百四十四話「六冊目『大決戦!超ウルトラ8兄弟』(その2)」
双頭怪獣キングパンドン
地獄星人スーパーヒッポリト星人
剛力怪獣キングシルバゴン
超力怪獣キングゴルドラス
風ノ魔王獣マガバッサー
土ノ魔王獣マガグランドキング
水ノ魔王獣マガジャッパ
火ノ魔王獣マガパンドン 登場
ルイズの魔力を奪った『古き本』も遂に最後の一冊となった。最後の本は、かつてウルトラマン
メビウスが赤い靴の少女に導かれて迷い込んだパラレルワールドの地球。そこにはウルトラ戦士は
いないのだが、そんな世界を侵略者が狙っている。才人とゼロは位相のずれた空間で、キングゲスラに
襲われる青年を発見するが、何故かメビウスが現れない。その時ゼロは気がついた。この物語では、
自分たちがメビウスの役割を果たすのだと! キングゲスラを撃退したゼロたちは、青年――
マドカ・ダイゴと邂逅を果たす。
メビウスが赤い靴の少女に導かれて迷い込んだパラレルワールドの地球。そこにはウルトラ戦士は
いないのだが、そんな世界を侵略者が狙っている。才人とゼロは位相のずれた空間で、キングゲスラに
襲われる青年を発見するが、何故かメビウスが現れない。その時ゼロは気がついた。この物語では、
自分たちがメビウスの役割を果たすのだと! キングゲスラを撃退したゼロたちは、青年――
マドカ・ダイゴと邂逅を果たす。
ダイゴに赤い靴の少女から聞かされた、「七人の勇者」のことを話した才人は、それらしい
人たちに心当たりがあるというダイゴに導かれて、ある四人のところへ行った。
「おお、ダイゴ君。そちらは?」
その四人とは、自転車屋のハヤタ、ハワイアンレストラン店主のモロボシ・ダン、自動車
整備工場の郷秀樹、パン屋の北斗星司。……ゼロがよく知っている、ウルトラマン、セブン、
ジャック、エースの地球人としての姿そのままであった。ダイゴは彼らがウルトラ戦士に
変身するのを幻視したのだという。
だがこの世界での彼らは、ウルトラ戦士ではない普通の地球人であった。ウルトラ戦士に
変身する力を秘めているのはまず間違いないであろうが、それはどうやったら目覚めさせる
ことが出来るのだろうか……。
『ゼロ、ウルトラマンメビウスから方法とか聞いてないのか?』
『いや……詳しいこと聞いた訳じゃねぇからなぁ……』
才人が困っているのを見て取って、ダイゴが励ますように告げた。
「まだ、あきらめることないよ。だって……あの四人は、この世界でもヒーローだから。
いくつになっても夢を忘れないって言うか、カッコよくて、小さい頃と同じように
憧れられる、特別な人たち……。だから、きっと思い出すと思うんだ! 自分たちが、
別の世界ではウルトラマンだったってこと!」
「そうですね……俺も信じます!」
ダイゴの呼びかけに才人が固くうなずくと、ダイゴはふとつぶやいた。
「でも、残る三人の勇者は誰なんだろう。この街のどこかにいるのかな」
すると才人が告げる。
「その内の一人は、ダイゴさんだと俺は思います!」
「えぇッ!? 俺!?」
仰天して目を丸くしたダイゴは、ぶんぶん首を振って否定した。
「そ、それはないよ! 僕なんかは、ハヤタさんたちとは全然違うから……夢も途中で
あきらめてしまったし……僕にウルトラマンになる資格なんてないよ」
自嘲するダイゴに、才人は熱心に述べる。
「いいえ。ダイゴさんには強い勇気があるじゃないですか。俺たちが危ない時に、危険に
飛び込んで助言をくれました」
「あ、あの程度のこと、別に普通さ……」
「いえ、勇気があってこそです」
ダイゴに己のことを語る才人。
「俺も初めは、特に取り柄のない普通の人間でした。だけど勇気を持ったから、今でも
ウルトラマンゼロなんです。勇気を持つ人は……誰でもウルトラマンになれます!」
「才人君……」
熱を込めて呼び掛けていた才人だったが、その時にゼロが警戒の声を発する。
『才人ッ! やばいのが近づいてきたぜ!』
「ッ!」
バッと振り返った才人の視線の先では、海から怪しい竜巻が沿岸の工場地区にまっすぐ
上陸してきた。その竜巻が消え去ると、真っ赤な双頭の怪獣が中から姿を現す!
