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第百十七話「才人よ再び」


ウルトラマンゼロの使い魔
第百十七話「才人よ再び」
奇獣ガンQ
カプセル怪獣ウインダム
宇宙捕獲メカ獣Σズイグル
巨大機械人形ゴブニュ(オグマ) 登場



「ただいま」
 学校から帰った才人が居間に行くと、そこに母がいた。短めの髪に、最近太り始めた身体。
「母ちゃん。腹減った。飯にしてよ」
「まだだよ」
「何でだよ。味噌汁が飲みたいよ」
 何でもない、どうでもいい味なのに、何だか無性に飲みたかった。
「才人」
「何?」
「あんた、やることやったのかい?」
「やることって?」
「あるだろ? 約束したことが」
「約束?」
「ああ。友達と大事な約束をしたんじゃないのかい?」
 そう言われても、才人は思い出すことが出来なかった。
 焦って、思い出そう、思い出そうとする内に、才人は目が覚めた。

 跳ね起きた自分は、ティファニアの家のベッドの上にいた。傍にタバサが座って、本を読んでいる。
 目を覚ました才人に、ゼロが真っ先に問いかけた。
『起きたか、才人。気分はどうだ?』
「ん? 何かすっきりした気分だけど……。これってティファニアの呪文のせいなんかな? 
よく分かんねぇ。いつもと変わらん気がするけど。でもやっぱり、何か消えたのかな」
 才人は自分の顔を見つめているタバサに質問する。
「みんなは?」
「先に帰った。あの、ハーフエルフの女の子を連れて」
「そっか……。薄情な連中だな。人に変な呪文かけといて、おまけに置いてけぼりかよ」
 苦笑した才人は、今の己の心境を確認する。
 ゼロの言った通り、自分の心の中の勇気は消えていないことはすぐに分かった。この星の人たちの
ことは今も大事に感じるし、苦しめられる人のために戦う気概も残っている。
 だがそれ以上に、今は地球に帰りたい気持ちでいっぱいだった。こっちに来てから、一年以上も
経っているのだ。家族、友達……顔を見たい人はいくらでもいるし、何もすることがなくとも家の
景色が見たい。
 それまでルーンの力によって抑圧されていた分の郷愁の念が、一辺に噴出したのだった。
「……こんな気持ちにされるんだったら、ゼロと分かれた時にしてからにしてほしかったよ。
そしたらすぐに帰れたのに」
『すまねぇ。けどこういうのは、機会がある時にやっておくべきなんだ。次の機会が来るまで、
ずっともやもやしたもんを抱えちまうからな』
 才人は自分の左手の甲に目を落とした。ルーンの記憶への干渉は消えたが、ルーン自体は
そのまま残っている。
 それをぼんやり見つめながら、才人はふとつぶやいた。
「俺の……ルイズへの気持ちっていうかさ、それもやっぱり、“使い魔のルーン”が『こっちの
世界にいるための偽りの動機』と一緒に寄越した、偽りの感情だったんかな」
 壁に立てかけたデルフリンガーが答える。
「さあね、分からねえ。相棒の心のことだろうが」
「もし、そうだったとしたら……俺はどうすりゃいいんだろうな」
「さて、どうすりゃいいんだろうなあ」
「パムー……」
 タバサの頭の上のハネジローは、才人を見つめて心配そうに鳴いた。

「イヒャヒャヒャヒャヒャ!」
 その頃、ルイズたちはガンQの襲撃を受けている真っ最中だった。ガンQは恐怖する彼らに対し、
その反応を面白がるかのようにわざとジリジリにじり寄る。
 ルイズは考える。こんな場所で何の前触れもなく、計ったかのようにあんな異形の怪獣が
偶然出現するはずがない。あれもガリアからの刺客に違いあるまい。簡単な任務だと思われたが、
やはり自分たちの動向はガリアに掴まれていたのだ。
「わたしとティファニアが一緒になったところを、纏めて捕まえようってことかしら……!」
 反射的に才人の名前を呼ぼうとしたが、すぐに言葉を飲み込んだ。勝手に才人の記憶を
いじっておいて、ハルケギニアに縛りつけておいて、彼に助けを求める権利は自分にはない。
 ルイズは代わりに、こんな時のためにゼロから預かったカプセル怪獣の小箱を取り出した。
そしてギーシュたちの目がガンQに向いている間に、カプセルを一個取り出して放り投げる。
「お願い、ウインダム!」
 投擲したカプセルが開き、ガンQのまさしく眼前にウインダムが召喚された!
