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第百十五話「決戦!怪獣対マシーン」


ウルトラマンゼロの使い魔
第百十五話「決戦!怪獣対マシーン」
自然コントロールマシーン テンカイ
自然コントロールマシーン エンザン
自然コントロールマシーン シンリョク
友好巨鳥リドリアス
地中怪獣モグルドン
電撃怪獣ボルギルス
古代暴獣ゴルメデ 登場



 タバサをガリアの魔の手から救出し、ラ・ヴァリエール領まで逃れてくることに成功した
ルイズたち一行。だがしかし、彼らの元へ異常な現象が接近してきた! 暴風が吹き荒れ、
気温が急上昇し、森が森を侵蝕してくる!
 敵の新たな攻撃か! ルイズと才人にまたしても危機が迫る!

 ラ・ヴァリエール領に広がる森の木々を、台風が吹き飛ばし、猛烈な熱波が焼き焦がし、
そして元の場所には別の樹が新しく生えてくる。このサイクルが恐ろしい速度で進んでいく。
まるで土地が別のものに塗り返されていくようであった。
 才人は徐々にラ・ヴァリエールの城に近づいてくるその現象を、険しい目つきで見やった。
「どう見ても自然の現象じゃない……。あれもガリアの差し金か!?」
『どうやら、タバサたちより先に俺たちを始末しようってつもりみたいだな』
 ゼロのひと言にうなずいて、才人は額に浮かんだ玉のような汗を腕でぬぐった。台風の方角から
飛んでくる熱波は、城内の気温も殺人的な勢いで上げていっているのだ。
「うぅ……!」
「カトレアさんッ!」
 真っ先にダウンしたのはカトレアだった。身体の弱い彼女が、急上昇していく気温に耐えられる
はずがないのだ。才人は思わず振り返って叫ぶ。
「お嬢さま、大丈夫ですか!? しっかりして下さい!」
「……!」
 カトレアの身体を支えるヤマノが必死に呼びかけた。エルザも不安な眼差しをカトレアに
向けている。
 カトレアは高熱に耐え切れずに意識を失っていた。危険な状態だ。
「エルザ、君の力で気温を下げられないか?」
「ダメ……周囲一帯の精霊が、怪しい力で抑えつけられてる。これじゃ、精霊の力が使えない……」
 エルザの返答を受けてヤマノは、才人へ振り返った。
「私たちはお嬢さまをここから避難させる。どうか君たちの力で、お嬢さまたちを助けてほしい!」
「はい! 頼まれるまでもないです!」
 ヤマノの懇願に、才人は即座に首肯した。このままではこの城にいる全ての人々が危うい。
いや、もしかしたら危険なのはトリステインの全国民の命かもしれない。そんなことを許せる
はずがなかった。
「すまない、頼んだよ!」
 ヤマノとエルザは二人でカトレアを運んでいき、医務室から出ていった。
 一方で、接近してくる異常気象に新たな動きが起こった。
『才人、あれを見ろ!』
 台風が引き起こす渦巻く暴風が徐々に収まり、その中から三つもの巨大な影が露わになった。
「プア――――――!」
「ギュウウウウウウ!」
 それらは全て明らかな人工物……巨大な機械であった。宙に浮いているものは釣り鐘のような
形状で、中央のタービンが回転することで暴風を引き起こしている。後の二体は手足のある
ロボットであり、片方はクワガタムシを思わせる二本の角を生やしていて、もう片方は塔の
ような胴体をしていた。
 この三体のロボットには、表面に謎の文字が刻まれているという共通点があった。当然ながら、
ハルケギニアに存在する文字とは全く違うことは明白だった。
「何か、漢字に似てるな……」
 才人はそんな風に感じた。実際に、現在の漢字のルーツの一つである篆書体が正体であった。
 これらロボット怪獣たちの正体は、ある宇宙の地球の環境を作り変えることを目的として
送り込まれた自然コントロールマシーン……人工の台風で大気を洗い流すテンカイ、気温を
自在に操作するエンザン、そして大地を森林で埋め尽くさせるシンリョクである。
 三体の自然コントロールマシーンが才人たちへの刺客となって、城に接近してきているのだった。
「くッ、これ以上近づけさせてたまるか!」
