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モンハンで書いてみよう 狩人編

注意! この狩人編は風翔龍編を読んでないと意味不明だと思うぞ、諸君!



まだ時間的には夜。だけど私は目を覚ました。朝の前、夜の最後。
日は微かに地平線を染めるが、天には月と星が見える時間。遅くまで起きていた者は眠りにつき、朝早い者もまだ目を覚まさない。
そんな時間に私 シエスタは目を覚ました。

「あれ……まだ暗い……あっ!」

そう言えば今日は週一で『アレ』をする日だった。寝巻きを脱ぎ捨て、身につけるのはメイド服。
ここまでは何時もと変わらない。だけど一つだけ違う事を実行する。
簡素なベッドの下から引っ張り出すのは、布に巻かれた細長い物体だ。握り締めれば硬い感触が返ってくる。
安堵と興奮を自己確認の頷きと笑顔で表現し終え、ルームメイトである同僚のメイドを起こさないように私はそっと部屋を出た。


私がお仕事をしているトリステイン魔法学院はハルケギニアでも一二を争う名門の魔法学院で、その面積も広い。
広いからこそ忘れられ、触れられない場所と言うのが存在するもの。貴族の皆さんも、同僚の使用人たちもここには余り来ない。
しかもいまは夜にしては遅すぎ、朝にしては早すぎる狭間の時間。もちろん私のとっておきの場所には人は居なかった。
それでも尚真剣に辺りを確認する。子供の頃から山や森で磨いた感覚を総動員して辺りを探った。

「誰も居ませんよね……」

この確認はいくらやりすぎてもマズイと言う事は無い。私がこれからやるのはメイドと言う存在から余りにも外れた行いだ。
見つかったら解雇どころか処刑されてしまうかもしれない。実際に大人しく処刑される稼動は別として、実家にも迷惑が掛かる。
そう解っているのに……私は週一でコッソリ行うコレは私の心と体を捉えて離さないのだ。


「女王陛下、どうかこの愚かなメイドをお許し下さい」

シエスタは手の内で祈りを組み、目を付して頭を垂れた。懺悔は終了……後はやるだけ。
何時もはベッドの下に隠しておいて決して外には出さない物。
布を剥ぎ取れば中から姿を見せるのは長剣……専門的には太刀と分類される。
鞘から抜き放たれた刀身には微妙なそり、血のように紅い刃が栄えた。刃と逆にある棟は肉食動物の刃のような鋭い突起が不規則に並ぶ。
赤と黒が縞模様で彩る柄はかなり長く、これが両手で使うものである事を物語っている。
名前を「天下無双刀」と言った。

「ふぅ……はっ!」

シエスタは柄をゆったりと掴むと息を浅く吐き出し……裂帛の声と共に太刀を振り下ろした。
再度確認するが天下無双刀は太刀。並の成人男性、兵士や傭兵すら振るだけならば未だしも、使いこなすのも難しいはず。
だが彼女はそれを持ち上げ、振り下ろすと言う動作に留まらず『使いこなしている』のだ。

「やっ! せい! はぁ!!」

重心を乗せた踏み込み斬りから、その刃を反転させて斬り上げ。
上がった太刀を振り下ろしながらのバックステップ、斬り下がり。そこから動きを途切れさせないで穿つような突きを放つ。
まさに熟練の戦士の動きであり、振るわれた刃が風を切る音が闇を揺らす。
一つ振るうたびにシエスタの顔がメイドのものから戦士のソレへと変わっていく。
彼女は伝説の使い魔でもなければ、学園に入り込んだ暗殺者でもない。彼女はどこにでもいる村生まれの奉公少女だ。
だがシエスタが見せる一連の剣さばき。平民では手が出せない値段がつきそうな太刀。
その二つはどこから手に入れたものなのか? 原因は彼女の祖父にある。


シエスタの祖父は流れ者だった。何処からかふらりとタルブの村にやってきたそうだ。
彼は剣士だった。本人曰くハンターだそうだが、狩人と言うよりも剣士。身長以上ある太刀を振り回していたから。
珍しい黒い髪と瞳は東方の血によるものらしいその青年は、ハルケギニアやトリステインタルブの説明に首を傾げ続けていたが、聞き終えると簡単に言った。