「グワアアアアアアア!」
「イヒッ!?」
 ウインダムはすぐにガンQに掴みかかって、その動きを制した。
「今の内に逃げましょう! ロサイスまで行けば、駐屯軍がいるわ!」
「あ、ああ!」
「ほら、早く立って! それでも騎士隊の隊長?」
 腰を抜かしていたギーシュはキュルケに腕を引っ張られた。ティファニアと子供たちは
ミーニンに先導される。
「グワアアアアアアア!」
「イヒャアーッ!」
 ウインダムはルイズたちから引き離すようにガンQを殴り飛ばすが……吹っ飛んだガンQの姿が
一瞬にしてかき消えた!
「グワアッ!?」
「イヒヒヒヒヒヒヒヒ!」
 ガンQはウインダムの背後に現れてからかうように飛び跳ねる。振り返ったウインダムが
飛びかかったが、再び消失。今度は三体になってウインダムを囲んだ。
「イヒャヒャヒャヒャヒャ!」
 混乱して何度も身体を左右に振るウインダム。完全にガンQに弄ばれている。
「グワアアアアアアア!」
 ウインダムは自棄になって一体に額からレーザーを放ったが……巨大な目玉の瞳孔に
吸い込まれていく!
「イヒヒヒヒヒヒヒヒ!」
 ガンQはレーザーのエネルギーを変換し、怪光弾にしてウインダムに撃ち返した。
「グワアアアアアアア!」
 強烈な一撃によってウインダムはばったり倒れ、カプセルに戻ってしまった。
「ウインダムが、あんな簡単に……!」
 戦慄するルイズ。自分たちはまだ全然逃げられていない。
 それでも走らねばならぬ、と懸命に足を動かすのだが……行く手に別の怪獣が立ちふさがっていた!
「な、何だあいつは!? 怪獣か……ゴーレムか!? どっちだ!?」
 惑った感じに叫ぶギーシュ。彼の言う通り、新たな怪獣は大部分が金属になっており、
生物とロボット、どっちつかずのような見た目であった。
 正面から見たら十字架のようなシルエットは、宇宙捕獲メカ獣Σズイグル! その中央部の
蓋が開き、現れた四連の砲門がティファニアに向けられる。
「! 危ないッ!」
「きゃッ!」
 ルイズは咄嗟にティファニアを突き飛ばしてかばった。その代わりにルイズが、Σズイグルから
放たれた光弾を食らう……!
「……あれ?」
 反射的に受け身の姿勢を取ったルイズだったが、吹っ飛ばされることは愚か何のダメージも
なかった。逆に怪訝な顔になるルイズ。
 だが、やはり何もなしではなかった! 彼女の両手の甲に、金属片のようなものが取り
つけられていたのだ。
「これは……? うッ!?」
 その部分から電流が発せられ、ルイズは磁力により無理矢理腕を広げさせられた。
 すると金属片が増殖するように広がっていき、たちまちルイズを閉じ込める十字架へと
変化したのだった!
「ル、ルイズ!」
「馬鹿! あんたが捕まっちゃ意味ないでしょ!」
 ギーシュとキュルケはすぐにルイズを助けようとしたが、十字架がΣズイグルに引き寄せ
られていき、ルイズは砲門の部分にすっぽりと収まって囚われてしまった。
「ルイズを返しなさいッ!」
「イヒヒヒヒヒヒヒヒ!」
 Σズイグルに杖を向けるキュルケたちだったが、その前にガンQが跳んできて立ちはだかる。
キュルケの放った『ファイアー・ボール』はガンQに吸い込まれてしまい、全く効果がなかった。
「くッ……!」
「わたしが、記憶を奪います!」
 キュルケに代わって、呪文を詠唱したティファニアがガンQに『忘却』の魔法を掛けた! 
