ウルトラマンゼロの使い魔
第百二十八話「一冊目『甦れ!ウルトラマン』(その1)」
宇宙恐竜ゼットン
ウラン怪獣ガボラ
エリ巻き恐竜ジラース 登場
第百二十八話「一冊目『甦れ!ウルトラマン』(その1)」
宇宙恐竜ゼットン
ウラン怪獣ガボラ
エリ巻き恐竜ジラース 登場
王立図書館の幽霊騒動の解決を頼まれたルイズと才人。しかし、ルイズが突如として意識不明の
状態に陥ってしまう。
それから一夜明けたにも関わらず、ルイズは一向に目覚めなかった。才人は図書館の控え室にて、
焦燥した様子でウロウロと歩き回る。
「くそッ、ルイズは一体どうしちまったんだ……。いきなり倒れて、目を覚まさないなんて」
「お姉さま、原因分からないの?」
「パムー……」
シルフィードとハネジローがベッドに寝かされたルイズを見下ろし、タバサに不安げに
目を向けた。しかしタバサは力なく首を振る。
「分からない」
知識が豊富なタバサでも、ルイズの昏睡の原因は不明であった。思いつく限りの処置を
取ったが、ルイズには全く効果がなかった。
ゼロが意見する。
『怪獣とか宇宙人とか、そういう類の気配はなかった。……だが、リシュの件もある。何か
未知の力がルイズに働いたのかもしれねぇ』
やがて、控え室の扉がノックされて一人の女性が入室してきた。
「失礼します」
「リーヴル!」
王立図書館の司書のリーヴルだ。朝になって出勤してきたようだ。
彼女はテーブルの上のガラQを置くと、才人たちに振り返って告げた。
「タバサさんの連絡で、おおまかな事情は伺ってます。その件で一つ、お話しが」
「ルイズのこと、何か知ってるのか!?」
才人の問い返しにうなずいたリーヴルは、自身の目でルイズの容態を確かめてから才人たちに
向き直った。
「間違いありません……。これは、『古き本』の仕業です」
「古き本?」
「お姉さま、知ってる?」
シルフィードにタバサは否定で答えた。リーヴルが説明を行う。
「この図書館には、数千年前の本が所蔵されています。内容は愚か、文字も読めません。
それら本を総称して『古き本』と呼んでいます」
「でも、その本とルイズに何の関係があるんだ?」
「『古き本』には、絶筆のものもあります。諸事情で、本が未完のままで終わってしまうことです。
そして絶筆された『古き本』には、最後まで完結したいという強い想いから、魔力を持つ例があります。
ルイズさんはそれら本に魔力を吸い取られ、本の中に心を奪われた。そう考えて問題はないでしょう」
タバサが驚きで目を見開く。
「本が魔力を持つなんて話、聞いたことがない」
「世間では全くといっていいほど知られていない話です。現に、同じ事例は記録にある上では、
千年前に一件のみです」
再度ルイズに目を向けるリーヴル。
「どうやらルイズさんは、かなり強大な魔力を持っているみたいですね。それを狙われて……」
「強大な魔力? そうか、“虚無”の力か……」
「キョム?」
つい口から出た才人が、ガラQに聞き返されて我に返った。
「ああ、いや、何でもない! それで、ルイズは治るのか!?」
リーヴルは真剣な面持ちになって返答した。
「手はあります。ですが、それを決断するのは私ではありません」
「ど、どういうことだ?」
「本が未完で終わっていることに未練を抱いているのなら、完結させればいいのです」
ですが、とつけ加えるリーヴル。
「『古き本』は作者以外のペンを受けつけません」
「何も書けないんじゃ、完結させられないだろ。どうすればいいんだよ!」
突っ込む才人に、リーヴルは冷静に返す。
「本の中に入るんです。代々王立図書館の司書を勤めている私の家系には、『古き本』の
魔力を利用してその本の世界に入り込む独自に開発した魔法があります。そうして本の
登場人物となって話を進行させ、完結させるのです」
「本の中に入るってサラッと言うけど、危なくないのね?」
シルフィードの疑問に首肯するリーヴル。
「危険です。本の中に入った者は、一時的に本の世界が現実となるので、その中で傷つけば
現実の傷として残ります。本の中で死ねば当然、命を落とします。故に滅多なことでは使う
ことの許されていない、禁断の魔法なのです」
「……本を完結させるか死か、その二択って訳か……」
つぶやいた才人が決心を固めた表情で、リーヴルの顔を見つめた。
「一度に本の中に入れられるのは何人だ?」
「……私の力では、一人が限度です」
「一人か。それじゃあ決まりだな。俺がルイズを助け出す!」
タバサは心配の視線を才人に向けた。それに気づいた才人は一旦リーヴルから離れて、