「スッカリ迷子になって帰れないからここに留めて欲しい」

だが物騒な見知らぬ人間の言う事。そう簡単に受け入れるわけには行かないと当時に村人は考えた。
そこで無茶な用件を出してお引取り願おうと言う事になったらしい。
内容を要約すると「森の奥で目撃されるオークの群れを倒してくれたら、村に居てくれて良い」と言うもの。
メイジですら複数のオーク鬼と退治するのは避けたいと考えるほどの強敵であり、平民の剣士なら即座に断って逃げ出すだろうと村人は思っていた。
だが剣士は容易くその依頼に頷くと森の奥へと姿を消した。

「死んでしまったのでは? 悪い事をしてしまった……」

そんな空気が村を支配する中、剣士 シエスタの祖父は帰ってきた。血塗れ泥まみれで手には五つのオークの頭をぶら下げて。

「すまない。十五匹ほど狩ったのだが、重くて持って来れなかった」

平然とそんな事を言うその剣士に村人はとても感心し、村に暮らす事を許したのだ。
もっとも彼の武勇伝はそれだけではなく、メイジを含めた盗賊団を壊滅させたり、ワイバーンを一昼夜に及ぶ激闘の果てに討ち果たしたり色々ある。


そんな彼も嫁を貰ってからはめっきり大人しくなった……なんて事は特に無く、年をとってもなお強靭な体は健在であった。
彼が後年、最も気にかけて己の技術を伝えた相手、それがシエスタ。
子供よりも自分と同郷たる力や意思を見せる孫に、異国の剣士は己の全てを可能な限り伝え、最後に己の愛刀を託して逝った。

「はぁ……お爺ちゃん……」

かすかに滴る汗とは別に瞳から零れた液体を慌てて擦り、シエスタは呟く。日課になった型の練習を終え、ダランと天下無双刀を握った手が力を失う。
祖父に一連の事を教わっていた時、シエスタはまだ小さかった。世界を知らず、頑張れば何でも出来ると思っていた。
だからこそ無邪気に力を欲することができる。天下無双刀を使いこなせるようになった時は喜びに震えたものだ。
だが今は違う、世界を知っている。平民は貴族には決して頭が上がらない。お仕事をしなければご飯が食べられない。
そう……知っているのだ。世界を普通に生きていくには平穏と隷従が必要なのだ。

「これを振るの止めようと思ってるのに……」

本当は受け取る気すらなかった。祖父が病に倒れたのはシエスタがトリステイン魔法学院に奉公を決めてからだった。
死に際の祖父の言葉が脳裏を過ぎる。

「これはお前にやろう。なに……要らない? メイドに武器は不要だって? まあ持って行けよ。いつか必要になるさ」

何を言われても受け取らないことは出来たはずだ。
なのにソレを受け取ったことが信じられず、同時に祖父の言葉を肯定しているようにシエスタは感じる。
ソレを振り回す行為もまた自分が今の状況に満足していないようで……そこで考えるのをやめた。

「戻ろう……そろそろ時間が」

シエスタは呟き、鞘を拾い上げた時……風が吹いた。不自然な風だった。いままでの風向きを無視した流れ。
野山で育ち、森で遊びながら祖父に色々教えてもらっていた彼女はその違和感に立ち止まり、視線を上げる。
その先にはドラゴンがいた。全身を光沢ある黒い甲殻に覆われ、肩口から大きな翼を広げた四本足のドラゴンだ。
興味深そうにこっちを見ているそのドラゴンに、シエスタは覚えがあった。見たことがある訳ではない。聞いた事があった。


またもや祖父に関連する事だった。シエスタは彼がはるか遠くから来た冒険家であり、剣士と言う風に教えられている。
そんな遠くから来た祖父が良く離して聞かせてくれた『昔話』。そこには想像を絶する不思議な生物たちとの死闘が多く存在する。
姿を消す下の長い古龍、水底を統べる翡翠色の魚竜、熱線を吐く岩竜、せせこましいマネをする毒怪鳥。
一角竜の頭蓋骨を被った巨大なカ二、暴力の化身たる飛べない竜、炎を操る地獄の炎帝、雪山を統べる雪獅子の王。
電気を発する盲目の異形、山よりも巨大な老山龍、地上と空を制する雌雄対となる火竜。
そんな子供を興奮させる怪物達の一つ……『風を支配し嵐を呼ぶ鋼龍』と言うものが有った。
シエスタは思わず祖父が語っていた名前が口から零れる。

