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ウルトラ5番目の使い魔、第三部-49b


 青い光があふれ出し、波動球ははじき返された。そして、その輝きの中から青き巨人が姿を現す。
「シュワッ!」
 ウルトラマンコスモス・ルナモード。優しき光をまとったその姿は、生命を慈しみ見守る月のごとき守護者。彼はティファニアの見つけた戦う意思に応えてついに現れた。
 人はなにかを守るために戦う。だが守るために戦う人も、また失われてよいものではない。ならば、そんな人たちを守りたい。
 ロングビルとルクシャナを押さえつけていた瓦礫はいつの間にか取り除かれていた。そしてふたりは、自分たちを救ってくれたコスモスの姿に、自然とティファニアを重ねて見ていた。
「テファ、まさか……あんたなのかい?」
「あのウルトラマンは。そっか、またあんたに助けられちゃったか。ごめん、わたしのほうが年上なのにあんたにばっか世話かけさせちゃって」
 守るつもりが守られてしまった。けれども、彼女たちの思いがティファニアに伝わってコスモスを呼んだのだ。
 また、王宮のテラスからも、アンリエッタや彼女の護衛に努めていたエレオノールやカトレアがコスモスの姿を望んで胸を熱くしている。まだ、トリステインは神に見放されてはいない。
 だが、安心はできない。敵はまだその手の内をすべて見せたわけではない。対して、自分に残されている切り札はあとひとつ、始祖から託された力を使うべきときは決して間違えることはできない。