タバサに説いた。
「大丈夫だ。俺はゼロと魂が一つになってるから、ゼロも一緒に本の中に入れるはずだ。
ゼロの力があれば、よほどのことがない限り命の危険なんてないよ。心配いらないさ!」
「……ん」
タバサは力になれないのがもどかしそうであったが、こんな場合に才人を止められないことは
知っているし、彼を信頼してもいる。素直にルイズのことを才人に託した。
「パムー」
話していたら、ハネジローがパタパタとテーブルの上に六冊の本を一冊ずつ運んできた。
タバサがリーヴルに伝える。
「これらが倒れてたルイズの側に落ちてた」
「この六冊が、ルイズさんの魔力を吸い取った『古き本』のようですね」
六冊を確かめたリーヴルが眉間に皺を寄せる。
「……厄介ですね。これらは『古き本』の中でも一番力の強いもの。砂漠で発見されてトリステインに
流通したもので、どこで書かれたものかも不明です」
「曰くつきって奴か。どういう内容なんだ? って、読めないのか……」
何気なく本の一冊を開いた才人が、唖然と固まった。
「いや、俺これ読めるぞ! 日本語……俺の国の文字で書かれてる!」
「そうなのね!?」
シルフィードたちの驚きの視線が才人に集まった。才人は他の五冊にもざっと目を通す。
「全部そうだ! しかも……全部ウルトラマンの本じゃねぇか!」
仰天する才人。六冊全部が、ウルトラ戦士の戦いを題材にした作品なのだ。これら六冊も、
自分のように日本からハルケギニアに迷い込んできたものなのだろう。それと日本人の自分が
出会うとは、何という巡り合わせか。
同時に才人は、若干険しい顔となる。
(となると、ゼロでも簡単にはいかないってことになるな。何せ、本の世界で待ってるのは
怪獣や宇宙人との戦いだ……)
ウルトラ戦士の戦いが題材ということは当然、本の中で繰り広げられている世界でも怪獣、
宇宙人と戦うことは避けられない。ゼロの力ならばよほどのことは、と思っていたが、まさか
こんなことになろうとは。
しかしそれならばなおさら自分たちが本の世界に行かなければならない。他の者では、
この六冊の物語を完結させるのはほぼ不可能であろう。改めて決心した才人は、最初に
中に入る本を選択する。
「……よし、これにしよう。最初には、『始まりのウルトラマン』の本が相応しいと思う」
「決まりましたか」
「早速やってくれ。準備はもう出来てる」
才人から本を受け取ったリーヴルが、本の世界に旅立つ前に忠告した。
「生死以外にもう一点、重要なことを。あまりに物語を改変してしまうと話が破綻し、その本の
世界は閉じてしまい完結できなくなります。要するに、最低でも本来の主役を立て、その人物に
物語を終わらせてもらう必要があります」
「俺が何もかも物語の中の問題を解決しちゃいけないってことだな。分かった」
ただ怪獣たちを倒すだけでなく、本の中のウルトラマンと共闘する必要があるようだ。
その条件を解決しなければならないとは負担が増加したように思えるが、きっと何とか
なるだろう。同じ正義の心を持つウルトラ戦士なのだ。
もう一つ、タバサがリーヴルに問いかけた。
「最後に、これだけ聞かせて」
「何でしょうか?」
「……何故千年以上前の貴重な本が、一般の書架に置いてあったの?」
リーヴルは一瞬言いよどんだ。
「……私にも分かりません。ですが元は幽霊が騒動の発端。もしかしたら、『古き本』自体が
魔力を用いて人の目に留まるように動いたのかもしれません」
「……」
タバサは若干納得していなさそうだったが、それ以上の追及はしなかった。
そしてこれから本の中に入る才人に、仲間たちが応援の言葉を寄せる。
「俺も「一人」に数えられてるみてえだから、相棒と一緒に本の中にゃ入れねえ。けど俺が
いなくてもしっかりやれよ! 娘っ子を頼んだぜ!」
「気をつけてなのね! 死んじゃ絶対に駄目なのね!」
「……頑張って」
「パムー!」
才人は彼らに笑顔で応える。
「ああ! 行ってくるぜ!」
リーヴルの前に立つと、彼女が才人に魔法を掛ける。才人の視界がぐるぐると回り、目の前の
光景が大きく変化していく……。
状態に陥ってしまう。
それから一夜明けたにも関わらず、ルイズは一向に目覚めなかった。才人は図書館の控え室にて、
焦燥した様子でウロウロと歩き回る。
「くそッ、ルイズは一体どうしちまったんだ……。いきなり倒れて、目を覚まさないなんて」
「お姉さま、原因分からないの?」
「パムー……」
シルフィードとハネジローがベッドに寝かされたルイズを見下ろし、タバサに不安げに
