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ウルトラ5番目の使い魔、第三部-44


第44話
再来の捕食王

超巨大天体生物 ディグローブ
高次元捕食体 ボガールモンス
高次元捕食王 アークボガール 登場!


ロマリア・ガリア軍がトリステインに進撃を開始し、かつてない動乱を迎えつつあるハルケギニア。
トリステインに大挙して侵入したガリア・ロマリア連合軍。彼らはトリステイン軍が最初から防衛戦をおこなうつもりがなかったことで、道中の町や村を占領しつつ、無傷のまま侵攻を続けた。
侵攻開始から五日。戦争が始まったというのに、一部の事故を除いては犠牲者は出ていない。これは、ロマリアが「トリステインを真の信仰の元へと解放する」ことを大義名分として、暴行や略奪を厳禁していたからだ。
 しかしトリスタニアに集まる者には、異端者アンリエッタ女王に加担するものとして容赦ない攻撃が加えられるに違いない。
全世界がこの戦争の行方を見つめている。結末がハルケギニアの運命の大きな分岐点になるであろうことを望んで、世界中で新聞が飛ぶように売れていた。
そして七日目の朝。ついにロマリア・ガリア連合軍がトリスタニアの郊外へと姿を現した。
ロマリア軍の先頭に立つのは教皇ヴィットーリオ。対してアンリエッタも要塞都市となったトリスタニアの外周でこれに対峙した。
「親愛なるアンリエッタ女王陛下。それにトリスタニアにこもるトリステイン国民の皆さん。私はロマリア教皇、ヴィットーリオ・セレヴァレです。私は始祖に代わって寛大なる慈悲の心を持ってあなた方に訴えます。今からでも遅くありません。無謀な行為をやめて神の前にひざまづくのです。信仰に目覚めたすべての人に対して、私は罪を問わないことを誓約します」
「教皇陛下。いえ、ハルケギニアを闇に染めようという闇の勢力の尖兵よ。この期に及んで甘言も茶番も必要ありません。このトリスタニアに集ったものは皆、その覚悟があってここにいるものだけです。わたしは誰一人として、この戦いに強制はさせていません。人は、信じるものは自分自身で選ぶことができます。それが、この世に生まれてきた人間すべてが持つ自由という権利ですあり、その権利のもとで、わたしたちは聖戦を否定しています。その自由を踏みにじり、力ずくでの隷属を望むというのであれば、それは侵略であり、侵略者に対してわたしたちは決して屈することはありません」
 ぬるい妥協の可能性は最初の時点で雲散霧消し、アンリエッタの断固とした意志が双方の軍に伝わった瞬間に戦いの幕は切って落とされた。
トリスタニアへと進撃してくるロマリア・ガリア軍。砲兵、弓兵、重装兵、歩兵、そしてメイジのゴーレムが津波のようにひとつの都市を飲み込まんと迫り来る姿は、トリステインの兵に武者震いを起こさせた。 対してトリステイン軍の布陣は徹底した守り。戦いに勝つことは最初から想定せず、人命を確保しつつ陣地を可能な限り維持して時間を稼ぐよう作られている。例えるならば甲羅にこもった亀だ。
この守りは半端な攻撃ではビクともしない。これは冗談ではなく、城砦や要塞というものは正面攻撃で抜くことは古今東西困難であり、有名なところでは、大阪冬の陣、北条攻め、マジノ線などはからめ手や迂回などを使って攻略している。
ロマリア・ガリア軍の将軍たちもそれは重々理解しているので、攻撃は慎重だ。しかしそれは戦いを長引かせたいトリステインの思う壺でもあった。