 対峙するコスモスと巨大天使。それはいずれも、双方にとっての希望に他ならない。
 しかし、神の眼を持たない人間たちには存在だけで善悪はわからない。

 王宮をかばうように現れたウルトラマンコスモスの勇姿に、人々は一瞬戦いを忘れて見入った。
「おおっ! ウルトラマンだ」
「青いウルトラマン……今まで見たこともないウルトラマンだ」
 コスモスがハルケギニアの人々に姿を見せるのは、実質今回が初めてになる。
 青いウルトラマン、果たして何者なのか? だがトリステイン王宮を守っているということはトリステインの味方なのか?
 トリステイン側が味方の登場に歓呼に震えるのと対照的に、ウルトラマンがトリステイン側についたことで、ガリアとロマリアの兵に動揺が生まれた。トリステイン軍への攻撃が弱まり、進撃速度が鈍る。
 このまま戦いは沈静化してくれるのか? 淡い期待が人々のあいだによぎる。
 だが、そんな期待を粉砕するかのようにトリスタニアにヴィットーリオの声が響いた。
「惑わされてはいけません。それは我々を欺くために敵が作り出したまやかしです。あなたがたの信ずべきものは神のみであり、天使の目はあざむけないことを見るのです!」
 その瞬間、天使はコスモスをめがけて波動球を発射した。
 今度もまた大きい! 避けたら後ろの王宮は粉々になってしまうと、コスモスは腕を前に掲げて金色のバリヤーで受け止めた。
『リバースパイクバリア!』
 コスモスのバリアで波動球はギリギリのところでストップした。だが威力が大きすぎて、コスモスは後に跳ね飛ばされて王宮に叩きつけられてしまった。
「ウオォッ!」
 コスモスに城の瓦礫が降り注ぎ、粉塵が巻き上がる。
 トリステインの人間たちから悲鳴があがり、アンリエッタも「なんてことを!」と、愕然とする。だが、教皇の声はアンリエッタたちが反応するより早く響いた。
「見ましたか皆さん! 天使の裁断はあの巨人を悪魔と見なしました。さあ、恐れずに立ち向かうのです。いかなるものが現れようとも、あなたたちの行く先は天使が導いてくれるのです!」
 途端に、ヴィットーリオの声に迷いから解き放たれたガリア・ロマリア軍はトリステイン軍への総攻撃を再開した。どんなことが起ころうとも天使を信じていればすべて心配することはないと心をゆだねたロマリアとガリアの兵が、戸惑うトリステイン軍に襲い掛かってくる。
 その光景に、アンリエッタは「しまった」とほぞをかんだ。教皇のこの対応の早さは、最初からウルトラマンが現れることを想定していたに違いない。本来ならば自分が先手を打って、ウルトラマンが味方についてくれたことを大きく演説して味方の士気を高めて、かつ敵の迷いをうながすべきであったのに、ウルトラマンが助けてくれたことで有頂天になって教皇に先を越されてしまった。
 教皇の言葉で、ロマリアとガリアの将兵たちは天使がついているのだからという免罪符を心につけてしまった。これではウルトラマンの存在が戦略上の価値を大きく減じてしまう。
 やられた……だが、そこでアンリエッタは見たのだ。青いウルトラマンが立ち上がり、再び天使に向かって構えをとるのを。
「シュワッ!」
 そうだ、ここで引き下がるわけにはいかない。過ぎたことを悔やんでもなんにもならない。大切なのは、前を向いて歩みだすこと! アンリエッタは意を決して、全軍への呼びかけをはじめた。
「トリステインの皆さん、くじけてはなりません! 人の守るべき大切なものは、すべての人の中にあるということを思い出すのです。ここに集まった者はすべて、守るべき大切なもののために戦っているはず。その大切なものを無言で奪い去ろうとするあれが天使なはずがありません! 戦うのです。まだ我々にはその力が残っています!」
 アンリエッタの激が、崩れかけていたトリステイン軍の士気を立て直した。
 もう後がないが、背水の陣の人間は強い。銃士隊、魔法騎士隊、一般の将兵たちも死力をふりしぼって数倍の敵を迎撃する。
 ティファニアは、その光景をコスモスを通して望み、自らがしなければならないことを心に定めた。
〔みんな、守りたいもののために必死に戦ってる。みんなのためにも、あの偽物の天使を止めないと! コスモスお願い、あなたの力を〕
 コスモスはその思いに応えて、自分を黒い眼差しで見下ろしてくる巨大天使を見上げた。空に掲げた手のひらに優しい光がきらめき、コスモスは慈愛の光を天使に向かって降り注いだ。
『フルムーンレクト』
 生き物を傷つけずに沈静化させる慈愛の光線。それが光のシャワーのように美しくきらめきながら天使を包み込む。
 だが、フルムーンレクトの光を受けても天使はまったく変化を見せなかった。輝きの中で怪しく微笑み、それどころかお返しとばかりに波動球を投げつけてきたのだ。
〔危ないっ〕
 とっさに身を翻し、コスモスは波動球を避けた。
 けれどなぜ? あの天使にはコスモスの力も及ばないというの?
 ティファニアが愕然としていると、彼女の心にコスモスが語りかけてきた。