目を向けた。しかしタバサは力なく首を振る。
「分からない」
知識が豊富なタバサでも、ルイズの昏睡の原因は不明であった。思いつく限りの処置を
取ったが、ルイズには全く効果がなかった。
ゼロが意見する。
『怪獣とか宇宙人とか、そういう類の気配はなかった。……だが、リシュの件もある。何か
未知の力がルイズに働いたのかもしれねぇ』
やがて、控え室の扉がノックされて一人の女性が入室してきた。
「失礼します」
「リーヴル!」
王立図書館の司書のリーヴルだ。朝になって出勤してきたようだ。
彼女はテーブルの上のガラQを置くと、才人たちに振り返って告げた。
「タバサさんの連絡で、おおまかな事情は伺ってます。その件で一つ、お話しが」
「ルイズのこと、何か知ってるのか!?」
才人の問い返しにうなずいたリーヴルは、自身の目でルイズの容態を確かめてから才人たちに
向き直った。
「間違いありません……。これは、『古き本』の仕業です」
「古き本?」
「お姉さま、知ってる?」
シルフィードにタバサは否定で答えた。リーヴルが説明を行う。
「この図書館には、数千年前の本が所蔵されています。内容は愚か、文字も読めません。
それら本を総称して『古き本』と呼んでいます」
「でも、その本とルイズに何の関係があるんだ?」
「『古き本』には、絶筆のものもあります。諸事情で、本が未完のままで終わってしまうことです。
そして絶筆された『古き本』には、最後まで完結したいという強い想いから、魔力を持つ例があります。
ルイズさんはそれら本に魔力を吸い取られ、本の中に心を奪われた。そう考えて問題はないでしょう」
タバサが驚きで目を見開く。
「本が魔力を持つなんて話、聞いたことがない」
「世間では全くといっていいほど知られていない話です。現に、同じ事例は記録にある上では、
千年前に一件のみです」
再度ルイズに目を向けるリーヴル。
「どうやらルイズさんは、かなり強大な魔力を持っているみたいですね。それを狙われて……」
「強大な魔力? そうか、“虚無”の力か……」
「キョム?」
つい口から出た才人が、ガラQに聞き返されて我に返った。
「ああ、いや、何でもない! それで、ルイズは治るのか!?」
リーヴルは真剣な面持ちになって返答した。
「手はあります。ですが、それを決断するのは私ではありません」
「ど、どういうことだ?」
「本が未完で終わっていることに未練を抱いているのなら、完結させればいいのです」
ですが、とつけ加えるリーヴル。
「『古き本』は作者以外のペンを受けつけません」
「何も書けないんじゃ、完結させられないだろ。どうすればいいんだよ!」
突っ込む才人に、リーヴルは冷静に返す。
「本の中に入るんです。代々王立図書館の司書を勤めている私の家系には、『古き本』の
魔力を利用してその本の世界に入り込む独自に開発した魔法があります。そうして本の
登場人物となって話を進行させ、完結させるのです」
「本の中に入るってサラッと言うけど、危なくないのね?」
シルフィードの疑問に首肯するリーヴル。
「危険です。本の中に入った者は、一時的に本の世界が現実となるので、その中で傷つけば
現実の傷として残ります。本の中で死ねば当然、命を落とします。故に滅多なことでは使う
ことの許されていない、禁断の魔法なのです」
「……本を完結させるか死か、その二択って訳か……」
つぶやいた才人が決心を固めた表情で、リーヴルの顔を見つめた。
「一度に本の中に入れられるのは何人だ?」
「……私の力では、一人が限度です」
「一人か。それじゃあ決まりだな。俺がルイズを助け出す!」
タバサは心配の視線を才人に向けた。それに気づいた才人は一旦リーヴルから離れて、
タバサに説いた。
「大丈夫だ。俺はゼロと魂が一つになってるから、ゼロも一緒に本の中に入れるはずだ。
ゼロの力があれば、よほどのことがない限り命の危険なんてないよ。心配いらないさ!」
「……ん」
タバサは力になれないのがもどかしそうであったが、こんな場合に才人を止められないことは
知っているし、彼を信頼してもいる。素直にルイズのことを才人に託した。
「パムー」
話していたら、ハネジローがパタパタとテーブルの上に六冊の本を一冊ずつ運んできた。
タバサがリーヴルに伝える。
「これらが倒れてたルイズの側に落ちてた」
「この六冊が、ルイズさんの魔力を吸い取った『古き本』のようですね」
六冊を確かめたリーヴルが眉間に皺を寄せる。