 マシーンたちの侵攻を阻止するために、才人は医務室を飛び出して屋敷の正門へ向けて駆け出した。
こっちから可能な限り近づいて、そこから変身して一気に仕留めてやる。
「うぅッ……! あ、暑い……!」
「く、苦しい……! 誰か、手を貸して……!」
「しっかりしろッ! 気を強く持つんだ!」
 城内の至るところで、使用人らが急激に上昇していく気温に当てられて悶え苦しんでいた。
脱水症状を引き起こして、近くの者に助けられている人も少なくない。熱波の影響は、既に
これほどの事態を発生させているのだった。
 ぐッ、と歯を食いしばる才人。こんな光景は他の場所でも起きているのだろう。使用人だけ
ではない、先ほどのカトレアのように、他のルイズの家族、自分の仲間たち、そしてルイズも
また苦しめられているのだろうか。メイジの系統魔法が先住魔法にどうやっても敵わないのと
同じように、自然の法則そのものをねじ曲げる自然コントロールマシーンの力には魔法で
太刀打ちすることは出来ない。
「俺がみんなを救わなくちゃ……!」
 辺りには苦しむ人たちが大勢いるが、彼らに構っていても根本的な解決にはならない。
才人は後ろ髪を引かれる思いを覚えながら、それを振り切って正門から外へ飛び出した。
 マシーンたちは才人の正面から少しずつ接近してきている。
「よし……行くぜッ!」
 覚悟を固め、マシーンたちに正面から向かっていこうとした。が、
「待ちたまえ、きみ! こんな時に一体どこへ行こうと言うのだね!?」
「うおぅッ!? ギーシュ!?」
 後ろからギーシュに肩を掴まれて引き留められてしまった。途中で走っていく自分の姿を見つけ、
追いかけてきていたのだった。
「きみ、屋敷の中には助けを求める人たちでいっぱいだ! 副隊長として、彼らを助けないで
どうするのだね!?」
「い、いやけど、あいつらを……!」
「まさかあのゴーレムたちを止めようというつもりか!? 馬鹿な真似はよしたまえ! 
暑さで頭がおかしくなってしまったのか!?」
「いやそうじゃないんだけどッ!」
 しどろもどろになる才人。早くギーシュをかわして変身しなければならないのに、上手い
言い訳が思いつかない。
 そんなことをしている間にも、マシーンたちは距離を詰めてきている!
 しかしその敵たちに対し、果敢に立ち向かうものが現れた!
「ピィ――――――!」
「グウワアアアアアア!」
「ピュ――――――イ!」
「グイイイイイイイイ!」
 リドリアス、ゴルメデ、モグルドン、ボルギルス。カトレアの厚意でラ・ヴァリエール領に
暮らす怪獣たちだ! それぞれテンカイ、エンザン、シンリョクにぶつかっていき、進撃を食い止める。
「あいつら……!」
 才人は驚きと、喜びの感情を浮かべた顔で怪獣たちを見上げる。カトレアのあらゆる種族に
対して分け隔てない優しさが今、彼女たち自身を助ける結果につながっているのだ。
「ギュウウウウウウ!」
「プア――――――!」
 だが怪獣たちの抵抗も短い時間の間だけだった。テンカイは機体から突風を吹き出して
リドリアスをはね飛ばし、エンザンは胸部から高熱火炎を発射してゴルメデを弾き、
シンリョクは森を操って巨大な蔓を伸ばし、モグルドンとボルギルスを地に伏せさせる。
 更にテンカイは倒れたリドリアスの上に落下して押し潰し、エンザンは角から赤い電撃を
ゴルメデに向けて撃ち、シンリョクは緑色の光弾を放ってモグルドンとボルギルスを一方的に
痛めつける。
「ピィ――――――!」
「グウワアアアアアア!」
「ピュ――――――イ!」
「グイイイイイイイイ!」
 自然コントロールマシーンは高い戦闘力も有していたのだった。怪獣たちの苦悶の叫び声が轟く。
「やめろぉーッ!」
 思わず叫ぶ才人。早く怪獣たちを助けてやりたいが、ギーシュがすぐ横にいる今、彼の前で
変身することは出来ない。どうしたらいいのか。
 いっそのこと当て身を食らわせてギーシュを気絶させてしまおうかと物騒なことが頭をよぎった
その時、彼らの元に一陣の疾風が吹き荒れた!