〔やはりそうか、あの天使は生き物じゃない〕
〔コスモス? 生き物じゃないって、じゃああの天使はいったいなんなの?〕
〔あれは、何者かがこの街全体を超空間化して投影している、いわば実体のある幻影だ。だから、どんなことをしても消えないし、あの天使を作り出している何者かを見つけ出さない限りは、私の力も通用しないのだ〕
 相手が存在を持たない影も同然の相手では、どんな強力な力を持っていようと倒せるわけがない。
 ティファニアだけでなく、アンリエッタやトリステインの人々も、ウルトラマンの力が通じなかったことでショックを隠せないでいる。ウルトラマンでさえどうしようもないなんて、やはり天使に勝つなど不可能だったのか?
 絶望をあおるように教皇の声がさらに響く。
「哀れな異端者たちよ、これ以上天命に逆らってはいけません。人の力で神に勝つことなどできはしません。あなた方が守護者と崇めるウルトラマンなど、しょせん神の力の前では子羊のようなもの。悔い改めなさい、さもなければあなた方の魂は地獄へと落ちて永遠に苦しみ続けることになりますよ」
 だめなのか、どんなに頑張っても神に立ち向かうなんてことは無謀だったのか? 立ち直りかけたトリステイン軍を、再び教皇の言葉が絶望に染め始める。
 だがそのときだった。コスモスに放たれた波動球を真空の刃で切り裂き、トリステイン軍を押しつぶしかけていたガリア・ロマリア軍を猛烈な突風が押し返したのだ。
「まだだ! まだ我々は屈してはいないぞ。見るがいい、まだこの烈風は飛んでいるのだぞ!」
 あれは『烈風』!? まだ戦う力が残っていたのかと、敵味方共に驚いた。並のメイジなら一個大隊がつぶれていてもおかしくないほどに戦っているはずなのに、なんて騎士なのだ。烈風の力は底なしなのかと畏怖の念が流れる。
 けれども実際には『烈風』の余力はほとんどない。使い魔のラルゲユウスも疲労して、ベストコンディションからは程遠い状態でしかない。それでも見た目は平然として立ち続けるのは、自分がトリステインに唯一無二の『烈風』としての使命を背負っているという誇りがあるからに他ならない。
 人はそれをやせ我慢というかもしれない。それでもカリーヌは誇りを捨てない。なぜかと問うなら、彼女はルイズの母だからだと答えれば済むだろう。
「教皇ヴィットーリオよ、たかが人間ひとりを地に這わせることもできないものが神だなどと笑わせてくれる。すぐにその天使の化けの皮をはいでやろう。楽しみにしているがいい」
「ああ、どこまでも、どこまでもあなた方という人たちは救いがたいのですね。仕方ありません、神罰に焼かれて、神前で己が所業を始祖に懺悔なさい」
「始祖の名をどこまでも騙るか、だが後悔するのは貴様たちのほうだ。さあ、我に続けトリステインの勇者たちよ! そして名も知らぬウルトラマンよ、助力に感謝する。そして願わくば、我らと共に闇を打ち払わんことを!」
 喚声があがり、その瞬間追い詰められていたはずのトリステイン軍は確かに大軍のロマリア・ガリア軍を気圧していた。
 街では、アニエスたちやスカロンたち、将兵たちが勇気を取り戻した。また、トリステイン軍を適当に援護しながら経過を見守っていたダミアンはジャックに嫌味たっぷりに「ね、トリステインに味方して正解だったろ」と言っている。
 カリーヌの声で、トリステイン軍は再度その士気を立て直した。しかし心の力も無限ではない、今度崩されたらもはや立て直しは不可能であろう。
 ロマリア側から見ても、トリステイン軍が瀕死なのは容易に見て取れる。それを待っていたのだろう。ヴィットーリオは最後の仕上げとばかりに呪文を唱えはじめた。
「なんだ、あの呪文は?」
 ヴィットーリオの唱える呪文は戦場全体に響き渡り、人々は聞いたこともないスペルに困惑した。
 だが、完成した魔法の発動が疑問を吹き飛ばした。なんと、教皇が杖を振り下ろした瞬間、空が揺らめいて、空一面にまるで映画のスクリーンのようにトリステインの状況が投影されたのだ。
「これは私に与えられた始祖の虚無の力のひとつ、イリュージョンの魔法の応用です。今、この瞬間の光景と我々の声はガリアやロマリア、ゲルマニアにアルビオンなど世界中に映し出されています。我々とトリステインのどちらに神の審判が下るか、全世界の人々に見ていてもらおうではありませんか」
 ヴィットーリオの宣言にロマリア軍から喚声があがる。教皇聖下のお力はまさに始祖の虚無に相違ない、始祖の虚無が味方についている以上、自分たちに負けがあるはずがない。
 が、トリステイン側からすれば、トリステインを見せしめにした公開処刑でしかない。実際、遠く離れたガリアのリュティスの上空に同じように映し出された光景を見上げて、ジョゼフは「悪趣味なことだ」とせせら笑っていた。
 これでトリステインが負けるようなことになれば、もはや世界中にロマリアに逆らえるものはいなくなる。世界は加速度を増して聖戦へと突き進むこととなる。
 それでも人間たち、そしてコスモスもティファニアとともに天使に向き合う。戦う誇りを胸にして。

