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第百八話「MONEY DREAM」


ウルトラマンゼロの使い魔
第百八話「MONEY DREAM」
宇宙商人マーキンド星人 登場



 才人たちがタバサを救出するためにガリアへ侵入する手筈を整えていた頃、当のタバサは
ガリア王国のアーハンブラ城に身柄を移されていた。エルフの土地である“サハラ”との
国境近くにある、ガリアの古城だ。タバサの母も同じ場所に連れられてきていて、眠らされていた。
 現在のタバサは、杖は取り上げられているものの、虜囚の身になったとは思えないほど
自由にされていた。だが、城より外へ逃げ出すことは出来ない。城に在中するガリアの兵士たちに、
そして何より、タバサを下したエルフ――ビダーシャルに監視されているからだ。
 ビダーシャルは何らかの目的があり、ガリア王ジョゼフに協力しているという。そしてビダーシャルは、
ジョゼフの要望により、母の心を狂わせた薬を作成中であった。――もちろん、タバサに飲ませるものだ。
このままだとタバサは、後十日ばかりで、死んでいるのと変わりないような状態にされてしまうのだ。
 そうと分かっていながらタバサは、既にあきらめの境地にあった。万全の状態でもまるで
歯が立たなかったエルフ相手に、母を連れての脱走が出来るはずがない。逃げたシルフィードが
才人たちに助けを求めに行って、彼らが自分を助けようとガリアという大国を敵に回してしまう
のではないかということだけが唯一の心配事であった。
 タバサは自分に残されたわずかな時間を、眠ったままの母と一緒にいることに費やすことに決めた。
母のベッドに腰掛け、ビダーシャルの持ってきた本の一冊のページをゆっくりとめくっていく。
『イーヴァルディの勇者』。ハルケギニアの平民の間で広く読まれている冒険活劇だ。
 自分も、イーヴァルディのようにいくつもの冒険をしてきたものだ。だがその幕切れは
こんな形であった。ファルマガンとジルとの約束を果たせなかったことは残念であるが、
最早どうしようもなかった。
 タバサは己の経験した冒険を回想した――。

 今度のタバサの任務は、いつものような荒事ではなかった。ガリアのベルクート街に新しく
出来た賭博場に、貴族平民問わず多くの人間が入れ込んでいるのだという。その中には王宮で
働く者も少なくなく、賭け事に熱中してろくに働かなくなる者が日に日に増加していき、
しわ寄せを食らっている王宮が悲鳴を上げているとのこと。その問題の賭博場の人を惹きつける
カラクリを暴き出し、潰してくるのがタバサに与えられた使命であった。
 そしてタバサは、ド・サリヴァン伯爵家の次女、マルグリットと名を偽って、問題の賭博場に
臨もうとしていた。
「おねえさま、今度の任務は荒っぽいのじゃなくてよかったってシルフィ思うの。おねえさまが
怪我しないのは、シルフィにも嬉しいことなのね!」
 最近のガリア貴婦人の間で流行している男装姿のタバサにつき従う、次女の格好のシルフィードが
ウキウキしながらそう言った。
「怪しい賭博場の秘密を暴け、ってことだけど、どうせそんな場所に大した秘密なんてないのね。
人間なんて欲望にコロッと流されちゃうものだし、みんながみんな遊び好きのろくでなしってだけ
なのね。あッ、もちろんおねえさまは別よ? で、そんなお馬鹿さんを引っかけるつまんない
カラクリを暴き出すことくらい楽勝なのね~、きゅいきゅい」
 上機嫌にまくし立てるシルフィードだが、極秘の任務の内容を口に出すわ、人間として不自然な
ことを並べるわ、とひどいありさまなので、タバサに杖でポカポカ叩かれた。
「いたい、いたいよう」
「静かに」
「ごめんなさい。ごめんなさい。もうしゃべらないのね。きゅい!」
 そんなこんなでやってきた場所は、一軒の宝石店。しかしそこが件の、地下賭博場の入場口なのであった。
 タバサは事前情報にあった合図を示すことで、宝石店から地下へ続く秘密階段を下り、
賭博場の扉の前まで来た。
 横の小さなカウンターの前に立つ黒服の執事が、タバサに恭しい態度で告げた。
「貴族のお客さまでいらっしゃいますか。では、こちらで杖をお預かりします」
