破壊の一面鏡に保存されていた日記帳から、これの元々の持ち主が、ぼくと同じくときめき高校の生徒であったことがわかった。
彼こそが、トリステイン学院に【伝説の木】の挿話を植え付けた張本人なんだろう。
そして、とても悲しいことだけど、すでに彼はこの世にいなかった。
享年95歳。三人の息子、十一人の孫、三十八人の曾孫、そして、それらの伴侶達、彼の友人、つまり、総勢三百人を越す人々に看取られながらの大往生である。
ご冥福をお祈り致します。
彼こそが、トリステイン学院に【伝説の木】の挿話を植え付けた張本人なんだろう。
そして、とても悲しいことだけど、すでに彼はこの世にいなかった。
享年95歳。三人の息子、十一人の孫、三十八人の曾孫、そして、それらの伴侶達、彼の友人、つまり、総勢三百人を越す人々に看取られながらの大往生である。
ご冥福をお祈り致します。
ギーシュと件の約束を交わした三日後。
待ち合わせ場所の馬小屋に着くと、ぼくに向かって可愛いらしく手を振る金髪の少女が目に入った。
可憐な顔立ちに良く似合う薄目の化粧をして、白色のタイトなワイシャツに、黒のパンツスーツを来ていた美しい少女は、困ったことに、やっぱり、ギーシュだった。
「な、何をしているんだよ?」
「何をって?」
ギーシュは、ぼくの口から出てきた言葉が、心底不可解といった感じで首を傾げた。可愛いらしいその仕種に、胸がとくんと一拍したが、今はそんなことに構っている場合じゃない。
「その恰好だよ」
彼女は細く長い指でこめかみをぐりぐりした。なるほど、これは、ギーシュの癖なんだ。
一つ、新たな発見をしたぼくにギーシュが言った。
「バカ?デートでしょ?」
「は?何を言ってるんだ、そんなこと一言も聞いてないぞ。観光名所に行くだけだろ?」
ギーシュが不意にぼくの腕を掴んだ。力いっぱいといった感じで、正直、痛かった。
だけど、ぼくは男だ。だから、我慢した。
「あんたは男。私は女。」
「何を言ってるんだ?」
「こういう場合は、観光名所、イコール、デートスポットってことになるでしょっ!!」
ギーシュは吠えた。
しかし、ぼくは呆れた顔をした。彼女の言葉が全く理解できなかったのだ。
「なんだ、それ?勝手に決めつけんなよ」
ぼくの腕を掴むギーシュの手を振り払うと、言葉を続けた。
「ばれたら、まずいんだよね?だったら、こんな迂闊な真似はよせよ。ギーシュらしくない」
この言葉は最低だった。今、思えば、ギーシュの『らしさ』なんてものを、この当時のぼくは何一つ知ってやいなかったのだ。
ギーシュは振り払われた自分の手を見つめると、みるみるうちに顔を歪めていった。
「わたし、」ばかみたい、一人で勝手に出来あがちゃって……。初めてのデートだって浮かれちゃって……。別にコナミのこと好きじゃないけど……、それでも……」
ちなみに、ぼくが大失態を犯したことに気付いたのは、彼女の目から流れる大量の雫を目の当たりにした後だった。
彼女の顔に施された化粧が溶けていき、ぼろぼろとしか言いようのない姿になっていく。
ぼくは慌てて、口を開いた。
「ごめん……。ぼくは馬鹿だ……。きみに課せられた掟をぼくは知っていた。もちろん、きみがたくさん我慢していることも。デート相手なんて、不本意だろうけど、ぼくしかいないもんな……。本当にごめん……。ぼくは馬鹿すぎた」
地面に崩れ落ちた彼女が首を振った。
「あなたは何も悪くないわ……。悪いのは全てグラモン家の掟……」
ぼくはギーシュの腰に手を回し、彼女を立ち上がらせた。そしと、膝を落とし慇懃に礼をする
「失礼致しました。ミス・グラモン。本日はいかなる場所にも、貴女にお付き合い致します。例え、デートスポットでもね」
「バカ……」
待ち合わせ場所の馬小屋に着くと、ぼくに向かって可愛いらしく手を振る金髪の少女が目に入った。
可憐な顔立ちに良く似合う薄目の化粧をして、白色のタイトなワイシャツに、黒のパンツスーツを来ていた美しい少女は、困ったことに、やっぱり、ギーシュだった。
「な、何をしているんだよ?」
「何をって?」
ギーシュは、ぼくの口から出てきた言葉が、心底不可解といった感じで首を傾げた。可愛いらしいその仕種に、胸がとくんと一拍したが、今はそんなことに構っている場合じゃない。
「その恰好だよ」
彼女は細く長い指でこめかみをぐりぐりした。なるほど、これは、ギーシュの癖なんだ。
一つ、新たな発見をしたぼくにギーシュが言った。
「バカ?デートでしょ?」
「は?何を言ってるんだ、そんなこと一言も聞いてないぞ。観光名所に行くだけだろ?」
ギーシュが不意にぼくの腕を掴んだ。力いっぱいといった感じで、正直、痛かった。
だけど、ぼくは男だ。だから、我慢した。
「あんたは男。私は女。」
「何を言ってるんだ?」
「こういう場合は、観光名所、イコール、デートスポットってことになるでしょっ!!」
ギーシュは吠えた。
しかし、ぼくは呆れた顔をした。彼女の言葉が全く理解できなかったのだ。
「なんだ、それ?勝手に決めつけんなよ」
ぼくの腕を掴むギーシュの手を振り払うと、言葉を続けた。
「ばれたら、まずいんだよね?だったら、こんな迂闊な真似はよせよ。ギーシュらしくない」
この言葉は最低だった。今、思えば、ギーシュの『らしさ』なんてものを、この当時のぼくは何一つ知ってやいなかったのだ。
ギーシュは振り払われた自分の手を見つめると、みるみるうちに顔を歪めていった。
「わたし、」ばかみたい、一人で勝手に出来あがちゃって……。初めてのデートだって浮かれちゃって……。別にコナミのこと好きじゃないけど……、それでも……」
ちなみに、ぼくが大失態を犯したことに気付いたのは、彼女の目から流れる大量の雫を目の当たりにした後だった。
彼女の顔に施された化粧が溶けていき、ぼろぼろとしか言いようのない姿になっていく。
ぼくは慌てて、口を開いた。
「ごめん……。ぼくは馬鹿だ……。きみに課せられた掟をぼくは知っていた。もちろん、きみがたくさん我慢していることも。デート相手なんて、不本意だろうけど、ぼくしかいないもんな……。本当にごめん……。ぼくは馬鹿すぎた」
地面に崩れ落ちた彼女が首を振った。
「あなたは何も悪くないわ……。悪いのは全てグラモン家の掟……」
ぼくはギーシュの腰に手を回し、彼女を立ち上がらせた。そしと、膝を落とし慇懃に礼をする
「失礼致しました。ミス・グラモン。本日はいかなる場所にも、貴女にお付き合い致します。例え、デートスポットでもね」
「バカ……」
ギーシュが顔を赤らめのをぼくは見逃さなかった。