「キイイイイイイイイ! キュイイイイイイ!」
「怪獣!?」
才人は工場区で暴れ始める怪獣に酷似したものを二度見覚えがあった。
「あいつは、パンドン!」
パンドンが強化改造されて生み出された、キングパンドンだ! ダイゴは現実に現れた
怪獣の姿に驚愕する。
「でも、どうして!? 僕の住む世界に、本物の怪獣はいないはずなのに……!」
「誰かが呼び寄せたんです! それが、少女の言った勇者が必要な理由……!」
キングパンドンは火炎弾を吐いて街への攻撃を始める。こうしてはいられない。
「ダイゴさん!」
「……行くんだね……戦いに……!」
うなずいた才人は前に飛び出し、ゼロアイを取り出す。
「デュワッ!」
才人はすぐさまウルトラマンゼロに変身を遂げ、パンドンの前に立ちはだかった! パンドンは
即座に敵意をゼロに向ける。
『さぁ……これ以上の暴挙は二万年早いぜ!』
下唇をぬぐったゼロに、パンドンは火炎弾を連射して先制攻撃を仕掛ける。
「キイイイイイイイイ! キュイイイイイイ!」
『だぁッ!』
だがゼロは相手の出方を読み、素手で火炎弾を全て空に弾いていく。
『行くぜッ!』
頃合いを見て飛び出し、パンドンに飛び掛かろうとするも、その瞬間パンドンは双頭から
赤と青の二色の破壊光線を発射した!
反射的に腕を交差してガードしたゼロだが、光線は防御の上からゼロを押してはね飛ばす。
『うおあッ! 何つぅ圧力だ……!』
キングパンドンは極限まで戦闘に特化された個体。そのパワーは通常種のパンドン、
ネオパンドンをも上回るのだ。
「キイイイイイイイイ! キュイイイイイイ!」
仰向けに倒れたゼロに対し、パンドンは破壊光線を吐き続けて執拗に追撃する。
『ぐわあああぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!』
ゼロの姿が爆炎の中に呑み込まれる。
「キイイイイイイイイ! キュイイイイイイ!」
高々と勝ち誇ったパンドンは、今度は街を手当たり次第に破壊しようとするが……その二つの
脳天に手の平が覆い被さった!
『なんてな!』
「!!?」
ゼロが器用に、パンドンの首を支えにして逆立ちしたのだ!
「キイイイイイイイイ! キュイイイイイイ!」
『自分の攻撃で自分の視界をさえぎってちゃ世話ねぇな! はぁッ!』
ゼロはグルリと回ってパンドンの後頭部に強烈なキックを炸裂した。蹴り飛ばされたパンドンだが
反転して再度火炎弾を連射する。
『そいつは見切ったぜ!』
しかしゼロはゼロスラッガーを飛ばして全弾切り落とし、更にパンドンの胴体も斬りつける。
「キイイイイイイイイ!!」
『行くぜッ! フィニッシュだぁッ!』
左腕を横に伸ばし、ワイドゼロショット! 必殺光線がキングパンドンに命中して、瞬時に
爆散させた!