 隣に立った、シルフィードが、心配そうにタバサの顔を覗き込む。杖を預けることは、
雪風のタバサがただの女の子になってしまうことを意味しているのだ。
 タバサは、動じた風もなく、杖を執事に渡した。
 ドアマンが扉を開くと、中からどっと、眩い光と人々の喧騒、酒とタバコの匂いが溢れてきた。
「地下の社交場、“天国”へようこそ!」
 入り口をくぐったタバサに、きわどい衣装に身を包んだ女性がしなだれかかった。接客係のようだ。
「まあ! こんなお小さいのに! 坊ちゃん、誰かの付き添いで来たの?」
 タバサは首を振った。
「あら、よく見たら、女の子じゃないの! どこの商家のお嬢ちゃんだい? どっちにしろ、
ここは子供の来るところじゃないよ!」
 女がそう叫んだら、奥からでっぷりと太った中年男性が現れた。人当たりのよさそうな
商人風だが、目が笑っていない。
「ばかもの。貴族のお嬢様と、商人の娘を間違えるな」
 男は女を叱りつけると、奥へと下がらせた。
「接客係の失礼をお詫び申し上げます。当カジノの支配人である、ギルモアです」
 タバサは男に関心を払わずに、辺りを見回した。サイコロ、カード、ルーレット等、様々な賭け事が
絶えず行われ、大勢の人間が群がっている。情報の通りの賑わい具合であった。
「どうしてこんな地下にカジノを造ったのだ? といった顔をされてますな? いやなに、
こんな商売をしている内に、顔色で思っていることが分かるようになりましてな」
 ギルモアという男が言葉を続けた。
「知っての通り、カジノは合法ですが、賭け金に上限が定められています。しかし当カジノは、
裕福な商家の旦那様や、名のある貴族の方々にも満足いくような賭け金を設定させていただいて
おるのです。従ってこんな細々と営業させていただいている次第。そして当カジノは、他の賭場には
ない特色がもう一つあります。――お客さまにいつまでもお遊びいただけるシステムをご用意しております」
 初めて、タバサがギルモアに顔を向けた。
「ご興味を持たれましたな。そのシステムというのは、賭博とは別に、少々の労働と引き換えに
資金を稼げるというもので、これ故に当カジノに来られるお客さまは、たとえ賭けに失敗されても、
いつまでもお財布の底が尽きないのでございます。まさにこの世の“天国”! 夢のような場所と
自負しております」
 そうやっていつまでも客を離さないのが、このカジノの秘密の一つか。だが、その「少々の労働」とは
どういうものなのか?
「まぁ詳しいことは、後でのお楽しみということで……」
 まずは賭け事を始めろ、とギルモアは暗に言っていた。だがその前に、タバサに一つ尋ねた。
「安心が第一の当カジノ故、慎重を期すために、お名前を伺っております」
「ド・サリヴァン家の次女、マルグリット」
「ありがとうございます。マルグリットお嬢さま、今日はどのようなゲームでお遊びですかな?」
 タバサが選んだのは、サイコロを使った賭博だった。それが、タバサの魔法も暴力も使わない
冒険の始まりだった。
 タバサは始めの内は、レートの下限ギリギリを黙々と張っていた。しかし十五回目の勝負で、
ディーラーの手つきを微妙な動きを見切ったことで大金を張り、見事に勝利した。そんなことを
繰り返して、タバサは数時間後にはチップの山を積んでいた。周りの人々が自分の賭け事を忘れ、
ギャラリーを作ったほどだ。
 夜も更け、最初百エキューだったのがおよそ一万数千エキューのチップになった頃に、
ギルモアが揉み手をしながらやってきた。
「お嬢さま……これはこれは大変な大勝でございますな。さて、そろそろ夜も更けてまいりましたが……」
 どうやらタバサは店の予想以上の大勝をしたようだ。このまま勝ち逃げされては困る、
との響きが混じっている。ここからが本当の勝負ということであった。
「続ける」
 と返すと、ギルモアの目がわずかに細くなった。指をぱちん、と弾くと、サイコロのシューターが
ほっとしたような顔で奥へ消えていった。
「申し訳ありませんが、このテーブルは、シューターが体調を崩してしまったので、お開きと
させていただきます。さて、そろそろ小さな賭け額にも飽きた頃ではございませんか?」
