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ウルトラ5番目の使い魔、第三部-43


第43話
勝者なき戦争のはじまり

バリヤー怪獣 ガギⅡ
カプセル怪獣 ミクラス 登場!


 ついに始まってしまったトリステイン・アルビオン連合とロマリア及びガリアの戦争。
 聖戦を行うべきか否か、教皇は正義かはたまた悪か。ハルケギニアは二つに割れ、さらに形勢を貪欲に見守るゲルマニアも加えて、世界は激動の時を見守っている。
 しかし、ハルケギニアを二分する大戦は見せかけで、裏では闇の勢力と光の守護者が激しくぶつかり合っていた。

 トリステインの各地に出現した三体のガギ。以前確認されたガギの子供であるこの三個体は、本来ならば成熟にまだ時間がかかるところをジュリオにエネルギーを与えられて一気に成長し、それぞれが親同様に繁殖のために動き出したのだ。
 ガギは、子供を育てるために、人間の子供の成長ホルモンを狙って街や村を襲う。時節柄軍隊は対処できず、できたとしても一気に三体も現れたガギには対抗できないだろう。
 だが、罠であろうとなかろうと、平和を守るウルトラ戦士がこの暴虐を黙って見過ごすことはない。 
「ヘヤアッ!」
 シュルビスの街に現れたガギを前にして、この街に立ち寄っていたジュリがウルトラマンジャスティスに変身して立ち向かう。
 この街はすでにガギのバリヤーに囲まれていて、このままでは逃げ出すことのできない人々が大勢犠牲になってしまう。ジャスティスは無条件に人間の味方ではないが、ガギが子供たちを狙って触手を伸ばすのを、子供たちの親や周りの大人たちが必死になって防ごうとする光景を見て、この街の人間たちのために戦おうと決めた。
 対してガギも、繁殖行動の邪魔をされて怒り、ジャスティスに向かってくる。ガギの主要武器である両手の鞭が振りまわされながらジャスティスに迫ってくる。まるで子供が縄跳びを鞭に見立ててでたらめに振り回しているようなそれに、うかつに近づいたらダメージを受けるのは必至だ。
 しかしジャスティスは空高くジャンプし、斜め上から超高速の飛び蹴りをガギに食らわせたのだ。
『クラッシャーハイキック!』
 かつてスペースリセッター・グローカールークのボディに風穴を開けた技の前に、ガギは頭部の角をへし折られ、悲鳴をあげながら倒れこんだ。本来この技はクラッシャーモードで使用するものだが、ジャスティスはスタンダードモードでも千六百メートルのジャンプ力と最高速度マッハ3.5の疾走力を誇る。確実にグローカーより格下な怪獣を相手に、この程度は効いて当然なのだ。
先制の一撃で最大の特徴と武器である角を失って、ガギは起き上がってきたものの、すでに戦意を失いかけている。勝負の行方は、決まったも同然であった。

 一方で場所を変え、トリステイン魔法学院でも二体目のガギとウルトラマンヒカリが戦っていた。
「テアッ!」
 ここは親ガギが住処にしていた山からも近く、子供のにおいが特に濃いので、ガギが目をつけたのも当然のことであった。
 当然学院もバリヤーで覆われ、オスマン学院長以下教師たちや、生徒たちも捕らわれてしまっている。
「戦争には出られない女子生徒たちをかくまって欲しいと、生徒の父兄らに言われて集めていたのが裏目に出おったか。これお主ら、そんなにキャーキャーはしたなく騒ぐものではない。怖いのならばわしのそばに寄って……そんなに一目散に逃げなくてもよかろうに。じゃが、まあよい。わしゃおなごを食うのは好きじゃが食われるのを見るのは嫌いじゃからの。頼むぞ、青い巨人どのよ」
 冗談か本気か知れないけれども余裕をのぞかせながらオスマンは言った。
 もちろん、オスマンの願いはヒカリの願いでもある。ヒカリは魔法学院を背にして守りつつ、ガギが放ってくる破壊光線をナイトビームブレードで受け止めて跳ね返した。
「デヤッ!」
 はじき返されたエネルギーは、ヒカリがブレードを振るうと周囲で爆発を複数引き起こした。
「悪いな、お前の手はすでに知り尽くしている」
 ヒカリは以前にも魔法学院で親のガギと戦っている。光線を撃って来ることはもちろん、ガギの戦法も頭の中に蓄積済みだ。元学者のヒカリが、一度学習したことを忘れることはない。
 それはむろん、これからのこともだ。ヒカリは、光線が効かないと知って鞭を振り回しながら近づいてくるガギを冷静に正面から迎えると、閃光のようにブレードを一閃させた。それはまさに瞬き一回の間の出来事。ガギの触手は二本とも根元から切り落とされて、宙をくるくると回ると無造作に草原に落ちて転がった。