「やったッ!」
短く歓声を発したダイゴに、ゼロはサムズアップを向ける。ダイゴもサムズアップで応えるが……。
『ッ!』
ゼロの周囲にいきなり透明なカプセルが現れる! ――その寸前に、ゼロは側転でカプセルを
回避した。
『危ねぇッ!』
ぎりぎりでカプセルに閉じ込められるのを逃れたゼロの前に、空から怪しい黒い煙が渦を
巻いて降ってくる。
『ほぉう……よく今のをかわしたものだな。完全な不意打ちのはずだったが……』
『へッ……似たようなことがあったからな』
黒い煙が実体化して出現したのは、ヒッポリト星人に酷似した宇宙人……より頭身が上がり、
力もまた増したスーパーヒッポリト星人だ! 今のはヒッポリトカプセル……捕まっていたら
間違いなくアウトであった。
十八番のカプセルを避けられたヒッポリト星人だが、その態度に余裕の色は消えない。
『だが、お前のエネルギーは既に消耗している。どの道貴様はこのヒッポリト星人に倒される
運命にあるのだ!』
ヒッポリト星人の指摘通り、ゼロのカラータイマーはキングパンドン戦で既に赤く点滅していた。
さすがにダメージをもらいすぎたか。
『ほざきな。テメェをぶっ倒す分には、何ら問題はねぇぜ!』
それでもひるまないゼロであったが、ヒッポリト星人は嘲笑を向ける。
『馬鹿め。怪獣があれで終わりだとでも思ったかッ!』
ヒッポリト星人が片腕を上げると、地面が突如陥没、また空間の一部が歪み、この場に
新たな怪獣が二体も出現する!
「グルウウウウゥゥゥゥ!」
「ギュルウウウウゥゥゥゥ!」
キングゲスラやキングパンドンと同様に、強化改造を施されたキングシルバゴンとキング
ゴルドラスだ! 新たな怪獣の出現に舌打ちするゼロ。
『くッ、まだいやがったか。だが三対一だって俺は負けな……!』
言いかけたところで、空から黒い煙が四か所、ゼロの四方を取り囲むように降り注いだ!
『何!?』
黒い煙はヒッポリト星人の時のように、それぞれが怪獣の姿になる。
「ミィィィィ――――! プォォォ――――――!」
「グルウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
「グワアアアァァァァァ! ジャパッパッ!」
「ガガァッ! ガガァッ!」
鳥のような怪獣、グランドキングに酷似したもの、魚と獣を足し合わせたような怪物、
またパンドンに酷似した個体の四種類。それらは皆額に赤く禍々しい色彩のクリスタルが
埋め込まれていた。
『な、何だこいつらは……!』
この四種は、あるモンスター銀河から生まれた「魔王獣」という種類の怪獣たち。風ノ魔王獣
マガバッサー、土ノ魔王獣マガグランドキング、水ノ魔王獣マガジャッパ、火ノ魔王獣マガパンドン。
内の一体を、現実世界のあるレベル3バースにて封印することになるということを、今のゼロは
まだ知らない。
それより今はこの現状だ。さすがのゼロも、カラータイマーが点滅している状態で七体もの
敵に囲まれるのは厳しいと言わざるを得ない!
「ミィィィィ――――! プォォォ――――――!」
しかし怪獣たちは情け容赦なく攻撃を開始する。まずはマガバッサーが大きく翼を羽ばたかせて
猛烈な突風を作り出し、ゼロに叩きつける。
『うおぉッ!』
「ガガァッ! ガガァッ!」
身体のバランスが崩れたゼロに、マガパンドンが火炎弾を集中させる。
『ぐあぁぁぁッ!』
灼熱の攻撃をゼロはまともに食らってしまった。更にキングシルバゴンも青い火炎弾を吐いて
ゼロを狙い撃ちにする。
「グルウウウウゥゥゥゥ!」
『がぁぁッ! くッ、このぉッ!』
瞬く間に追いつめられるゼロだが、それでもただやられるだけではいられないとばかりに
エメリウムスラッシュを放った。
しかしキングゴルドラスの張ったバリヤーにより、呆気なく防がれてしまう。
「ギュルウウウウゥゥゥゥ!」
ゴルドラスはカウンター気味に角から電撃光線を照射してきた。ゼロはそれを食らって、
更なるダメージを受ける。
『あぐあぁぁッ! くっそぉッ……!』
それでもあきらめることのないゼロ。光線が駄目ならと、頭部のゼロスラッガーに手を掛けたが、
「グワアアアァァァァァ! ジャパッパッ!」
そこにマガジャッパがラッパ状の鼻から猛烈な臭気ガスを噴き出す。
『うわあぁぁぁッ!? くっせぇッ!!』
考えられないレベルの悪臭に、ゼロも我慢がならずに悶絶してしまった。その隙を突いて、
スーパーヒッポリト星人が胸部からの破壊光線をぶちかましてきた。
『うっぐわぁぁぁぁぁぁぁッ!』
逆転の糸口を掴めず、一方的にやられるままのゼロ。ヒッポリト星人は無情にもとどめを宣告する。
『そこだ! やれぇッ!』
「グルウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
マガグランドキングの腹部から超威力の破壊光線が発射され、ゼロの身体を貫く!