 もっとも、教皇は戦線の状況などには一切の興味を持っていなかった。
「まあ最初のうちくらいは戦争ごっこを楽しませてあげましょう。本当に楽しいことは、その後に待っているのですからね」
 やろうと思えばトリステインを滅ぼすくらいのことはすぐにでもできる。しかし、この世界をきれいにするためには先住民同士で争わせて自滅させるのが最良であるので、派手に破壊活動をするのは控えねばならない。
 なに、慌てる必要は無い。最大の不安要因に対しての手はすでに打ってある。それさえ除いてしまえば、こんな未開な星の人間などどうとでもできる。
 高みの見物をする戦争は賑やかで華やかで、退屈しのぎの娯楽としては最高のものだろう。この場所に同席している各国の新聞記者たちも、戦況の一挙一頭足に興奮しているに違いない。
 そして記者たちは、近いうちに特ダネをものにすることができるだろう。ヴィットーリオやジュリオは、彼らを幸運だろうと思う。世界が滅びるその前に、自らの職業の花道を飾ることができるのだから。
「教皇陛下、アルビオンの空中艦隊が接近してきます」
「前線の部隊を後退させなさい。このままでは城砦と空からの挟み撃ちにあいますよ。神の使途の命を粗末にしてはいけません」
 教皇の慈悲溢れるお言葉に感激して、ロマリア・ガリア連合軍が生き物のようにさぁっと動いた。
 まったくたやすいものだ。妄信する人間は糸で吊る人形よりも操りやすい。彼らは自分たちの主が自分たちを侮蔑しているとは夢にも思っていない。いや、彼らは慈愛溢れる教皇陛下のもとで神の使途として戦うという夢に溺れているのだ。
 だが、目の前のトリステインは別だ。あの女王はこともあろうに、数千年をかけて育て上げてきたブリミル教への服従心に反抗するという暴挙に出てきた。最後まで夢を見続けていれば幸せなものを、ならば甘い夢とは違う厳しい現実を教えてあげようではないか。
 トリスタニアを舞台にした四国の攻防戦の開幕はトリステイン軍優勢から始まり、世界中の新聞はトップ記事としてこれを飾った。
 が、人間たちの視点では大事件でも、宇宙はそんなこととは関係なしに動いていく。

動乱の渦中から遠く離れて、人間たちの知らない宇宙のかなたからハルケギニアに危機が迫りつつあった。
小惑星ほどもある巨大怪獣の接近。これのハルケギニアへの激突を許せば、ハルケギニアは文字通り消滅してしまうだろう。
人間の力では対処のしようがない事態に、ウルトラマンヒカリとウルトラマンジャスティスは宇宙へと飛び立った。

しかしこれは罠であり、最悪の展開と敵が待ち受けていることを、ふたりはまだ知らない。

二つの月に見守られた星を背にして、二人のウルトラマンは外惑星軌道を目指して急いでいる。
ハルケギニアの星のある太陽系は、ハルケギニアと地球が瓜二つなことを反映したかのように、九つの惑星から成り立ち、ハルケギニアの星はその第三番惑星であった。
 ヒカリとジャスティスが目指しているのは、第五番惑星軌道。太陽系で言えば、木星軌道に当たる空間であり、そこでならハルケギニアに被害を及ぼすことなく怪獣を処理することができる。
 ウルトラマンの飛行速度であればあっという間に、ヒカリとジャスティスは目的の空間に到達した。ふたりは初対面ではあるが、互いの活躍はウルトラマンとして知り合っていた。
「来たぞ」
「大きいな。やはり生物か」
 無駄口や馴れ合いは好まない彼らの対話は簡素だった。しかし、無駄口を叩いている暇などはないくらいに、巨大怪獣は猛スピードで二人の視界へと入ってきた。
 月のような赤茶けた球形の体に頭と尻尾が生えたような、異様な姿の巨大生物は彗星のような青白いガスをまといながら漆黒の宇宙空間を猛進している。ヒカリは、間近でその姿を見たことで、やはりと記憶の一部を蘇らせていた。
「思ったとおり、私がメビウスと地球に向かっていたときに遭遇した怪獣と同種のものだな。ふたつの宇宙に同種の怪獣が生息していたのか……それとも」
 超巨大天体生物ディグローブ。それがこの怪獣の名前である。文字通り天体規模のスケールを持つ巨大生命体であり、ヒカリの知っているM78次元でこれを上回るのは無限に成長する類を除けば暗黒怪獣バキューモンくらい。ジャスティスの知っているうちでも、地球生命を消滅させようとした巨大兵器、ファイナルリセッター・ギガエンドラも相当な大きさがあったが、こいつはそれよりも大きかった。
 ディグローブは、ふたりのウルトラマンなど目に入っていないように、本物の彗星のごとく宇宙を驀進している。その威容はすさまじく、以前にヒカリとメビウスが遭遇したものとまったく変わらない。
「こんなものが墜落したら、星のどこに落ちようと惑星規模の災害になるぞ。大地震が起こり、津波が大陸を沈め、火山が噴火して気候がめちゃめちゃに破壊される。そして何十万という数の生物が絶滅し、氷河期がやってくる」
「星の生命の歴史が強制的にリセットされるわけか。自然の営みならば手を出すべきところではないが……どうする?」
「止める。この接近が百パーセント自然のものであったとしても、今のハルケギニアの人類になす術はない。じゅうぶんな進歩を遂げた上で、それでもダメならば彼らの責任だが、身の丈を超えた災厄が降りかかるのであれば、先を行く者が守らねばなるまい」
 ヒカリはディグローブを止めることをジャスティスに告げた。人や生命は試練によって成長するが、麦を踏むのも強すぎると枯らしてしまうように、障害にも限度がある。未熟な生命が試練を受けられるようになるまで守るのが、ウルトラマンの使命だ。
 ジャスティスは無言でうなづく。口には出さないが、あの星の人々が持つ希望を、こんな形で失わせてはいけない。
 ならばどうするか? ヒカリが以前遭遇した個体は彗星怪獣ガイガレードが取り付いて進路を狂わせていたので、ガイガレードを倒すことで進路を変えさせることができたが、今度はそういきそうもない。
「手段は?」
「攻撃して、無理にでも軌道を動かすしかない」
「やはり、それしかないだろうな」
 この怪獣は質量がありすぎて、取り付いて力づくで動かせるような代物ではない。増してや惑星間を飛行する膨大な運動エネルギーを得ている相手の前に立ちはだかったところで、鯨の前の小魚のようになってしまうだろう。
 方法はひとつ、横合いから強力な光線をぶつけて方向転換させる。怪獣を殺さず、ハルケギニアへの危機を回避するにはほかに方法がない。
 ヒカリが右手のナイトブレスにエネルギーを集中し、ジャスティスが頭上に掲げた両腕の間にエネルギーを集める。
狙うのは怪獣の頭部の側面。人間でいえば横っ面をひっぱたくのだ!