「……厄介ですね。これらは『古き本』の中でも一番力の強いもの。砂漠で発見されてトリステインに
流通したもので、どこで書かれたものかも不明です」
「曰くつきって奴か。どういう内容なんだ? って、読めないのか……」
何気なく本の一冊を開いた才人が、唖然と固まった。
「いや、俺これ読めるぞ! 日本語……俺の国の文字で書かれてる!」
「そうなのね!?」
シルフィードたちの驚きの視線が才人に集まった。才人は他の五冊にもざっと目を通す。
「全部そうだ! しかも……全部ウルトラマンの本じゃねぇか!」
仰天する才人。六冊全部が、ウルトラ戦士の戦いを題材にした作品なのだ。これら六冊も、
自分のように日本からハルケギニアに迷い込んできたものなのだろう。それと日本人の自分が
出会うとは、何という巡り合わせか。
同時に才人は、若干険しい顔となる。
(となると、ゼロでも簡単にはいかないってことになるな。何せ、本の世界で待ってるのは
怪獣や宇宙人との戦いだ……)
ウルトラ戦士の戦いが題材ということは当然、本の中で繰り広げられている世界でも怪獣、
宇宙人と戦うことは避けられない。ゼロの力ならばよほどのことは、と思っていたが、まさか
こんなことになろうとは。
しかしそれならばなおさら自分たちが本の世界に行かなければならない。他の者では、
この六冊の物語を完結させるのはほぼ不可能であろう。改めて決心した才人は、最初に
中に入る本を選択する。
「……よし、これにしよう。最初には、『始まりのウルトラマン』の本が相応しいと思う」
「決まりましたか」
「早速やってくれ。準備はもう出来てる」
才人から本を受け取ったリーヴルが、本の世界に旅立つ前に忠告した。
「生死以外にもう一点、重要なことを。あまりに物語を改変してしまうと話が破綻し、その本の
世界は閉じてしまい完結できなくなります。要するに、最低でも本来の主役を立て、その人物に
物語を終わらせてもらう必要があります」
「俺が何もかも物語の中の問題を解決しちゃいけないってことだな。分かった」
ただ怪獣たちを倒すだけでなく、本の中のウルトラマンと共闘する必要があるようだ。
その条件を解決しなければならないとは負担が増加したように思えるが、きっと何とか
なるだろう。同じ正義の心を持つウルトラ戦士なのだ。
もう一つ、タバサがリーヴルに問いかけた。
「最後に、これだけ聞かせて」
「何でしょうか?」
「……何故千年以上前の貴重な本が、一般の書架に置いてあったの?」
リーヴルは一瞬言いよどんだ。
「……私にも分かりません。ですが元は幽霊が騒動の発端。もしかしたら、『古き本』自体が
魔力を用いて人の目に留まるように動いたのかもしれません」
「……」
タバサは若干納得していなさそうだったが、それ以上の追及はしなかった。
そしてこれから本の中に入る才人に、仲間たちが応援の言葉を寄せる。
「俺も「一人」に数えられてるみてえだから、相棒と一緒に本の中にゃ入れねえ。けど俺が
いなくてもしっかりやれよ! 娘っ子を頼んだぜ!」
「気をつけてなのね! 死んじゃ絶対に駄目なのね!」
「……頑張って」
「パムー!」
才人は彼らに笑顔で応える。
「ああ! 行ってくるぜ!」
リーヴルの前に立つと、彼女が才人に魔法を掛ける。才人の視界がぐるぐると回り、目の前の
光景が大きく変化していく……。
‐甦れ!ウルトラマン‐
「ピポポポポポ……」
荒野でにらみ合うウルトラマンとゼットン。ウルトラマンは八つ裂き光輪を投げつけて攻撃する。
「ヘアァッ!」
しかしゼットンは己の周囲にバリヤーを張り、八つ裂き光輪は粉々に砕け散ってしまう。
「ヘアァァッ!」
それを見たウルトラマンは肉弾戦に切り替えるが、ゼットンの水平チョップで返り討ちにされた。
「ウアァッ!」
地面を転がりながらも立ち上がったウルトラマンは、必殺のスペシウム光線を発射!
「シェアッ!」
だが直撃したスペシウム光線は、ゼットンに吸収されてしまう。
「ウアァッ!?」
ゼットンは更に吸収したエネルギーによって、腕から光波を発射。ウルトラマンの急所である
カラータイマーに命中してしまう! ウルトラマンのカラータイマーが赤く点滅し出した。
「どうしたウルトラマン!?」
叫ぶムラマツ。ゼットンは容赦なく光波を撃ち続けてウルトラマンを追撃。
「やめろ! ゼットン!」
「危ないわッ!」
絶叫するイデと『フジ』。だが致命傷をもらったウルトラマンの身体がよろめき、前のめりに
倒れてしまった。
仰向けに横たわるウルトラマンを見下ろすゼットン。このままではウルトラマンの命が危ない!