「風翔龍……クシャルダオラ……」
「なぜその名を知っている?」
「えっ!? 喋った……」

思わず帰ってきた呟きにシエスタは一歩下がる。祖父の話でも知恵は有るようだが人語を介することは無かったと聞いていたのに。

「なぜその名前を知っている? こちらに来てからは誰もその名を知らぬ。お前が、メイジとやらでもない唯の小娘が知っているのだ?」
「そっそれは……」

『お爺ちゃんに聞いたんです』と答える前に、クシャルダオラの目がシエスタの手の内を睨みつけた。
そこには祖父より伝えられた太刀 天下無双刀。ソレを確認してクシャルダオラ 今はシルフィードと言う名を持つドラゴンは声を荒げた。

「貴様……その剣を何処で手に入れた? 前の持ち主はどうした? それに……「お爺ちゃんです」……なに?」
「貴方のお話もお爺ちゃんに聞きました。この剣もお爺ちゃんに貰った物です」

何故そんな事を聞くのだろうか?とシエスタが首を傾げて見守る中、シルフィードは笑い出した。
それは捜し求めていた物が意外なところで見つかったような歓声。それに反応するように風が唸りをあげる。

「そうか! あの男……メッキリ現れないものだから死んだとばかり思っていたが、こんな異界の地にいるとは!!」
「えっ!? お爺ちゃんを知ってるんですか!?」
「知っているとも……幾度と無く命のやり取りをした怨敵だ。この片目もあの男にやられた物だ……奴は今何処にいる!!」

歓喜の声が風に乗って鳴り響く中、シエスタがつめたい現実を送る。

「亡くなりました……病気で数年前に」
「そうか……死んでも居なければ奴が孫とは言え、他人に己の愛刀を渡すとも思えんな」

風が勢いを無くし、詰まらなそうにシルフィードは声のトーンを落とす。逆に風は悲しそうな音を立てているようにすら聴こえる。


「で? 奴の孫がメイジの学習施設でなにをしているのだ?」
「私はここでメイドとして働かせていただいているシエスタと申します」
「あの男の孫が……狩る者ではなく? 剣士でも傭兵でもなくメイド?」

心底驚いたような声色の後、ゴワリッと風が再び勢いを増した。そこには怒りが感じられる。全てを薙ぎ払う暴風に乗り怒気をはらんだ声が響く。

「ふざけるな! その程度の者に奴が己の剣を託したと言うのか!?」
「そんなこと言われても……」
「認めぬ! わが生涯の仇敵の剣がメイド如きに納まる者に振るわれるなど……断じて認めん!!」

それは恐風。シエスタは恐怖で思わずペタリと腰をついた。怖い! 怖い! 
メイジだろうと虐げる風の暴力に平民などが叶うはずが無いとシエスタは自分の肩を抱きしめるように震えていた。

「この片目の怨み、お前で晴らすのも一興か……奴の汚点を消す意味もある」
「ヒッ!」

ゆっくりと宙から降りてきた体がドスンと地面を揺らして着地する。四本の足が一歩ずつ近づくのをシエスタは震えながら見ていることしか出来ない。
『戦えば良い。そうする技術がお前にはある』
幻聴だろうか? シエスタは懐かしい祖父の声が聴こえる。

「無理です! あんなに強いドラゴンに勝てるわけがありません!」

イヤイヤと赤子がするように否定を示すシエスタに尚、祖父の言葉は続けた。その言葉が昔彼女がした質問の内容と重なる。
『どうしてそんなに怖い怪物に向かっていくの?』
老山龍に踏み潰されそうになる話を聞いた時、暴竜に追いかけられて絶壁から跳んだ話を聞いた時に質問した。
仲間が雄の火竜 空の絶対王者に飲み込まれた話に涙する度に、毒怪鳥の死んだフリに騙されて死に掛けた話のたびに聞いた。

『どうして絶対的な強さに向かっていくの?』

それは今の状況、強いて言うならば平民が貴族に立ち向かうような無謀に重なる。そんな時、祖父は何時も同じ答えをくれた。

『絶対なるモノへ向かっていく事、強大な存在への挑戦……それがハンターの本当の目的だからさ』
「良く解らない」
『そうか? なぁに、いつかきっと解るさ。そういう状況になればお前はきっと『向かっていくこと』を選ぶはずだ』
「え~! どうして?」
『それはホレ、シエスタはワシの孫だからな』


豪快に笑いながら私の頭をクシャクシャと撫でてくれた無骨な手。何度も『向かっていった手』の感触。
ドクンッ!と心臓が高鳴り、シエスタは理解した。この感覚だ……絶対的な力を前にして、挑戦を渇望する心情。
何かが出来るはずだと思考がめぐり、何か出来るはずだと体が動いた。