「うわぁぁぁッ!?」
 風に吹かれてひっくり返るギーシュ。彼の側から、才人の姿が忽然と消えた。
 才人の方は疾風の正体――シルフィードにまたがったタバサに引っこ抜かれていた。
「タバサ!?」
 一瞬面食らった才人だが、タバサは自分が困っているのを察して手を貸してくれたのだろう。
彼女はこれまでにも、いざという時に自分を助けてくれた。感謝しきりだ。
 だが次の彼女の発言に、更に驚愕させられることとなった。
「どの辺りで出来る?」
「えッ、何が?」
「ウルトラマンゼロに変身」
 当たり前のようなひと言に、才人は思い切り目をひん剥いた。
「お、お前どうしてそれ……い、いや! 何のことかな……」
「ルイズの系統は“虚無”」
 一瞬シラを切ろうとしたが、続く指摘で、タバサが当てずっぽうにものを言っているのでは
ないことを分からされた。
「……知ってたのか」
「見てれば分かる」
 才人は脱帽した。タバサは聡明な少女だ。彼女の目を欺き続けることは土台無理だった訳だ。
 気持ちを切り替えた才人の判断は素早かった。怪獣たちをいたぶるマシーン軍団の影響がない
ギリギリ手前の地点を指して頼む。
「あの辺まで近づいてくれ!」
 タバサがうなずき、シルフィードが迅速にその方向へ飛んでいく。そして才人はシルフィードの
背の上で、ウルトラゼロアイを装着した。
「デュワッ!」
 才人が飛び出していきながら変身、巨大化し、弾丸のようにエンザンへと突撃していく!
「シェアァァァッ!」
「ギュウウウウウウ!!」
 ウルトラマンゼロの体当たりによってエンザンが弾き飛ばされ、ゴルメデは電撃攻撃から解放された。
 ゼロは続けてテンカイを鷲掴みにして投げ飛ばし、シンリョクに猛然と肉薄してハイキックで
蹴り倒すことで残る三体も救出した。
『テメェらの傍若無人もここまでだ! こっから先に通ろうなんて、二万年早いんだよッ!』
 下唇をぬぐって啖呵を切るゼロ。その姿を、タバサがどこかほれぼれとした様子で見上げた。
『お前たち、よく頑張ったな。後は俺に任せて避難しな!』
「ピィ――――――!」
 ゼロは助けた怪獣たちをこの場から下がらせる。一方でマシーンたちは体勢を立て直して、
攻撃の矛先をゼロに向けた。
「ギュウウウウウウ!」
 まずはエンザンが一番手となって、角を前に突き出して突進してくる。ゼロは変に避けよう
とはせず、角をはっしと掴んで突進を受け止めた。
『であッ!』
「ギュウウウウウウ!」
 そして後方へと受け流す。前のめりになったエンザンは腹這いになり、勢い余って地の上を
ズリズリ滑っていった。
「プア――――――!」
 だがエンザンへの追撃は出来ない。直後にテンカイが突風を吹き、竜巻を巻き起こして
ゼロにぶつけてきたからだ。
『ぐッ!』