「よし、ウルトラマンの仇討ちだ!」
ムラマツたち科特隊がゼットンに攻撃開始。しかしスーパーガンの光線はゼットンに全く
通用していない。
「よぉし! イデ隊員の、すごい兵器をお見舞いしてやる!」
するとイデがスーパーガンの銃口に新兵器スパーク8を接続。強化された光弾がうなりを
立てて飛び、ゼットンに直撃。
ゼットンは爆炎の中に呑まれ、粉々に吹っ飛んだのだった。
「やったぁッ!」
――ゼットンは、イデ隊員の活躍で撃退された。しかし、常に勝利を誇ってきたウルトラマンは、
この戦いで遂に敗北を味わったのである。
荒野でにらみ合うウルトラマンとゼットン。ウルトラマンは八つ裂き光輪を投げつけて攻撃する。
「ヘアァッ!」
しかしゼットンは己の周囲にバリヤーを張り、八つ裂き光輪は粉々に砕け散ってしまう。
「ヘアァァッ!」
それを見たウルトラマンは肉弾戦に切り替えるが、ゼットンの水平チョップで返り討ちにされた。
「ウアァッ!」
地面を転がりながらも立ち上がったウルトラマンは、必殺のスペシウム光線を発射!
「シェアッ!」
だが直撃したスペシウム光線は、ゼットンに吸収されてしまう。
「ウアァッ!?」
ゼットンは更に吸収したエネルギーによって、腕から光波を発射。ウルトラマンの急所である
カラータイマーに命中してしまう! ウルトラマンのカラータイマーが赤く点滅し出した。
「どうしたウルトラマン!?」
叫ぶムラマツ。ゼットンは容赦なく光波を撃ち続けてウルトラマンを追撃。
「やめろ! ゼットン!」
「危ないわッ!」
絶叫するイデと『フジ』。だが致命傷をもらったウルトラマンの身体がよろめき、前のめりに
倒れてしまった。
仰向けに横たわるウルトラマンを見下ろすゼットン。このままではウルトラマンの命が危ない!
「よし、ウルトラマンの仇討ちだ!」
ムラマツたち科特隊がゼットンに攻撃開始。しかしスーパーガンの光線はゼットンに全く
通用していない。
「よぉし! イデ隊員の、すごい兵器をお見舞いしてやる!」
するとイデがスーパーガンの銃口に新兵器スパーク8を接続。強化された光弾がうなりを
立てて飛び、ゼットンに直撃。
ゼットンは爆炎の中に呑まれ、粉々に吹っ飛んだのだった。
「やったぁッ!」
――ゼットンは、イデ隊員の活躍で撃退された。しかし、常に勝利を誇ってきたウルトラマンは、
この戦いで遂に敗北を味わったのである。
衝撃の事件から一ヶ月が過ぎていた。強敵ゼットンに対する勝利で勢いづいた科学特捜隊は
向かうところ敵なしであったが、一方でウルトラマンはスランプに陥り、怪獣に黒星を重ねていた。
そんな中、日本各地で怪奇現象が続出。ハヤタは怪獣総攻撃の予兆を感じ取っていたが、
それはウルトラマンと一体である彼にしか感じられないもの。誰かに話すことは、自分が
ウルトラマンであることを告白すること。ハヤタは悩んだ……。
しかし彼の決心を待たずして、怪獣軍団の尖兵が出現したのだ!
向かうところ敵なしであったが、一方でウルトラマンはスランプに陥り、怪獣に黒星を重ねていた。
そんな中、日本各地で怪奇現象が続出。ハヤタは怪獣総攻撃の予兆を感じ取っていたが、
それはウルトラマンと一体である彼にしか感じられないもの。誰かに話すことは、自分が
ウルトラマンであることを告白すること。ハヤタは悩んだ……。
しかし彼の決心を待たずして、怪獣軍団の尖兵が出現したのだ!
「ゲエエオオオオオオ!」
「ピギャ――――――!」
緑に覆われた山脈の間を、二体の怪獣が行進している。一体は這いつくばった姿勢、もう一体は
直立した姿勢だが、どちらも首の周りがエリで覆われているという共通点がある。四足歩行の方は
エリが閉じていて首がその中に隠れていた。
ウラン怪獣ガボラとエリ巻き恐竜ジラースだ! その進行先には人間の町がある。怪獣たちが
町に到達したら大惨事だ!