これでガンQは記憶を失い、無力化するはず……。
「イヒヒヒヒヒヒヒヒ!」
 そう思われたが、ガンQに何の変化も見られなかった。『忘却』の影響まで受けていない!
「う、嘘!? わたしの魔法がちっとも効かないなんて……!」
 初めてのことに衝撃を受けるティファニア。だがガンQはまともな生物ではない、いや科学的な
見地からでは一切分析することが不可能なほどの、不条理が形を成した怪獣。『忘却』の効果を
受ける脳が存在しないのだ!
 キュルケたちがガンQに足止めされている間に、Σズイグルは空高くに向けて浮上していく。
その先の空間にワームホールが開かれた。
「見ろ! 空に穴がッ!」
「ルイズを連れ去るつもりよ!」
「は、早く何とかしないとまずいぞ!」
「もう魔法の射程外よ……! こんな時に、せめてタバサがいてくれたら……!」
 無力さを悔しさとともに噛み締めるキュルケ。タバサのシルフィードならば、ガンQをかわして
上空へ逃げるΣズイグルを追いかけることも出来るのに。
「くッ……!」
 一方でΣズイグルに囚われているルイズは、必死にもがいて脱出を図るも、少女のか弱い
筋力ではそんなことは土台不可能であった。
 それでもルイズはゼロに、才人の名を呼ぶことだけはせずに、最後まであきらめない気持ちで
抵抗を続けた。

 ルイズたちの異変を感知したミラーナイトは、同時に出現した怪獣を多少無理してでも
迅速に倒し、ルイズを助けに鏡の世界の道を全速力で駆けていた。
『間に合え……! ルイズ、今行きますッ!』
 ミラーナイトは肩を負傷していた。怪獣を素早く倒すために捨て身の戦法を取ったため、
その代償として受けた傷だ。
 だがミラーナイトは苦痛も振り切って、ルイズのために急ぐ。アルビオンはもう目の前だ。
 ……が、途中で目に見えないバリアに激突して、それ以上先に進めなかった!
『な、何ぃッ!? 鏡の世界に、道を阻む障壁が!?』
 衝撃を受けるミラーナイト。これは明らかにただごとではない。これもガリアの妨害か! 
しかし、まさか鏡の世界にまで干渉してこようとは! この分では、外部からもアルビオンに
突入することは不可能だろう。
 こんなことまで出来るとは、一体ガリアはどれだけの力を有しているというのか! ……いや、
今問題なのは、ミラーナイトたちまでがルイズを救出することが出来ないということだ!
 ルイズはこのまま、ガリアの手に落ちてしまうのだろうか!

「ん?」
 己の感情について悩む才人の左目が不意にかすんで、空の光景が映った。遠く眼下には
怪獣ガンQと、ギーシュたちの姿がある。
 それは使い魔のルーンの効力により、つながったルイズの視界だった。彼女が重大な危機を
感じたことで、自動でルーンの力が発動したのだ。
「全く……何であいつってば、こう間が悪い訳?」
 苦々しくぼやきながら、ベッドから飛び降りる才人。そこにゼロが尋ねる。
『才人、行くのか』
「当たり前だろ」
『……戦えるのか? 今の心境で』
 心配するゼロだった。望郷の念で心がかき乱されている状態で、満足に力を発揮できるのか。
下手をしたら、才人に最悪の事態が起こる。
 しかし才人は安心させるように、フッと笑った。
「大丈夫だ。何か、急にやる気になってきたからさ」
「相棒、娘っ子のことは好きなのかね?」
 デルフリンガーが聞くと、才人は憮然とした声で返した。
「いや、やっぱり好きじゃねぇ。あんな女、わがままで、バカで、気位ばっかり高くって……。
冷静に考えてみると、やっぱり全然好きじゃねぇ。というか腹立つ。何捕まってんだよ。迷惑だっつの」
「じゃあ何で、助けるんだね?」
「……そんな女だけど、悔しいことに見てるとドキドキすんだよね。これが巷で言うひと目ぼれ
だとしたら、俺はその存在を呪おうと思う。あーあ、せっかくさよならできるところだったのに……」
