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第百六話「暗王からの使い」


ウルトラマンゼロの使い魔
第百六話「暗王からの使い」
毒ガス幻影怪獣バランガス
火炎飛竜ゲルカドン 登場



 ミョズニトニルンを背にするタバサは、連続して氷の矢を飛ばして攻撃してくる。才人は横に
転がることでどうにか避ける。
「タバサ! お前これ、一体どういうつもりだよ!」
 タバサに攻撃される理由が全く分からない才人が怒鳴るが、返事は氷の矢であった。
「くッ……!」
 才人はデルフリンガーで氷の魔法を吸い込むことで防御。再びタバサに問いかける。
「どういう理由があって、俺を攻撃するんだ」
 それにタバサは短く答えた。
「命令だから」
「……お前ッ! タバサに何をしたんだ!?」
 才人はミョズニトニルンがタバサの精神を操作しているのではないかと考えたが、ミョズニトニルンは
冷笑を浮かべて否定した。
「わたしは何も特別なことはしてやいないさ。さっき言っただろう? この子は、北花壇騎士。
わたしたちの忠実なる番犬だもの」
「番犬?」
「見ものだねえ。シュヴァリエ対シュヴァリエ。わたしの主人が小躍りして喜びそうな組み合わせだよ」
 ミョズニトニルンは余裕でも見せつけているのか、その場に留まって才人とタバサの戦いをながめている。
 才人は跳躍し、一気に距離を詰めてタバサの杖を切り落とそうとしたが、タバサは魔法で
軽やかに跳ねてかわした。タバサの体術と魔法を組み合わせた動きに才人は翻弄される。
「くそッ、はえぇ……」
「相棒の心が震えてねえからだ」
「そりゃそうだよ! 何で俺があいつと……」
 才人が翻弄されているのは、いつもの半分の力も出せていないからでもあった。まさか、
タバサ相手に本気で攻撃するなんてことは出来ない。せいぜい、杖を切り落とそうとする
剣戟を繰り出すのが精一杯。そんな剣の軌道は簡単に読まれてしまうのだ。
 何度かの攻防の後、才人とタバサは十五メイルの距離を挟んで対峙した。するとタバサは
中腰にずっしりと構えて、呪文を詠唱し出す。
 途端、タバサの魔力が色濃くなり、彼女の周囲に陽炎のように漂い始めた。向こうは勝負を
決めるつもりのようだ。
 才人も息を呑み、もう一度タバサに呼びかける。
「タバサ。お前は強いから、手加減できねぇ。……どいてくれ! お前を斬りたくはねぇんだ!」
 だが、タバサの呪文は途切れなかった。才人は諦めたように首を振ると、跳躍する。
 同時にタバサも杖を振り下ろし、氷の槍が放たれた。
 剣と氷の槍が交差。氷の槍は砕け散って、才人は氷の破片の隙間を突き進むが、タバサは
もう一本の槍を用意していた。
「一本目は囮か!」
「うぉおおおおおおお!」
 才人の絶叫に合わせて左手のルーンが光り、才人は加速。距離を詰めてタバサを突き飛ばし、
あおむけに倒れた小さな身体に馬乗りになってデルフリンガーを振りかぶった。
「杖を捨てろ!」
 最後の警告を送るが、それでもタバサは杖を捨てず、氷の槍を突き出す。
 才人もやむなく、剣を振り下ろした。
 ドシュッ!
 ……剣と槍が交差した後、タバサは呆然と才人を見つめた。
 剣はタバサの顔の横に突き立てられ、槍の先端は才人の脇腹に刺さっていた。
「……どうして?」
 口の端から血が垂れる才人に尋ねかけるタバサ。才人は明らかに、剣の切っ先を外したのだ。
 苦しそうな顔で才人はつぶやいた。
「だってよ……お前を殺せる訳ねぇだろ……。ルイズを守るためでも……何度も助けてくれたお前を、
犠牲に出来るかよ……」
「……」
 タバサの碧眼から、透き通った液体が流れ出たのを才人は見た。
 次いで才人を突き飛ばして、杖を振るって風と雪の破片を作り出す。
 才人はとどめを刺されるものかと思ったが、違った。雪片は、ミョズニトニルンに向かって
放たれたのだ!