 ガギは、生意気な相手を鞭で打ち据えるつもりが、その武器をいっぺんに失ってしまって、口を大きく開けたまま両手を見つめて愕然としている。
 もちろん、そんな隙をヒカリが見逃すわけはない。並の怪獣なら軽々と真っ二つにする切れ味のナイトビームブレードがひらめく。勝負が決まるのは、刹那の後であろう。

 そして三箇所目。タルブ村を襲った最後のガギもまた、子供の匂いに引かれて暴れまわっていた。
「助けてーっ! お母さーん」
 ガギは器用に触手で子供を捕らえ、自分の巣穴に引きづりこんでいく。大人たちは必死に子供たちを守ろうとするが、相手が怪獣ではどうしようもなかった。
 村の子供たちは次々と捕まり、残った村人たちも村をすっぽり包むバリヤーによって逃げ出すことができない。
もうタルブ村はおしまいなのか? だがそんな中で、シエスタの母であるレリアだけはあきらめてはいなかった。
「おじいさま、私たちをどうかお守りください」
 タルブ村は、レリアが幼い頃に怪獣ギマイラに襲われた。そのときも、村人たちが全滅している中で祖父は最後まで勇敢に戦い、最後には怪獣を退治した。
 自分から暴力に膝を屈してはならない。このような暴虐が、いつまでも許されるわけはない。
 そう、今まさにバリアーの外では、異変を知って駆けつけてきたモロボシ・ダンが、自分がウルトラセブンに戻れないときのための切り札を使おうとしていた。
「ミクラス、いけ!」
 彼が投げた小さな黄色いカプセルから現れる野牛のような怪獣。それこそ、セブンだけが持つカプセル怪獣の一体、ミクラスだ。
 ミクラスはがっしりとしたたくましい体でのしのしと歩き、バリヤーの前に立つと両腕で力瘤を作るようなポーズをとった。野太いうなり声でバリヤーがぴしぴしと震え、そしてダンはじゅうぶんに力を溜めたミクラスに向けて、その力を存分に振るえと命令した。
「いけ、ミクラス! お前の怪力で、そのバリヤーを叩き壊せ」
 ミクラスの巨木のような腕が振りかぶられ、猛烈な勢いを込めたパンチがバリヤーを薄いガラスのように叩き割った。響き渡るガラスが砕けるのと同じような粉砕音、ミクラスはガギのバリヤーにあっという間に自分が通れるくらいの大穴を開けてしまったのだ。
 そのままミクラスはバリヤーの内部に突入すると、彼の故郷のバッファロー星の名前のように猛烈な勢いでガギの下へと突進していった。
 ミクラスが走る振動は村の中をすぐに伝わり、村人たちや、もちろんガギも異変に気がついた。
 なんだ? 地震? いや、なんだあれは!
 土煙をあげながらダッシュしてくるミクラスの姿に、村人たちどころかガギまで一瞬あっけにとられた。そしてそのままミクラスは勢いを落とさずに、ガギに正面からショルダータックルをお見舞いした。
 たまらず背中から地面に叩きつけられるガギ。だが、ガギが倒れこんだことで、ガギの触手に捕まっていた子供が宙に舞い上げられてしまった。
「きゃあぁぁーっ!」
「スイーッ!」
 触手に絡まれたまま、幼い少女がレリアの前で空から落ちていく。あのままでは地面に叩きつけられて即死してしまう。だが、見守っていた人々が青ざめる前で、ミクラスは落ちていく少女を器用に手のひらで受け止めたのだった。
「あ、あわわ……たす、かったの」
 ミクラスは少女を捕まえているガギの触手を無造作に引きちぎると、そのまま少女をゆっくりと村人たちの前に降ろした。村人たちも少女も最初はあっけにとられていたが、ミクラスがこちらに危害を加えようとしてこないことと、その人懐こい子犬のような眼差しに、警戒心を緩めていった。
だが、ガギはそうはいかない。自慢の鞭を千切られた怒りに燃えてミクラスの背中に向けて襲い掛かってくる。
 振り下ろされるガギの爪。しかしミクラスはガギの一撃を背中で受け止めると、少女に向けていた優しげな目をきっと鋭く尖らせて、振り向きざまにガギに体当たりを食らわせた。
 がっぷりと組み合った形になるミクラスとガギ。が、均衡は一瞬で、ミクラスはガギとよっつに組み合ったままでどんどんとガギを押していった。
「す、すごい力だ」
 村人たちもガギを軽々と押していくミクラスの怪力に驚いている。そしてミクラスは、村人たちからじゅうぶんに離れた位置までガギを押していくと、おもむろに上手投げをかけてガギを投げ飛ばしてしまった。
 相撲ならば、観客の歓声とともに行事の軍配が高々と上がっていることだろう。村人たちは、わけがわからないながらも味方してくれているらしいミクラスの活躍に頬を緩ませ出し、逃げるのをやめて戦いを見守ろうと足を止めた。
 一方で収まらないのがガギだ。怒りのボルテージをさらにあげて、目を血走らせる勢いでミクラスに叫び声をぶつけながら起き上がってきた。まだ戦いはこれから。ダンの声がミクラスの背を叩く。