 ぼやいていると、タバサが笑っているような気がして驚いて振り返った。
「なぁお前、今笑った?」
「気のせい」
「なぁ、笑ったろ! なぁ!」
「パムー」
 ハネジローは嬉しそうな鳴き声を上げていた。
『才人! 行くんなら早くしねぇと間に合わねぇぞ!』
「ああそうだった! タバサ、先に行くぜ!」
 才人はウルトラゼロアイを出すと、いつもよりも勢いよく装着した。
「デュワッ!」

 Σズイグルは既にワームホールのすぐ真下にまで差し掛かっていた。後一分もしない内に、
ルイズはどこか別の場所へ連れ去られてしまうことだろう。
 もう駄目だと、ルイズがギュッと目をつむった、その時、
「シェアァァッ!」
 猛然と飛んできたゼロがΣズイグルに飛びつき、ワームホールに突入するのを阻止した。
「えッ……!?」
 驚いて目を開けるルイズ。ゼロは捕まえたΣズイグルを引きずり下ろし、自分ごとまっさかさまに
地上に叩き落とした。
「テェヤッ!」
 起き上がったΣズイグルの中から、ルイズはゼロの立ち姿を、その中の才人を見つめた。
「サイト……どうして……?」
『ルイズ! 元々動けねぇだろうけど、じっとしてろよ!』
 才人の声が聞こえた。ルイズはゆっくりと目を閉ざすが、先ほどの絶望の現実から目をそらす
行為とは異なり、心から安心して才人にその身を託す意志が宿っていた。
「ハッ!」
 ゼロはデルフリンガーを出すと、一瞬でΣズイグルに剣を突き立て、刃を走らせた。
 そして引き抜くと、刃の上に繰り抜かれた十字架が乗っていた。何と精緻な達人技か!
「ルイズ!」
 ゼロはデルフリンガーを地面に刺し、十字架を滑らせてルイズを地上に下ろした。そこに
キュルケたちが駆け寄り、ギーシュのワルキューレによって十字架がこじ開けられた。捕獲を
目的としたもののためか、強度はそこまでではなかった。
 危ないところでルイズを取り返すことは出来たが、怪獣たちを倒さないことには状況は
変わらない。ΣズイグルとガンQ、二体の怪獣が同時にゼロに攻撃してくる。
「イヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!」
 Σズイグルは腕を出して、指先から光弾を乱射してくる。ガンQは肉体から複数の眼球を
飛ばして、そこから怪光弾を発射する攻撃だ。ゼロは四方八方からの集中攻撃に晒される。
『ぐッ……!』
 猛攻に一瞬ひるむゼロだったが、すぐに体勢を立て直して叫んだ。
『何のこれしき! 今日の俺たちは、ちっとばかし過激だぜぇッ!』
 光弾を浴びながらもガンQに向けて跳躍。空中からの回し蹴りを食らわせる。
『でりゃあッ!』
「イヒャアッ!?」
 眼球からの光弾を途切れさせると、バク転しながらΣズイグルに接近。雷光の如き勢いで
チョップを振り下ろした。
『だぁぁぁッ!』
 手刀は本物の刀のようにΣズイグルの右腕を切断した! Σズイグルは大きくよろめく。
 一方でガンQが起き上がるが、ゼロはそれを待ち受けていたかのように高速移動で肉薄し、
ガンQのど真ん中に鉄拳を繰り出した。
『せぇぇぇぇぇあぁッ!』
「イヒャァーイッ!」
 ガンQは殴り飛ばされて宙を高々と舞い、森の中に転落した。
 そしてゼロは振り返りざまにワイドゼロショットを発射! Σズイグルは光弾を撃って
反撃するが、必殺光線は光弾も軽々押し戻してΣズイグルに突き刺さった。
 強烈な一撃により、Σズイグルは一瞬にして爆散した!
「イヒィッ!?」
『お前にはこれだッ!』
 ゼロはΣズイグルを撃破した勢いのままに振り向き、ルナミラクルゼロに変身すると地を蹴り、
ガンQに向けて一直線に飛んでいく!
『はぁぁッ!』
 ゼロスラッガーを両手に握り締めて、ガンQの目玉の中に自ら飛び込んだ!