 雪片はガーゴイルをズタズタに裂いた。飛び下ろさせられたミョズニトニルンの目が、
すっと冷たく細められた。
「おや……北花壇騎士殿。飼い犬が主人に刃向かおうというの?」
「……勘違いしないで。あなたたちに忠誠を誓ったことなど一度もない」
「ああそう……」
 ジロッとタバサを見据えたミョズニトニルンが、すっと腕を上げた。
「主人に牙を剥くような飼い犬は、処分しなくちゃねぇ」
「クアァ――――――!」
 それを合図に沈黙を保っていたバランガスが行動を開始。全身の噴出孔から、赤い毒ガスを
噴き出し始めた。
「うッ……!」
 タバサは風を起こして毒ガスを散らすが、その間にバランガスがゆっくりと彼女に迫り、
押し潰そうとする。
 才人は赤いガスに覆われている状況を利用し、ウルトラゼロアイを装着した!
「デュワッ!」
 たちまち巨大なウルトラマンゼロへと変身! ゼロは猛然と飛び出し、タバサに迫るバランガスに
組みついて進行を阻止した。
「セェェイッ!」
「クアァ――――――!」
 バランガスは力ずくでゼロを振り払うと、狙いをタバサからゼロに移し、後ろ足で立ち上がって
ゼロと対峙した。
 ゼロがバランガスを引きつけている間に、タバサはミョズニトニルンを見据えたが、ミョズニトニルンの
方にタバサと事を構える意思はなかった。
「獲物はいただいていくわよ」
 そう言った瞬間、上空から巨大な影が降ってきた。
「キュアアアッ!」
 全長六十メイル以上もあるトカゲ型の怪獣。腕が四本もあり、その間に皮膜が生えているという
異様な姿で飛行している。
 火炎飛竜、ゲルカドン!
『あれは……あいつが噂の怪鳥の正体か!』
 才人はそう判断した。羽の差し渡しが百五十メイルというのは大袈裟だが、暗闇で恐怖とともに
大きさも倍化して見えたのだろう。
 ミョズニトニルンはルイズを抱え、ゲルカドンの背の上に飛び乗った。ゲルカドンはそのまま浮上し、
上空へと逃れようとする。ルイズを連れていくつもりだ!
『させるかぁッ!』
 そんなことはさせないと、ゼロはゲルカドンに向かってゼロスラッガーを投擲する構えを取った。
「クアァ――――――!」
 だが背後からバランガスよりぶちかましを食らい、はね飛ばされた。
『ぐわッ! このヤロッ!』
 ゼロは先にバランガスを倒そうと、左腕を横に伸ばした。ワイドゼロショットの構えだ。
 しかしその瞬間に脇腹に激痛が走り、姿勢が崩れた。
『ぐぅッ……!?』
 先ほど、才人はタバサから手痛い負傷をもらってしまった。そのダメージがゼロにも反映されているのだ。
如何に凄腕のゼロでも、重傷を負った状態では満足に戦うことは出来ない。
「クアァ――――――!」
 バランガスはそれをいいことに、ゼロに突進して突き飛ばすと、その上にのしかかった。
「クアァ――――――!」
 動きを封じ込んだゼロに毒ガスを浴びせる!