 さすがのゼロも猛烈な風の影響を無視することは出来ず、身体がよろめく。その隙を突いて、
シンリョクが植物を操って蔓でゼロの身体を拘束した。
『うおッ! このッ!』
 ゼロは瞬時にゼロスラッガーを自動で飛ばして蔓を切断する。が、間髪入れずにエンザンが
背後から火炎攻撃を飛ばしてきた。
「ギュウウウウウウ!」
 更に前方からはシンリョク、テンカイが光弾と竜巻をぶつけてくる。ゼロは三体のマシーンに
袋叩きにされる。
『うおおぉぉぉッ!』
 同じ系統のマシーンだけあって、三体の連携は確かなものだ。合体攻撃を耐えるゼロだが、
その時に彼の超感覚が応援の声を聞き止めた。
「ゼロ! 頑張ってッ!」
 それはルイズの叫ぶ声であった。姿は見えないが、彼女は自分も熱波と暴風に苦しめられる中、
ゼロと才人の戦う姿をしっかりと見届けてくれているのだ。
 そしてルイズの存在を意識した途端に、才人の心にめきめきと力が湧き上がってきた。
『ルイズ……! おおおおおおッ!!』
『才人!?』
 ルイズの声を聞く。それだけで才人の精神に、不思議なくらいに気力と闘志、彼女を助けるのだ
という使命感が膨れ上がり、ゼロの力につながった。
「セアァッ!」
 ゼロは自分の周囲にスラッガーを回転させ、マシーンたちの攻撃を切り払った。次いでその場で
回りながらエメリウムスラッシュで反撃。
「ギュウウウウウウ!」
「プア――――――!」
 エンザン、シンリョクはレーザーに撃たれて倒れ込んだが、テンカイは上空へ飛び上がって回避。
 しかしその瞬間にゼロはルナミラクルに変身。無防備になったテンカイの底部に向けて、
一直線に突っ込んでいく!
『せぇぇぇぇいッ!』
 超能力で急加速した勢いでの突進はテンカイを綺麗に貫通した! ゼロはテンカイから
引き抜いたダンベル型のコアを、テンカイの機体に投げ返す。
 テンカイはコアごと粉々に爆散して、風に吹かれて消えていった。
「プア――――――!」
 着地したゼロにシンリョクが再び蔓を伸ばして拘束しようとする。しかしゼロは着地と同時に
ストロングコロナに変化を遂げていた。
『うおおおおぉぉぉぉぉッ!』
 ストロングコロナゼロの怪力が易々と蔓を引き千切り、ゼロはシンリョクに向けて灼熱の
光線を拳から放つ。
『ガルネイトバスタぁぁぁぁ――――――――ッ!』
 光線がシンリョクに突き刺さり、貫通。一瞬にして全身を爆散させた。
「ギュウウウウウウ!」
 最後に残ったエンザンに対し、元の姿に戻ったウルトラマンゼロは、才人の意志に突き動かされて
指を突き立てた。
『俺はこの星を守るッ! 出ていけぇッ!!』
 才人の恫喝にエンザンは怖気づいたようによろめき、ガクリと腕を垂らすと背を向けて去り始める。
 と見せかけて振り返り、火炎放射を繰り出してきた! 汚い騙し討ちだ!