「ミクラス、行け!」
 信頼を込めた短い一声で、ミクラスはガギにためらうことなく向かっていった。
 激突する二大怪獣。ガギの巨大な爪の一撃がミクラスに迫るが、ミクラスはこれを軽々とはじいてガギのボディに強烈なパンチをお見舞いした。たまらずうめき声をあげながらのけぞるガギ。ミクラスはこの機を逃さずに、見事な角を生やした頭でガギに体当たりして、再び大きく吹っ飛ばした。
「強い、強いぞ。あの怪獣!」
 村人たちがミクラスの優勢に歓声をあげた。ガギの攻撃が通用しない上に、パワーで完全に圧倒している。
 ガギに狙われていて怯えていた子供たちも、ミクラスの活躍に笑顔を取り戻し始め、そしてダンも頼もしそうな視線と鼓舞の声をミクラスに送った。
「そうだミクラス、お前の力ならばそのくらいの怪獣は敵ではない!」
 ミクラスは主人のはげましにうれしそうに体を震わせると、再びガギに向かっていった。
 格闘戦で、ガギの攻撃を跳ね返しながら重い一撃をガギに食らわせるミクラス。次元が違うと見えるほどまでのパワーの差にガギは翻弄されるばかりだが、かつて時空間に生息していたガギの別固体と交戦して倒した剛力怪獣シルバゴンのパワーが三百万馬力なのに対して、ミクラスはなんと五百万馬力ものパワーを誇る。これはシルバゴンの強化体であるキングシルバゴンの四百八十万馬力すらも越えていて、ガギがまったく歯が立たないのも至極当然であったのだ。
 ミクラスは記録上において、宇宙怪獣エレキングと凍結怪獣ガンダーに対して敗北しているとはいえ、電撃や冷凍光線にやられるまでは肉弾戦で互角以上に戦えていた。そのポテンシャルは低くないどころか十分強豪怪獣の内に入ってくるだろう。
 ガギとて決して弱い怪獣ではないが、能力のバランスがとれている反面で特化したものがなくて、必殺技にあたるものがない。それが一芸に秀でたシルバゴンやミクラスを相手には響いてしまったのだ。
 角からの破壊光線を放つガギだが、ミクラスはものともせずに自分も口から吐く赤色熱線で反撃する。ガギの巨体がよろめき、大きなダメージを受けた証拠に、残っていた鞭がだらりと力なく垂れ下がった。
「ミクラス、とどめだ!」
 ダンの叫びで、ミクラスは雄たけびをあげてガギに突進した。
 体当たりでなぎ倒し、そのままガギの尻尾を掴んだミクラスはジャイアントスイングの容量で振り回した。村中に風圧が届くほどのすさまじい勢いでミクラスはガギを回す、回す、回す。
 村人たち、レリア、シエスタの弟や妹たちが見守る前で、ミクラスの怪獣風車は続く。ガギは超高速で振り回されてもう失神寸前だ。そしてミクラスは回転が最高潮に達した時点で手を離した。
 遠心力でガギは空高く吹っ飛んでいく。村を覆っていたバリアーにぶつかって粉々に粉砕しても勢いを衰えさせずに数十リーグを吹き飛んだあげくに、村から遠く離れた山肌に突っ込んでクレーターを作り、数回痙攣したのを最後に動かなくなった。
 ミクラスの完全勝利。ミクラスは飛び跳ねて喜びを全身で表し、その無邪気な姿に村人たちも笑顔で手を振って感謝を送った。
 村は救われ、続いてほかの怪獣が現れる気配もない。そのことを確認したダンは、ミクラスを休ませるために手を伸ばした。
「ミクラス、戻れ!」
 ミクラスの体が光になって縮小し、ダンの手のひらの中で元の小さなカプセルに返った。これは指先でつまめるほどの大きさしかないが、中は非常に快適な空間となっており、中に収容した生き物を安全に保護することができるウルトラの星の大発明なのだ。
 ダンはカプセルをカプセル怪獣を保管してあるケースに戻すと、そのまま踵を返した。長居して面倒ごとになるのは避けたい。それに元々ハルケギニアの民はトラブルには慣れているので、数日もあれば自然に落ち着くだろうとの見込みもあった。
 足早に立ち去っていったダンにタルブの村人たちで気づいた者はなく、村は危機から救われた。村人たちに死傷者はなく、ガギに捕らわれかけていた子供たちも無事に救い出された。村人たちは破壊された村の片付けに走り出し、そんな中でレリアはひとりでトリスタニアの方角を望んで物思いにふけっていた。
「もう、タルブみたいな田舎も安全とは言えないのね。シエスタに、トリスタニアのおじさん、大丈夫かしら……」
 これ以上悪いことが起きなければいいのだけれどと思いながらも、一抹の不安が彼女の心に残り続けた。
 タルブ村ではミクラスが勝ち、残るガギは二体。いや、すでにゼロとなっていた。
 シュルピスの街で暴れていたガギに、ウルトラマンジャスティスの必殺光線が炸裂する。
『ビクトリューム光線!』
 金色の光芒に貫かれて、ガギは断末魔の咆哮をあげながら倒れた後に爆発四散した。