『ナイトシュート!』
『ビクトリューム光線!』

青と赤の光芒が宙を裂き、デャグローブの木の根に似た頭の側面に突き刺さる。たまらずに頭を振り、球体の体を激しく振動させてディグローブは苦しんだ。
ようし、効いている。それに、今の攻撃で奴のスピードも若干緩んだようだ。
「もう一撃だ」
「よし!」

怪獣の進行は確実に鈍っている。今の攻撃はふたりとも手加減したつもりはなく、もしどちらかひとりだけであったら巨大怪獣に攻撃が通用しなかったかもしれないが、やはりひとりよりも二人のほうが力は何倍にも高まるようだ。
宇宙空間では地球上などに比べてエネルギーの消耗も少なく、光線技も存分に使える。ヒカリとジャスティスは必殺光線の第二波攻撃の構えに入った。
だが、その瞬間。 

「ジャマヲ、スルナ」

突如、ふたりのウルトラマンの脳裏に強烈で邪悪な思念波が送られてきた。それは、聞くだけでおぞけが走るほどどす黒い怒りの念が込められていて、しかもふたりにはその声に聞き覚えがあった。

「この声、まさか!」
「やはり貴様か、貴様の声を私が聞き間違えるはずはない……姿を現せ、ボガール!」

ヒカリの叫びに呼応するかのように、空間が揺れ、星空に大きな亀裂が走った。
そのままガラスを割るかのように空間の亀裂は広がり、裂け目に巨大なかぎ爪がかけられて一気に引き裂かれる。そして、大きく口を開いた次元の裂け目から姿を現した禍々しい巨体は。