 だがゼロはその程度のことは読み切っていた。スラッガーをカラータイマーに接続して、
エネルギーチャージ。
「シェアァァァァァッ!」
 そうしてツインゼロシュートを発射! 超威力の必殺光線がエンザンを撃ち、瞬時に消し飛ばした。
『よしッ!』
 心の中でガッツポーズを取る才人。自然コントロールマシーンが全て破壊されたことで、
熱波は収まり気温は元通りになっていく。黒雲も晴れていき、満点の星空が露わになった。
『やったな、ゼロ! 俺たちの逆転勝利だぜ!』
 才人は喜びはしゃいでゼロに呼びかけたが、何故かゼロからの反応が薄い。
『ああ、そうだな……』
『ん? どうしたんだ?』
『……いや、何でもねぇさ』
 何やら含みのありそうなゼロだったが、結局何も言わずに飛び立って星空の彼方へと飛び去っていった。

 自然コントロールマシーンの襲撃を乗り越え、一夜を明かしたルイズたち一行。日が昇ると、
彼らはいよいよ魔法学院に帰るためにラ・ヴァリエール領から発っていった。
 その道程の途中で、ウェザリーが離脱する。彼女は役目を果たしたために刑期を繰り上げて
内密に釈放されることになっていたので、ここで解放されることとなったのだ。中途半端な
場所ではあるが、以前襲撃した学院に顔を出す訳にもいかない。
「お別れですね、ウェザリーさん」
 街道の途中で馬車を止め、才人たちはウェザリーを見送っている。
「タバサを救出する作戦があんなにも上手く成功したのは、ウェザリーさんの力のお陰です。
本当に助かりました」
「肝心なところでは、力になれなかったけどね……」
「いえ、そんなことないですよ! ……ところで、ウェザリーさんはこれからどうするつもり
なんですか?」
 ウェザリーは一家離散して、頼るあてのない身の上だ。彼女のこれからを才人は少々案じるが、
ウェザリーは快活に微笑んだ。
「大丈夫。新しく演劇好きの仲間を募って、劇団を立ち上げてハルケギニア中を回るわ。
もちろん今度は裏なんてなしの、ね。旅路の中で、離ればなれになった家族や元領民も
見つけられるかもしれないし」
 ウェザリーは並んだルイズたちの顔をゆっくりながめる。
「決してあきらめずに困難に立ち向かっていったあなたたちのように、私も前だけを向いて
生きていくわ」
「……頑張ってね、ウェザリー。遠く離れた場所からでも、ずっと応援してるわ」
「ありがとう。いつかまたトリスタニアで劇を行う時には、必ずあなたたちを招待するわ」
「楽しみに待ってるわね!」
 ルイズと固い握手を交わすウェザリー。そして彼女は一行の元から離れ、自身の新たな道を
進み始める。
「さようなら、ウェザリーさーん!」
 ウェザリーの旅立ちを、才人たちは大きく手を振って送り出したのだった。

 ルイズたちの一方で、王宮に帰還したアンリエッタの元には、突然の来客が訪れていた。
それもとびきり驚くべき人物の。
 宮廷の応接間に迎えたその客を前に、アンリエッタはしばし呆然としてしまった。
 濃い紫色の神官服に、高い円筒状の帽子を身に纏った美青年。彼の服装は、ハルケギニア中の
神官と寺院の最高権威、つまりロマリアの教皇だけに許されたものである。
 彼こそはヴィットーリオ・セレヴァレこと、聖エイジス三十二世。三年前に即位したばかりで
あるが、ロマリア市民から絶大な支持を持つ現在のロマリア教皇である。形式上は、アンリエッタ
よりも地位が上なのだ。
「教皇聖下、即位式には出席できませんで、大変失礼致しました」
 当時のアンリエッタは流行風邪により、彼の即位には立ち会えなかった。その無礼を詫びると、
エイジス三十二世は慈愛に満ちた微笑を返した。
「ヴィットーリオとお呼び下さい。私は堅苦しいばかりの行儀を好みません。即位式など、
ただの儀式です。あなたが、神と始祖の敬虔なるしもべということに変わりはありません。
それで私には十分なのです」
 エイジスの雰囲気は、その辺の神官によくある、権威を笠に着た尊大さは欠片ほどにもなかった。
ある意味ではハルケギニアの最高権力者という立場とは裏腹な、あまりにも物腰柔らかな姿勢には、
アンリエッタにはまぶしくさえ見えた。
 しかし、そんな彼の突然の訪問にはどのような目的があるのだろうか。教皇ほどの人物が、
一国の王とはいえ権力が下の人物の元にわざわざ出向いてくるなど、滅多にあることではない。