 ジャスティスはガギが絶命したことを確認すると空に飛び立ち、ジュリの姿に戻って街を立ち去った。
さらに、魔法学院を襲っていたガギも、ヒカリのナイトビームブレードの一閃で真一文字に両断されていた。
「前の個体とそんなに変わるところはなかったか……」
 ナイトビームブレードを光の粒子に変えて消滅させ、ヒカリは思ったより手こずらなかったことに安堵して思った。
 怪獣は進化のスピードも普通の生き物とは異なり、同族や親子であってもまるで性質の違う怪獣になってしまうことがある。どうやらこのガギは、以前に現れたものと差は無かったようで助かった。
 どうやら周辺にほかの怪獣が潜んでいるような気配もない。ヒカリはオスマン学院長が感謝の礼をしてくるのを一瞥すると、空へと飛び立った。
「ショワッチ!」
 魔法学院は平穏を取り戻し、続けて別の異変が起こる気配もない。セリザワの姿に戻ったヒカリは、あの怪獣は特に意図されて襲ってきたものではなく、野生の怪獣が偶然やってきただけなのだろうかといぶかしんだが、納得のいく答えを得ることはできなかった。
 ガギの起こしたこれらの事件は、ハルケギニアでは今やよくある怪獣災害の一例として片付けられ、あまり人々の記憶に残ることも無くなる。
 だが、セリザワの予感したとおり、これはその後に起こる大事件の布石に過ぎなかったのだ。


 三体のガギの敗北、それは当然ジュリオによってすべて確認されていた。しかし、彼はガギの敗北などはまるで意に介していない。ガギはしょせん、ウルトラマンたちの動向を確かめるための囮に過ぎないからだ。
 ジュリオの報告を受け、ヴィットーリオは満足げにうなづいた。
「やはり、我々がことを起こせば確実にウルトラマンたちが邪魔をしに来るようですね。三匹の怪獣たちの尊い犠牲に感謝いたしましょう。さて、これで作戦を実行に移せますね」
「はい、トリステインの崩壊を導く時がついに来たのですね。すでに、我がロマリアとガリアの軍勢は進撃準備を整え、ご命令をお待ちしています。そして……彼女も、次元のはざまで首を長くして待っていますよ。とても腹を減らせてね」
「はは、あれだけエネルギーを与えたというのに貪欲なことです。まあいいでしょう、待たせた侘びにとっておきの食事を振舞ってあげましょうか。そして、腹を満たしたらウルトラマンたちを始末してもらいますか。その後は、宇宙の墓場にでも封印してあげましょう」
 我々の作る理想の世界に、あのような醜い生き物は人類同様に不要だと、ヴィットーリオはジュリオと暗い笑みを交し合った。
 果たして、彼らはいったい何をもってウルトラマンたちを倒そうというのだろう。確かなのは、あのジョゼフと対等に取引できるほどの力と、悪魔的な智謀を持つ彼らが確信を持ってウルトラマンを倒せると言っているということだ。
 彼らは内に秘めたどす黒い計画を隠しながら、神々しい表情でブリミルを信奉する教徒たちに向かって告げる。
「さあ、忠勇なる神の使途の皆さん。私と共にゆきましょう。同じハルケギニアの人間が争わなければならないとは悲しいことです。ですがこれは、真の信仰を迷える人々に知らしめすための正義の進軍なのです。始祖ブリミルも、我らの行く先に加護を惜しまないことでしょう!」
 怒涛の歓呼のうねりが天地に轟き、十数万のロマリア・ガリア連合軍はトリステインに向かって進撃を開始した。
その勢力は数字上のものだけではなく、後方の補給部隊、さらにこれから加わるであろう義勇兵も合わせればハルケギニア空前のものとなるであろう。当然これには数多くの新聞記者なども加わり、事の詳細はハルケギニアの各地で見守っている人々へと時を置かずして届けられる。
 対して、迎え撃つトリステイン軍は数万。しかしアルビオンとの連携が加わったトリステインは難攻不落を誇る。
 勝敗の行方は誰にもわからない。しかし、神が間違ったものに勝利を与えるはずがないのだから、この戦いの結果が与えるものはハルケギニアの行く末を大きく左右するのは誰の目にも明白だった。
 六千年間ブリミル教の総本山であったロマリアか、そのロマリアに反旗を翻したトリステインか。真の神の威光はどちらにあるのか、人々は口に出さずともそれを待ちわびていた。
 例外は、事の真相を知るガリア王ジョゼフくらいであったろう。彼はガリア軍に出撃を命じはしたものの、トリステインで起こるこれからのことに関しては、教皇の御手並み拝見とばかりに無干渉でいくことを決めていた。
「神様気取りの似非救世主どのがどこまでやるか、せいぜい酒の肴に楽しませてもらおう。それであらためて聖戦となれば予定通り、しくじってまた余が無能王に転落するとしても、それはそれでおもしろい」