「貴様は!?」
「ボガールモンス……とうとう見つけたぞ」

刺々しい体と鋭い目つき、背中に翼のような捕食器官を供えたその容姿。見間違えるはずはない、ヒカリにとって因縁の相手、かつて命と引き換えに倒した貪欲なる高次元捕食生命体ボガールモンス。
以前、レッサーボガールを操ってアニマル星を襲撃し、この世界に潜んでいる痕跡を追ってやってきたが、やっと姿を現したのか。ヒカリの心を、捨て去ったはずの憎悪の残滓がちくちくと刺す。
また、ジャスティスにとってはハルケギニアで何度も戦った相手でもある。しかし、奴は確かハルケギニアの月での戦いで。
「貴様、確かに倒したはず。いったいどうやって蘇ったのだ?」
 ボガールモンスは、あのときの戦いでベムスターごとダグリューム光線で葬ったはずだ。あの爆発の中で生き残れるとは思えない。
 だが、ボガールモンスはジャスティスの問いかけには答えずに、いきなりふたりに襲い掛かってきた。
「シネッ」
「くっ!」
巨大な腕を振りたてての突進を、ヒカリとジャスティスはかろうじて回避した。
どうやら、話をする気は少しも無いようだ。もしや、この巨大怪獣を呼び寄せたのもボガールかとヒカリは推測した。無限の食欲を持つボガールならばじゅうぶんに有りうることだ。
それは、半分正解で半分外れていた。
死んだはずのボガールモンスの再出現ははもちろん偶然ではない。あのとき、ボガールモンスはジャスティスとの戦いに敗れて致命傷を受けた。しかし死の寸前、次元のはざまに引き込まれて一命だけはとりとめ、その後長い時間をかけて再生を続けてきたのだった。
そして、ボガールモンスを拾い上げたものこそ、今トリスタニアで戦争ごっこを楽しんでいるあの男である。
「ほう、とうとう我慢できずに飛び出しましたか。けっこうけっこう、それでこそわざわざエネルギーをあげて蘇らせてあげたかいがあります。ですが、エネルギーは得れても、実際に『食べる』感触を禁じられてきたフラストレーションは限界にまで高まっていることでしょう。その貪欲さと憎悪で、見事我々の敵を蹴散らしてください。あなたには、それだけの力がまだ隠されているのですから、フフ……」
 ウルトラマンを圧倒するパワーと、怪獣を呼び寄せる能力には利用価値があると見込んで救い上げた。しかし、懐柔しようと呼びかけても、その凶暴すぎる性格ゆえにコントロールするのは無理だと結論づけざるを得なかったが、ならば別の利用法をするまでだ。そのために、わざわざディグローブという、ボガールモンスとウルトラマンのどちらも飛びつくエサを呼び寄せたのだから。
 意味ありげに微笑したヴィットーリオの考えていることを、そばに控えた神官や将軍たちはジュリオ以外に知る者はいない。
 果たして教皇は何を企んで一度敗れたはずのボガールモンスを出現させたのか。確かなのは、彼らがすでに勝利を確信しているということだけである。
だが、すでに犀は投げられた。ふたりのウルトラマンは、蘇った貪欲なる悪魔への闘志を燃やす。
「貴様はどこにいても災厄を撒き散らす。今度こそ、お前の悪行にこの私が引導を渡してやる」
「どうやって蘇ったかは知らないが、せっかく拾った命でも貴様は宇宙を欲望のままに食い散らかすのをやめないか。貴様には、未来に希望を持つ必要はないようだな。今度は逃がしはしないぞ」
 ヒカリとジャスティスは、共に己の信念の下にボガールモンスを迎え撃つ決意を定めた。ボガールはほっておけば永久無尽蔵に生命を食い続ける。それこそ、宇宙がカラになるまで食い続ける、生きたブラックホールのようなやつなのだ。宇宙の平和のために、絶対に見逃すことはできない。
 宇宙空間を舞台にして、二大ウルトラマンとボガールモンスの決闘が開始された。
「シュワ!」
 向かってくるボガールモンスの攻撃を、ヒカリのナイトビームブレードとジャスティスのパンチが迎え撃つ。
 刹那、強烈なる一撃が宇宙の真空に衝撃を響かせ、競り負けたボガールの悲鳴が一瞬遅れて響く。ヒカリがナイトビームブレードでボガールの攻撃を受け止め、その隙にジャスティスががら空きのボガールモンスのボディに一撃を叩き込んだのだ。
 むろん、ボガールモンスはこのくらいでまいるほど弱くは無い。攻撃を受けた勢いで間合いを稼ぐと、首の後ろの発光器官から光の触手を伸ばして攻撃をかけてきた。
「ヘヤッ」
「デュワッ」
 蛇のように向かってくる触手を、ヒカリとジャスティスは飛行して回避した。追尾性を持つ触手は、ふたりを追ってなおも迫ってくる。
 しかし、ふたりにとっては一度見た技である。手品の種が割れているなら驚かされることはない。ふたりはボガールモンス本体へ向けて攻撃を放った。
『ブレードスラッシュ!』
『ジャスティスマッシュ!』
 矢尻状の光弾とエネルギー弾がボガールモンスに命中して火花をあげる。と、同時にボガールモンスから伸びていた光の触手も力を失って消滅した。触手がいくらうっとおしくしても、出所を叩いてしまえばいいだけなのだ。
 触手で攻撃するのに集中力を注いでいたためにボガールモンスは回避ができず、まともに反撃を受けてしまってよろめいている。そこへ、ヒカリとジャスティスは間髪いれずに追撃を放った。
「デヤアァッ!」
 一瞬で間合いを詰めたヒカリのナイトビームブレードがボガールモンスの右腕を切り落とし、ジャスティスのかかと落しがボガールモンスの頭をへこませる。
 脳震盪を起こし、さらによろけるボガールモンス。しかしヒカリとジャスティスは攻撃の手を緩める気はない。
「この場所ならば、貴様が爆発してもどこにも被害が及ぶことはない。遠慮はしないぞ」
「貴様の逃げ足の速さはよく知っている。前よりもパワーアップしているようだが、今回は相手が悪かったな」
 不利と見れば即座に逃げ去ってしまうボガールの狡猾さと、倒せば周囲を巻き込んだ爆発を起こすことを承知しているふたりは、手加減するつもりなどは毛頭無かった。