『うぐあぁぁぁぁッ!』
 この攻撃にはゼロも大いに苦しめられる。カラータイマーが早くも危険を知らせ始めた。
 バランガスに足止めされているゼロに代わり、タバサが呼び寄せたシルフィードに跨って
ゲルカドンを追いかけ、その前方に回り込んだ。
「ウィンディ・アイシクル!」
 目を狙って氷の槍を放ったが、ゲルカドンは口から火炎を吐き出して氷の槍を溶かしてしまい、
タバサとシルフィード自身も狙った。タバサたちはたまらずゲルカドンの側方に逃れる。
 そこからゲルカドンの体表にウィンディ・アイシクルを発射するも、突き刺さらずに弾かれてしまう。
「キュアアアッ! キュアアアッ!」
 ゲルカドンは周囲に火炎をまき散らしてタバサを執拗に襲う。懸命に立ち向かうタバサだが、
彼女の氷の魔法はゲルカドンに対してあまりにも相性が悪い。その上、才人との戦いで既に精神力を
消耗した状態にある。このままでは勝ち目などない。それでも彼女は抗っている。
 タバサがピンチであるが、ゼロはバランガスに下敷きにされたまま切り返すことが出来ないでいた。
やはり、脇腹のダメージが重すぎる。
 この状況下で、才人は己のことを深く悔やんでいた。
(くそ、俺は何やってたんだ……。俺がもっとしっかりしてれば、負傷することもなかったはずなのに……!)
 タバサとの戦いの時に迷いを振り払い切れなかった。覚悟を決めてガンダールヴの全力を
出せていれば、深手を負うことなくタバサを無力化することも出来ていただろうに……。
自分が甘かったせいでこんな事態になってしまった。このままでは、ゼロもタバサまでもが
やられてしまうかもしれない。
(何がシュヴァリエだ……。浮かれてた自分が恥ずかしい……!)
 悔やむ才人の脳裏によみがえったのは、コルベールの顔。才人が人のために戦う努力をする
決意を固めたのは、大好きだったあの先生の存在もあった。
 異邦人に過ぎない自分のことを認め、心配し、困った時にはいつも助けてくれたあの人。
生徒のために立ち上がる、勇敢な心を持ったあの人。過去の罪を悔やみ、世のため人のために
働こうという道の半ばで倒れてしまったあの人。才人はコルベールの生き様に尊敬の念を抱き、
彼のようになりたいとも思っていた。それなのに……。
(俺、コルベール先生のようには半分も……十分の一もなれてねぇよッ……!)
 才人が心の中で叫んだ時……はるか上空で、何かが光った。
 そして荒れ狂う炎が天から降り注ぎ、ゲルカドンの顔面に炸裂を引き起こした!
「キュアアアッ!」
 爆発の衝撃を顔に浴びたゲルカドンはひるみ、タバサへの攻撃の手を止めた。そのお陰で
タバサとシルフィードは救われる。
 炎はバランガスにも命中し、バランガスも一瞬動きが鈍った
「クアァ――――――!」
『! てぇやぁッ!』
 その隙を見逃すゼロではない。力を振り絞ってバランガスを押し上げ、遠くへ投げ飛ばした。
『どぉりゃあぁッ!』
 バランガスを払いのけて立ち上がったゼロが見上げたその先の空から……巨大な何かの影が
降下してきた。シュシュシュシュシュ……という聞き慣れない音がそれから聞こえる。
 そしてゼロの目に飛び込んできたのは、巨大な翼。差し渡しは、百五十メイルはあろうか。
ゲルカドンよりも更に巨大だ。そして翼の後ろには、プロペラが回っている。胴体はハルケギニアの
空飛ぶフネのようであるが、航空力学の理に適った流線型をしていた。
 フネというよりは、才人が駆っていたゼロ戦……『飛行機』によく似た形状であった。
「キュアアアッ!」
 ゲルカドンは両目からレーザーを放って反撃したが、翼を持ったフネは巨体に似合わないほどの
速度で旋回、回避した。通常のフネではありえない飛行性能だ!
 そしてフネから、拡声器か何かを通したようなエコーのかかった声が発せられた。
「“ウルトラマンゼロ、聞こえているでしょうか?”」
 それは今の才人が、誰よりも聞きたかった声……コルベールの声であった!