『が――!?』
ゼロもとうとう巨体を維持することが叶わなくなり、肉体が光の粒子に分散して消滅してしまった。
「なッ!? さ、才人君ッ!」
ダイゴは大慌てでゼロの消えた地点へと走り出す。一方でゼロを排除したヒッポリト星人は
高々と大笑いした。
『ウワッハッハッハッ! ウルトラマンはこのヒッポリト星人が倒した! これで邪魔者はいない!
人間どもよ、絶望しろぉぉ――――!』
「グルウウウウゥゥゥゥ!」
「ギュルウウウウゥゥゥゥ!」
「ミィィィィ――――! プォォォ――――――!」
「グルウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
「グワアアアァァァァァ! ジャパッパッ!」
「ガガァッ! ガガァッ!」
ヒッポリト星人の命令により、怪獣たちは思いのままに街を破壊し始める。巨体が街中を蹂躙し、
竜巻が街の中心を襲い、ビルが次々地中に沈んでいき、悪臭が広がり、火が街全体を焼いていく。
地獄絵図が展開され始めたのだ。
そんな中でもダイゴは懸命に走り、ゼロの変身が解けた才人が倒れているのを発見した。
すぐに才人の上半身を抱えて起こすダイゴ。
「大丈夫か!? しっかりしてくれ!」
「うぅ……」
才人はひどい重傷であった。ゼロの時にあまりにも重いダメージを受けてしまったのが、
彼の身体にも響いているのだ。
息も絶え絶えの才人であったが、最後に残った力を振り絞って、己を介抱するダイゴの
手を握って告げる。
「あ、後のことはどうか……七人の勇者を見つけて……そして……」
うっすら目を開いて、視界がかすれながらもダイゴの顔をまっすぐ見つめる。
「ダイゴさん……この世界を、救って下さい……!」
「そ、そんな! だから俺は勇者なんて……おい!?」
困惑するダイゴだが、才人はそれを最後に意識の糸が切れた。
「しっかりするんだ! おーいッ!!」
ダイゴの必死の呼びかけが徐々に遠のいていき、才人の意識は闇に沈んでいった……。
人たちに心当たりがあるというダイゴに導かれて、ある四人のところへ行った。
「おお、ダイゴ君。そちらは?」
その四人とは、自転車屋のハヤタ、ハワイアンレストラン店主のモロボシ・ダン、自動車
整備工場の郷秀樹、パン屋の北斗星司。……ゼロがよく知っている、ウルトラマン、セブン、
ジャック、エースの地球人としての姿そのままであった。ダイゴは彼らがウルトラ戦士に
変身するのを幻視したのだという。
だがこの世界での彼らは、ウルトラ戦士ではない普通の地球人であった。ウルトラ戦士に
変身する力を秘めているのはまず間違いないであろうが、それはどうやったら目覚めさせる
ことが出来るのだろうか……。
『ゼロ、ウルトラマンメビウスから方法とか聞いてないのか?』
『いや……詳しいこと聞いた訳じゃねぇからなぁ……』
才人が困っているのを見て取って、ダイゴが励ますように告げた。
「まだ、あきらめることないよ。だって……あの四人は、この世界でもヒーローだから。
いくつになっても夢を忘れないって言うか、カッコよくて、小さい頃と同じように
憧れられる、特別な人たち……。だから、きっと思い出すと思うんだ! 自分たちが、
別の世界ではウルトラマンだったってこと!」
「そうですね……俺も信じます!」
ダイゴの呼びかけに才人が固くうなずくと、ダイゴはふとつぶやいた。
「でも、残る三人の勇者は誰なんだろう。この街のどこかにいるのかな」
すると才人が告げる。
「その内の一人は、ダイゴさんだと俺は思います!」
「えぇッ!? 俺!?」
仰天して目を丸くしたダイゴは、ぶんぶん首を振って否定した。
「そ、それはないよ! 僕なんかは、ハヤタさんたちとは全然違うから……夢も途中で