 ギルモアの持ちかけてきた勝負をもちろん受けるタバサだが、その前に集中力を回復するための
休憩を申し出た。

 豪奢な別室に通されたタバサに、ついてきたシルフィードがヒソヒソ声で尋ねかけた。
「それでおねえさま、肝心のここを潰す方法って思いついたの?」
 コクリ、とうなずくタバサ。
「この賭博場は、間違いなく、何らかのイカサマをしてるはず。それを見つけて、客たちに教える。
それで終わり」
 タバサは賭けをしながら、カジノの様子を観察していた。その結果分かったのは、今のタバサのように、
大勝をした客はギルモアたちに目をつけられ、個室での賭けに誘い込まれた。そして誰も戻ってこなかった。
何故戻ってこないのかまでは分からないが……勝ち負けが決まっているギャンブルなどありはしない。
それはつまり、ギルモアは確実にイカサマをしているということだ。
「なるほど。で、おねえさまは、早速そのきっかけを見つけたって訳ね?」
 タバサが今度は首を横に振ると、シルフィードはため息を吐いてタバサの頭をぐりぐりとかいぐり回した。
「お前はほんとに使えない小娘ね。ちゃっちゃと任務を終わらせて、買ったお金でシルフィに
お肉を買うのが裏の任務なのね。では、シルフィが何とかしてあげるのね! イカサマとやらを
見つけてあげるのね! きゅい!」
 タバサはシルフィードをじっと見つめると、言い放った。
「あなたには無理。今回は頭脳戦」
「それはつまり、シルフィの脳が足りてない、と言いたい訳なのね?」
「そうは言ってないけど、近い」
 きゅいきゅいきゅい! と抗議の声を上げるシルフィード。
「こ、この、古代種のシルフィを捕まえて、足りてないとは上等なのね!」
「……ゲームでイカサマを見つけることは、いつもの戦いとは全く違う」
「シルフィだって、お役に立ちたいのね」
「気持ちだけもらう。大人しくしてて」
「なによなによ。バカにして。つまんない! つまんない! ちょっと散歩でもしてくるのね!」
 気分を害したシルフィードが廊下に出ていった後で、外から扉がノックされた。
「誰?」
「給仕のトマです。お嬢さま、飲み物を持って参りました」
「入って」
 ドアが開き、スマートな青年が入ってきた。しかし彼は、ワインの壜とグラスをテーブルに置いても、
部屋を出ていかなかった。
「失礼とは存じますが……お嬢さまは、名家のお生まれではないですか?」
 と問うたトマの切れ長の目には、タバサは覚えがあった。わずかなタバサの変化を、
トマは見逃さなかった。
「お久しぶりでございます。シャルロットお嬢さま」
「トーマス」
「そうでございます。オルレアンのお屋敷で、コック長を務めさせていただいていたドナルドの息子、
トーマスでございます。シャルロットお嬢さまが、あの扉から現れた時には、跳び上がるほどびっくり致しました」
 タバサの頭に、懐かしい記憶が蘇った。トーマスは手品が得意で、シャルロットはそれを見て
いつも朗らかに笑っていた……。
 昔懐かしいトーマスは己の来歴を語った。オルレアンの家が取り潰しになった後は、使用人も
散り散りとなり、トーマスも父を亡くしてからごろつきのような暮らしを送っていたが、ギルモアに
拾われてここで働くようになったのだという。
「さて、そんなお懐かしいお嬢さまに、ご忠告です」
「忠告?」
「はい。ここに先ほどのチップの九割を手形に変えたものを持って参りました。これをお持ちになって、
裏口より逃げて下さいませ」
「どうして?」
「さる事情があって、それは言えませぬ。ただ、この後のゲーム、お嬢さまは決して勝てない
仕組みになっております」
「理由を教えて」
 トーマスの目の色に嘘はなかったが、それでもタバサは理由を求めた。トーマスは困ったように
首を振ったが、タバサが納得しないと思ったのか、話し始めた。
「この賭博場は……店名にあるような“天国”とは言えませぬ。むしろ……」
「むしろ?」
「……いえ、言葉が過ぎました。たとえるならば、喜捨院なのです。富んでいる者から金を巻き上げ、
貧しい人々に配る目的で作られた賭博場なのです。従って、お金をお持ちの方は必ず負ける、そういう
構造になっております」」
「誰が作ったの?」
「ギルモアさまでございます」