 最良と最悪のどちらに転んでも自分には損がないと、ジョゼフはシェフィールドに酌をさせながら、よい退屈しのぎができるとほくそ笑んでいた。
 それから数日、街道はガリア・ロマリア連合軍の進撃で河のようにうねる。行く先の人々は川底の小石のようにひれ伏し、その流れが通り過ぎるのをただ待つしかない。
 トリステインの領内へと、連合軍は抵抗無く侵入した。その侵攻先の町や村には無抵抗宣言が許され、連合軍はなんの損害も無く領内深くへと進撃していく。
 だが、決戦場である首都トリスタニアではそうはいかないということを連合軍は心得ていた。なにせ相手は異端を恐れずに反旗を翻してきた者たちであるから、死に物狂いの抵抗をしてくるに違いない。
 その予想は正しく、トリスタニアではアンリエッタを信じる国民総出で要塞化が進められていた。
 戦いに加わらない民は避難させたが、残った民は兵に志願したり、炊き出しを手伝ったり救護所を設置したりと、彼らもまた士気は高い。それに、トリステインの各地からも、女王を信じることに決めた人々が続々と集まって、兵力は増大し続けている。

 決戦は、ざっと見積もって一週間後。
 しかし……ハルケギニアの歴史に確実に残るであろう大戦も、真実から目をそらさせるためのショーに過ぎない。
 そんな茶番のために犠牲になる命など、ひとつもあってはいけないと、教皇の本性を知る人たちは使命感を強める。

 そして、教皇がもはや些事だと関心を移した東方号では、東方号の改造が昼夜を分かたずに進められていた。

「そうか、とうとうロマリアが動き出したか……できれば、東方号の改造が終わるまでは待っていてほしかったが……そうもいかないようだね」
 コルベールは、改造途中の東方号を見上げてつぶやいた。
 キングザウルス三世によって大きな損害を受けた東方号の修理と改造は、急ピッチで続けているものの、決して順調とは言えない。損傷した部品や材料こそラグドリアン湖に沈んでいた船から取り出すことができるが、合うように加工するにはまた別の作業が必要だ。経験を積んで、コルベールや工員たちも手並みは上がってきてはいるけれども、地球の鋼材の扱いはやはり簡単なものではなかった。
「鉄板を割ってみてわかったが、一枚の鉄板を何層にも区切って別の焼入れをしているとは驚いたね。より薄く、より強くする工夫なのだろうな。いつかは再現してみたいものだが、今はかえって手間が増えるばかりか……」
 見えないところにも数々の工夫がこらされていることに、向上意識を燃え上がらせられるのと、加工に手間がかかって困ることの板ばさみがコルベールを悩ませている。研究は進めているが、成果が出るのは何年後かになって今はとても間に合わない。
 しかし、やるしかない。ハルケギニア産の鋼鉄では潜水艦改造には品質が足りないので、扱いずらい地球の鋼鉄をなんとか曲げてくっつけてを繰り返して、その疲労は並大抵ではなく、一部の職人からはコルベールに不満がぶつけられていた。
「もううんざりです! こんな硬すぎる鉄を曲げたりつなげたりなんて難しすぎる。ゲルマニア産の鋼鉄に変えてください」
 職人の不満ももっともであった。しかしコルベールは彼らに対して、諭すように言ったのだ。
「君たちの苦労は私もよくわかっているつもりだ。しかし、よいものを作るには材料からして妥協してはいかんのです。悪いものに逃げれば、後で必ず災厄が自分に返ってきます。それに、君たちの苦労は君たちにとっても損ではありません。今、君たちが扱っている鉄はハルケギニアで一番頑丈な鉄です。これを加工する経験を積んでいるのは、世界でもここにいる君たちだけ……すなわち、君たちは世界一の職人になる修行をここで積んでいるのです。将来、トリステインが鉄を必要とするあらゆるものを作るときに、君たちは引く手あまたで迎えられるでしょう。それは当然、世界一の高給取りになれるということです!」
 熱弁するコルベールの、高給取りになれるという言葉に職人たちの心は揺れた。魔法で作業を行えるメイジに比べて、手作業で進める平民の職人の地位は低い。しかし、誰にもできない技術があれば、たとえメイジでも見返すことは出来る。
「いいでしょう。我々にも誇りがあります。ミスタ・コルベール、あなたの言葉を信じていいのですな?」
「私の杖にかけて約束します。なにより、君たちほどの職人を利にさといクルデンホルフが見逃すはずはないでしょうね。あとは、やり遂げたという実績だけです」
 コルベールが寝食を忘れて働いている姿を見続けてきた職人たちは、コルベールの言葉を信じた。木端に扱われる平民の職人でも高給取りになれる。そうすればいい暮らしができ、家族にも楽をさせられるという思いが彼らのやる気を呼び起こしたのだ。