 次の瞬間に、ガンQは内側からズタズタに切り裂かれる。
「イヒャアアア――――――!?」
 ガンQが一瞬大きく膨らみ、破裂。跡にはウルトラマンゼロが片膝を突いた状態から、
カラータイマーを鳴らしながら立ち上がった。
「す、すごい! 今日のゼロは一段とすごい戦いぶりだったな!」
 流れるような戦いぶりで敵を二体、瞬く間に打ち破ったゼロに、ギーシュが熱にうかされた
ような声を上げた。その後ろでは、ルイズがゼロを見上げて様々な思いが入り混じった微笑を浮かべた。
 と安心し切っていた彼らだが、
 ドズゥゥンッ!
「!?」
 ゼロの背後にいきなり巨大ロボットが着地したのだった。首と胴体が一体化した左右非対称の
歪な外見であり、顔面部分の四つのランプがスクロール点滅している。
 巨大機械人形ゴブニュ、オグマタイプだ!
『まだいやがったか! であぁッ!』
 ゼロが瞬時に詰め寄ってパンチを浴びせたが、ガァァァンッ、と鈍い音が鳴るだけで、
ゴブニュはびくともしなかった。
『か、かってぇぇッ! 尋常じゃねぇ硬さだ!』
 拳が痺れてあえぐゼロ。ゴブニュ・オグマタイプの装甲は特殊な金属製であり、よほどの
破壊力でなければ傷一つつかないほどの頑丈さなのだ。ゴブニュは腕で自らのボディを叩き、
まるで堅牢さをアピールしているようである。
 ゼロもまた、生半可な攻撃は意味がないことを悟るが……そんな時に限ってカラータイマーの
点滅の間隔が早まり、エネルギーがもうほとんど残っていないことを知らせた。
『しまった! 最初に飛ばしすぎたぜ!』
 強力な必殺光線を放つ分も残っていない。ルイズも魔力切れを起こしているので、彼女の
魔法でエネルギーチャージすることも不可能だ。万事休す!
 ゴブニュはゼロに鉄拳を返す。
『ぐわぁぁぁぁッ!』
 殴り飛ばされたゼロが崩れ落ち、片膝を突く。もう立っていられるだけの余力すらなかった。
『も、もう限界だ……! 変身を解かざるを得ねぇッ!』
 これ以上のエネルギー消費は最早命に関わる。ゼロはやむなくその場で変身を解き、消えていった。
「ぜ、ゼロが消えてしまった! ぼくたちはもう終わりだぁぁぁーッ!」
「だから、すぐに取り乱すんじゃないのッ!」
 頭を抱えて絶叫するギーシュを叱ったキュルケだが、彼女も内心ではどうすればいいのか
分からない状態であった。あのゼロの攻撃も寄せつけないゴブニュを退ける手段が、今の
彼女たちには残されていない。
 ゴブニュはこちらに振り向くと、ルイズを狙って突き出た頭頂部の尖端から放電を飛ばしてきた!