 どんな絶望の中でも、希望がすべて消え去ることはない。あきらめずに、それを探し続ける限りは。

 確かに悪の力は強大である。しかし、あきらめずに希望を求め続ける力は正義にしかない。
 ラグドリアン湖においても、アークボガールがウルトラマンヒカリとウルトラマンジャスティスを圧倒している。だが、ふたりのウルトラマンはまだくじけてはいない。
「死にぞこないどもめ。暴れすぎると獲物の味が落ちる。我のディナーになれる光栄を理解して、そろそろおとなしくしたらどうだ?」
「まだまだ……勝負は、これからだ」
「希望を、最後まで信じる。まだ人間たちが希望を捨ててないのに、我々がひざを屈するわけにはいかん」
 アークボガールの嘲りも、ヒカリとジャスティスの心を折ることはできない。たとえ勝機が限りなく低くても、彼らにはまだ背中を支えてくれる人たちがいるのだから。
「うおおおおっ! 水精霊騎士隊、声出せぇぇぇ! ぼくたちに応援しかできないなら、喉が張り裂けるまで応援するだけどぁぁぁっ!」
「がんばれーっ! がんばれーっ! ウルトラマーン!」
 ギーシュたち水精霊騎士隊のどら声が船上から湖の水面に波紋を生むほどに響き渡る。
 むろん、それだけではない。ベアトリスたちも負けじと声をあげていた。
「みんな、今日だけは下品になることを許可するわ。馬鹿な男たちに負けてるんじゃないわよ! がんばれーっ!」
「がんばれーっ! ウルトラマン、がんばってーっ!」
 エーコたちや、それに銃士隊も含めて女子全員も男子に負けじと応援している。
 むろん、ダンもあきらめるなとふたりをはげましている。これだけの声を背に受けて、あきらめられるわけなどない。
 だが、アークボガールはもはや我慢と怒りの限界に達していた。
「虫けらどもが! ならもういい、貴様らを調理するのはもう飽きた。黙って捌かれたくないのなら、生きたまま踊り食いにしてくれるわ。そして順序は狂ったが、そのままこの星も丸呑みにしてくれようぞ!」
 怒りと空腹に燃えるアークボガールがヒカリとジャスティスに迫る。すでにカラータイマーの点滅が限界に近づいているふたりには、もはや抗う力はほとんど残されていない。
 にも関わらず、決して恐怖を見せようとしないふたりのウルトラマンにアークボガールはいらだつ。それが、アークボガールにとって決して理解できない心だからだ。


 悪の猛攻に対して、光の戦士たちはまさに背水の陣と言っていい。それでも、心の力で限界を超えて戦い、闇の侵攻を食い止め続けている。
 だが、もはやそれすら終わりに近い。敵の強大な力の前に、敗北と破滅は目の前にまで来ている。