 アンリエッタがそのことについて尋ねると、エイジスは深いため息を吐いて聞き返した。
「アンリエッタ殿は、先立っての戦役をどうお考えか?」
 エイジスは、アルビオンでの戦のことを尋ねているのだ。レコン・キスタのアルビオン王家
転覆から端を発し、異次元人の陰謀により戦火が広がり、遂にはハルケギニア人同士の衝突に
発展して、戦火が生む負の念が最悪の事態を招きかけた、忘れようもない一連の戦。ウルトラマン
ゼロたちの献身がなければ、ハルケギニアは間違いなく滅亡していたことだろう。アンリエッタは
そのことには自分にも責があるとして、この戦のことは非常に重く受け止めているのだった。
「悲しい戦でありました。もう二度と、あのような戦は繰り返したくない。そう考えております」
 アンリエッタの回答に、エイジスは満足げにうなずいた。
「どうやらアンリエッタ殿は、私の友人であるようだ」
「どのような意味でしょうか?」
「その通りの意味ですよ。常々、私は悩んでおります。神と始祖ブリミルの敬虔なるしもべで
あるはずの私たちが、どうしてお互いに争わねばならぬのかと。まして、現在のハルケギニアは
人間同士の争いの他にも、恐るべき災厄に見舞われています」
 怪獣災害や侵略者の攻撃のことである。当然ながら、これらの大問題にエイジスは思うところが
大きいようだ。
「我々のような立場の者は今こそ、神と始祖の名の下に団結し、これらの災厄に立ち向かい
世の平和と安寧を取り戻さねばならぬ。そうは思いませんか?」
「まこと、聖下のおっしゃる通りです。しかしながら、わたくしたちに立ちふさがる困難に対して、
悲しいことにわたくしたちはあまりに無力。わたくしのような未熟者では、どうしたら良いのか
見当がつきません」
 それがアンリエッタの悩みの種であった。自分たち人間がもっと強い存在であったならば、
今よりもずっとゼロたちを手助けできるのに。
 すると、エイジスはこのように言ったのだった。
「私はそのための手段の提示と、アンリエッタ殿のご協力の取り次ぎを申し出るために参ったのです」
 エイジスは餌を取り合う二種類のアリの例で喩えながら、その手段というものをアンリエッタに
語った。アリ同士の争いを治めるためには、両方に餌を与えればよい。そしてそれが出来るのは、
アリにとって巨大すぎる人間のような、絶大な力を持った存在。
 要するに、平和を維持するためには巨大な力が必要なのだと。
「わたくしたちのどこにそのような力が……」
 聞きかけたアンリエッタは、目の色を変えた。エイジスは“虚無”のことを示しているのだった。
彼は、アンリエッタが既に“虚無”の担い手に関わっていることを見抜いているのであった。
 エイジスは今こそ四つに分かれた“虚無”の力を集め、またその力に行き先を与えるのだと唱えた。
その力に行き先とは、聖地。エイジスはエルフから聖地を取り返し、そこを心の拠りどころにして
ハルケギニア中の人間の信仰を回復し、意識を一つに纏めることを考えているのだった。
「“虚無”の力で異界からの災厄も祓えることは実証済みです。信仰によって、真の平和は
訪れます。今こそがエルフより聖地を奪還する時なのです」
「……また争うのですか? 今度はエルフと? おっしゃったではありませんか! もう争いは
たくさんだと!」
「強い力はエルフに向けて使うのではありません。我らは“虚無”を背景に、エルフたちと
平和的に“交渉”するのです」
 エイジスの言葉には、一点の嘘の曇りもなかった。彼は本気で、ハルケギニアに平和を
取り戻すことを考えているのだ。そのために彼が提唱する方法にも、一理ある。
 しかし……アンリエッタは、そう安易にうなずくことは出来なかった。彼女はアルビオンで、
人の『闇』を見た。闇が結集して生まれ出た究極超獣は、エイジスが絶対的な自信を見せる
“虚無”すら寄せつけなかった。あの出来事で、アンリエッタは人の心の闇と、力の危険性に
対して以前よりもずっと慎重な態度を取るようになっていた。
 果たして聖地を取り返すことで、本当に人の意識は一つに纏まるのか? 人が集まるほどに、
闇が巨大化することはもう分かっている。もし何かを間違えて、集めた“虚無”の力の矛先が
自分たちに向いたら、それ以上に恐ろしいものがまた生まれたりしたら……その時は取り返しが
つくのだろうか?