 人間にとって、気力ほど大事な力は無い。どんなにうわべだけ飾っても、誇り無くして作られたものはもろく、後世に伝えられることはない。コルベールがほしいものは、”本物”なのだ。
 だが、努力は惜しまなくしても物理的に足りないものはどうしようもない。作業は遅れ気味で、コルベールも悩んでいる。
 優先度でいえば、人々の聖戦に対する意思が揺れている今しかアンリエッタが世界に訴え出るチャンスはないのはわかっているけれども、やはり何にも増して時間が足りない。本来なら船の建造や改造というものは、何ヶ月、何年単位でやるものなのに、無茶振りにもほどがある。
 不要な部分は可能な限り切り詰めて、潜水用の耐圧区画の設置に全力を注いでもなお足りない。かといって作業が雑になれば、ラグドリアンの水圧に負けてぺしゃんこにされてしまう。水の精霊は、自分たちの聖域に近づきたいのであれば相応の実力を示せと言ったという。人間の代表として、無様な姿はさらせない。
コルベールは作業の指揮をしながら、自らも得意の炎の魔法で鋼材の加工を手伝っている。なにせ半端な火力ではろくに曲がってもくれないのだから、コルベールをはじめとして火のメイジの火力はおおいに頼りにされていた。
 ただし、頼りにされるということは、それだけ負担が大きくのしかかってくるということでもある。
「ミス・ツェルプストー、もうそろそろ休みたまえ。これ以上魔法を使い続けたら、君の体が持たないぞ」
 コルベールは、溶鉱炉で炎を使い続けているキュルケを心配して言った。
「大丈夫ですわ……まだまだ、このくらいではわたしの精神力は尽きません……」
 しかしキュルケは頬がこけ、顔はすすで汚れて、髪はカサカサになっている。それでもキュルケは杖を離そうとはしなかったので、コルベールは少し厳しく言い聞かせた。
「ミス・ツェルプストー、確かにトライアングルクラスの君の魔法は頼りにしているよ。しかし、もう何日も働きづめじゃないか! これでは精神力の前に、君の体が持たないぞ。休みたまえ」
「心配いりませんわ。わたしが頑張れば、それだけタバサに近づくんですもの……今、頑張らないと」
「だからだよ。ミス・タバサが帰ってきたときに、君が倒れていたとなれば彼女はどう思うかね? 君一人で無理しなくとも、石炭でより高い熱を出す技法がアルビオンから伝わってきたんだ。大丈夫、君が休んでいるあいだの穴はちゃんと埋める」
「でも、わたしにできることは」
「私はここの責任者である前に教師だ。生徒の体の心配をする義務がある。それに最近の君は焦りすぎだ……まったくもって、いつもの君らしくないぞ。人を食った態度で、魔法学院中の男を手玉にとって遊んでいた”微熱”はどこに行ったかね? 今の君は燃え上がる炎どころか、燃えつきかけの炭火みたいなものだ」
「……」
「もう一度言うよ、休みたまえ。君にがんばってもらわなければならない戦いは、まだまだ先に待っている。ミス・タバサに、そんなやせこけた顔を見せるつもりかね? さあ、熱い湯を浴びてぐっすり寝てくるんだ。なあに、私はこれでも若い頃に慣らしたものでね」
「わかりました……しばらく休んできます」
 コルベールに強くすすめられて、キュルケはふらつく足取りで作業場を後にした。
 そのまま宿舎の部屋に帰り、言われたとおりに風呂で熱いお湯を浴びてベッドに倒れこんだ。
 横になったとたんに、疲れがどっと押し寄せてくる。意識しないつもりでいたが、やはり疲れがそうとうに溜まっていたらしい。
「ミスタ・コルベールの、言うとおり、ね……わたしらしくない、か……ごめんタバサ、少し、休むね」
 ろくに髪も拭いていないまま、キュルケは泥のようにそれから何時間も眠り続けた。
 夢の中で、平和だった頃の学院での思い出が蘇ってくる。
 意気揚々とゲルマニアから留学してきて以来、学院ではいろいろなことがあった。初心な男子生徒をからかって、毎夜とっかえひっかえ遊ぶのは楽しかったし、自分の魅力の無さを棚に上げてヒステリーを向けてくる女子をあざ笑うのもおもしろかった。
でも、一番印象に強いのはタバサとの思い出だ。はじめて杖を向け合ってから、タバサといっしょに、性格の悪い上級生をのめしたし、いろいろなトラブルに首を突っ込んだり、冒険を共にしてきた。
 留学してきて、本当によかったと思う。今ではタバサだけではなく、ルイズやモンモランシーをはじめ、昔では考えられなかったほどの友がいる。
 でも、自分はタバサを守ってあげることができなかった。だから、今度こそなんとしてでもタバサを連れ戻す。それが自分の、義務なのだ。