 ジャスティスのパンチの連打がボガールモンスのボディを打ち、ヒカリチョップがボガールモンスのとげの一本を切り飛ばす。
 ボガールモンスもやられっぱなしでいるだけではなく、電撃光線を発射して反撃してくる。しかし、これもヒカリとジャスティスは余裕を持って避けて、加速をつけたキックを二人同時にお見舞いした。
「シュァッ!」
 ダブルキックをまともに喰らって、ボガールモンスは大きく吹き飛ばされた。ボガールモンスも当然高い飛行能力を持っているが、受けたダメージの大きさのせいで姿勢制御できず、きりもみしながら飛ばされていった。
「オオノレェェェェーッ!」
 ボガールモンスは、自分が以前敗れたときよりパワーアップしているつもりであった。だが、相手はそんなにパワーが増したようにも思えないのに、まるで歯が立たない。
 ウルトラ戦士が持つ使命感や絆の力がボガールモンスにはわからない。わかるのは、このまま戦えば自分が死ぬということだけだ。
 逃げなければと、ボガールモンスの生存本能が必死に訴えている。誇りなどを持たずに食欲だけを行動原理とするボガールは、必要とあれば逃げることを一切ためらわない。
 が、そんな習性は誰よりもヒカリが見通していた。
『ナイトシュート!』
 ヒカリの放った必殺の光波熱線がボガールモンスの背中の捕食器官兼飛行器官になっている翼の半分を消し飛ばした。
「よし、やった。これで奴は異空間に逃げ込むことはできない」
 狡猾なボガールを一度逃してしまったら、再度捉えるのは困難を要する。しかし飛行器官が半減しては異空間へ逃げ込むスピードも落ち、逃げられる前にじゅうぶん阻止できる。
 対して、ボガールモンスは自分が追い詰められてしまったことを十分理解していた。まずい、このままではやられる、どうにかしなくては、だが逃げられない、どうすれば。
 奴は状況を打開するために、あらゆる方法を模索した。しかし、能力のすべてを知られている以上、なにをやってもすぐに対処されてしまう。考えれば考えるほど、自分がすでに詰んでいるという事実しか結論に出てこない。それでも、ボガールモンスはまだあきらめてはいなかった。
「マダダ、マダ、クイタリナイノニ」
 飢えたまま死にたくない、もっともっとご馳走が欲しいという、底なしの食欲。ボガールの本質はどこまで追い詰められても変わらない。
 だからこそ、奴の生態系もなにもかもを無視した暴食を止めようと、ヒカリとジャスティスはとどめの一撃を放つために身構えた。
「これで終わりだ」
 ナイトシュートとビクトリューム光線の同時発射の態勢をとり、狙いを定める。これで、今度こそ二度と蘇ってこないように粉々に粉砕してくれる。
 だが、ふたりが今まさに必殺光線を放とうとした瞬間、ふたりの眼前に突如巨大な影が立ちはだかった。
「なにっ!?」
「小惑星怪獣! 戻ってきたのか」
 なんと、ヒカリとジャスティスに向かってディグローブがすさまじい勢いで突進してきたのだ。ふたりはとっさに回避して難を逃れたが、ディグローブはさらに反転してふたりに迫ってくる。
「くっ、自分の進行を邪魔されて怒っているのか」
「今はかまっている暇はないというのにっ! 待て、奴はどうした!」
そのとき、ヒカリとジャスティスは、一瞬目を離した隙にボガールモンスがいなくなっていることに気づいた。
 どこだ、どこへ行った? ふたりはディグローブの突進をかわしながら賢明にボガールモンスを探した。
 まだ遠くには行っていないはずだ。あの傷ではそう速くは飛べないし、時空に穴を開けた気配もしなかった。
 奴はまだ近くにいる。ならばどこに? このあたりには隠れる場所などないはず。いや、まさか!
 ふたりはディグローブの体の上を凝視した。すると、やはり。
「ファハハハハ、ハーッハッハッハ!」
 ディグローブの上にボガールモンスが乗っていた。
「奴め、あんなところに」
 ジャスティスは悔しげに吐き捨てた。あの一瞬で、ディグローブの上が安全だと判断して移動したというのか。どこまでも悪知恵だけは働く奴だ。
 だが、場所を移動しただけではどのみち逃げられない。宇宙空間ではウルトラマンの三分間の制限もないからだ。
 しょせんは一時しのぎ。しかし、奴のあの勝ち誇ったような高笑いはなんだ? それに気づいたとき、ヒカリの背筋に絶対零度の氷河が流れた。
「まさか、やめろボガール!」
 ヒカリが叫んだその瞬間だった。ボガールモンスは背中の捕食器官を大きく開き、ディグローブに食いついて丸呑みにしていったのだ。
「なんだと!?」
 ジャスティスが戦慄したようにつぶやく。小惑星大のサイズがあるディグローブを七九メートルしかないボガールモンスが呑み込んでいくのは悪夢のような光景だ。だが、ボガールは第一形態でも惑星アーブの生命体を根こそぎ食いつくしてしまったほどの胃袋を持ち、その食べられる容量は想像を絶する。
 ふたりの見ている前で、あっという間にディグローブはボガールモンスに呑み込まれて消滅してしまった。
 そして、ディグローブを呑み込んだボガールモンスはうれしそうに叫びをあげた。
「ウマイ、ウマカッタゾ! オオ、カラダニ力が溢れてくる。ふははは、これはすごいぞおぉぉぉ!」
 膨大なエネルギーを腹に収めたことで、ボガールモンスの体全体が心臓のように激しく脈打つ。そして、ひときわ高い歓喜の声が上がった瞬間、ボガールモンスの体が大爆発を起こした。
「ぬあぁっ! じ、自爆したのかっ?」
「いや、違う。これは!」
 惑星規模の爆発からバリアで身を守りながら、ジャスティスとヒカリは衝撃波が通り過ぎるのを待った。
 ボガールモンスはエネルギーの過負荷で自爆したのか? いや、そうではない。ボガールを倒すために、ボガールの生態を調査してきたヒカリは最悪の展開を予感していた。それは、つまり。