「きゃあああッ!」
 ルイズの危機! そこを救ったのは、横から飛び込んできたタバサ。シルフィードに跨った
彼女は素早くルイズを拾い上げて、電撃から逃れた。
「よぉ」
 シルフィードの上には才人もいた。変身解除と同時にタバサが回収していたのだった。
 ルイズは彼に向かって思わず叫んだ。
「あ、あんた、何で来ちゃったのよ! 呼んでないでしょうが!」
「勝手に危なくなっといて、よく言うぜ。俺だってなぁ、出来ることなら来たくなかったよ」
 ケッと目を細めて憎まれ口を叩く才人。
「けど、キュルケやギーシュ、ティファニアがやべぇだろうが。シエスタとか姫さまとか、
タバサの母ちゃんだってほっとけねぇだろうが。俺は友達を助けに来ただけだ!」
「何ですってぇ? わたしはどうなのよ! その中にわたしは入ってない訳!?」
 ルイズは頭に血が上り、怒鳴り返した。
「何よ! やっぱり使い魔だから好き好き言ってたのね! さいってい!」
 才人は怒りを通り越した声で叫んだ。
「あのなぁ。あんだけ好き好き言ってるのに、応えてくれない女を好きになる奴なんていねぇよ!」
「え?」
「お前といえば、気位ばっかり高いわ、すぐに怒って暴力を振るうわ、そのくせいい気になったら
すぐ調子に乗るわ。お前が好きだなんて言ってたのは、やっぱり使い魔としての好きだわ。以上でも
以下でもありません。俺はこれから、そういうことにする」
「ちょっと待って! ほんとに認めないでよ! ひどいわ!」
 才人とルイズがやいのやいの揉めていると、デルフリンガーが割り込んだ。
「相棒も娘っ子もいちゃついてるとこわりいんだけど、そろそろあれを何とかするのを考えねえとやべえぜ」
「誰がいちゃついて……うわッ!?」
 才人とルイズが怒鳴ろうとしたが、シルフィードが急に傾いたので舌を噛みそうになった。
 ゴブニュがシルフィードを狙って電撃を連続で飛ばしてきているのだ。シルフィードは
巧みにかわし続けているが、このままではいつ撃ち落とされるものか分からない。
 タバサがルイズの方を向いた。
「虚無」
「撃てないのよ!」
「何故?」
「精神力が切れちゃってるの!」
「溜めとかなきゃ」
「虚無は寝れば溜まるってもんじゃないのよ!」
 タバサはしばらく考えると、いきなり“レビテーション”を唱えて、才人を自身の側に手繰り寄せた。
「ど、どうしたんだタバサ?」
 戸惑う才人に、タバサはルイズにも聞こえるような声で、才人に告げた。
「この前の続きをする」
「は? この前の続きって何……むぐッ!?」
 才人の言葉はさえぎられた。タバサの唇で。
 タバサは才人に突然キスをしたのだった。しかも濃厚に舌を絡めて、吸い上げる。
「パムー!」
 ハネジローは恥ずかしげに小さな手で目を覆い隠した。
 一方、この光景を見せつけられたルイズは一瞬、頭が真っ白になった。しかしキスをしていると
いうことを理解すると、肩が地震のように震え出す。
「あ、あんたたちぃ……こここ、こんな時にぃ……」
 タバサは才人の首に腕を回し、小さな身体を密着させる。
「こ、ここ、この前の続きですってぇ―――――――――――ッ!? やっぱりそういうこと
してたんじゃないのぉぉぉ――――――――――――――――――――ッッ!!!」
 桃色の髪がぶわっと逆立ち、鳶色の瞳が燃え上がった。極限まで高められた怒りが精神力を
生み、魔力のオーラとなってルイズの身体を包んだ。
 タバサは才人の身体からぱっと離れた。
「今」
 ルイズは我に返り、“エクスプロージョン”の呪文を唱え始めた。
 その様を呆気にとられてながめる才人が、ハッと気がついた。
「そうか! タバサはこれを狙って! わざとルイズの怒りを招いて、精神力を回復させたんだな!」
『えーッ!? これでいいのか!?』
 ゼロが思わず叫んでいた。
 呪文を完成させたルイズは、溢れ出そうな魔力を杖の先の一点に集中し、一気に振り下ろした。
 白い光が、ゴブニュの一点に現れた。
 光が大きく広がってゴブニュを包み込む、次いで耳をつんざく爆発音が響いた。
 もうもうと立ち昇る硝煙。ルイズと才人は降下したシルフィードの上から地面に下りる。
「やった……か?」
 静かにつぶやく才人。ゴブニュがどうなったかは、煙に紛れていて見えない。あれほどの
爆発を受けて、無事では済まないと思うが……。
 だが……煙の中からぬっとゴブニュが出てきた!
「!?」
 思わず言葉を失うルイズたち。まさか、エクスプロージョンでも倒せなかったのか!?