 アンリエッタはその気持ちをエイジスに吐露した。
「聖下のお話は壮大すぎて……人の身であるわたくしには、それが正しいのかどうか判じかねます。
それに、わたくしたちには幸いにも災厄を取り除いてくれる、強い味方がおります。焦ってエルフと
相まみえるという大きな危険に臨むこともないのではないでしょうか?」
 と告げた、その瞬間……エイジスの聖職者の威光が、かすかに陰ったようにアンリエッタには
感じられた。
「ウルティメイトフォースゼロと呼ばれる巨人たちですね……。確かに彼らは現在、我らを
助けてくれております。しかし……彼らは本当に善意ある存在なのでしょうか」
「は……?」
「彼らは後に、私たちを助けた報酬としてハルケギニアを要求するつもりかもしれません。
いえ、彼らが現れ出してから、怪獣もまた出現するようになったのです。ひょっとしたら
彼らこそが、ハルケギニアを覆う災厄の黒幕なのかもしれませんよ」
 その言葉に、アンリエッタは思わず耳を疑った。聖人という言葉がそのまま人間になったかの
ようなこの教皇が……そのような心ない発言をしようとは!
「聖下! お言葉ですが、それはあんまりですわ! わたくしたちとは根本から異なるとはいえ、
人の行いにそのような穿った見方をなさるとは……清廉たる聖職者の頂きに座するお方のご意見とは
思えませんッ!」
 つい語気を荒げて批判すると、エイジスの表情に柔らかな微笑が戻った。
「失礼、言いすぎましたね。しかし、教皇である他に大勢の人身に対して責任を持つ立場で
ある以上は、残念ながら人を疑わねばならぬ時もあるのです。どうぞご理解いただきたい」
 エイジスの謝罪により、アンリエッタは幾分か落ち着いた。よく考えれば、自分は実際に
ゼロたちと対面して彼らの人となりに触れたからエイジスの言うようなことはありえないと
判断できるが、エイジスからしたら彼らは未知の存在なのだ。警戒心を抱いていて然るべき
なのかもしれない。
 結局はエイジスの心配は杞憂なのだから、この件をこれ以上論ずる必要はないだろう。
「ともかく、“虚無”という大きな力に対して慎重になられるのは当然のことです。しかし、
あまり猶予がありません」
「猶予とは」
「ガリアです。哀しいことに、かの国は民の幸せより、己の欲望を是とする狂王が支配しております。
かの男には、“始祖の虚無”を与える訳にはいきませぬ」
 アンリエッタの脳裏に、ガリア国王ジョゼフの姿が浮かんだ。実の弟であるオルレアン公を
虐し、ルイズやタバサたちに非道を繰り返した残虐な男。しかも未だ確証はないが、彼には怪獣を
操る恐るべき力までがあるのだ。そこに更に“虚無”まで明け渡すことは許されない。
 ジョゼフをどうにかしなければならないことだけは、全面的に同意できた。
「神と始祖のしもべたるハルケギニアの民のしもべである教皇として、私はあなたに命じます。
お手持ちの“虚無”を一つところに集め、信仰なき者どもよりお守り下さいますよう」
 アンリエッタはエイジスの命令により、ルイズの他にもう一人の“虚無”の担い手、
アルビオンのティファニアのことを考えた。
 彼女はウェストウッド村に留まることを選び、また忘却の“虚無”も有しているので、
彼女が“虚無”の担い手であることは自分たちの他に知られていないはず。しかし……
相手は脅威の全容も見えないジョゼフ率いるガリア。それだけで、絶対的に安心とは思えなかった。
 やはり、ティファニアを暗黒の魔手から保護する必要がある。アンリエッタはそう判断した。


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