「はぁあぁ!!」
「むっ!?」

シエスタは跳ぶ。手にある祖父より伝えられた天下無双刀を振り上げて。
唯の小娘と侮っていたクシャルダオラは反応できない。振り下ろされる剣先が当たったのは奇しくも、シエスタの祖父が奪った左目。
確かに剣筋の通った一撃は鋼竜の肌を傷付ける。祖父のそれとは違い大きな結果とはならなかった。
だがハンターとしての最初の一撃がクシャルダオラに傷を負わせるものなら大金星だろう。
シエスタは反撃を警戒して一撃の後バックステップで距離を取るが、クシャルダオラは動かなかった。

「クックック!」
「フッフッフ……」
「「■■■■■■■■■!!」

どちらから漏れたのか解らない歓喜の笑い声は重なった。クシャルダオラが首を下げ、再び風を纏いながら言う。

「それで良い。それでこそ奴の孫、いや……奴の志を継ぐ者 ハンター・シエスタ!!」

シエスタも天下無双刀を正眼で構えなおし、僅かな微笑で答えた。そして納得する。「やっぱり自分はお爺ちゃんの孫なのだ」と。
先ほどの奇襲とは違い明確なクシャルダオラの闘志が伝わり、背中を寒くて甘い感覚が走る。
同時に体が奥底から火照ってくるような陶酔を覚え、どんな事でもできるという脳内麻薬が神経を冒す。
だが冷静な神経は明確に状況を把握し、適度に熱くなった筋肉がソレを受けて動く。
両雄が再び激突しようとした時だった。クシャルダオラのものとは違う風が吹く。

「キャッ!」

「邪魔をするな!」

予想外の方から吹いた風にシエスタは反応できず、小さな体が僅かに宙に浮いて尻から落ちる。
当然そのまま突撃するのはクシャルダオラとて本位ではなく、風の主に一喝を入れようとして振り向く。
すると背後、つまり先ほど自分が向いていた方から振り下ろされた何かが頭部に炸裂した。

「グハッ!?」
「「なにをしてるの?」」

クシャルダオラにとって頭部は急所である。無敵の龍風圧が解除され、頭の上でクルクル星が廻っている彼女を問いただすのは二つの同じ声。
風の遍在で作られた分身とその主。青紙にメガネ、小柄な身長に似合わない長さの杖を持っている。


「なんだ、タバサではないか」
「なにをしていたの?」
「実に楽しいこ…『ゴチンッ!』グワァアァ!!」

もう一度殴打してからタバサは聴く相手を変えてみる事にした。腰を抜かして放心しているメイドにだ。

「なにをしていたの?」
「何って……その……クシャルダオラが……」
「クシャルダオラ? 彼女はシルフィード、私の使い魔」
「使い魔……っ!?」

使い魔と言う言葉を引き金にしてシエスタは正気を取り戻した。いや先ほどまでも正気だったが、それはハンターとしてのもの。
自分の立場を学園のメイドに、平民に戻してみれば、今の状態は非常にマズイ。
平民のメイドが自衛では済まされない大きな武器を勝手に持ち、メイジの使い魔を傷付けてしまったのだ。

「申し訳ありません! ミス・タバサ! あの……私……」

土下座と言われる体勢をとり、必死に言葉を紡ごうとするが確かな答えが生まれない。
もっともチャンと説明できたとしても自分の運命は変わらない。きっと処刑……もしかしたら家族にまで迷惑が!!

「私の使い魔が何かした?」
「イエ! 私が悪いんです! どんな罰も受けますから! どうか家族だけは」
「どんな罰でも?」

杖を構えて近づいてきたタバサに懇願するシエスタ。だが次に彼女は聴いたことが無い罰の種類だった。

「じゃあその力を私に貸す」
「え?」
「シルフィードに一撃を入れた貴方の剣技を私の為に使うこと。それが罰」

シエスタは訳が解らないと言う風に呆然としていると、タバサは続けた。

「私は『余りにも大きな存在』に挑まなければならない。そのために力が必要」
「あの……大きな存在って?」
「国」

帰ってきた答えはハンターの血が欲する挑戦・無謀を満足させるに充分だった。



この密約から数年後、某国の王座についた青い髪の女性。その女性は身長以上ある太刀を振り回すメイドを雇っていた。
後にそのメイドは王女が約束した報酬を蹴って、辺境地域での冒険に一生を費やす事になるのだが、それはまだ先の話。

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