 長い眠りの中で、キュルケは夢の中でタバサの声を聞いたような気がした。夢の中でもタバサは相変わらず無表情で、でも心配そうに「キュルケ、無理しないで」と言ってくれていたような気がする。
「う、うぅーん。よく寝たわね」
 久しぶりに気持ちのいい目覚めをしたようにキュルケは背伸びした。ミスタ・コルベールのおせっかいとも思ったが、やはり疲れをとるのにはたっぷりと寝るのが一番だったようだ。
 出かける前に、ギーシュかギムリでもからかって遊んでいこうかと思う余裕も戻っていた。身支度を整え、化粧をしてキュルケは部屋を出た。
 ところが、宿舎を出たところで、はっとキュルケは人の視線を感じて振り返った。すると、そこに立っていたのは。
「えっ! タ、タバサ!?」
 目を疑った。夢の続きを見ているのかと思った。だが、ざっと五メイルばかり離れた場所に立っている少女の青い髪や、顔に比べて大きなメガネや涼しげな瞳は、自分の記憶にあるタバサそのものだ。
 だが、こんな場所にタバサがいるわけがない? いったいどういうことなの? と、キュルケが声をかけることもできずに戸惑っていると、突然目の前のタバサそっくりの少女は無言のまま踵を返して走り出した。
「あっ! ま、待ってタバサ!」
 慌ててキュルケはタバサそっくりの少女を追った。
 人気の無い道に、砂利を踏みしめる足音が乱暴に響く。しかしどんなに一生懸命追いかけても、タバサそっくりの少女はまるで自分の影法師のように一定の距離のままで、まるで追いつくことができなかった。
「どうなってるの! わたし、これでも足は速いほうのはずなのに。こうなったら……でも」
 いくら追いつけなくても、タバサそっくりの相手に魔法を使うことはためらわれた。
 そうしてどれだけ走っただろうか。気がつくと、キュルケは港の桟橋まで来ていた。
「はあ、ハァ……もう後ろはないわよ。タバサ、あなたタバサなの? どうしてこんなところに、あなたいったい」
 追い詰めたタバサそっくりの少女に向かってキュルケは問い詰めた。
 他人の空似というには服装までそのままで、見れば見るほどタバサそのものとしか思えない。だが本物のタバサなら、自分を見て黙って逃げるなんて絶対にないはずだ。
 なら、このタバサはいったい何者? なにかの罠か? だがいったい誰がなんのために?
 しかしタバサそっくりの少女はキュルケの問いかけにも無表情のままで答えず、代わりにゆっくりと左手を上げると人差し指で空を刺して見せた。
「なに? 上になにかあるって……えっ! あれっ!?」
空を見上げても、そこには黒雲があるだけ。すぐにキュルケは視線を相手に戻そうとしたが、自分の目を疑った。なんと、タバサそっくりの少女は、キュルケが視線を外した一瞬のうちに消えてしまっていたのだ。
「タバサ! どこ? タバサ、タバサ!」
 周り中を見渡して姿を探しても、タバサそっくりの少女の姿は煙のように完全に消えうせてしまっていた。魔法で姿を消したというわけでもなく、それどころかこの場所に他人がいたという気配さえ、なにも残ってはいなかった。
 キツネにつままれたような表情で、呆然と立ち尽くすキュルケ。火の系統である自分は、うっすらであるが人間の体温の痕跡を追うこともできるが、それさえない。まるで、水になって消え去ってしまったかのようだ……いや、そんな馬鹿な。
「まだ相当に疲れてるみたいね。幻覚なんて見るなんて……薬をもらいにいったほうがいいのかしら」
 こんなんじゃ、みんなの足手まといになっちゃうわね、と、キュルケは自分がかなり危なくなってきているんじゃないかと額を押さえた。
 それにしてもリアルな幻覚だった。顔だけじゃなく、身なりや体格までタバサそのものと言っていい。フェイス・チェンジの魔法で顔だけは変えることができるが、体格までとなるとそうはいかない。
「まるで幽霊ね。うう、縁起でもないわ! それじゃタバサが化けて出たみたいじゃないの。タバサは生きてる、必ず生きてるんだから」
 自分に言い聞かせるようにキュルケはつぶやいた。
 幽霊なんかじゃない。百歩譲って幽霊だとしても、タバサが自分をはげますために送ってきた生霊に違いない。
「幻のタバサに励まされてるようじゃわたしもまだまだね。そういえば、あのタバサは最後に空を指差してたけど……あら?」
 ふと、再び空を見上げたキュルケの目に奇妙なものが映った。暗雲に閉ざされて、空が見えないはずのそこに、不気味に脈動する星のようなものが輝いていた。
 あれはいったい? 星? いや、あんな禍々しい光りかたをする星なんかあるはずがない。
 だが、キュルケが戸惑っているうちに、不気味な光はなにもなかったかのように消えてしまったのだ。
「なんだったのかしら……また、幻なの? ああ、どうなっちゃったのよわたしの目は!」