『――えッ!? 何で生きてんの!?』
 驚かされて腰を浮かすゼロ。彼が声に反応したことで、コルベールは続いて呼びかけた。
「“こちらで飛行怪獣の動きを止めて隙を作ります。その間に仕留めて下さい”」
 それでハッと我に返ったゼロは、首肯することで返事を示した。
 フネから一斉に、コルベール謹製のマジックアイテム“空飛ぶヘビくん”――地球で言うところの
ミサイルが発射され、ゲルカドンに次々直撃。連続した炸裂を食らってゲルカドンが姿勢を崩した
その瞬間を狙い、ゼロが動く。
『ウルトラゼロランス!』
 ウルティメイトブレスレットからウルトラゼロランスを出し、ゲルカドンに向けて一直線に投擲!
 ぐんぐん空を突っ切っていったランスは、見事ゲルカドンの胴体を貫いた。
「キュアアアッ! キュアアアッ!」
 ゲルカドンはもがき苦しみ、一気に高度を落としていく。ゼロはそれを目指して駆け出した。
才人の心の沸き上がりによって、気がつけば脇腹の痛みも消えていた。
 コルベールが生きていた……。それは才人にとって、これ以上ないほどの喜びであったのだ。
「まずいね」
 落下していくゲルカドンの上でミョズニトニルンは舌打ちした。このままでは、確実に自分も捕まる。
 やむを得ず、ミョズニトニルンはルイズを放り出してゲルカドンの背を蹴った。ルイズを囮にして、
自分はバランガスの方へ乗り移った。
 ゼロは空中に投げ出されたルイズをキャッチ。ゲルカドンは直後に爆散した。
『よっしゃ!』
 駆けつけたタバサに取り返したルイズを託すと、バランガスの方へと振り向いた。
「クアァ――――――!」
 途端に、バランガスはガスを辺りに充満させて身を隠す。
 ゼロは即座にガスの中に飛び込んでバランガスを捕らえようとしたが……いつの間にか、
バランガスの気配は消えていた。
 ガスが晴れる。やはり、バランガスの姿は周囲のどこにもなくなっていた。
『逃げやがったな……』
 ゼロはひと言つぶやき、変身を解除して才人の姿に戻ったのだった。

 激戦の夜が明けた、朝。才人たちを救ったコルベールのフネは、学院から離れた草原に停泊された。
学院の生徒や教師たちが集まり、遠巻きにしながら興味津々に見つめていた。
「合計三つの回転する羽が、このフネに帆走の数倍に達する推進力を与えるのです。あの回転する
羽を動かす動力は……、石炭によって熱せられた水により発生する水蒸気の圧力で得ています。
“水蒸気機関”とわたしは呼んでおります。あの“竜の羽衣”に取りつけられた動力装置と、
似たような設計です」
 当のコルベールはフネのことを、オスマンに説明していた。
「すごいフネじゃな……、どうしてあのように巨大な翼を取りつけたのじゃ?」
「東へ行くためです。長い航続距離を稼ぐためには……、なんとしても風石の消費を抑えねばなりません。
あの巨大な翼でフネを浮かす浮力を稼ぐのです。そのためわたしは、このフネを『東方(オストラント)』号と
名づけました」
「いや見事じゃ。軍艦に応用したら、どれだけの空軍力が編成できるか……」
「私はこれを軍艦にするつもりはありません。あくまでこれは“探検船”なのです。使用した技術は
対怪獣用にならば提供の意思はありますが、研究費はミス・ツェルプストーの家から出ておりますし、
これの船籍はあくまでゲルマニアに所属します。トリステイン政府が勝手に軍艦に使用することは、
外交問題になりますでしょう」
 コルベールとオスマンのやり取りを、ちょっと離れたところでキュルケ、ギーシュ、モンモランシー、
ルイズ、そして才人が見守っていた。
 モンモランシーが、気の抜けた声でつぶやく。
「あの先生、生きてたのね……、というかあんた、どうして“死んだ”なんて嘘ついたのよ」
 キュルケが、得意げに髪をかきあげて答える。
「だって……、あの怖い銃士隊のお姉さんを騙さなくちゃいけなかったでしょ? あのままじゃ、