「くっそー、怪獣どもめ! ここから先には行かせないぜ!」
「みんな、何としても食い止めるんだ!」
それに立ち向かうのは科特隊。アラシがスパイダーで射撃し、他の面々もムラマツの激励の
下にスーパーガンで応戦する。
「ゲエエオオオオオオ!」
「ピギャ――――――!」
しかし彼らの射撃は、ガボラとジラースにほとんど効果を上げていなかった。アラシが
大きく舌打ちする。
「くそぅ、一匹だけなら何とかなるが、二匹同時ってのは苦しいぜ……!」
「イデ隊員、スパーク8は使えないの!?」
『フジ』がイデに尋ねたが、イデは首を横に振った。
「スパーク8は一発限りしかないんだよ!」
「もうッ! 肝心な時に使えないわね!」
『フジ』の荒々しい言動に、イデはやや首をすくめた。
「フジ君、何だか気が強くなったんじゃないか? それに心なしか、背も縮んだような……」
「そんなこと言ってる場合じゃないぞ、イデ! 戦いに集中しろ!」
アラシが叱りつけている一方で、ハヤタは懐の変身アイテム、ベーターカプセルに目を落としたが……。
「……駄目だ。今の俺では、ウルトラマンに変身しても怪獣に勝てない……」
「ハヤタ! 危ないぞッ!」
ハヤタが力なく首を振っていると、ムラマツが警告を飛ばした。
我に返って顔を上げたハヤタに、ジラースが光線を吐こうとしていた!
「ピギャ――――――!」
「うわぁぁぁッ!」
「ハヤターッ!!」
絶叫するアラシ。ハヤタのピンチ!
その時、『フジ』が空の一画を指差して叫んだ。
「見て! あれ何かしら!」
空の彼方から、何かが流星のように降ってきている。思わずそれに目を奪われる科特隊。
「セェェェェェアッ!」
それは巨人だった! 空の彼方から脚を突き出して猛然と地上に迫り、ジラースに飛び蹴りを
ぶちかました。
「ピギャ――――――!」
ジラースは巨人に蹴り飛ばされて、ハヤタは救われる。ガボラが驚いたように巨人に振り返った。
「な、何だあの巨人は……」
科特隊の面々も唖然として巨人を見上げた。青と赤のカラーリングの肉体で、頭部には
二つのトサカが生えている。目つきはかなり鋭いが、勇気と優しさが眼差しから見て取れた。
「ハァッ!」
ガボラに対して空手を思わせる構えを取った巨人の胸元には、丸い発光体が青々と輝いていた。
それを指差すイデ。
「胸にカラータイマーがついてるぞ!」
「じゃああの巨人は、ウルトラマンということか……!?」
ぽかんと口を開くムラマツ。しかし一番驚いているのはハヤタであった。
「俺以外の、ウルトラマン……!?」
ウルトラマン以外の『ウルトラマン』は、突っ込んできたガボラにこちらから向かっていく。
素早い蹴り上げがガボラの首に決まり、ガボラは押し返された。
「ゲエエオオオオオオ!」
ガボラは頭部を覆い隠すヒレを開いて、口から熱線を吐き出した。だがウルトラマンは
側転して回避。
「ピギャ――――――!」
「セアッ!」
そこに起き上がったジラースが背後から襲い掛かるが、ウルトラマンは機敏に反応して
裏拳を顔面に打ち込んで、振り返りざまの横拳でジラースを返り討ちにした。
怪獣二体を相手にしてむしろ優勢なウルトラマンの様子に、科特隊の目は思わず釘づけになっていた。
「強い……!」
「ええ、すごい強さですね、キャップ……!」
ムラマツとアラシは感心しているが、ハヤタは複雑な表情で自分以外のウルトラマンの
戦いぶりを見上げていた。
「テェェェイッ!」
ウルトラマンはガボラを飛び越えて背後に回り込み、その身体を鷲掴みにして真上に放り投げた。
「ゲエエオオオオオオ!」
「ハァァァァァッ!」
ウルトラマンはジャンプして空中でガボラをキャッチし、真っ逆さまに地面に叩きつける
パイルドライバーを決めた。ガボラはこの一撃によって絶命し、地面の上に横たわる。
「ピギャ――――――!」
ガボラを倒したウルトラマンにジラースが突進していくが、ウルトラマンはそれをいなした上で、
エリマキに手を掛けて引き千切った。
「ピギャ――――――!?」
首に手を当てて、エリマキがなくなったことに慌てふためくジラース。ウルトラマンは
千切ったエリマキを投げ捨てると、トサカに手を伸ばして……何と取り外した!
「あれ取れるのか!?」
えぇッ! と驚くアラシとイデ。ウルトラマンは取り外したトサカを逆手に持ち、ジラースに
向かってまっすぐ走っていき……。
「セェアッ!」
喉元にトサカを走らせて切り裂いた。トサカは刃だったのだ。
ジラースは口の端からツゥッと血を垂らし、前のめりにばったりと倒れ込んだ。
「シェアッ!」
圧倒的な実力で立て続けに怪獣二体を撃破したウルトラマンは、両腕を天高く伸ばして
空に飛び上がり、どこかへと飛び去っていく。
科特隊は突然現れ、風のように去っていくもう一人のウルトラマンの後ろ姿を、呆然と
見送っていた。
「ピギャ――――――!」
緑に覆われた山脈の間を、二体の怪獣が行進している。一体は這いつくばった姿勢、もう一体は
直立した姿勢だが、どちらも首の周りがエリで覆われているという共通点がある。四足歩行の方は
エリが閉じていて首がその中に隠れていた。
ウラン怪獣ガボラとエリ巻き恐竜ジラースだ! その進行先には人間の町がある。怪獣たちが
町に到達したら大惨事だ!