あきらめてしまったし……僕にウルトラマンになる資格なんてないよ」
自嘲するダイゴに、才人は熱心に述べる。
「いいえ。ダイゴさんには強い勇気があるじゃないですか。俺たちが危ない時に、危険に
飛び込んで助言をくれました」
「あ、あの程度のこと、別に普通さ……」
「いえ、勇気があってこそです」
ダイゴに己のことを語る才人。
「俺も初めは、特に取り柄のない普通の人間でした。だけど勇気を持ったから、今でも
ウルトラマンゼロなんです。勇気を持つ人は……誰でもウルトラマンになれます!」
「才人君……」
熱を込めて呼び掛けていた才人だったが、その時にゼロが警戒の声を発する。
『才人ッ! やばいのが近づいてきたぜ!』
「ッ!」
バッと振り返った才人の視線の先では、海から怪しい竜巻が沿岸の工場地区にまっすぐ
上陸してきた。その竜巻が消え去ると、真っ赤な双頭の怪獣が中から姿を現す!
「キイイイイイイイイ! キュイイイイイイ!」
「怪獣!?」
才人は工場区で暴れ始める怪獣に酷似したものを二度見覚えがあった。
「あいつは、パンドン!」
パンドンが強化改造されて生み出された、キングパンドンだ! ダイゴは現実に現れた
怪獣の姿に驚愕する。
「でも、どうして!? 僕の住む世界に、本物の怪獣はいないはずなのに……!」
「誰かが呼び寄せたんです! それが、少女の言った勇者が必要な理由……!」
キングパンドンは火炎弾を吐いて街への攻撃を始める。こうしてはいられない。
「ダイゴさん!」
「……行くんだね……戦いに……!」
うなずいた才人は前に飛び出し、ゼロアイを取り出す。
「デュワッ!」
才人はすぐさまウルトラマンゼロに変身を遂げ、パンドンの前に立ちはだかった! パンドンは
即座に敵意をゼロに向ける。
『さぁ……これ以上の暴挙は二万年早いぜ!』
下唇をぬぐったゼロに、パンドンは火炎弾を連射して先制攻撃を仕掛ける。
「キイイイイイイイイ! キュイイイイイイ!」
『だぁッ!』
だがゼロは相手の出方を読み、素手で火炎弾を全て空に弾いていく。
『行くぜッ!』
頃合いを見て飛び出し、パンドンに飛び掛かろうとするも、その瞬間パンドンは双頭から
赤と青の二色の破壊光線を発射した!
反射的に腕を交差してガードしたゼロだが、光線は防御の上からゼロを押してはね飛ばす。
『うおあッ! 何つぅ圧力だ……!』
キングパンドンは極限まで戦闘に特化された個体。そのパワーは通常種のパンドン、
ネオパンドンをも上回るのだ。
「キイイイイイイイイ! キュイイイイイイ!」
仰向けに倒れたゼロに対し、パンドンは破壊光線を吐き続けて執拗に追撃する。
『ぐわあああぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!』
ゼロの姿が爆炎の中に呑み込まれる。
「キイイイイイイイイ! キュイイイイイイ!」
高々と勝ち誇ったパンドンは、今度は街を手当たり次第に破壊しようとするが……その二つの
脳天に手の平が覆い被さった!
『なんてな!』
「!!?」
ゼロが器用に、パンドンの首を支えにして逆立ちしたのだ!
「キイイイイイイイイ! キュイイイイイイ!」
『自分の攻撃で自分の視界をさえぎってちゃ世話ねぇな! はぁッ!』
ゼロはグルリと回ってパンドンの後頭部に強烈なキックを炸裂した。蹴り飛ばされたパンドンだが
反転して再度火炎弾を連射する。
『そいつは見切ったぜ!』
しかしゼロはゼロスラッガーを飛ばして全弾切り落とし、更にパンドンの胴体も斬りつける。
「キイイイイイイイイ!!」
『行くぜッ! フィニッシュだぁッ!』
左腕を横に伸ばし、ワイドゼロショット! 必殺光線がキングパンドンに命中して、瞬時に
爆散させた!