熱と衝撃が通り過ぎ、視界が再び開ける。そしてヒカリとジャスティスは、ボガールモンスのいた空間で君臨する禍々しい赤い怪獣を見た。

「フッハッハッハ! はっはっはっ! このみなぎるパワー! あふれ出すエネルギー! 生まれ変わった。我は生まれ変わったのだぁーっ!」

 それは、もはやボガールモンスではなかった。姿形としては、進化前のボガールに酷似しているが、さらに巨大になって全身が赤紫色に毒々しく染まり、頭部には太く湾曲した角が生え、両腕の鍵爪も倍以上に大きくなっている。
 そしてなにより、奴から感じるエネルギー量がケタ外れに上がっている。もう間違いは無い。ヒカリは、この場所に自分たちとボガールを誘い出した敵の真の目的を悟った。
「……アークボガール」
「なんだと?」
「ボガール族の最終形態、ボガールマスターと呼ばれる、奴らの究極の姿だ」
「そうか……なるほど、私にもわかったぞ。あの小惑星怪獣は、最初から私たちをハルケギニアから離れた場所におびき出し、奴に吸収させて進化させるために用意された囮だったというわけだ」
 ジャスティスも、見るだけではるかにパワーアップしたことがわかるボガールの変わりように戦慄を覚えながらうなづいた。
 アークボガール。その名は、あの暗黒宇宙大皇帝エンペラ星人の側近、暗黒四天王のかつての邪将の座に見ることができ、その実力はそれぞれメビウスを後一歩のところまで追い詰めた悪質宇宙人メフィラス星人、冷凍星人グローザム、策謀宇宙人デスレムに勝るとも劣らないと言われている。
 しかし、何よりも食欲を優先するボガール一族の例に反せず、アークボガールはエンペラ星人の命令に従わずに宇宙を食い荒らし続けたためにエンペラ星人の怒りを買い、ブラックホールに封印されたという。
 が、逆に言えば封印だけで済まされる点が、エンペラ星人がアークボガールを高く評価していたという証拠でもあるだろう。不要と見れば同じ四天王であるメフィラス星人をもあっさりと処刑した、あのエンペラ星人がである。