 あの欲深そうな支配人が、トーマスの言ったような喜捨院を作るとは思えないが……タバサは
口には出さなかった。
「そのような訳で、勝った一割は、貧しい者への施しとお諦め下さいませ。残りは私の裁量にて
お返し致します。それでご勘弁下さいませ」
 トーマスは心からタバサを心配してそう配慮してくれたのだが、儲けて帰るのがタバサの
目的ではない。彼には悪いが、タバサはその後のギルモアとの賭け勝負に挑んだのであった。

 だが、万全の心構えで挑んだにも関わらず、タバサはギルモアの仕掛けたイカサマのタネの、
糸口も見つけることが出来なかった。単純なカードのゲームで、カードに仕掛けは見当たらず、
カードを切る役もゲームの場所選びもタバサがやったにも関わらず、タバサは負け続けた。
一時間も経たずに、タバサは先ほどの勝ち分を全て溶かしてしまった。
 タバサのチップを全て奪ったギルモアは、至極満足げに告げた。
「さて、お嬢さま。どうやらチップがなくなってしまったようですが……これ以上お続けに
なるのなら、新たにチップを買っていただかなくては」
 タバサは首を振った。
「おやおや、それではゲームは続けられませんな。しかしご安心を! このような場合に、
私めが先ほど申し上げた『システム』がご有用となるのです」
 とギルモアが言った途端、トーマスの表情が一気に青ざめた。
「ぎ、ギルモアさま。マルグリットさまはまだ幼くいらっしゃいます。あの『仕事』をお勧めするのは……」
「控えろ、トマ。それをお決めになるのはお前ではない、お客さまだ。さてお嬢さま、新しくチップを
お買い求めなさるためのお仕事を受けられますかな?」
 ギルモアの申し出に、タバサは迷うことなくうなずいた。
 イカサマのタネを暴けないのは非常に悔しいが、その『仕事』なるものの正体も確かめなければ
なるまい。……トーマスがあんな反応をしたのだ、真っ当なものではない。
「結構でございます。ではお嬢さま、ご案内しましょう」
 ほくそ笑むギルモアと、力なく肩を落とすトーマスにタバサがついていこうとした時、
それまでどこに行っていたのか、シルフィードがようやく駆け戻ってきた。
「おねえさま、待って!」
「おやおや、お連れさまではございませんか。彼女もご一緒されますか?」
 タバサはシルフィードとギルモアを見比べ、シルフィードに向かって言いつけた。
「黙ってついてきて」
 シルフィードは何かを伝えようとしていたが、タイミングが悪い。今はカジノの秘密を
確かめるのを優先した。
「でも、おねえさま! シルフィはさっき……」
「今は大事な局面。後で聞くから」
 タバサがじっと目を見据えると、シルフィードはしぶしぶ押し黙った。
「お話しは済みましたでしょうか? それではこちらです」
 ギルモアが先導していった先は、地下カジノの更に地下に続く階段。それを下りた先の、
絢爛としたカジノとは打って変わって寂しい光景の地下室に待っていたのは、四角いレンズの
眼鏡を掛けた一人の男だった。
「おっと、ギルモアさん。また新しいお客さまですか? おやまぁ今度は随分と小さいお嬢さんで」
「うむ、ド・サリヴァン家のマルグリットお嬢さまだ。例によって、ここから先の案内を頼むぞ、タマル」
 タマルと呼ばれた男は、ギルモアと対等の立場のように会話をしていた。カジノの先にある
地下室を担当しているようだが、カジノの業務員ではなく外部の人間らしい。
「はいはいかしこまりました。それではお嬢さま方、ここから先の作業場に関してはこの不肖
タマルがご案内致します」
 ギルモアから任されたタマルが、どこかおどけたような態度でタバサたちにお辞儀した。
「それでは早速、ご説明をば。上でおおまかな説明をお聞きになったとは思いますが、ここより先で
していただくのは賭けではありません。対価を得るための労働でございます。なぁーにそんな難しいことを
させたりはしませんとも。ここで稼いだ賃金は、そのまま自分のものにするのも良し、上のカジノで
またお遊びなさる資金にされるのも良しでございます。まぁ、ほとんどの方はカジノに舞い戻られますがね」
 弁舌を振るいながらタマルは、タバサとシルフィードを一つの扉の前まで連れてきた。