「やったッ!」
短く歓声を発したダイゴに、ゼロはサムズアップを向ける。ダイゴもサムズアップで応えるが……。
『ッ!』
ゼロの周囲にいきなり透明なカプセルが現れる! ――その寸前に、ゼロは側転でカプセルを
回避した。
『危ねぇッ!』
ぎりぎりでカプセルに閉じ込められるのを逃れたゼロの前に、空から怪しい黒い煙が渦を
巻いて降ってくる。
『ほぉう……よく今のをかわしたものだな。完全な不意打ちのはずだったが……』
『へッ……似たようなことがあったからな』
黒い煙が実体化して出現したのは、ヒッポリト星人に酷似した宇宙人……より頭身が上がり、
力もまた増したスーパーヒッポリト星人だ! 今のはヒッポリトカプセル……捕まっていたら
間違いなくアウトであった。
十八番のカプセルを避けられたヒッポリト星人だが、その態度に余裕の色は消えない。
『だが、お前のエネルギーは既に消耗している。どの道貴様はこのヒッポリト星人に倒される
運命にあるのだ!』
ヒッポリト星人の指摘通り、ゼロのカラータイマーはキングパンドン戦で既に赤く点滅していた。
さすがにダメージをもらいすぎたか。
『ほざきな。テメェをぶっ倒す分には、何ら問題はねぇぜ!』
それでもひるまないゼロであったが、ヒッポリト星人は嘲笑を向ける。
『馬鹿め。怪獣があれで終わりだとでも思ったかッ!』
ヒッポリト星人が片腕を上げると、地面が突如陥没、また空間の一部が歪み、この場に
新たな怪獣が二体も出現する!
「グルウウウウゥゥゥゥ!」
「ギュルウウウウゥゥゥゥ!」
キングゲスラやキングパンドンと同様に、強化改造を施されたキングシルバゴンとキング
ゴルドラスだ! 新たな怪獣の出現に舌打ちするゼロ。
『くッ、まだいやがったか。だが三対一だって俺は負けな……!』
言いかけたところで、空から黒い煙が四か所、ゼロの四方を取り囲むように降り注いだ!
『何!?』
黒い煙はヒッポリト星人の時のように、それぞれが怪獣の姿になる。
「ミィィィィ――――! プォォォ――――――!」
「グルウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
「グワアアアァァァァァ! ジャパッパッ!」
「ガガァッ! ガガァッ!」
鳥のような怪獣、グランドキングに酷似したもの、魚と獣を足し合わせたような怪物、
またパンドンに酷似した個体の四種類。それらは皆額に赤く禍々しい色彩のクリスタルが
埋め込まれていた。
『な、何だこいつらは……!』
この四種は、あるモンスター銀河から生まれた「魔王獣」という種類の怪獣たち。風ノ魔王獣
マガバッサー、土ノ魔王獣マガグランドキング、水ノ魔王獣マガジャッパ、火ノ魔王獣マガパンドン。
内の一体を、現実世界のあるレベル3バースにて封印することになるということを、今のゼロは
まだ知らない。
それより今はこの現状だ。さすがのゼロも、カラータイマーが点滅している状態で七体もの
敵に囲まれるのは厳しいと言わざるを得ない!