「くっそー、怪獣どもめ! ここから先には行かせないぜ!」
「みんな、何としても食い止めるんだ!」
それに立ち向かうのは科特隊。アラシがスパイダーで射撃し、他の面々もムラマツの激励の
下にスーパーガンで応戦する。
「ゲエエオオオオオオ!」
「ピギャ――――――!」
しかし彼らの射撃は、ガボラとジラースにほとんど効果を上げていなかった。アラシが
大きく舌打ちする。
「くそぅ、一匹だけなら何とかなるが、二匹同時ってのは苦しいぜ……!」
「イデ隊員、スパーク8は使えないの!?」
『フジ』がイデに尋ねたが、イデは首を横に振った。
「スパーク8は一発限りしかないんだよ!」
「もうッ! 肝心な時に使えないわね!」
『フジ』の荒々しい言動に、イデはやや首をすくめた。
「フジ君、何だか気が強くなったんじゃないか? それに心なしか、背も縮んだような……」
「そんなこと言ってる場合じゃないぞ、イデ! 戦いに集中しろ!」
アラシが叱りつけている一方で、ハヤタは懐の変身アイテム、ベーターカプセルに目を落としたが……。
「……駄目だ。今の俺では、ウルトラマンに変身しても怪獣に勝てない……」
「ハヤタ! 危ないぞッ!」
ハヤタが力なく首を振っていると、ムラマツが警告を飛ばした。
我に返って顔を上げたハヤタに、ジラースが光線を吐こうとしていた!
「ピギャ――――――!」
「うわぁぁぁッ!」
「ハヤターッ!!」
絶叫するアラシ。ハヤタのピンチ!
その時、『フジ』が空の一画を指差して叫んだ。
「見て! あれ何かしら!」
空の彼方から、何かが流星のように降ってきている。思わずそれに目を奪われる科特隊。
「セェェェェェアッ!」
それは巨人だった! 空の彼方から脚を突き出して猛然と地上に迫り、ジラースに飛び蹴りを
ぶちかました。
「ピギャ――――――!」
ジラースは巨人に蹴り飛ばされて、ハヤタは救われる。ガボラが驚いたように巨人に振り返った。
「な、何だあの巨人は……」
科特隊の面々も唖然として巨人を見上げた。青と赤のカラーリングの肉体で、頭部には
二つのトサカが生えている。目つきはかなり鋭いが、勇気と優しさが眼差しから見て取れた。
「ハァッ!」
ガボラに対して空手を思わせる構えを取った巨人の胸元には、丸い発光体が青々と輝いていた。
それを指差すイデ。
「胸にカラータイマーがついてるぞ!」
「じゃああの巨人は、ウルトラマンということか……!?」
ぽかんと口を開くムラマツ。しかし一番驚いているのはハヤタであった。
「俺以外の、ウルトラマン……!?」
ウルトラマン以外の『ウルトラマン』は、突っ込んできたガボラにこちらから向かっていく。
素早い蹴り上げがガボラの首に決まり、ガボラは押し返された。
「ゲエエオオオオオオ!」
ガボラは頭部を覆い隠すヒレを開いて、口から熱線を吐き出した。だがウルトラマンは
側転して回避。
「ピギャ――――――!」
「セアッ!」
そこに起き上がったジラースが背後から襲い掛かるが、ウルトラマンは機敏に反応して
裏拳を顔面に打ち込んで、振り返りざまの横拳でジラースを返り討ちにした。
怪獣二体を相手にしてむしろ優勢なウルトラマンの様子に、科特隊の目は思わず釘づけになっていた。
「強い……!」
「ええ、すごい強さですね、キャップ……!」
ムラマツとアラシは感心しているが、ハヤタは複雑な表情で自分以外のウルトラマンの
戦いぶりを見上げていた。
「テェェェイッ!」
ウルトラマンはガボラを飛び越えて背後に回り込み、その身体を鷲掴みにして真上に放り投げた。
「ゲエエオオオオオオ!」
「ハァァァァァッ!」
ウルトラマンはジャンプして空中でガボラをキャッチし、真っ逆さまに地面に叩きつける
パイルドライバーを決めた。ガボラはこの一撃によって絶命し、地面の上に横たわる。
「ピギャ――――――!」
ガボラを倒したウルトラマンにジラースが突進していくが、ウルトラマンはそれをいなした上で、
エリマキに手を掛けて引き千切った。
「ピギャ――――――!?」
首に手を当てて、エリマキがなくなったことに慌てふためくジラース。ウルトラマンは
千切ったエリマキを投げ捨てると、トサカに手を伸ばして……何と取り外した!