わたしのジャンは殺されてたわ」
「わたしのジャンってどういうこと?」
「いやだわ。彼の名前じゃないの」
「はぁ? 彼の名前?」
「そうよ。素敵な名前……」
 うっとりとしたキュルケの声で、モンモランシーは彼女の想いに気づいた。
「あんた……、まさか……」
「そのまさかなの。だってわたしのジャンってば、あんない強いし、その力をひけらかしたりしないし、
物知りだし、終いにはあんなすごいフネまで造っちゃうんだもの!」
「何歳離れてるのよ」
「年の差なんか、何の障害にもならないわね」
「頭薄くない?」
「太陽のようだわ。情熱の象徴ね!」
 のろけるキュルケにモンモランシー、ギーシュが呆れ果てる一方で、才人はゼロにこそっと尋ねかけた。
「ゼロ、お前までキュルケの嘘に気づかなかったのか?」
『いやぁ、全然……。だってさぁ、あの状況で生きてるなんて思わないだろ?』
「いやまぁ……うん、そうだね」
 うなずく才人。かくいう自分も、雰囲気に呑まれて信じ込んだ。勢いあまって墓まで建てたほどだ。
コルベール本人から苦笑いされて『悪いけれど、後で撤去しておいてくれたまえ』と言われてしまった。
「ミス・ツェルプストー」
「はーい! っていうかキュルケってお呼びになって! と何度言ったらそうしてくれるの! 
いやだわ! わたしのジャン!」
 コルベールに呼ばれ、キュルケはスキップでも踏みかねない勢いで飛んでいった。その背中を
見送ったモンモランシーがぽそりとつぶやく。
「まぁ、収まるべきところに収まったのかしらね」
 ギーシュがモンモランシーの肩に手を伸ばした。
「よく分からんが……、ぼくらも収まるべきところに収まろうかね……、あいで」
 モンモランシーに手の甲をつままれた。
「痛いじゃないかね!」
「あんた、サイトたちが大変なことになってたとき、何してたの?」
「いやぁ、舞踏会で……」
「騎士隊作ったんなら! ちゃんと働きなさいよ! 隊長でしょ! あんた!」
 ぎゃんぎゃん怒鳴られ、ギーシュはしょぼんと肩を落とした。
 その傍らで、ルイズは才人に告げた。
「サイト、また助けてくれてありがとう。そして、コルベール先生が生きててよかったわね」
「うん……」
 しかし、才人はどこか浮かない表情であった。
「どうしたの? 先生が死んだと思った時、あんなに悲しんでたのに……嬉しくないの?」
「そりゃもちろん嬉しいさ。でももう一つ、気がかりなことがある……だろう?」
 聞き返され、ルイズは難しい顔になって首肯した。
「ミョズニトニルンと名乗った女と、タバサのことね……」
 二体もの怪獣を操っていたミョズニトニルンという女……何者なのだろうか。しかもタバサと
何らかの関係まであるようであったが……。ガリアのシュヴァリエであるタバサを「自分たちの番犬」と
呼んでいたが……まさか……。
 タバサにそのことで問いただしたいところであるが、肝心のタバサの姿が見えなかった。

 その頃タバサは、寮塔の自分の部屋で一通の手紙を広げていた。署名も花押もないまっさらな
手紙だが、差出人は痛いほどに分かっていた。
 文面にはタバサの好意を非難する言葉は一切書かれていないが、代わりにシュヴァリエの称号を
剥奪する旨と、ラグドリアンの湖畔に蟄居していた母の身柄を押さえたことだけが、たった二行で
述べられていた。
 タバサは読み終えた手紙を細かく破り、窓から放った。
 後悔などない。どうせ母は囚われの身だった。住むところが変わったというだけのこと。
自分の手で母を取り返す……“約束”の時が、遂にやってきたのだとタバサは思った。
 口笛を吹き、シルフィードを呼び寄せると、その背に飛び乗ってひと言短く命じた。
「ガリアへ」


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