「ミィィィィ――――! プォォォ――――――!」
しかし怪獣たちは情け容赦なく攻撃を開始する。まずはマガバッサーが大きく翼を羽ばたかせて
猛烈な突風を作り出し、ゼロに叩きつける。
『うおぉッ!』
「ガガァッ! ガガァッ!」
身体のバランスが崩れたゼロに、マガパンドンが火炎弾を集中させる。
『ぐあぁぁぁッ!』
灼熱の攻撃をゼロはまともに食らってしまった。更にキングシルバゴンも青い火炎弾を吐いて
ゼロを狙い撃ちにする。
「グルウウウウゥゥゥゥ!」
『がぁぁッ! くッ、このぉッ!』
瞬く間に追いつめられるゼロだが、それでもただやられるだけではいられないとばかりに
エメリウムスラッシュを放った。
しかしキングゴルドラスの張ったバリヤーにより、呆気なく防がれてしまう。
「ギュルウウウウゥゥゥゥ!」
ゴルドラスはカウンター気味に角から電撃光線を照射してきた。ゼロはそれを食らって、
更なるダメージを受ける。
『あぐあぁぁッ! くっそぉッ……!』
それでもあきらめることのないゼロ。光線が駄目ならと、頭部のゼロスラッガーに手を掛けたが、
「グワアアアァァァァァ! ジャパッパッ!」
そこにマガジャッパがラッパ状の鼻から猛烈な臭気ガスを噴き出す。
『うわあぁぁぁッ!? くっせぇッ!!』
考えられないレベルの悪臭に、ゼロも我慢がならずに悶絶してしまった。その隙を突いて、
スーパーヒッポリト星人が胸部からの破壊光線をぶちかましてきた。
『うっぐわぁぁぁぁぁぁぁッ!』
逆転の糸口を掴めず、一方的にやられるままのゼロ。ヒッポリト星人は無情にもとどめを宣告する。
『そこだ! やれぇッ!』
「グルウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
マガグランドキングの腹部から超威力の破壊光線が発射され、ゼロの身体を貫く!
『が――!?』
ゼロもとうとう巨体を維持することが叶わなくなり、肉体が光の粒子に分散して消滅してしまった。
「なッ!? さ、才人君ッ!」
ダイゴは大慌てでゼロの消えた地点へと走り出す。一方でゼロを排除したヒッポリト星人は
高々と大笑いした。
『ウワッハッハッハッ! ウルトラマンはこのヒッポリト星人が倒した! これで邪魔者はいない!
人間どもよ、絶望しろぉぉ――――!』
「グルウウウウゥゥゥゥ!」
「ギュルウウウウゥゥゥゥ!」
「ミィィィィ――――! プォォォ――――――!」
「グルウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
「グワアアアァァァァァ! ジャパッパッ!」
「ガガァッ! ガガァッ!」
ヒッポリト星人の命令により、怪獣たちは思いのままに街を破壊し始める。巨体が街中を蹂躙し、
竜巻が街の中心を襲い、ビルが次々地中に沈んでいき、悪臭が広がり、火が街全体を焼いていく。
地獄絵図が展開され始めたのだ。
そんな中でもダイゴは懸命に走り、ゼロの変身が解けた才人が倒れているのを発見した。
すぐに才人の上半身を抱えて起こすダイゴ。
「大丈夫か!? しっかりしてくれ!」
「うぅ……」
才人はひどい重傷であった。ゼロの時にあまりにも重いダメージを受けてしまったのが、
彼の身体にも響いているのだ。
息も絶え絶えの才人であったが、最後に残った力を振り絞って、己を介抱するダイゴの
手を握って告げる。
「あ、後のことはどうか……七人の勇者を見つけて……そして……」
うっすら目を開いて、視界がかすれながらもダイゴの顔をまっすぐ見つめる。
「ダイゴさん……この世界を、救って下さい……!」
「そ、そんな! だから俺は勇者なんて……おい!?」
困惑するダイゴだが、才人はそれを最後に意識の糸が切れた。
「しっかりするんだ! おーいッ!!」
ダイゴの必死の呼びかけが徐々に遠のいていき、才人の意識は闇に沈んでいった……。
「……はッ!?」
次に目が覚めた時に視界に飛び込んできたのは、真っ白い天井だった。
バッと身体を起こして周囲に目を走らせると、病院の病室であることが分かった。身体には
何本ものチューブがつながれている。あの状況で救急車がまともに機能しているとは思えない。
ダイゴがここまで担ぎ込んでくれたのだろう。