 次から次へとありうるはずのない不可思議なものばかりが見えるとは、自分の頭と目はおかしくなってしまったのかとキュルケは自慢の赤い髪が波打つほど頭をかきむしった。
 だが、キュルケの見たものは夢でも幻でもなかったのだ。
 何者の警告なのか、確かに空のかなたからハルケギニアに巨大な脅威が迫りつつあった。
 それは、遠い宇宙からやってきた、文字通り星ほどの大きさのある巨大な怪獣。球形の体を持ち、青白いガスをまとって飛行するその怪獣の軌道は、そのまま飛び続ければハルケギニアに直撃するコースを辿っていた。
 もし直撃を許せばハルケギニアは壊滅してしまうだろう。しかし空が閉ざされている今、ハルケギニアの人々にそれを知る術はない。いや、仮に知れたとしても、ハルケギニアの人間には宇宙から迫ってきている怪獣をどうすることもできなかっただろう。
 一日、二日、時は流れ、巨大怪獣は進路を変えずにハルケギニアの星へと近づき続けてきた。さらに三日、四日と時が流れるにつれ、もしも空が晴れていたら夜空に不気味に輝く新しい星が生まれていることがわかったはずだ。
 残念ながら、人間の目で見れる真実の範囲は限られている。ただし、人間ではない超能力を持つ者たち、すなわちウルトラマンたちは、この宇宙からの脅威を捉えることができた。
「惑星軌道にまで接近されたら止めようがなくなる。まだ遠くにいる今のうちに止める以外に手は無い」
 ウルトラマンヒカリは、怪獣がハルケギニアから遠いうちにしか安全に処理する方法はないとして、すでに飛び立とうと変身していた。
 しかし、いくらウルトラマンでも宇宙に飛び立てば帰ってくるまでにそれなりの時間がかかる。無傷で帰ってこれるかの保障もないので、用心のために彼はモロボシ・ダンと連絡をとっていた。
「セブン、私が行っている間に万一のことがありましたら頼みます」
「わかった。だが、くれぐれも気をつけていけ。このタイミングでの襲来が、単なる偶然だと楽観することはできん。なにが待ち受けているか、わからんぞ」
「肝に銘じておきます。ここから見た限りですが、あの怪獣には見覚えがあります。進路を変えてやるのは不可能ではないはずですが、あなたの言うとおりに何が待ち受けているか……では、行ってきます」
 ヒカリは飛び立ち、暗雲をナイトシュートで打ち抜くと、そのまま大気圏を脱出して宇宙空間へ出た。
 ハルケギニアの星は今や黒く覆い尽くされ、本来の青く美しい姿は見る影もない。ヒカリはかつて自分が愛した神秘の惑星アーヴの最期を思い出して胸が痛くなる思いを覚えたが、巨大怪獣が落下すれば被害は救いようも無いレベルで拡大してしまう。なんとしても食い止めねばいけない。
 そのとき、ハルケギニアの星から暗雲を貫いて、もうひとりのウルトラマンが飛び出した。ジャスティスも、この危機を感づいて飛び立ってきたのだった。
 一方、ティファニアと同化しているコスモスは来ていない。もちろん、コスモスもその超感覚で異変をキャッチしていたが、ジャスティスに止められていた。
「これは私だけで充分だ。お前は万一に備えて星で待機していろ」
 ジャスティスは慎重を期してコスモスを残らせた。それに、まだティファニアと一体化して日が浅い上に、ティファニアを宇宙に連れて行くのは彼女の負担が大きいと判断した。
 怪獣の一匹程度ならば自分だけでいい。コスモスも出て行って、留守中にハルケギニアに強力な怪獣が現れたということになれば間抜けとしか言いようが無い。
 だが、ジャスティス、それにヒカリにとって幸いにも、飛び立ったウルトラマンは自分だけではなかった。
「これでウルトラマンが二人……だが、この不安はなんだ。なにか、とてつもなく邪悪な何かが待っているような。この感覚……まさか」
 ヒカリの胸に、忘れようとしても忘れられない不吉な予感がよぎる。
 まさか……いや、今は一刻も早く巨大怪獣を止めることが先だ。確証のないことに振り回されて、目的を見失ってはならないとヒカリは自分を戒めながら速度を高めた。

 しかし、それからすぐにヒカリの予感は最悪の形で的中することになる。
 封じ込められている次元のはざまを、もはや耐えられないとばかりに力づくで破って脱出を図ろうとする一匹の怪獣。そいつは現実空間を覗き込むと、ハルケギニアに向かって突き進む巨大怪獣を見つけてうれしそうにつぶやいた。
「ウマソウダ」

 教皇の罠が完成し、守護者を欠いたトリステインに危機が迫っている。果たして、ハルケギニアはどうなってしまうのであろうか。


 続く


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