 そんなハルケギニアに残った最後の希望、東方号。
 深海竜ディプラスの襲撃を撃退し、ついに東方号はラグドリアン湖の深度一万九千メイルを突破した。そこに待つという水の精霊の都が、とうとうその姿を現す。
「見て……湖の底に光が見えるわ」
 キュルケが指差す先で、神秘的な光景が彼女たちを待っていた。
 湖の底、暗黒の世界の底の底に淡い緑色の光が満ちている。まるで、夜空の一面に蛍がいるかのような幻想的な風景が、沈み行く東方号を迎えてくれている。
「きれい……こんなの、どこの宇宙でも見たことない」
 ティラが見惚れたようにつぶやいた。暗黒の世界の果てに広がる光の世界に、彼女だけでなく、コルベールやジャネットも唖然として目を奪われ、ファーティマも大きすぎる精霊の存在に圧倒されて涙を流すばかりでしかない。
 あれが、目指す水の精霊の都。深度は間もなく二万メイルに届き、東方号の耐久力ももはや限界で、浸水はついに胸から首に届くまでに来た。
 これで、命の綱は天井付近にわずかに残った空気だけとなる。もって、あと十数分……それが、自分たちに残った命のリミット。その間に、やるべきことをやらなければ。
 そのときだった。彼女たちの前に、水の精霊が再び姿を現した。
「とうとうここまで来たな。単なる者たちよ、歓迎しよう。ここがお前たちの目指す場所、我らの都へ、ようこそ」
 今度の精霊はタバサの姿をとっておらず、声も元のままで、水の塊が静かに発光するような美しい姿をしていた。
 いや、それだけではない。沈み行く東方号の周りには、同じように発光する微小な生き物が何百、何千、何万と泳ぎまわっている。
 星の海の中に飛び込んでしまったかのようだ。こんな光景、ハルケギニアでは一生かかってもお目にかかれないに違いない。さらによく見ると、水中にはクラゲをさかさまにしたような構造物が無数に浮いていて、光る生き物たちはそれを出入りしていた。
「あれが、彼らの城なんだわ。すごい、水の精霊の都っていうのは比喩じゃない。これは都市、水の精霊は本当にラグドリアン湖の底で都を築いてたんだわ」
 まさに光の都……水の精霊は、誰も近寄ることのできない水の底で、人間にもエルフにも劣らない一大文明都市を築いていたのだ。
 目の前に死が迫っているというのに、眼前の光景は完全に彼らにそれを忘れさせるだけの圧巻を持って存在していた。これが、ハルケギニア原初の知的生命の本当の姿、水の精霊としての姿は彼らのほんの一端に過ぎなかったのだ。
 そして、目指すべきものはここにある。水の精霊の声が、そのときが来たことを促した。
「見るがいい、あれがお前たちの望むもの。異世界への扉だ」
 それは、東方号の真下に、まるで黒いもやのように存在していた。水の精霊の都のさらに深く、ラグドリアン湖の本当の湖底に、まるで沈み行く東方号を呑み込もうとしているかのようにブラックホールが待ち構えていたのだ。
 東方号は水の精霊の都を通り過ぎてブラックホールの中に落ち込もうとしていた。あの先は、どこへつながっているかもわからない無限への入り口……間違いない、あの深淵こそが目指す場所であるとキュルケは確信した。
「ついにやってきたのね。これで、わたしたちの役割も終わる……みんな、いくわよ」
 キュルケは大事に守り続けていた発信装置を取り出して皆にうながした。
 もう水は首を超えて天井に近づき、皆は立ち泳ぎでやっと息をつないでいる。それでもコルベールは微笑してうなづき、ティラとティアも満足げに笑っている。
 ファーティマは心残りがありげだったが、使命を果たせたことで亡くなっていった仲間たちにようやく申し訳が立つと思ったのか、無言でうなづいた。と思ったら、後ろからジャネットに耳をはみはみされてキレてふたりで乱闘になってしまった。もっともジャネットはファーティマとくんずほぐれずで満足なのか楽しげで、ここまできてのそのマイペースさには皆が感心さえ覚えた。なおドゥドゥーはもうどうにでもなれと、あきらめて向こうを向いている。
 本当に、よくぞこんなメンバーでやりとげられたものだ。だが、皆が自分のできることを最大限にやったからこそここに来れた。不可能という壁を乗り越えることができたのだ。
 キュルケは皆への感謝を込めて、以前にセリザワに教わったとおりに装置のスイッチを入れた。
 カチリ、確かな音が響いて、装置にランプが点った。これで、この装置からは特殊なシグナルが放たれ、GUYSの待つ宇宙へとこの次元の場所を伝えることができる。
「これで、わたしたちの役割も終わり、ね」
 満足してつぶやいたキュルケの言葉を最後に、ついに浸水が天井に達した。
 室内は完全に水に満たされ、皆が水底に沈んでいく。もう空気だまりはない、無酸素状態の水ではパラダイ星人も呼吸はできない。終わりだ。

 発信装置が床に落ちてコトリという音を立てた。そのランプの明滅だけが無機質に輝く。
 だが、彼女たちの頑張りは確かに報われていた。発信されたウルトラシグナルは異次元のゲートを潜り、複雑に入り組んだマルチバースの境界を旅して、GUYSがウルトラゾーン近くに設置した観測衛星に届いたのだ。
「隊長、ウルトラゾーンから発信ボール五十五号からのシグナルを観測しました。パターン計測、ウルトラマンヒカリのエネルギーに間違いありません」
 フェニックスネストでオペレーターの報告がリュウ隊長の耳に飛び込み、リュウは即座に命令を出した。
「セリザワ隊長、待ってたぜ! ようし、すぐに発信場所を突き止めるんだ。フジサワ博士はどこ行った? ったくこんなときに、早く呼び出せ!」
「G・I・G! ですが隊長、シグナルは非常に微弱で、逆探知にはかなり時間がかかるかと」
「だったら時間をかけてやりゃいいだけだろ! 異世界の仲間たちが俺たちのメッセージを聞いてやってくれたんだ。GUYSのクルーなら、そいつに答えないでどうする!」
「G・I・G! すみませんでした」
 まだ新人たちが一人前になるにはかかるな、とリュウは思った。今のGUYSクルーもカナタをはじめ経験を積んできているが、エンペラ星人との激闘の一年を送ってきた前メンバーのレベルにはさすがに届いてはいない。
 それでも衛星からのデータを着々と集めている彼らの手並みは乱れがない。
 あとは、集まったデータを元にしてハルケギニアのある宇宙までの航路を築き上げる作業が待っている。正直、これが一番厳しいが、どうやらハルケギニアのある宇宙は相当に遠くの次元らしい。ちゃんとした通路を作らなければ、次元の迷子になってしまうだけだ。
 すぐにでも救援に飛び立ちたい気持ちを押し殺し、どれだけかかっても必ず成し遂げてやるとリュウは決意していた。