 生まれ変わった喜びに高笑いを続けるアークボガール。だが奴は、己の敵のことを忘れてはいなかった。
「さて、まずは貴様らには我を生まれ変わらせてくれた礼をしなくてはいかんな。お前たちにも堪能させてやろう、恐怖と絶望の味をな」
 アークボガールからの敵意を受けて、ヒカリとジャスティスはとっさに身構えた。
 来る! 奴はパワーアップした自分の力を試すつもりだ。急速に接近してくるアークボガールに対して、ふたりも全力で突進してパンチを放つ。
「テヤアァァッ!」
 すれ違いざまの一瞬の攻防。しかし、悲鳴をあげたのはふたりのウルトラマンのほうだった。
「グアッ!」
「ウワアッ!」
 ヒカリとジャスティスの攻撃は、強烈な衝撃波をまとって突進してきたアークボガールの前に弾き飛ばされてしまった。アークボガールにはかすり傷ひとつなく、奴は胸を揺すりながら笑った。
「ふっははは、そんなものか貴様らの力は。まるで歯ごたえが無いぞ、攻撃というのはこうするのだぁっ!」
 アークボガールの巨大な爪が振り下ろされ、ヒカリとジャスティスの体が切り裂かれて火花があがる。
「ヌワァ! ぐ、なんというパワーだ」
 攻撃力はボガールモンスより格段に上がっている。あの爪の一撃を何発も受けたら危険だ。ヒカリとジャスティスは、ブレードスラッシュとジャスティスマッシュを同時に放って、いったん間合いをとろうと試みたが。
「馬鹿め! 飛び道具ならこちらにもあるぞ」
 アークボガールは手から紫色の光弾を放ってブレードスラッシュとジャスティスマッシュを相殺し、そのまま体当たりを仕掛けてきた。
 巨体にぶつけられ、またも大きく跳ね飛ばされるふたり。パワーだけでなく、スピードの上昇もすさまじい。
「どうしたどうした、さっきまでの勢いは? こんなものではオードブルにもならんぞぉ!」
 進化によって知能も向上したのか、非常に饒舌になったアークボガールはあざ笑いながら攻め立ててくる。
 アークボガールの腕が振り下ろされるたびにヒカリとジャスティスが傷つき、対してふたりの攻撃は膨大なエネルギーの後ろ盾を得たアークボガールのボディには通らない。
 単純な物理攻撃の威力だけでも、戯れに軽く蹴りが出されることでさえふたりには脅威となっていた。さらに、手から放ってくるエネルギー弾の威力もものすごい。
「ボガールめ、ここまで強くなっているとは!」
「長引くと不利になる一方だ。一気に決めるぞ!」
 危険を察知したジャスティスの言葉にヒカリも即座にうなづいた。様子見をしていられるような相手ではない。
 アークボガールの攻撃に合わせて、ふたりはキックを打ち込むことで、その反動で間合いをとることに成功した。そしてそのまま、全力のパワーで必殺光線を撃ち放った。