「あれ取れるのか!?」
えぇッ! と驚くアラシとイデ。ウルトラマンは取り外したトサカを逆手に持ち、ジラースに
向かってまっすぐ走っていき……。
「セェアッ!」
喉元にトサカを走らせて切り裂いた。トサカは刃だったのだ。
ジラースは口の端からツゥッと血を垂らし、前のめりにばったりと倒れ込んだ。
「シェアッ!」
圧倒的な実力で立て続けに怪獣二体を撃破したウルトラマンは、両腕を天高く伸ばして
空に飛び上がり、どこかへと飛び去っていく。
科特隊は突然現れ、風のように去っていくもう一人のウルトラマンの後ろ姿を、呆然と
見送っていた。
……ウルトラマンゼロから元の姿に戻った才人は、山の中腹からそんな科特隊の様子を
見下ろしていた。
『とりあえずは危機回避だな。こんなところでウルトラマンに死なれてたら、いきなりアウト
だったぜ』
「ああ。それにしても、本の中とはいえ、あの最初の地球防衛隊、科学特捜隊の人たちと
こうして出会うことになるなんてな……。夢みたいだよ」
そう、ここか本の世界。才人は『古き本』の一冊目、『甦れ!ウルトラマン』の中に入ったのだ。
そして本文が途切れていた箇所、科特隊の窮地を救ったのであった。
史実ではウルトラマンはゼットンに敗れた後、やってきたゾフィーとともに光の国に帰った
のだが、この作品は「もしもウルトラマンが帰らず、地球に残っていたら」のifを書いたものの
ようである。
感慨深げに科特隊のムラマツ、アラシ、イデを順番にながめた才人だが、『フジ』に目を
留めて微妙な笑みをこぼした。
「……けど、その中にルイズが混じってるのが、意識が現実に引き戻されるような感覚がするな」
『正直、あの制服ルイズに似合ってねぇよな』
そう、科特隊の紅一点、フジ隊員の姿は、ルイズのものに置き換わっているのだった。
それが、ここが現実の世界ではない何よりの証拠である。そして見た限り、ルイズは
すっかり『フジ』の役回りになり切っているようで、周りも別人になっていることに
気づいていないようであった。
『まぁそれは置いといて、こっからこの本を完結させるために頑張らねぇとな。まずは、
本来のウルトラマンに奮起してもらわねぇと』
「ああ。俺たちが怪獣を全部やっつけるってのは駄目だって話だったしな」
ゼロと相談している才人がふと気配を感じ、顔を上げた。
「……そのご本人が、向こうからいらしたな」
才人の元に、ウルトラマンことハヤタが歩いてきたのだった。
見下ろしていた。
『とりあえずは危機回避だな。こんなところでウルトラマンに死なれてたら、いきなりアウト
だったぜ』
「ああ。それにしても、本の中とはいえ、あの最初の地球防衛隊、科学特捜隊の人たちと
こうして出会うことになるなんてな……。夢みたいだよ」
そう、ここか本の世界。才人は『古き本』の一冊目、『甦れ!ウルトラマン』の中に入ったのだ。
そして本文が途切れていた箇所、科特隊の窮地を救ったのであった。
史実ではウルトラマンはゼットンに敗れた後、やってきたゾフィーとともに光の国に帰った
のだが、この作品は「もしもウルトラマンが帰らず、地球に残っていたら」のifを書いたものの
ようである。
感慨深げに科特隊のムラマツ、アラシ、イデを順番にながめた才人だが、『フジ』に目を
留めて微妙な笑みをこぼした。
「……けど、その中にルイズが混じってるのが、意識が現実に引き戻されるような感覚がするな」
『正直、あの制服ルイズに似合ってねぇよな』
そう、科特隊の紅一点、フジ隊員の姿は、ルイズのものに置き換わっているのだった。
それが、ここが現実の世界ではない何よりの証拠である。そして見た限り、ルイズは
すっかり『フジ』の役回りになり切っているようで、周りも別人になっていることに
気づいていないようであった。
『まぁそれは置いといて、こっからこの本を完結させるために頑張らねぇとな。まずは、
本来のウルトラマンに奮起してもらわねぇと』
「ああ。俺たちが怪獣を全部やっつけるってのは駄目だって話だったしな」
ゼロと相談している才人がふと気配を感じ、顔を上げた。
「……そのご本人が、向こうからいらしたな」
才人の元に、ウルトラマンことハヤタが歩いてきたのだった。