 ゴブニュはルイズたちに向けて腕を伸ばす。
「も、もう駄目だわ! 逃げましょう!」
「い、いや待った!」
 ルイズは必死の体で逃げ出そうとしたが、才人が呼び止める。
 何故なら……ゴブニュは腕を前に伸ばした姿勢で、硬直したからだ。そのまま微動だにしない。
 顔面の四つのランプからは、光が消えていた。
 茂みに身を隠していたギーシュは、唖然とつぶやいた。
「た……立ったまま死んでる……」
 ――ロボットなので死んでいるという表現はおかしいが、ゴブニュは完全に機能停止になり、
それ以上全く動き出す気配を見せなかった。

 その後、ゴブニュを各国の研究者が回収しようとしたが、あまりにも重すぎて運ぶ手段がなかった。
しかし砕いて破片にすることも出来ず、装甲の特殊金属は『錬金』も受けつけなかった。
 やむなくゴブニュは、その場に捨て置かれることとなった。やがてロサイスと忘れられた村を
つなぐ道の途中にいつまでも仁王立ちし続けるゴブニュは、アルビオンの新名所として有名になったという。

「うーんうーん……」
 ロサイスからトリステインに戻るフネの中、才人はボロボロになって船室のベッドの上で
うなされていた。
 どうしてこんなことになっているかと言うと、タバサとのキスでの怒りが“虚無”に費やしても
収まらなかったルイズによって、半ば八つ当たり気味にボコボコにされたからであった。
 そこに扉が外からノックされて、ルイズがバツの悪そうな顔で室内に入ってきた。
「あのね。一応、聞いてあげる。大丈夫?」
「お前……殴り過ぎ」
 憮然と文句を向ける才人。
「あ、あんたが悪いのよ。あんたが、使い魔としての好きとか言うから。う、嘘に決まってるわよね。
あんた、わたしのこと大好きだもんね」
「こんなことされて、そう言える奴がいたら連れてこい」
「へ、へんだ。大好きなくせに」
「あのな、逆だろ? お前が俺のこと、好きなんじゃねぇか」
「ま、まま、ままま、まさか!」
 顔を真っ赤にして両手をぶんぶん振るルイズ。
「大好きだから、あんなにやきもち焼くんだろ? さっきのキスで怒って精神力が溜まったのだって、
つまりはそういうことなんだろ。見え見えなんだよ」
 う~、と半泣きでうなるルイズだが、うなずいてひと言、
「……そうね。そうかもしれないわ」
「え?」
 才人が振り返ると、ルイズは勝ち誇った笑みを浮かべた。
「いやだ。犬が涎を垂らしてるわ」
「だ、騙したな! そういうことするからなぁ……!」
 プイッと横を向いた才人が、照れ隠し気味に告げる。
「やっぱり、俺、時が来たら帰るからな。本当にな! ……でも、今の中途半端な状態のままじゃ
この世界のことが心配で、夜も眠れなくなっちまいそうだ。だから、帰るのはこの世界がある程度
落ち着いてからにするよ」
『才人、本当にいいのか? 別に、無理して俺たちにつき合わなくたっていいんだぜ』
 問いかけたゼロに、才人は力を込めて答えた。
「無理じゃないさ。ここで投げ出したら、男が廃る! そうだろ?」
『……違いねぇな』
 ゼロは安堵した声を出した。
 ルイズの方は、才人のハルケギニアに留まる宣言に嬉しさを感じていた。自分を助けに
駆けつけてくれたことと、ぶっきらぼうな言葉の裏に、自分への愛情を仄かに感じる。
ティファニアの呪文を越えた今、それは彼の本当の気持ちだと分かる。
 しかしそれが分かってなお、ルイズには不安が残っていた。自分自身の魅力に自信がないから、
才人が義理で助けてくれているのではないかという気持ちがしこりのように残り、素直になる
ことが出来ない。
 そのため、本心とは裏腹な言葉を吐いてしまう。
「あ、操られているのはわたしだもん。使い魔に情を抱くように条件づけられているのよ。
だからやきもちを焼いたりしちゃうし、したくもないのに、こんなことしちゃうのね。きっと」
「え? んむ……」
 ルイズはタバサのキスを上書きするかのように、才人の唇に自分のそれを重ね合わせた。
 才人は唇越しに、ルイズの言葉の嘘を感じ取った。ルイズのキスには熱があるから。
 その熱とともに、夢の母が言った、『やること』の意味を噛み締めていた。
 アルビオンからトリステインへと近づいていく中で、二人は熱いキスを交わし続けた。


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