しばし呆然としていた才人だったが、遠くから怪獣の雄叫びと破壊の轟音、人々の悲鳴が
耳に入ったことで我に返る。
「あれからどれくらい時間が経ったんだ!? こうしちゃいられない! 早く行かないと……うッ!」
チューブを無理矢理引き抜いてベッドから離れようとする才人だが、その途端よろめいた。
いくらウルトラマンと融合して超回復力を得たとしても、さすがに無理がある。
『無茶だ才人! その身体じゃ!』
ゼロが制止するのも、才人は聞かない。
「けど、俺が行かなきゃこの世界が……! ルイズも……!」
ここまで来たのだ。最後の最後で失敗したなんてことは、才人には耐えられなかった。
傷ついた身体を押して、才人は病室から飛び出す。
病院は至るところ、数え切れないほどの怪我人でごった返していた。それほどまでの被害が
出てしまったことの証明だ。才人は下唇を噛み締めた。
怪我人たちをかき分けてどうにか病院の外に出て、遠景を見やると、夜の闇に覆われた
横浜の街の中でヒッポリト星人と怪獣たちがなおも大暴れを続けていた。あちこちから
火の手が上がり、まるで地獄が地の底から這い出てきたかのようだ。
「くッ……これ以上はやらせねぇぜ……!」
人の姿のないところへと駆け込んで、再度ゼロアイで変身しようとするが……それを
ゼロに呼び止められた。
『待て才人! あれを見ろッ!』
ゼロが叫んだその瞬間、街の間から突然光の柱が立ち上った!
「あの光は……!?」
才人はその光がどういう種類のものかをよく知っていた。いつもその身で体感しているからだ。
果たして、光の中から現れたのは……銀と赤と紫の体色をした巨人! 胸にはカラータイマーが
蒼く燦然と輝いている!
ゼロがその戦士の名を口にした。
『ウルトラマンティガだッ!』
才人はひと目で、あのティガが誰の変身したものかということを見抜いた。
ダイゴが……勇者として、ウルトラマンティガとして目覚めたのだ!
次に目が覚めた時に視界に飛び込んできたのは、真っ白い天井だった。
バッと身体を起こして周囲に目を走らせると、病院の病室であることが分かった。身体には
何本ものチューブがつながれている。あの状況で救急車がまともに機能しているとは思えない。
ダイゴがここまで担ぎ込んでくれたのだろう。
しばし呆然としていた才人だったが、遠くから怪獣の雄叫びと破壊の轟音、人々の悲鳴が
耳に入ったことで我に返る。
「あれからどれくらい時間が経ったんだ!? こうしちゃいられない! 早く行かないと……うッ!」
チューブを無理矢理引き抜いてベッドから離れようとする才人だが、その途端よろめいた。
いくらウルトラマンと融合して超回復力を得たとしても、さすがに無理がある。
『無茶だ才人! その身体じゃ!』
ゼロが制止するのも、才人は聞かない。
「けど、俺が行かなきゃこの世界が……! ルイズも……!」
ここまで来たのだ。最後の最後で失敗したなんてことは、才人には耐えられなかった。
傷ついた身体を押して、才人は病室から飛び出す。
病院は至るところ、数え切れないほどの怪我人でごった返していた。それほどまでの被害が
出てしまったことの証明だ。才人は下唇を噛み締めた。
怪我人たちをかき分けてどうにか病院の外に出て、遠景を見やると、夜の闇に覆われた
横浜の街の中でヒッポリト星人と怪獣たちがなおも大暴れを続けていた。あちこちから
火の手が上がり、まるで地獄が地の底から這い出てきたかのようだ。
「くッ……これ以上はやらせねぇぜ……!」
人の姿のないところへと駆け込んで、再度ゼロアイで変身しようとするが……それを
ゼロに呼び止められた。
『待て才人! あれを見ろッ!』
ゼロが叫んだその瞬間、街の間から突然光の柱が立ち上った!
「あの光は……!?」
才人はその光がどういう種類のものかをよく知っていた。いつもその身で体感しているからだ。
果たして、光の中から現れたのは……銀と赤と紫の体色をした巨人! 胸にはカラータイマーが
蒼く燦然と輝いている!
ゼロがその戦士の名を口にした。
『ウルトラマンティガだッ!』
才人はひと目で、あのティガが誰の変身したものかということを見抜いた。
ダイゴが……勇者として、ウルトラマンティガとして目覚めたのだ!