 しかし、ハルケギニアにはもはや一刻を待つ余裕すらなかった。
 トリスタニア、ラグドリアンでそれぞれ敗北と破滅が目の前に迫っている。
 東方号の中は水で満たされ、中の生命が死に絶えるのにはあと数分しかかからないだろう。
「さよなら、タバサ……」
 透けて見える壁を通して、キュルケは自分の目に映る最後の光景になるであろう異世界への門を見つめた。あの門を潜ればなんとかなるかもとした期待も、もうそんな時間もないらしい。
 でも満足だ。やるべきことはやった。これで、自分の使命は果たした。
 無念はある。自分だけならともかく、皆を道連れにしてしまった。コルベールの見るからにどざえもんな浮きっぷりと、ジャネットに抱きつかれたままですごく嫌そうに浮いているファーティマ、最後までじたばたしているドゥドゥーには悪いが少し引いてしまったけれど、緑色の髪をなびかせて沈んでいるティラとティアにはすまないと思った。遠い星の人間なのに、自分たちのためにここまでしてくれて。
 しだいに意識が薄れてくる。そのときが近づいているのだ。せめて最後にタバサ、あなたに会いたかったな……
 そのときだった。
『……ケ、キュルケ、そこにいるの? 返事をして』
「この声……タバサ? 水の精霊、最後に悪い冗談はやめてよ」
「我ではない」
「じゃあ幻聴ね。まあいいか、幻聴でも最後にタバサの声が聞こえたなら、それは」
『キュルケ、返事をして! わたしはここ、ここにいる!』
「えっ!?」
 閉じかけていたまぶたを開けて、キュルケと皆は見た。まだ稼動を続けていた東方号のコントロールパネル、声はそこから響いている。幻聴ではない、なぜなら全員に聞こえた証拠に皆が揃ってコントロールパネルを見ていた。
 ティラとティアは気付いた。あれは、怪獣を撃退したときにそのままつけっぱなしにしていた水中通話機の機能、なぜあんなものから声がするの!?
 さらに、今度は耳からではなく目から異変が飛び込んできた。深淵の闇に見えていた異次元への門の一角に、唐突に人工的な明かりが見えたのだ。
「あれは、ライトの明かり? なんで、ゲートの先から」
「ありゃあ……潜水艇か? へへっ、なーんか助かる気がしてきたぜ」
 溺死寸前であったティラとティアの口元に笑みが蘇る。
 異世界へと消えてしまったはずのタバサの声、そして突然現れた潜水艇は何者なのか。
 水の精霊はその光景を望み、静かにつぶやいた。
「遠い世界の同胞たちよ、感謝する。我らの危機に、お前たちが希望を呼んでくれたことを……そして単なる者たちよ、お前たちはまだ消えるべきではない。さあ、帰るがいい、お前たちの世界へ。すべての世界に未来をつなぐために、お前たちの希望、ウルトラマンとともに」

 異世界の門の先からの小さな来訪者。しかしそれは、赤々と燃える希望の炎への火種であったのだ。
 闇を切り裂き、ふたつの叫びがすべてを変える。


「ガイアーッ!」
「アグルゥーッ!」


 赤と青の輝きが姿を成し、今、大決戦の幕が上がる。


 続く



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