「作業の内容は二種類ありまして、どちらを選ぶかはお客さま次第でございます。賃金は安いけれど
『リスク』のないお仕事と、高いけれど『リスク』のあるお仕事」
「危険(リスク)……?」
 タバサとシルフィードは怪訝な顔となった。
「まぁまぁ大したものではありませんけどね。ご覧になってからお決めになって下さいな。
それではこの扉の先で行われているのが前者の、安いけれどリスクのない仕事でございまぁす」
 タマルが扉を開けた先に広がっていた光景は……タバサたちに目を疑わせるようなものだった。
 広い部屋の奥に巨大な鋼鉄の装置が鎮座していて、それからは太いコードが何本も伸びている。
備えられた三つのガラス窓から見える輝きは……火だろうか? 博識のタバサでも、その装置が
何なのかは皆目見当がつかなかった。
 そして装置の周りに、全身を覆うハルケギニアには見られないような材質の服で身を包んだ人たちが、
何らかの作業を行っている。どうやら、装置を組み立て拡張する作業のようだ。
「基本的には、あれを作る仕事でございます。この仕事は主に平民がやってますね。カジノとは
関係ない、地上で職にあぶれた方々も招いて働いてもらってるんですよ。やっぱり人間、働いてないと
いけませんからねぇ」
「えッ、ちょっと……『あれ』は何なの?」
 唖然としているシルフィードが尋ねたが、タマルは意外そうに聞き返した。
「おや、知ってどうなさいます?」
「い、いや、何なのかも分からないで作るなんておかしいのね」
「左様ですか? そのようなことを言われたのは初めてですがねぇ」
 タバサとシルフィードは思わず目を合わせた。
「まぁこの仕事は肉体労働なので、元より貴族の方には人気がないですし、お嬢さまの体格的にも
向いてないですね。お二人には、もう一つの方をお勧めします。お若いし打ってつけですよ」
 ここでの説明を適当に切り上げ、更に奥の部屋へ案内していくタマル。だがその途中で、
タバサが呼び止めた。
「待って」
「おや、まだ何か?」
「……さっきの装置は、どこの国の技術が用いられてるの?」
「ああ、それはゲルマニアの最先端の工業技術で……」
「嘘」
 タマルの言葉を、きっぱりとさえぎるタバサ。
「ゲルマニアの友人がいるから分かる。ゲルマニアの工業力でも、あれほどのものを作れるとは
考えられない。……あなたは、ハルケギニアの人間じゃない」
 ハッと息を呑むシルフィード。一方で、タマルは面白そうに口の端を吊り上げた。
「お嬢さまは鋭いですねぇ。私の正体に自力で気がついた人は、あなたが初めてですよ」
 そう言ったタマルの半身が歪み……一瞬だけ昆虫型の怪人のものとなった!
 タバサの推察通り、タマルはハルケギニア人ではなかった。はるか宇宙の彼方よりやってきた、
マーキンド星人という種族である。
「おねえさまッ!」
 咄嗟にタバサを背でかばうシルフィード。今の杖のないタバサでは、宇宙人には太刀打ち出来ない。
 しかしタマルに攻撃の意思はなかった。
「おっと何か勘違いされてるようですが、あなた方に危害を加えるつもりなんてこれっぽっちも
ありませんよ?」
「え?」
「私はその辺の粗野な侵略者とは違う、生粋の商売人でございます。正体を知られたから、
何かする気なんて毛頭ありませんよ。素性なんてものは商売に関係ありませんでしょう? 
砂漠の国境付近では、エルフとも貿易が行われてるではないですか」
 知った風な口を利くマーキンド星人だが、タバサたちは警戒を解かない。それで肩をすくめる
マーキンド星人。
「まぁそう固くならないで、商売の話に戻りましょう。いよいよこの先が、お嬢さま方に
お勧めする、賃金が高いけれどリスクのあるお仕事でございますよ」
 突き当たりの、二つ目の扉を開くマーキンド星人。その先に見えたものに――タバサたちは、
今度は言葉を失った。
 部屋には大きなドーナツ状の円卓があり、その周囲に大勢の人間が椅子に座ってぐったりと
力を失っている。そして円卓の中央には……黄色く輝く巨大なエネルギーが浮遊していた。
 エネルギーの塊は、ここにいる人間たちから吸い出されたもののようであった。


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