『ナイトシュート!』
『ビクトリューム光線!』

 先ほどディグローブに撃ち込んだときも手加減はしなかったが、今度はさらに必殺の気合を込めている。ふたつの光線はらせん状に絡まりあい、一気にアークボガールに叩き込まれた……かのように見えたが。
「ふぁはっはっは、その程度か? お前たちのパワーは」
「なにっ!」
「私たちの光線を、吸収しただと!」
ふたりの放った光線は、アークボガールの胸へと確かに当たりはした。しかし、奴の体は光線のエネルギーを、砂場に撒かれた水のように軽々と吸い込んでしまったのだ。
 まったくダメージがないどころか、さらにパワーアップしたオーラをほとばしらせるアークボガール。対して、ダメージの蓄積と光線技の全力発射でヒカリとジャスティスのカラータイマーは点滅を始めてしまった。そして、苦しそうに肩で息をしているふたりに向かって、アークボガールは勝ち誇ったように告げた。
「馬鹿者どもめ、我にとってはお前たちの攻撃などドリンクと同じよ。お前たちの攻撃が、我の血となり肉となるのだ」
 アークボガールは進化によって、ベムスターなどと同じように、攻撃をそのまま自分に吸収する能力まで得てしまったようだ。これでは、こちらの決め技が逆に相手を助けることになる。なんということだ。
「さあて、余興にもそろそろ飽きてきたところだ。お遊びはそろそろ終わりにしようか」
 嘲りと共に放たれたアークボガールの勝利宣言。しかし、ヒカリとジャスティスはまだあきらめてはいない。残ったエネルギーを振り絞って、アークボガールに向かっていった。
「ウオォォォッ!」
「デヤァァァッ!」
「余興は終わりだと、そう言ったはずだぞ? ハアァァァッ!!」
 突っ込んでくるヒカリとジャスティスに対して、アークボガールは全身から強力なエネルギー衝撃波を放った。全方向に広がりながら迎えてくる赤黒いエネルギーの奔流は、瞬く間にヒカリとジャスティスを呑み込んで吹き飛ばしていく。
「ウワァァァーッ!」
 まるで惑星の爆発に至近で巻き込まれたような衝撃は、ふたりのウルトラマンを打ちのめすには十分すぎるものだった。
 アークボガールの攻撃は、その場所から数百万キロ離れた空間に浮いている木星に似たガス惑星の大気を揺さぶり、さらにかなたのアステロイド帯を砕くまで届いてやっと止まった。
 圧倒的な破壊力。それをまともに受けてしまい、カラータイマーを弱弱しく点滅させながら、宙を漂うヒカリとジャスティス。アークボガールは、抵抗力を失ってしまったふたりを見下しながら高らかに笑った。
「ファハハハ! そんなものかお前たちの力は。ハッハッハ、ここでお前たちを餌食にしてやってもよいが、それではいまひとつ興が乗らん。まずは、我が再誕の晩餐としてあの惑星を味わってくることにしよう。お前たちはそこで、自分の無力を嘆いているがいい。その悲嘆と絶望を味付けにして、最後にデザートとしていただいてくれる。ファハッハハハ!」
「ま、待て……」
 ハルケギニアの方向へと飛び去っていくアークボガールを引きとめようとしたジャスティスの声も、あっという間に飛び去っていったアークボガールには届かなかった。
 すでに二人にはアークボガールを追う力は残っておらず、ダメージを受けた体を維持するだけで精一杯だ。だが、アークボガールはすぐにでもハルケギニアに到達してしまうだろう。
 ヒカリは、この最悪の事態をもう自分たちでは止められないことを悟った。
「ま、まずい。このままでは、あの星が……くっ、頼む、届いてくれ!」
 わずかに残ったエネルギーを振り絞り、ヒカリはハルケギニアに残った仲間たちに向けて超光速通信ウルトラサインを送った。
 そして、ヒカリの懸念は最悪の形で的中した。
 アークボガールは生命溢れるハルケギニアの星に舌なめずりしながら接近し、その食欲の赴くままに、もっともうまそうな匂いのする場所へ狙いを定めて降り立ったのだ。
「ハッハハハ! ここだ、この湖から、この星でもっとも強い生命エネルギーを感じるぞ。我がメインディッシュとして選ばれたことを光栄に思うがいい!」
 巨体を揺らし、降り立ったのはラグドリアン湖の湖畔であった。周囲では、突然現れた怪獣におののいて人間たちが悲鳴を上げながら逃げていくが、アークボガールにとってはなんの興味の対象にもなっていない。いや、うまそうな食事を前にしたアークボガールにとっては、空を覆う虫の雲も、世界の異変もなにもかもがどうでもいいことでしかなかった。
 ボガール一族の目的は、例外なく『食すこと』ただ一点にあり、ほかのすべてがその手段であって付属物でしかない。自分が誰かの陰謀で動かされているかもしれないなどということは興味の対象外であり、自己の保存と満足な捕食に勝ることなど何もないのだ。
 アークボガールは湖畔に立つと、ボガールがそうしたように背中の捕食器官を大きく広げた。そして、湖に腹を向けると、真空ポンプのように湖を吸い取り始めたのである。
「フハハハ! なんという濃い生命エネルギーに満ちた水よ。やはり、我の目に狂いはなかったわ。さあ、このまま一滴残らず吸い取ってくれるわ!」
 竜巻に海水が吸い取られていく何百倍もの勢いで、ラグドリアン湖の水がアークボガールの体に呑み込まれていった。
 このままでは、数分もしないうちにラグドリアン湖は枯れ果ててしまうだろう。湖に住まう水の精霊も必死に抵抗を試みようとしたが、惑星さえ食い尽くすアークボガールの胃袋の前には無意味でしかなかった。
 だが、このままアークボガールに好きにさせては星が破壊されてしまう。教皇にとって、これは計算外だったのか? いや、ヴィットーリオはそんなに浅はかではない。アークボガールが星を破壊しようとするとき、必ずそれを食い止めようとする者が現れることも想定していたのだ。
 ラグドリアン湖を食い続けるアークボガールが、突如横合いからの衝撃を受けて吹っ飛ばされた。
「うぉっ!? むぅ……ほほお、ここにもまだ、我に歯向かう愚か者がおったか。おもしろい、お前たちもスパイス代わりに味わってくれようぞ」
 アークボガールは腕を振り上げて戦闘態勢をとった。そのエネルギーは、ラグドリアン湖から得た生命エネルギーでさらに上がっている。
 対して、アークボガールの前に立つのは二体。しかし、その雰囲気は悲壮感に溢れて、その後ろに立つテンガロンハットの男の表情にも苦渋がにじんでいた。
「ヒカリ、お前のウルトラサインは確かに受け取った。私たちもできる限りやってみよう……頼むぞ、ミクラス! ウインダム! アークボガールを倒せ!」
 雄たけびをあげて突進していく雄牛に似た怪獣と、機械音をあげて駆けて行く銀色の機械の怪獣。アークボガールは嘲り笑いながら、二体の挑戦を一歩も引かずに受けて立った。


 続く


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